遊星からの物体X

遊星からの物体X』(ゆうせいからのぶったいエックス、原題:The Thing、別題:John Carpenter's The Thing)は1982年アメリカ合衆国SFホラー映画

遊星からの物体X
The Thing
Logo "The Thing".jpg
監督 ジョン・カーペンター
脚本 ビル・ランカスター
原作 ジョン・W・キャンベル
影が行く
製作 デイヴィッド・フォスター
ローレンス・ターマン
スチュアート・コーエン
製作総指揮 ウィルバー・スターク
出演者 カート・ラッセル
ウィルフォード・ブリムリー
ドナルド・モファット
キース・デイヴィッド
音楽 エンニオ・モリコーネ
撮影 ディーン・カンディ
編集 トッド・ラムジー
製作会社 デヴィッド・フォスター・プロダクションズ
ターマン=フォスター・カンパニー
配給 アメリカ合衆国の旗 ユニヴァーサル映画
日本の旗 CIC
公開 アメリカ合衆国の旗 1982年6月25日
日本の旗 1982年11月13日
上映時間 109分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
ノルウェー語
製作費 $15,000,000 (概算)
興行収入 $13,782,838 アメリカ合衆国の旗
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目次

概要編集

南極基地に現れた謎の宇宙生物とそれに立ち向かう隊員達を描く。

ジョン・カーペンター監督、ターマン・フォスター・プロ製作。SFX担当は当時22歳のロブ・ボッティンで、同監督の『ザ・フォッグ』(1979年)に続いての登板となる。

1951年の映画『The Thing from Another World』については『遊星よりの物体X』を参照。

ストーリー編集

約10万年前、宇宙から飛来した飛行船が地球に引き寄せられ、大気圏で炎に包まれながら南極へと落下した。

1982年、冬の南極。ノルウェー隊のヘリが、1匹の犬を追って全12名の隊員がいるアメリカ南極観測隊第4基地へ現れた。銃や手榴弾を使い執拗に犬を狙うが失敗し、手違いからヘリは爆発。一人生き残ったノルウェー隊員は基地内へ逃げた犬を追って銃撃を続け、基地の隊員を負傷させてまで犬を殺そうとするが、基地の隊長により射殺される。

殺害するべく犬を追っていたノルウェー隊に一体何があったのか?真相を究明すべくノルウェー基地へ向かったヘリ操縦士のマクレディらが見つけたものは、燃え上がり廃墟と化したノルウェー基地、自殺し凍りついた隊員の死体、何かを取り出したと思しき氷塊、そして異様に変形し固まったおぞましい焼死体だった。一行は調査のため、残されていた記録フィルムと焼死体を持ち帰る。

生き延びた犬は基地内を徘徊し、夜になると犬小屋に入れられた。その途端犬は変形し、グロテスクな姿のThe Thing(生きもの)となり他の犬達を襲い始めた。だが、犬の咆え声を聞いて駆けつけた隊員たちにより、火炎放射器で焼かれ撃退される。

ノルウェー隊の記録フィルムに映し出されたのは、雪原の巨大なクレーターと、約10万年前のものと推測される氷の層にある巨大な構造物を調査している場面だった。やがて持ち帰った焼死体が動きだし、蘇った生きものが隊員の一人を襲ってその姿に成り代わった。結局その生きものは、隊員たちの手で他の生きものの死骸と共に焼却処分されたのだった。

調査の結果、生きものは取り込んだ生物に同化・擬態して更に増殖することが可能で、もし人類の文明社会に生きものが辿り着くと、およそ2万7000時間に全人類が同化されることがコンピュータの試算により判明する。それを知った隊員の一人が誰も基地の外へ出られないようにするため無線機やヘリ等の移動手段を使えなくしてしまい、基地は完全に孤立する。その環境で隊員たちは誰が生きものに同化されているか判断出来なくなり、疑心暗鬼に陥る。そして知らぬ間に同化されていく南極越冬隊員たち。このままでは皆が生きものと化し、人類の文明社会へと出てしまう。果たして隊員たちの、そして人類の運命は?

