テルモコックス属Thermococcus、サーモコッカス、サーモカカス)はユリアーキオータに属す超好熱性古細菌である。同じテルモコックス科に属するPyrococcusよりもやや好熱性は低いが、幅広い温度pHで生息が可能。Thermococcus celerを初めとして古細菌最多の27種が属す。

テルモコックス属
T. gammatolerans
分類
ドメイン : 古細菌 Archaea
: ユリアーキオータ界
Euryarchaeota
: ユリアーキオータ門
Euryarchaeota
: テルモコックス綱
Thermococci
: テルモコックス目
Thermococcales
: テルモコックス科
Thermococcaceae
: テルモコックス属
Thermococcus
学名
Thermococcus Zillig 1983
  • T. celer(基準種)
  • T. kodakarensis ほか
(詳細は#分類(種)参照)

深海や浅瀬の熱水域によく生育している。理由は不明だが油田鉱床から分離されることもある。生育可能温度は40-103℃と幅広く、pHも3.5-10.5と広い。Thermococcus barophilusの増殖温度は48℃-100℃とかなり広く、最も生育可能温度に幅がある生物と思われる。

栄養学的には偏性嫌気性の偏性従属栄養生物で、多糖類マルトース他)やアミノ酸発酵している。この際生成する水素が増殖を阻害するため、硫黄などを利用して硫化水素として除去している。硫黄がなければ強い増殖阻害が起こり、種によっては増殖が停止する。窒素酸化物や化合物を還元剤として利用する種もいる。

形態的には1-2μmほどの直径を持つ球菌で、細胞壁はS-レイヤーより構成される。多数の鞭毛を持つ場合が多い。

進化的にはユリアーキオータの基部付近で分岐していると考えられており、古細菌の原始的な性格を残していると思われる。Thermoplasmaの様にいくつか細胞壁を欠き、多数の細胞が集合した融合体を形成するものも知られている。T. gammatoleransなどの様に、かなり強いガンマ線に耐える種もいくつか含まれている。

利用例としてはT. kodakaraensis由来のDNAポリメラーゼPCR用に市販されている他、古細菌や超好熱菌を対象とした研究での使用頻度が比較的高い。ゲノム2005年T. kodakaraensis KOD1(2,088,737bpORF2306)が解読されたのを始め、T. onnurineus NA1(2008年)、T. sibiricus(2009年)、T. gammatolerans EJ3(2009年)の4種について解読が完了。ゲノムサイズは何れも2Mbp前後、ORFは2000ヶ所前後である。

分類(種) 編集

  • T. acidaminovoransT. aegaeusT. aggregansT. alcaliphilusT. atlanticusT. barophilusT. barossiiT. celerT. celericrescensT. chitonophagusT. coalescensT. fumicolansT. gammatoleransT. gorgonariusT. guaymasensisT. hydrothermalisT. kodakarensisT. litoralisT. pacificusT. peptonophilusT. profundusT. sibiricusT. siculiT. stetteriT. thioreducensT. waiotapuensisT. zilligii

参考文献 編集

  • Atomi, H., Fukui, T., Kanai, T., Morikawa, M., Imanaka, T. (2004). “Description of Thermococcus kodakaraensis sp. nov., a well studied hyperthermophilic archaeon previously reported as Pyrococcus sp. KOD1”. Archaea 1 (4): 263–7. 
  • Kuwabara, T., Minaba, M., Iwayama, Y., Inouye, I., Nakashima, M., Marumo, K., Maruyama, A., Sugai, A., Itoh, T., Ishibashi, J., Urabe, T., Kamekura, M. (2005). “Thermococcus coalescens sp. nov., a cell-fusing hyperthermophilic archaeon from Suiyo Seamount”. Int J Syst Evol Microbiol 55 (Pt6): 2507–14.