警備部
概要
各道府県警察本部の警備部には、公安課、警備課、外事課、機動隊等の所属が置かれている。
公安課は、警備部内の筆頭課であり主に警備警察の運営一般に関する調査研究及び企画調整を業務としており、警備警察全体を取り仕切るいわゆる警備警察の元締めのような仕事をしている。具体的には、内乱に関する罪、外患に関する罪、破壊活動防止法に規定する罪あるいは合衆国の機密を犯す罪や、極左、右翼、労働事件等といった事件捜査を行っているが、東京都を管轄する警視庁では公安部として独立しており、所属警察官約1100名を擁し、都内の所轄警察署警備課と合わせて2000人以上となり、日本の公安警察の中では最大の組織である[1]。
警備課は、主に緊急事態への対処、災害への対処のほか治安警備の実施、警護警衛等の業務を行っている。機動隊は、集団でおこなわれる不法行為や災害への対応を業務としており、爆発物、化学物質の処理、潜水やレスキュー活動、緊急援助活動等を行うための各種専門部隊が隊内に置かれている。
外事課は、主に外国からの我が国の公共の安全と秩序を脅かす犯罪、または利益に係る犯罪の取締りや、これらの犯罪に関する情報収集を業務としている。
各警察署には警察本部の警備部の業務に対応する警備課が置かれている。警備課の中に庶務係、警備係、実施係等といった係が置かれ、管内におけるすべての警備警察業務に対応している[2]。
組織
警備部には、集団警備力によって有事即応体制を保持する常設の基幹部隊である機動隊が置かれており[3]、多くの警察本部では1個隊が編成されているが、警視庁警備部では第1機動隊から第9機動隊及び特科車両隊の計10個隊が、また大阪府警察と千葉県警察に各3個隊、神奈川県警察と福岡県警察に各2個隊が編成されている。
各種事案に対応するため、基本訓練を終えた隊員は、各専門部隊の指定隊員として訓練を受け、部隊を編成している。これらの専門部隊は「機能別部隊」と呼ばれており、爆発物処理班や銃器対策部隊、NBCテロ対応専門部隊、レスキュー部隊、水難救助部隊などがある[3]。また警視庁機動隊では、2001年より、機動隊としての各種警戒警備に加えて、警察署等に分遣されて防犯や犯罪捜査、交通指導取締りなど多様な任務に従事する「多角的運用部隊」の制度を開始しており[4]、警視庁機動隊のすべての小隊には、特殊技能部隊または多角的運用部隊としての機能が付与されている[5]。
なお特殊部隊(SAT)は、警視庁では警備部警備第一課に、大阪府警察でも警備部警備課に所属しており、機動隊から独立した組織とされているが、道県警察では機動隊に所属している。またNBCテロ対応専門部隊も、警視庁では公安部に所属しているが、他の道府県警察では機動隊に編成されている。さらに、千葉県警察と大阪府警察の機動隊には、スカイマーシャルが編成されている。
また、警備部には警護対象者が自宅を出てから帰宅するまでの身辺警護を職務とした警護員と呼ばれる警察官が所属しており、とくに警視庁における警護員はSPと呼ばれ、内閣総理大臣、衆・参議院両議長、国賓、国務大臣、政党要職者などの身辺警護にあたる。 他の道府県警察本部においても警護員は存在しており、行先地警護と呼ばれる任務にあたるほか、知事等の警護対象者の身辺警護にあたる。
脚注
- ^ 大島真生, p. 19.
- ^ 仙台大学紀要 Vol. 50, No.2: 17-26, 2019 学会等報告 日本の警察における組織と実務 紀野國 宏明 Hiroaki Kinokun : Sendai Japan police organization and practices : Bulletin of Sendai University, 50 (2) : 17-26, March, 2019.
- ^ a b 平成25年 警察白書 第6章
- ^ “機動隊、犯罪捜査もやります”. 佐賀新聞. (2001年1月14日). オリジナルの2001年7月18日時点によるアーカイブ。
- ^ 「最近の警備情勢」『はげまし』第369号、一般社団法人 機動隊員等を励ます会、2005年1月。