キャスト編集

役名 専門[1] 俳優 日本語版
R・J・マクレディ ヘリ操縦士 カート・ラッセル 津嘉山正種
ブレア 主任生物学者 A・ウィルフォード・ブリムリー 富田耕生
ドクター・コッパー 医師 リチャード・ダイサート 宮川洋一
ギャリー 隊長 ドナルド・モファット 柳生博
ノールス 調理係 T・K・カーター 野島昭生
パーマー 第2ヘリ操縦士
機械技師
デイヴィッド・クレノン 仲木隆司
チャイルズ 機械技師 キース・デイヴィッド 屋良有作
ヴァンス・ノリス 地球物理学者 チャールズ・ハラハン 細井重之
ジョージ・ベニングス 気象学者 ピーター・マローニー 寺島幹夫
クラーク 犬飼育係 リチャード・メイサー 藤城裕士
フュークス 生物学助手 ジョエル・ポリス 納谷悟朗
ウィンドウズ 無線通信技師 トーマス・G・ウェイツ 池田秀一
コンピューター(音声) エイドリアン・バーボー 吉田恵美子
ノルウェー人 ラリー・J・フランコ 宮川洋一
演出:岡本知、翻訳:鈴木導、効果:PAG、調整:高橋久義、配給:日本MCA、解説:高島忠夫、製作:グロービジョン
  • ユニバーサル思い出の復刻版DVD・BDに収録。収録されている吹替はリピート放送のもので、吹替が初回放送より約2分カットされている。

スタッフ編集

作品解説編集

侵略SFの新古典編集

遊星よりの物体X』(1951年)のリメイクというよりも、原作となった短編小説『影が行く』に対する忠実な映像化となっている。「通信機能が麻痺してしまった南極越冬基地」という閉鎖空間において、「誰が人間ではないのか、自分が獲り込まれたのかすらも分からない緊迫した状況下における、隊員達の心理状態と、難局を打開しようとする姿」を描き、最後まで明快な結末は見えない。原作と大きく異なる部分は「物体Xの形状」「登場人数」「生きものを退治する方法」などである。また、映画では地球外生物の同化する様子、増殖し擬態する生態をSF的理論の範囲内でまとめ、説明も行っている。

製作の経緯編集

1975年、ユニバーサル映画のスチュアート・コーエンが友人のカーペンターに『遊星よりの物体X』のリメイク企画を打診。2年後、『エイリアン』のヒットによって企画にゴーサインが出たものの、脚本は難航した。1981年初頭、プロダクションアート担当のデイル・キュイパース(Dale Kuipers)(『おかしなおかしな石器人』)がクリーチャーデザインを進める途中で事故に遭い離脱、後を引き継いだロブ・ボッティンがデザインを大幅に変更した。撮影は同年8月頃から行われたが、特殊効果の作業は本編終了後も続き、それは1982年4月にまで及んだ。

特撮編集

細胞単位で生存し、あらゆる生物を同化する生きものの姿を、ありふれたモンスター的なデザインとはせず、地球上の様々な生物やその一部の形状を混ぜ合わせたおぞましいものにまとめ、CGによるVFXが全盛の現在においても全く見劣りしないリアリティーを与えたロブ・ボッティンの造形は、後のSFXやクリーチャーデザインに多大な影響を与えた(DVDには特典映像として、デイル・キュイパースによる「モンスター的な宇宙生物のデザイン」が収録されている)。 小屋の中で変容する「犬」は1982年初頭までデザインも決まっておらず、時間的な都合からスタン・ウィンストンの率いるチームによって製作された。

配役編集

ノルウェー人はノーバート・ウェイサーと、本作アソシエイト・プロデューサーのラリー・フランコによって演じられた。フランコは事前にノルウェー語のレクチャーを受けなかったため適当に喋っており、台詞はノルウェー語ではない。吹替版ではノルウェー人の声も独自の台詞をつけて吹き替えられていた(声優はコッパー役の宮川洋一が兼任)。

カットされたシーン編集

終盤に床板を突き破って出現するブレア・モンスターは、当初ストップモーション・アニメで撮影されていたが、カーペンター監督の評価基準に合致せず、アニマトロニクスで作り直された結果、断片的な採用となった。暗闇に消えたノールスについては、巨大化したブレアに吸収される様子が絵コンテで残っており、当初の構想を伝えている。なお、どちらもDVDに映像特典として収録。

ラスト編集

ラストシークエンスには息をしていないように見える人物が登場し、生きものに同化されたことを示す演出だという説が出たが、監督はこれを「照明の加減で息が見えにくかっただけ」と否定している(ベニングスに同化した生きものの白い息は目視で確認できる)。

