近所いじめ(きんじょいじめ)とは、複数の住民が徒党を組み、一人、あるいは一家族を相手に、いじめを働く事である。

概要 編集

姿を見かけたら、わざと家のドアや窓を思い切り閉めて大きな音を出したり、庭先でわざと大きな音を出し続けたり、待ち伏せて相手を睨みつける、外出時や帰宅時に家の外に出て、付き纏うように監視する行動を取るなど、法に抵触しない程度の嫌がらせを、住民らが一斉に浴びせる点に特徴がある。ガスライティングと類似する手口が使われる事もある[1]。相手の個人名を出して不確かで良くない情報を近所中にばら撒き相手の名誉地位を著しく落とし、人権侵害を働く事もある。長期間に及ぶ傾向があるのも特徴で、中には転居させる事を目的として行われる事もある。原因は主に近所トラブルからであり復讐心や恨みから近所の井戸端会議で根拠の無い中傷を言いふらし、嫌がらせとして、町内会の会長や役員、民生委員らに悪評を吹き込んだなどの悪質なケースも存在する(酷い時には近所のスーパーマーケット交番学校なども周知)言われた側は気づかぬうちに誤解を受けた住民たちによって回覧板飛ばし、不法投棄防犯パトロールのブラックリスト対象となる[要出典]

近所いじめは難を逃れる為に被害者が転居するケースも多く、また、転居後はいじめを思い出したくないとの心理から被害者が黙して語らない事、加害住民達が加害行為を語る事がない事などから、被害件数がどの程度に上っているのか一切わかっていない。また、スマホとSNSの普及によって、個人が作るグループでも密に連携して動いたり、情報共有する事が容易になった事、並びに、嫌がらせとして行われるものが、冒頭でも触れたように、法に触れないか、法には触れているが警察が取り締まらないグレーゾーンのものが多く、ガスライティングと類似する悪質な嫌がらせが行われている事、このような近所いじめが全国的に多発しているとも言われており、社会問題化しつつある。

事例 編集

鳥取県鳥取市では、町内会長を辞めた女性に対し「女性が補助金の詐取をしようとした」などと中傷する回覧板を町内会副会長が町内に回し、名誉毀損罪で起訴され、鳥取地裁(多田裕一裁判官)から罰金30万円の有罪判決を言い渡される事件も起きている[2]。同町内会は1980年代にできた新興住宅地にあり、女性を含めた昔からの住民と、副会長など新規の住民との間で対立があったと言い、この回覧でこれまで仲良くしていた住民らからも避けられ、会合に呼ばれないなどの被害を受け、「この地で親の代から長年過して形成された人間関係、生活基盤が根本から破壊された」と語っている。

愛知県名古屋市守山区では、2019年7月、市立中学校で火をつけた棒を使った演舞「トーチトワリング」の練習中、男子生徒が右腕に大やけどを負う事故が発生。ところが男子生徒とその家族は、悪い意味で学校を注目させた存在として、近所いじめに遭っている。報道されている情報だけでも、報道直後から連日、深夜に自宅へ無言電話が掛かってきたり、自宅ポストの郵便物が荒らされたり、なくなったりすることがあり、男子生徒の自転車にタイヤが外れるような細工をされる等の嫌がらせが相次ぎ、トーチに参加した生徒の保護者らに男子児童の母親がLINEを使って情報提供を求めても無視されたり、会った人から「(男子生徒が)下手糞だったから火傷しただけなのに何してくれてんの?」と言われたり、ネットで「私はトーチの被害者を知っています。すごい問題児です」と中傷されたという。「下の妹たちにも影響があって、全員が引きこもり状態になってしまって。精神的にも限界になって、引っ越すしかないかなと思い引っ越しましたね」(男子生徒の母親)と言い、2020年3月に、男子生徒の一家は、県外に転居せざるを得なくなったという[3][4]

京都府では、2012年に道路族住民らによる騒音問題から近隣トラブルとなり、道路族の住民が家の前をたむろして外出を妨害したり、家の前でエンジンを空ぶかししたり、厭味を言ってきたり、罵ったり、地域住民らが徒党を組み、SNSを使って行動を監視し、被害者宅を訪れた人物の車のナンバー情報を投稿する等、被害者の位置情報を仲間内で共有する悪質な事件も起きている[5][6][7]。嫌がらせは非常に長く続き、防犯カメラを設置しても、警察に被害相談をしても止まず、被害者は京都府警に迷惑行為防止条例違反で嫌がらせの中心人物を告訴(つきまとい、威嚇行為等の容疑)。書類送検され、2017年3月、略式起訴で罰金30万円に処される事態となった。

また、2015年に栃木県佐野市で発生したママ友いじめ連続自殺事件では、一部報道によると、地域ぐるみでの隠蔽が行われたとされ、その事からただのママ友いじめではなく、地域ぐるみの嫌がらせが行われていたのではないかとも言われている[8][9]

出典 編集

  1. ^ ガスライティングとは?言葉の由来や特徴・5つの事例を弁護士が解説 LEGAL MALL 監修者・宮本健太弁護士 ベリーベスト法律事務所
  2. ^ “町内会で「ウソの回覧板」回して村八分、住民男性が「名誉毀損」で有罪(弁護士ドットコム)”. (2020年4月14日). https://www.bengo4.com/c_18/n_14372/ 2021年9月9日閲覧。 
  3. ^ 「学校注目させた家族」数々の嫌がらせ受け引っ越し…火使うトーチで大ヤケド 今も続く中学生と家族の苦しみ 東海テレビ 2021年2月1日17時43分配信
  4. ^ 学校行事の大ケガを「自業自得と罵る教員」のなぜ 生徒は周囲からも誹謗中傷を受けてPTSDに 東洋経済online 2021年6月14日10時00分配信
  5. ^ “道路族トラブルから「村八分」と「集団監視」がはじまった…「歪んだ正義感」に追い詰められた京都の夫婦(弁護士ドットコム)”. (2020年6月7日). https://www.bengo4.com/c_1018/n_11310/ 2021年9月9日閲覧。 
  6. ^ “きっかけは「もう少し静かにして」道路族との8年戦争、ついに法廷へ「悪魔のように誹謗中傷された」(弁護士ドットコム)”. (2020年5月4日). https://www.bengo4.com/c_18/n_11174/ 2022年5月25日閲覧。 
  7. ^ 【ABC特集】 “道路族”が住宅街で大騒ぎ 注意に逆ギレ「流産しろ!」「引っ越せ!」 近隣トラブル続出 ABCニュース 2021年11月29日11時12分配信
  8. ^ “栃木の小学校 ママ友2人がLINEいじめで連続自殺の壮絶”. (2015年7月17日). https://www.news-postseven.com/archives/20150717_336347.html?DETAIL 2022年5月28日閲覧。 
  9. ^ 『栃木ママ友イジメ連続自殺事件』町全体を巻き込んだ隠蔽工作に批判が集まる grape編集部 公開:2015年7月31日 更新:2017年7月18日

関連項目 編集