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阪急8300系電車(はんきゅう8300けいでんしゃ)は、阪急電鉄1989年平成元年)に導入した通勤形電車である。

阪急8300系電車
阪急8300系誕生30周年復元装飾列車
阪急8300系誕生30周年復元装飾列車
基本情報
運用者 阪急電鉄
製造所 アルナ工機
製造年 1989年 - 1995年
製造数 84両
運用開始 1989年5月
投入先 (阪急電鉄)京都本線千里線
大阪市営地下鉄堺筋線
主要諸元
編成 2両・6両・8両編成
軌間 1,435 mm
電気方式 直流1500V
架空電車線方式
最高運転速度 阪急線内 115 km/h
堺筋線内 70 km/h
設計最高速度 130 km/h
起動加速度 阪急線内 2.6 km/h/s(65km/hまで)
堺筋線内 2.8 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.2 km/h/s
車両定員 【先頭車】
135(座席48・立席87)
【中間車】
145(座席54・立席91)
全長 18,900 mm
全幅 2,850 mm
全高 4,095 mm
車体 アルミニウム合金
台車 S形ミンデンドイツ式ダイレクトマウント空気ばね台車(8300F~8303F, 8310F~8312F, 8330F, 8331F)
M車:FS-369A・T車:FS-069A
モノリンク式ボルスタレス台車(8304F, 8313F~8315F, 8332F, 8333F)
M車:SS-139A・T車:SS-039A 
主電動機 かご形三相交流誘導電動機
全閉内扇式かご形三相誘導電動機
主電動機出力 170kW(形式:TDK6125-A)
190kW(形式:TDK6128-A[1](8302F・8330F+8310F・8315F))
駆動方式 TD平行カルダン駆動方式
歯車比 5.25
制御方式 GTOサイリスタ素子VVVFインバータ制御(8302F・8330F+8310F・8315F以外)
IGBT素子VVVFインバータ制御(8302F・8330F+8310F・8315F)
制御装置 RG619-A-M(8300F, 8301F)
RG637-A-M
(8303F, 8304F, 8311F~8314F, 8331F~8333F)
RG6026-B-M[1](8302F, 8315F, 8310F, 8330F)
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ (HRDA-1)
直通予備空気ブレーキ
保安装置 AF軌道回路方式ATS(パターン式)
WS-ATC
デッドマン装置
備考 全長・全幅・全高および編成重量の数値は1次車のもの
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本項では、解説の便宜上梅田方先頭車+F(Formation=編成の略)を編成名として記述(例:8302以下8両編成=8302F、8333以下2両編成=8333F)する。

目次

概要編集

本系列は、8000系京都線仕様、地下鉄堺筋線直通対応車として製造された。営業開始は8000系と同じ1989年だが、8000系が営業開始した1月1日よりもかなり遅れた。

車体・接客設備編集

車体は神宝線8000系と概ね共通するが、中津駅の神戸本線と宝塚本線の離線間隔の問題が発生したことから規格統一が先送りとなり、車体幅は7300系と比較して50mm拡大され、3300系・5300系と同じになった[2]。車内の濃色の木目調化粧板、車椅子スペースの設置、側窓のパワーウインドウ化などは8000系と同一である。8000系の一部編成に導入されているクロスシートは設置されていない。

前面形状は初期形(8300F - 8302F・8310F - 8312F・8330F・8331F)は額縁スタイルで製造された。1991年(平成3年)増備の8311F6連[3]からは前面の飾り帯が廃止され、後に既存の編成からも撤去された。

8000系と8300系の額縁形状については、他形式と比較して風圧が大きいとの指摘があり、8300系運用開始後の大山崎駅のJRとのアンダークロス付近では、沿線からの苦情もあったという[4]。同じ額縁スタイルの地下鉄60系を借用して比較したが、60系では問題はないとの結果であった[4]。これを受けて、以降の8000系・8300系の増備車では前面形状を変更した。

1993年(平成5年)増備の8303Fから前面が「く」の字に傾斜した形状に変更され[5]、前面の表示幕が大型化されている。1995年(平成7年)増備の8304Fからは前面窓が下部に拡大され、前面部の車両番号表記も電照式になった[5]

最終増備車の8315Fは、扉上部にLED式の車内案内表示器を設置し、8040形のようにFM大阪のニュース(見えるラジオ)が導入当初から表示されていた。日除けもアルミ製のよろい戸から巻き上げ式カーテンに変更された[6]。また、側面方向幕の位置が既投入車より若干高く設置されている。なお、後に8315Fには営業運転開始後に8304Fから8904・8984を編入している。

1992年(平成4年)増備の8312Fでは、阪急の車両で初めて地下鉄堺筋線用の自動放送装置が取り付けられた。他編成にも設置されたが、8300F・8301Fは構造上取付不可能なため、地下鉄線内では車掌の肉声放送を行う。同じく堺筋線直通用の3300系5300系7300系にも設置された。自動放送装置は当初磁気テープ式であったが、地下鉄の車両より早く音声合成式に交換している。