なお、撮影監督のディーン・カンディは2016年9月に4Kリマスター版発売(日本では未定)に合わせたBLUMHOUSE.COMのインタビューにおいて、生きものに同化された人物とそうでない人物を見分けるヒントとしてライティングの工夫を明かした。「生きものを表現するために眼に光が入らないよう、通常の人間は生命の輝きとして眼に光点を入れるようにした」というものである。

ゲームの発売編集

本作の続編として、2003年アメリカ合衆国のBLACK社からPC及びPS2用ソフト『遊星からの物体X episodeII』が発売された。日本語版はコナミ社が発売している。

ファーストコンタクト編集

数度の頓挫と公開延期を経て2011年秋に『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(原題:The Thing)が公開された。

内容は、1951年、1982年作品のリメイクではなく、ノルウェー隊が3日前に「物体X」の円盤を発見し、「物体X」の蘇生と隊の全滅、生き残った隊員が犬に姿を変えて逃げ出した「物体X」をヘリコプターで追跡するまでが語られる前日譚(prequel)である[2]。共同プロデューサーは1982年版で製作総指揮を務めたローレンス・ターマン。オランダのCFディレクターで劇映画は初監督となるマティス・ヴァン・ヘイニンゲンJr.がメガホンを取り、ジョエル・エドガートンウルリク・トムセンといった男性隊員役に加えて女性もメアリー・エリザベス・ウィンステッドとキム・バッブス(カナダの女優/声優)の2名が出演している。1982年版で「犬」の効果を担当したウィンストンのもとで『エイリアン2』などに携わったアレック・ギリスとトム・ウッドラフJr.率いるアマルガメイテッド・ダイナミクスが、「物体X」の造形・操演を手掛けた。音楽は『エイリアン』のジェリー・ゴールドスミスに師事したマルコ・ベルトラミが1980年代を意識したオリジナル楽曲を提供しているが、終盤にはエンニオ・モリコーネによる1982年版のエンディング曲が使用されている。

1982年版でモンスター製作を手掛けたロブ・ボッティンは、撮影にほとんど常時立ち会ってモンスタープロップの調整にあたり、プロップをゼラチンと血糊で覆ったり、焦点を外して撮影したり、逆光で映させるなど照明を暗くすることで、作り物に映ることを避け、脚本にも「物体の浸潤には寄生主と暗中の接触が必要」という設定を盛り込ませていたが、今作ではアニマトロニクスやカーペンター監督が使用を避けたモンスタースーツといった1982年当時も使用可能だった古典的なSFXテクニックを、CGIプロダクションのイメージエンジンによるデジタル加工でスケールアップする手法(背景やプロップの色彩調整はもちろん、プロップを直接炎上させていた1982年版と異なり、炎を任意の演出規模で後付けできる)を採用しており、製作上の制約が減ったために一部の設定が撤回されている。その代わり、同化時にピアスや歯の詰め物など体内の無機物は複製できずに排出されるという設定が盛り込まれた。

日本ではなかなか配給が決まらず[3]インターネット上では『遊星からの物体X ビギニング』という仮題で呼ばれていたが、本国でDVD/BDが発売された後の2012年8月4日に上記題名で小規模ながら公開が始まり、日本版DVD/BDが2013年1月9日に発売された後も限定的に上映が続いた。

トリビア編集

  • 冒頭で基地内を歩き回り、犬小屋で変形する犬を演じたハスキー犬ジェドは後に『ホワイトファング』等に出演している。
  • ドクター・コッパーがノリスの腹の生きものに両腕を食い千切られるシーンはジョー・キャロンという両腕のない役者にコッパー役のリチャードの顔に似せた特殊マスクをつけて撮影した。
  • 顔の無い人物をモチーフにしたポスターはドリュー・ストルーザン(Drew Struzan)によるもの。本作同様異世界からのモンスター襲来を描く2007年の映画『ミスト』では主人公の部屋に本作のポスターが飾られている。

参考資料編集

  1. ^ DVD特典付属対訳冊子
  2. ^ 1982年版でラリー・フランコが演じたノルウェー隊員の名前が身に着けていた認識票から判明する場面は撮影されたが、カットされて本編に残らなかった(特典映像としてDVDに収録)ため、今作では別の名前が与えられている。
  3. ^ 本国の配給は同じユニヴァーサルが行い、30年近く経過して作られた作品にもかかわらず最新版ではなく1990年代ヴァージョンのユニヴァーサル・ロゴを用いるという凝った幕開きとなるが、日本の配給はジェネオン・ユニバーサルではなくポニーキャニオンが行ったため、この趣向は意味を減じることになった。

外部リンク編集