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20000系電車(20000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道(近鉄)の団体専用列車用の電車。「」の愛称がある。

近鉄20000系電車
山田線 明星駅 - 明野駅間
基本情報
製造所 近畿車輛
主要諸元
編成 4両編成
軌間 1,435 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 120 km/h
起動加速度 2.5 km/h/s
減速度(常用) 4.0 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 236人
自重 Tc車:45t
M車:48t
編成重量 186t
全長 83,360 mm
車体長 Tc車:20,960 mm
M車:20,720 mm
車体幅 2,800 mm
全高 4,150 mm
車体高 4,140 mm
台車 湿式円筒軸箱受支持横剛性空気ばね台車
形式:KD-100
主電動機 三菱電機 MB-3127-B
主電動機出力 180kW
駆動方式 WNドライブ
歯車比 3.81
編成出力 1,440kW
制御装置 抵抗制御
三菱電機 ABFM-254-15MDHE
制動装置 発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ
抑速ブレーキ
保安装置 近鉄型ATS
備考 電算記号:PL
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目次

概要編集

20100系(初代「あおぞら」)の老朽化に伴う代替用として1990年10月に登場した。製造費は6億5,000万円[1]

愛称とされた楽(RAKU)とは、設計コンセプトであるRomantic Journey、Artistic Sophistication、Kind Hospitality、Unbelievable! の略[2]で、車両側面に表記されたロゴ「楽」の文字は書家榊莫山揮毫によるものである[3]

この他、当該形式は近鉄伝統の2階建車両を組込むため、ビスタカーの名称も名乗る。このため、両先頭車側面に「VISTA CAR」のロゴタイプが貼り付けられた。

電算記号編集

電算記号(編成記号)PL を使用する[4]

車体編集

 
車両限界一杯まで拡大されていることが判るフロント

車体は車両限界を最大限活用しており、在来の2階建車両に比べて通路部分の屋根を高くして、圧迫感をなくしたのが特徴。本系列の登場から6年後の1996年30000系「ビスタカーIII世」が車体更新によって「ビスタEX」に改造される際にも、同様の屋根構造に改造されている。窓も大きな曲面ガラスとし、柱に冷暖房用の風洞を設けているのも特徴的である。塗装は上半分を黄色、下半分をホワイト、境目に濃い茶色のラインを通し、乗降扉部分は濃いオレンジ、その脇の車端部はグレーのカラーリングである。

両先頭車両(ク20100形・ク20150形)は2階建車両の制御車 (Tc) で、運転席の直後は階段状の前面展望席としている。標識灯尾灯26000系と同タイプのLED式で、縦8×横2列の配置で左右に設けた。前照灯は屋根に2灯、排障器内に補助としてリトラクタブル式を2灯(いずれもシールドビームタイプ)を設けた。また、屋根部前照灯間と先頭部天井にサンルーフを設け、開放感を演出した。また、階下の一部は機器室として補機類や空調装置を搭載している。前面は貫通路を備えた構造であるが、通常はカバーで覆われており、他の編成との連結はほとんど行われていない。ただし、本系列に不具合が発生した際に22000系と併結し、大阪線名張駅 - 高安駅間を回送列車として走行したことがある[5]

中間車(モ20200形・モ20250形)は高床構造電動車 (M) で、床下に主制御器と空調装置を搭載している。集電装置トイレの屋根部分に下枠交差式PT4811形を各1台搭載する。

乗降扉は、一度に多数が乗降する団体利用を考慮して、通勤車と同じ幅の両引戸が採用されているが、通勤車とは違って扉の窓は小さめになっている。

後年、転落防止幌が設置されたが、本形式は連結面の開口部が広いため、特急車用のフルハイトタイプではなく、シリーズ21と同様のハーフハイトタイプが取り付けられた。

主要機器・性能編集

主電動機12000系から12600系までの標準軌特急車で採用されている三菱電機MB-3127-A(端子電圧675V時1時間定格出力180kW)に準じたMB-3127-Bである[2]歯車比も特急車と同一の3.81である[2]。駆動装置はWNドライブである。

主制御器も12000系から12600系までの特急車に準じた抵抗制御で、三菱電機ABFM-254-15MDHE電動カム軸式自動加速制御器(力行23段、発電ブレーキ18段)である[2]。電動車は編成の中間に2両隣り合わせで組成されているが、制御器自体は主電動機2基を永久直列とし、2群を直並列制御する1C4M方式であるため各電動車に搭載される[2]

制動装置は発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ(HSC-D形)・抑速ブレーキを装備し、21000系と同様に制動装置の制御圧装置(4段階)を採用して高速走行時の安全性を確保している[2]

台車は21000系のKD-97と同様に、固定軸距を従来車の2,200mmから2,100mmに短縮した近畿車輛KD-100・KD-100Aシュリーレン式空気バネ台車[2]で、基礎ブレーキ装置として主電動機を装架するKD-100は両抱き式踏面ブレーキ、KD-100Aはディスクブレーキを採用した[2]

補助電源装置は21000系・26000系で実績のあるDC - DCコンバータを採用し、Tc車に搭載する[2]

空調装置はTc車展望席・M車が床下に冷凍能力12,500kcal/hのヒートポンプ式、Tc車階上席と階下席は乗降扉横に床置きで冷凍能力は15,000kcal/h、Tc車サロンコーナー部は屋根上に冷凍能力15,000kcal/hの分散式をそれぞれ搭載する[2]

起動加速度は2.5km/h/s、最高速度は120km/hである。標準軌の路線で全線のホーム有効長が4両編成以上であれば基本的にどの路線でも走行が可能である。

編成編集

MT比2M2T(電動車2両・制御車2両)の4両編成で、大阪側からク20100形 (Tc) - モ20200形 (M) - モ20250形 (M) - ク20150形 (Tc)で構成される。

