軌道離心率
軌道離心率(きどうりしんりつ、英語: orbital eccentricity)は、天体の軌道の絶対的な形を決める重要なパラメータである。軌道離心率は、この形がどれだけ円から離れているかを表す値であるといえる。

標準的な条件下で、軌道離心率の値により、円、楕円、放物線、双曲線が定義できる。
- 円:
- 楕円:
- 放物線:
- 双曲線:
となる。
簡単な証明によって、楕円ではsin−1eが、円から離心率eの楕円への投影角を与えることが示される。これにより、水星の軌道の離心率0.2056より、円からこの軌道への投影角11.86°が簡単に計算できる。コーヒーカップなど真上から見たら円のものを傾けて見ると楕円に見えるが、この傾けた大きさが投影角である。
計算 編集
離心率は、離心率ベクトルの絶対値として表される。
ここで は離心率ベクトルである。
例 編集
地球の軌道離心率は惑星間重力の相互作用により、長年の間にほぼ0から約0.05までの間を振れており、現在は約0.0167である[1](月は0.0549[2])。水星は0.2056と、太陽系の他の惑星と比べてかなり大きい値を持つ[3]。準惑星の冥王星はさらに大きく、0.248である[4]。太陽系の小惑星のほとんどは0から0.35の間で、その平均は0.17であるが、比較的大きい値を持つものは、木星の強力な重力の影響による。太陽系の中で最も値が小さいのは、海王星の衛星トリトンの0.000016である。
彗星の軌道離心率はほぼ1に近い。周期彗星は非常に長細い楕円軌道で1よりわずかに小さく、例えばハレー彗星は0.967である。非周期彗星は放物線に近い軌道を描き、やはり1に近い。例えばヘール・ボップ彗星は0.995086、マックノート彗星は1.000030である。前者の値は1より小さいため、実は楕円軌道で西暦4380年頃に再び現れる。一方、後者は双曲線軌道であり、太陽系を離れれば二度と戻ることはない。1980年に発見されたボーエル彗星は1.058と、太陽系内で観測された天体の中での最大記録であったが、2017年に発見された観測史上初の恒星間天体であるオウムアムアは1.199と極端な双曲線軌道を描いており、最大値を大きく更新した。その後、2019年に発見された2番目の恒星間天体であるボリソフ彗星は離心率がおよそ3.3と、最大値をさらに更新した。
観測された中で最も値が小さい(=真円に近い)軌道を持つ天体は、白色矮星EQ J190947-374414と連星になっているパルサーPSR J1909-3744の0.000000135である。
出典 編集
- ^ “Earth Fact Sheet”. アメリカ航空宇宙局. 2019年10月2日閲覧。
- ^ “Moon Fact Sheet”. アメリカ航空宇宙局. 2019年10月2日閲覧。
- ^ “Mercury Fact Sheet”. アメリカ航空宇宙局. 2019年10月2日閲覧。
- ^ “Pluto Fact Sheet”. アメリカ航空宇宙局. 2019年10月2日閲覧。