闇の魔神』(やみのまじん、暗黒界の悪霊、原題:: The Dark Demon)は、アメリカ合衆国のホラー小説家ロバート・ブロックが1936年に発表した短編小説。ロバート・ブロックによるクトゥルフ神話作品の1つで、日本では青心社の文庫に収録されているほか、ブロックの短編集『暗黒界の悪霊』に収録されており、意訳邦題で表題作である。

東雅夫は『クトゥルー神話辞典』にて「ラヴクラフトを連想させる怪奇作家エドガー・ゴードンを蝕む<暗きもの>の恐怖を描いた作品」[1]と解説している。

本作品に登場する<暗きもの>は、作中で主人公がナイアーラトテップ伝説との関係を推測する言及があり、明確な答えは出ていないものの、二次資料などにおいてほぼナイアーラトテップの化身体として扱われている。また、ラヴクラフトをモデルとした人物を登場させて殺してしまうという、クトゥルフ神話では類例が幾つかあるパターンの作品でもある。

あらすじ編集

作家である主人公は、同業者のエドガー・ゴードンと親しくなり、彼が夢を通じて外宇宙を見ていることや、それをもとに小説を書いているという秘密を知る。だが、ある時期からゴードンの作風が一般受けしないほど恐怖じみたものに変化し、彼の交流相手も出版社や友人からオカルティスト中心に変わる。

主人公と再会したゴードンは、発表するためではなく、夢の世界の生物からの指示で小説を書いていることを明かす。続いて、「自分は異世界の知性体である<暗きもの>の使徒となり、本を書き上げてしかるべき者に配布する」と主張し出し、「自分はメシアとなり<暗きもの>と一体化する」と締めくくり、主人公を心配させる。

それから数週間後のヴァルプルギスの夜、ゴードンを説得することを決意した主人公は、拳銃を忍ばせて彼の家に赴く。 主人公がゴードン宅に着いた時、家の照明は消えていた。主人公が部屋の灯をつけようとしたそのとき、稲妻の閃光が部屋を照らし、書斎で眠っていたゴードンは魔物に変貌していた。彼の主張が事実だと理解した主人公は、眠る彼の射殺を試みた後、原稿を自宅へ持ち出して焼却する。

数週間後に警官が立ち入ったとき、死体は見つからず、ゴードンは失踪したとみなされ、主人公が殺人罪に問われることもなかった。

主な登場人物編集

わたし
語り手。幻想文学作家。
エドガー・ヘンキスト・ゴードン
恐怖小説作家で、『妖魅の樋口』『夜の魍魎』『混沌の魂』といった作品を執筆している。博学で文通好き。
作品をから書き上げるという手法を取っており[注 1]、夢を通じて禁断の文献に記されるものと同じ光景を見ていた。
真のホラーは怪物そのものの観点から語るべきと持論を説き、一人称を非人間で執筆するようになる。<暗きもの>に言い含められ、常軌を逸した思想に呑まれていく。
<暗きもの>
全身真っ黒な柔毛に覆われ、豚のような鼻、緑色の目、野獣の鉤爪と牙を備える。ゴードンの夢に現れて接触し、憑依を試みる。
悪魔アシュマダイにたとえられ、<悪魔の使者>と異名される。主人公はナイアーラトテップ伝説や魔女集会の魔王との関連を推測する。
二次資料『エンサイクロペディア・クトゥルフ』や『マレウス・モンストロルム』においては、「闇の魔神」Dark Demonと記され(作品タイトルと同じ)、ナイアーラトテップの化身体とされる。[2]

収録編集

関連作品編集

  • ナイアーラソテップ (小説) - ラヴクラフトの作品。ナイアーラトテップの初出作品でもある。ラヴクラフトは当作品および登場人物ナイアーラソテップを夢から書き起こした。

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ このスタンスについて作中で主人公は、エドワード・ルーカス・ホワイト英語版サミュエル・テイラー・コールリッジと並んでラヴクラフトを引き合いに出している。

出典編集

  1. ^ 学習研究社『クトゥルー神話辞典第四版』483ページ
  2. ^ 新紀元社『エンサイクロペディア・クトゥルフ』202ページ。新紀元社『マレウス・モンストロルム』224ページ。