20000系編成表
項目\運転区間
← 大阪上本町
宇治山田 →
号車 1 2 3 4
形式 ク20100形 (Tc) モ20200形 (M) モ20250形 (M) ク20150形 (Tc)
車両写真        
搭載機器 CP,BT,SIV CON CON CP,BT,SIV
自重 45.0t 48.0t 48.0t 45.0t
車両構造 ダブルデッカー ハイデッカー ハイデッカー ダブルデッカー
定員 65(サロン9人分含む)[6] 68 68 65(サロン9人分含む)[6]
座席以外の設備 サロン(ソファ6席、補助3席)
公衆電話(登場時)
化粧室 化粧室 サロン(ソファ6席、補助3席)
公衆電話(登場時)
  • 形式欄のMはMotorの略でモーター搭載車(電動車・動力車)、TはTrailerの略でモーターを搭載しない車(付随車)、Tcのcはcontrollerの略で運転台装備車。
  • 搭載機器欄のCONは制御装置、SIVは補助電源装置、CPは電動空気圧縮機、BTは蓄電池。
  • 編成定員は266名。

車内設備編集

両先頭車はダブルデッカー構造で、定員は階上が42名、階下が14名である。階上室は室内高さを1,970mm、階下室は1,850mmとした[7]。階下室のアプローチの階段は、2か所設けられており、運転台側をらせん式とした。従って階下室は通り抜けが出来る。空調は窓柱部に吹き出し口があるほか、荷棚下部に個別空調を設けた。照明は21000系に準じた荷棚照明と、荷棚個別空調部の上に別個照明を設置して天井を照らす構造とした。妻壁に26000系に類似したサインパネルを設置した。なお、仕切りドアは設置されていない。室内床面は全面カーペット敷きとした。階下室のらせん階段付近の妻壁に21インチモニタを取り付けて、車載カメラからの映像を放映するほか、カラオケを楽しむための機器も設置した。

中間車はハイデッカー構造で、室内高さを2,250mmとした。天井空間に多少余裕があることで、天井は間接照明方式とした。車内放送用スピーカーは天井部に設置したため、よく目立つ。中間車同士の連絡は同じフロアレベルで行き来が可能で、ガラス製の扉が取り付けられた。反対側は階段を設置しており、仕切り扉はない。カーテンは横引き式であるが、近鉄車両初のプリーツカーテンが採用された。座席番号表記は後年、21020系に倣って大文字化された。荷棚下部の照明や個別空調は両先頭車に準ずる。

一般客室の座席は転換クロスシート(展望席は固定式クロスシート)で、階上席と中間車のひじ掛け通路側には補助席としてT-barと呼ばれる簡易の腰掛けを設けている[7]。また、座席間に支柱付きの細長テーブルを設置した。モケットは先頭車と中間車で色を変えた。シートピッチは両先頭車が980mm、中間車は910mmである[7]。先頭車車端部には6人分のサロンコーナーが設けられ、背もたれの高いソファーとしている。また同コーナー壁部分には折りたたみ式座席を3つ分設置した。このスペースは幹事席としての使用も可能で、業務放送とは別に、幹事用案内放送マイクを設置している。

トイレは先頭車寄りの車端部に和式洋式を各1か所設置している[7]。洗面台はトイレ内部にあり、独立した空間としては存在しない。

その他編集

本系列の登場当時は20100系後継の団体専用列車用として既に18200系「旧あおぞらII」が存在し、その補完的な役割として補助座席と編成2ヶ所のトイレを備えた3扉転換クロスシート車の5200系[8]および4扉固定クロスシート車の2600系[9]が存在していたことから、1990年に4両編成1本(4両)が製造されたのみに留まっている。18200系の運用離脱後は15200系「新あおぞらII」がその後継となって各種団体貸切列車に使用されている。なお、貸切料金はこの20000系が最も高額の設定となっているが、近鉄では団体専用車は特急車の扱いとはしていないため、特急料金は不要である。

運用編集

1990年10月に竣功、各種試運転や試乗会を実施して、同年11月23日から営業運転を開始した[7]

2019年4月現在、高安検車区に配置されている[10]

脚注編集

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  1. ^ 中部読売新聞 1990年9月16日朝刊 p.21
  2. ^ a b c d e f g h i j 三木理史「私鉄車両めぐり 〔148〕 近畿日本鉄道」『鉄道ピクトリアル』1992年12月臨時増刊号(通巻569号)、電気車研究会、261 - 262頁
  3. ^ 近畿日本鉄道 『近畿日本鉄道 100年のあゆみ』、2010年、446頁。 
  4. ^ 鉄道ファン』(第473号)2000年9月号、55頁
  5. ^ 22000系と20000系「楽」の併結回送 - 交友社鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2009年11月28日
  6. ^ a b 定員は鉄道趣味誌と近鉄の発表では異なるため、製造会社である近鉄を優先する。近畿日本鉄道 技術室車両部『信頼のネットワーク 楽しい仲間たち きんてつの電車』p.78
  7. ^ a b c d e 『鉄道ジャーナル』1991年2月号 鉄道ジャーナル社 p.72 - p.77
  8. ^ 現在は当該形式の補助座席は撤去済み
  9. ^ 2003年までに全車廃車済み。
  10. ^ 交友社鉄道ファン』2019年8月号 Vol.59/通巻700号 付録小冊子「大手私鉄車両ファイル2019 車両配置表」(当文献にページ番号の記載無し)

関連項目編集

外部リンク編集