野獣の青春』(やじゅうのせいしゅん)は、1963年日本ハードボイルドアクション映画。監督は鈴木清順、出演は宍戸錠渡辺美佐子など。大藪春彦の小説『人狩り』を原作とし、鈴木清順監督が「清順美学」と呼ばれる奇抜な作風を開花させて注目を浴びるきっかけとなった作品である[1]

野獣の青春
Youth of the Beast
監督 鈴木清順
脚本 池田一朗
山崎忠昭
原作 大藪春彦
人狩り
出演者 宍戸錠
音楽 奥村一
撮影 永塚一栄
編集 鈴木晄
製作会社 日活
配給 日本の旗 日活
公開 日本の旗 1963年4月21日
上映時間 92分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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ストーリー 編集

ヤクザにはめられて刑務所送りになっていた元刑事のジョーこと水野錠司は、かつての同僚で恩のある刑事・竹下が愛人と心中したように見せかけられて殺されたことを知り、事件の真相を探るとともに復讐を誓う。事件に関与していると見られるやくざ組織・野本興業に潜り込むと、野本と敵対する三光組とも通じることで互いを煽って相討ちを目論む。一方、ジョーはコールガール組織の元締めで野本の「6番目の女」が事件の鍵を握っていることを知る。

そんな中、ジョーの目論見通りに野本興業と三光組が激突し、激しい銃撃戦が起きる。その一方でジョーが三光組とも通じていることを野本に気付かれてしまう。ところが、そこに三光組の社長(組長)である小野寺が爆弾ごと車で突っ込み、野本の屋敷が吹っ飛ぶ。かろうじて命拾いをした野本とジョーは激しい格闘を繰り広げる。その結果、ジョーに追いつめられた野本は竹下の妻・久美子が野本の「6番目の女」であることを白状する。その直後、野本はジョーを慕うチンピラ三波に撃ち殺され、三波も死ぬ。

竹下の家に踏み込んだジョーは、野本の弟でコールガール組織を仕切っている秀夫を問い詰め、事件の真相を聞き出す。すべては久美子が企んだものだった。実は、久美子は野本の妹で秀夫の姉であり、警察の情報を探るために竹下と結婚したが、自分の正体に気付かれたために竹下を殺したのだ。そして野本と秀夫は久美子に頼まれて死体を運んだだけだったのである。

シラを切り、野本に脅されてやっただけで自分も被害者だと言い逃れをする久美子を、ジョーは信用したフリをして巧みに秀夫のキレるポイントを付かせることで秀夫に殺させる。

疲れ切ったジョーは、ジョーをよく知る捜査4課の刑事・広川に電話する。そして、秀夫が語る事件の真相を録音したテープを聞かせる。

キャスト 編集

  • 水野錠次(ジョー): 宍戸錠 - 元刑事の風来坊。
  • 竹下久美子: 渡辺美佐子 - ジョーの元同僚・竹下刑事の未亡人。
  • 野本秀夫: 川地民夫 - コールガール組織を仕切る男。サディスト。
  • 野本幸夫: 小林昭二 - やくざ組織・野本興業社長。サディスト。
  • 小野寺信介: 信欣三 - 野本と対立する三光組の社長。
  • 小沢惣一: 金子信雄 - 野本興業専務。野本の片腕。
  • 三波五郎: 江角英明 - 野本興業のチンピラ。ジョーに心酔する。
  • 広川刑事: 鈴木瑞穂 - 警視庁捜査4課の刑事。

後の作品への影響 編集

2012年に米国ライオン・ロック・プロダクションと日活の共同制作で、ジョン・ウー監督により中国でリメイクされる企画が発表された[2]。ウー監督は清順作品に多大な影響を受けたという[3]。ただし、ライオン・ロック・プロダクションとジョン・ウーの『The Crossing ザ・クロッシング』が興行的に振るわなかったことから両者の関係は2015年に破綻し、同プロダクションは解散した[4]

出典 編集

  1. ^ 野獣の青春”. WOWOW. 2013年4月30日閲覧。
  2. ^ 『映画音楽太郎主義 サウンドトラックの舞台ウラ』岩代太郎、全音楽譜出版社、2016年4月、「人間の感情に寄り添った音楽」の項
  3. ^ “「君よ憤怒の河を渉れ」をリメイクしたジョン・ウー監督が亡くなった鈴木清順監督作品『野獣の青春』のリメイク「必ず実現」とコメント”. Cinefil. (2017年3月1日). https://cinefil.tokyo/_ct/17047227 2020年5月23日閲覧。 
  4. ^ Shackleton, Liz (2017年7月1日). “Terence Chang talks China market challenges and new ventures” (英語). Screen Daily. https://www.screendaily.com/features/interviews/terence-chang-talks-china-market-challenges-and-new-ventures/5119574.article 2020年5月23日閲覧。 

関連項目 編集

外部リンク 編集