運動療法

身体の全体または一部を動かすことで症状の軽減や機能の回復を目指す療法

運動療法(うんどうりょうほう、英語: Exercise therapy)とは、身体の全体または一部を動かすことで症状の軽減や機能の回復を目指す療法のこと[1]理学療法士が行う治療では、日常生活活動訓練、物理療法と並ぶ治療法のひとつである。

糖尿病における運動療法編集

アメリカ疾病制御予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)は、糖尿病患者に対して運動を薦めており、運動に励むことで以下のような効果が得られる、と主張している[2]

  • インスリン感受性を高める
  • 血糖値の制御
  • 体重を減らす
  • 気分が良くなる
  • よく眠れる
  • 記憶力が向上する
  • 血圧の制御
  • LDLコレステロールを減らし、HDLコレステロールを増やす

糖尿病患者の場合、低血糖発作に気を付ける。インスリンを注射している患者の場合、血糖値を確認する必要がある[2]。低血糖発作は、運動中、運動を終えた直後、その翌日に起こる場合もある[2]。空腹感、疲労感、体に力が入らない、震える、イライラする、不安である、冷や汗が出る…これらの症状がある場合、低血糖発作の可能性があり、頭痛や意識消失を来たす場合もある。運動の前に血糖値を測定し、100mg/dl以下であれば、軽食を摂り、低血糖発作に備えてブドウ糖を用意する[2]。運動中は水分を充分に摂取する[2]

糖尿病慢性期合併症が生じた場合、運動療法は中止する。

なお、運動していても、炭水化物を食べている限り高血糖は防げず(高血糖を惹き起こす最も一般的な原因は炭水化物の摂取にある[3])、インスリン感受性は運動を終えた途端に低下する(インスリン抵抗性が高くなる)[4]。インスリン抵抗性は運動では防げない。

「インスリン感受性が低い」ということは、「インスリン抵抗性が高い」(インスリンの効き目が悪い)状態を意味する[5]

うつ病における運動療法編集

英国国立医療技術評価機構診療ガイドラインでは、軽中度のうつ病患者に対しては、認知行動療法と並んで運動療法を選択肢の一つとして推奨している[6]。患者が運動療法を選択した場合は、訓練を受けたコーチの下でグループ単位で行わなければならない、また1回あたり45分-1時間、週3回を10-14週間程度としなければならないとしている[6]

2012年日本うつ病学会が公表した指針では「本来軽症に限った治療法ではない」と断ったうえで、軽症のうつ病への適用について「運動を行うことが可能な患者の場合、うつ病の運動療法に精通した担当者のもとで、実施マニュアルに基づいた運動療法が用いられることがある。一方で運動の効果については否定的な報告もあり、まだ確立された治療法とは言えない」とした[7]

2013年に発表されたコクラン・ライブラリシステマティックレビューによれば、運動の効果は心理療法や薬物療法と同程度である[8]

出典編集

  1. ^ Exercise therapy”. MeSH. 2015年8月31日閲覧。
  2. ^ a b c d e Be Active Centers for Disease Control and Prevention
  3. ^ Effect of high carbohydrate intake on hyperglycemia, islet function, and plasma lipoproteins in NIDDMA Garg, S M Grundy, M Koffler. PMID 1468287 doi:10.2337/diacare.15.11.1572
  4. ^ Blood Glucose Levels of Subelite Athletes During 6 Days of Free LivingFelicity Thomas, Chris G Pretty, Thomas Desaive, J Geoffrey Chase. PMID 27301981 doi:10.1177/1932296816648344
  5. ^ Dr. Frank Aieta, ND (2019年10月13日). “How You Can Optimize It for Better Health”. ruled.me. 2021年3月18日閲覧。
  6. ^ a b 英国国立医療技術評価機構 (2009-08). CG90: Depression in adults (Report). Chapt.1.4.2. http://www.nice.org.uk/CG90. 
  7. ^ 日本うつ病学会; 気分障害のガイドライン作成委員会 (2012-07-26) (pdf). 日本うつ病学会治療ガイドライン (Report) (2012 Ver.1 ed.). http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/mood_disorder/img/120726.pdf. 
  8. ^ Cooney GM, Dwan K, Greig CA, Lawlor DA, Rimer J, Waugh FR, McMurdo M, Mead GE (2013). “Exercise for depression”. Cochrane Database of Systematic Reviews (9): CD004366. doi:10.1002/14651858.CD004366.pub6. 

参考文献編集

  • 『糖尿病治療ガイド2008-2009』日本糖尿病学会、文光堂、2008年。ISBN 9784830613708

関連事項編集

外部リンク編集