貢の銭』(みつぎのぜに、英語: Coin in the fish's mouth)はイエスの奇跡のひとつ。また、これを主題にした絵画作品。『マタイによる福音書』に登場し、神殿への税を支払うことが出来ない聖ペトロに対し、キリストが魚の口から銀貨を見つけるように説いたエピソードである。

Augustin Tüngerドイツ語版 魚から見つけた銀貨で神殿税を納める聖ペトロ(1486年)

概要 編集

『マタイによる福音書』17章に登場する。

24節 一行がカファルナウムに来たとき、神殿税を集める者たちがペトロのところに来て、「あなたたちの先生は神殿税を納めないのか」と言った。

25節 ペトロは、「納めます」と言った。そして家に入ると、イエスの方から言いだされた。「シモン、あなたはどう思うか。地上の王は、税や貢ぎ物をだれから取り立てるのか。自分の子供たちからか、それともほかの人々からか。」

26節 ペトロが「ほかの人々からです」と答えると、イエスは言われた。「では、子供たちは納めなくてよいわけだ。

27節 しかし、彼らをつまずかせないようにしよう。湖に行って釣りをしなさい。最初に釣れた魚を取って口を開けると、銀貨が一枚見つかるはずだ。それを取って、わたしとあなたの分として納めなさい。」 — 『マタイによる福音書』 17章24節から27節[1]
 
マサッチオフレスコ画貢の銭』(1420年代)。

このエピソードは、自身も収税吏だったマタイの福音書にしか記述されていない[2]。クリスチャンが世俗的な権力を有することを正当化するために用いられる「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい[1]」の言葉で有名な『マタイによる福音書』22章15節から22節のエピソードと関連付けて語られることも多い[3][4]

この時、ペトロがガリラヤ湖で釣り上げた魚はティラピアである。このことから、以来この魚は「セント・ピーターズ・フィッシュ」(聖ペトロの魚)と通称されるようになった[5]

呼称 編集

各国で呼称にばらつきが見られる。例えば、英語では奇跡は「Coin in the fish's mouth」で美術用語は「The Tribute Money」と使い分けているが、日本語では両者とも「貢の銭」で統一されている。

芸術作品 編集

マサッチオフレスコ画貢の銭』(ブランカッチ礼拝堂)がもっとも有名である。その他にも、ティツィアーノ・ヴェチェッリオアルテ・マイスター絵画館)やピーテル・パウル・ルーベンス(ファイン・アート・ミュージアム・オブ・サンフランシスコ)、ヤーコブ・ヨルダーンスアムステルダム国立美術館)等多くの作品がある。

脚注 編集

  1. ^ a b 新共同訳より引用
  2. ^ 『マタイによる福音書』の9章9節から13節
  3. ^ Baldini & Casazza, p. 39.
  4. ^ ファリサイ派がイエスを試そうとしたエピソードとして知られる。もし納税すべきと答えればローマの支配を認めたことになり、納税すべきでないと答えればローマに対する反逆になる。イエスはまず硬貨に刻印された肖像を見せて「誰の肖像か?」と尋ね、彼らが「皇帝だ」と答えると「それならば、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に」と述べたのである。当時の皇帝はティベリウスである。
  5. ^ キリストの高弟の伝説が残る湖では口に銀貨をくわえた魚が釣れる?

外部リンク 編集