赤穂浪士 (小説)

日本の小説、メディアミックス作品

赤穂浪士』(あこうろうし)は、大佛次郎による長篇小説時代小説の代表作である[1]。これまで4回の映画化、3回のテレビ映画化、1回の大河ドラマ化が行われた。本稿では映画化作品についても詳述する。

略歴・概要 編集

赤穂事件を題材としたものの代表的作品で、映像化の回数も多い。従来の『忠臣蔵』では、主君の仇をとる「義士」として捉えられていた47人を、幕藩体制や時代風潮に抗う「浪士」として描いている。

東京日日新聞』1927年5月14日-1928年11月6日に連載(挿絵・岩田専太郎)、初版は1928年10月-1929年8月に改造社刊、3巻。様々な版本・文庫判で刊行されたが、現行は新潮文庫上下巻で、討ち入りの時期に併せ、2007年(平成19年)暮れに改版した。

赤穂事件を架空の浪人・堀田隼人の視点を通して描いている。隼人は、お仙や盗賊・蜘蛛の陣十郎らとともに事件の影で暗躍する。このため、本作の主人公はあくまでも堀田隼人であるが、映像化の際は、ほぼ大石内蔵助が主役になっている。また、多くの「忠臣蔵」ものの作品で千坂兵部が大石のライバル役として登場する事が多いのは、本作での設定描写の影響とされる。

主な登場人物 編集

  • 堀田隼人 (ほった はやと) - 主人公。赤穂浪士の動向をさぐる。
  • 蜘蛛の陣十郎 (くものじんじゅうろう) - 隼人の相棒。
  • お仙 (おせん) - 隼人の愛人。
  • 目玉の金助 - 隼人の子分。
  • 吉良義央 (きら よしひさ) - 浅野内匠頭の切腹や浅野大学の改易にも同情する人情味のある高家[2]
  • 小林平七(こばやし へいしち) - 上杉家臣で吉良家重臣。
  • 千坂兵部(ちさか ひょうぶ) - 上杉家の筆頭家老。「猫兵部」という綽名があり、猫が好き。
  • 上杉綱憲(ちさか ひょうぶ) - 義央の長男。米沢藩主。
  • 吉良義周(きら よしちか) - 吉良家嫡孫。綱憲の次男。次期当主。
  • 松原多仲 - 吉良家家老。羽倉斎宮門下。国学・神学を学ぶ。
  • 大石内蔵助 - 浅野家家老。討ち入りを後悔したり、自分を「悪党」と卑下したりするなど従来の解釈とは異なる設定。
  • 大石主税 - 良雄の長男。逞しく体格のいい若者。
  • 大石良総 - 良雄のいとこ大叔父(良雄の祖父・大石良欽のいとこ)。坊主頭で陪堂のなりをしている。元・赤穂藩士。
  • 大野九郎兵衛 - 浅野家家老で主に経済面を担当。内蔵助に家財を盗られて激怒する。
  • 毛利元義 - 討ち入り直前に姿を消す。
  • 柳沢吉保 - 幕府側用人

特徴 編集

  • 赤穂義士を英雄としては描いていない。大石を「悪人」と評した箇所があり、また討ち入りを知った人物が「義士か?」[3]と何度も呟く。
  • 時系列では故人の山鹿素行は、吉良・上杉(特に千坂高房)との深い関係の言及がある一方、赤穂義士とは無関係。

映像化リスト 編集

映画 編集

テレビ 編集

1929年の映画 編集

赤穂浪士
第一篇 堀田隼人の巻
監督 志波西果
脚本 志波西果
原作 大佛次郎
出演者 大河内傳次郎
光岡竜三郎
梅村蓉子
伏見直江
撮影 酒井健三
製作会社 日活太秦撮影所
配給 日活
公開   1929年11月9日
上映時間 98分
製作国   日本
言語 日本語サイレント
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赤穂浪士 第一篇 堀田隼人の巻』(あこうろうし だいいっぺん ほったはやとのまき)は、1929年(昭和4年)11月9日公開の日本映画である。日活製作・配給。監督は志波西果モノクロスタンダード、98分。

『赤穂浪士』シリーズの第一篇として製作されたが、第二篇以降は製作されていない[5]。初回興業は浅草公園六区日本館

現在、東京国立近代美術館フィルムセンターも、マツダ映画社も、本作の上映用プリントを所蔵しておらず、現存していないとみなされるフィルムである[6][7]

スタッフ 編集

キャスト 編集

1933年の映画 編集

1956年の映画 編集

赤穂浪士
天の巻 地の巻
監督 松田定次
脚本 新藤兼人
原作 大佛次郎
製作 マキノ光雄
山崎眞市郎
坪井與
大森康正
玉木潤一郎
辻野力彌
岡田茂
製作総指揮 大川博
出演者 片岡千恵蔵
月形龍之介
大友柳太朗
東千代之介
高千穂ひづる
中村錦之助 (萬屋錦之介)
市川右太衛門
音楽 深井史郎
撮影 川崎新太郎
編集 宮本信太郎
製作会社 東映京都撮影所
配給 東映
公開   1956年1月15日
上映時間 151分
製作国   日本
言語 日本語
配給収入 3億1305万円[8]
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赤穂浪士 天の巻 地の巻』(あこうろうし てんのまき ちのまき)は、1956年(昭和31年)1月15日公開の日本映画である。東映製作・配給。監督は松田定次、脚本は新藤兼人名義だが実際には松田定次の助監督だった松村昌治(中山文夫)が3ヶ月かけて書き直した。イーストマンカラー(総天然色イーストマン・東映カラー)、スタンダード、151分。

東映創立五周年記念作品[9]として製作され、東映スターが総出演した。忠臣蔵映画としては初のカラー映画となる[10]。配収は3億1305万円で、この年の邦画配収ランキング第1位となった。

2003年(平成15年)12月5日東映ビデオは、本作のDVDを発売した[9]。現在、東京国立近代美術館フィルムセンターは、本作の上映用プリントを35mmフィルムベースで所蔵している[11][12]

スタッフ 編集

キャスト 編集

ノンクレジット:木暮実千代中村嘉津雄

1961年の映画 編集

脚注 編集

  1. ^ 赤穂浪士コトバンク、2013年1月11日閲覧。
  2. ^ 原作『赤穂浪士』(大佛次郎)の設定を踏襲。小説は大石でなく、堀田隼人はじめ吉良方が主役。
  3. ^ 大佛次郎『赤穂浪士』(下巻)546ページなど。
  4. ^ 大河ドラマ 赤穂浪士 - NHK放送史
  5. ^ 大仏次郎 - 日本映画データベース、2013年1月11日閲覧。
  6. ^ 所蔵映画フィルム検索システム東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月11日閲覧。
  7. ^ 主な所蔵リスト 劇映画 邦画篇マツダ映画社、2013年1月11日閲覧。
  8. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン 85回全史』、キネマ旬報社、2012年5月23日、p.120
  9. ^ a b 赤穂浪士 天の巻 地の巻東映ビデオ、2013年1月11日閲覧。
  10. ^ 赤穗浪士 天の巻 地の巻東京国立近代美術館フィルムセンター、2015年3月7日閲覧
  11. ^ 赤穂浪士 天の巻 地の巻、 日本映画情報システム、文化庁、2013年1月10日閲覧。
  12. ^ 赤穂浪士 天の巻 地の巻、東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月11日閲覧。

参考文献 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集

1929年の映画
1956年の映画

関連項目 編集