主要機器編集

 
運転台

制御方式はVVVFインバータ制御で、東洋電機製造製のGTOサイリスタ素子インバーター装置を搭載した。初期車それ以降の車両はインバータ装置の形状や磁励音が異なる。8300F・8301Fは東洋製GTO初期型の制御装置を採用し[7]、それ以外の車両については東洋後期形の標準的なものである[8]

ブレーキは電気指令式ブレーキのHRDA-1である[6]。冷房装置は12,500kcal/h×3に増強された[6]

台車は初期車ではS型ミンデン台車を採用し、FS369A(電動台車)、FS069(付随台車)を装着する。8331F(2連)の8331・8451の台車は、5200系の発生品を使用する。後期車はモノリンク式ボルスタレス台車が採用され、8332FでSS139(電動台車)とSS039(付随台車)を導入、8304FよりSS139A(電動台車)とSS039A(付随台車)が本格採用された[5][9]。また、C#8332のみ阪急で唯一ヨーダンパが搭載されたが、後に撤去されている。

パンタグラフは当初は下枠交差式を採用、最終増備車の8315Fではシングルアーム式となった[10]

形式編集

2017年9月に形式呼称が変更された[11]。左が旧形式、右が新形式(細かい枝分けは、各項目内に記述)。
  • 8300形/Mc8300形(8300 - 8304・8310 - 8315・8330 - 8333)15両
    • 梅田方の制御電動車。主電動機、主制御器およびパンダグラフを搭載する。投入途中に制御機器、前面、さらにはパンダグラフが変更されたため、本形式は様々なバリエーションがある。詳細は投入途中の変更点の節を参照。新形式呼称では、ミンデン台車装備車はMc8300形、ボルスタレス台車装備車はMc8300-1形、ボルスタレス台車装備・制御装置更新車はMc8300-2形(2018年に可とう歯車継手変更を受けてMc8300-4形に再変更)、ミンデン台車装備・制御装置更新車はMc8300-3形、ボルスタレス台車装備・制御装置未更新・可とう歯車継手変更車はMc8300-5形に枝分かれしている。
  • 8400形/Mc8400形(8400 - 8404・8410 - 8415)11両
    • 河原町方の制御電動車。主電動機および主制御器を搭載する。新形式呼称での枝分けの仕方(ハイフンを付ける基準)は、Mc8300形と同様。
  • 8450形/Tc8450形 (8450 - 8453) 4両
    • 増結用2両編成の河原町方制御車。補助電源装置 (SIV) および空気圧縮機を搭載する。新形式呼称では、8450がTc8450形、8451はTc8450-1形、8452・8453はTc8450-2形となる。
  • 8900形/M8900形 (8900 - 8904) 5両
    • 梅田方の中間電動車。主電動機および主制御器を搭載する。新形式呼称では、ミンデン台車装備車はM8900形、ボルスタレス台車装備・制御装置更新車はM8900-1形(2018年に可とう歯車継手変更を受けてM8900-3形に再変更)、ミンデン台車装備・制御装置更新車はM8900-2形となる。なお、新形式呼称制定の時点で、ボルスタレス台車装備・制御装置未更新の車両は消滅している。
  • 8850形/T8850形(8850 - 8854・8860 - 8865・8870 - 8874・8880- 8885)22両
    • 梅田方の中間付属車。SIVおよび空気圧縮機を搭載する。新形式呼称では、ミンデン台車装備車はT8850形、ボルスタレス台車装備車はT8850-1形となる。
  • 8950形/T8950形(8950 - 8953・8960 - 8965・8980 - 8984)15両
    • 中間付随車。走行に必要な機器は搭載しない。新形式呼称での枝分けの仕方は、T8850形と同様。
  • 8800形/M8800形(8800 - 8804・8810 - 8815)11両
    • 河原町方の中間電動車。主電動機、主制御器およびパンダグラフを搭載する。新形式呼称での枝分けの仕方は、Mc8300形・Mc8400形と同様。

製造編集

車両番号は原則として、8連・7連で建造された編成は8300番台、6連で建造された編成は8310番台、2連で建造された編成は8330番台となっている。

← 大阪
京都 →
竣工
Mc1 M2 T1 T2 T2 T1 M1 Mc2
8300 8900 8850 8950 8980 8870 8800 8400 1989年5月[2]
8301 8901 8851 8951 8981 8871 8801 8401 1989年9月[2]
8302 8902 8852 8952 8982 8872 8802 8402 1993年3月[2]
8303 8903 8853 8953 ---- 8873 8803 8403 1993年9月[2]
---- ---- ---- ---- 8983 ---- ---- ---- 1994年6月[2]
8304 8904 8854 8954 8984 8874 8804 8404 1995年1月[2]
Mc1 Tc Mc1 T1 T2 T1 M1 Mc2
8330 8450 8310 8860 8960 8880 8810 8410 1991年3月[2]
---- ---- 8311 8861 8961 8881 8811 8411 1991年12月[2]
---- ---- 8312 8862 8962 8882 8812 8412 1992年2月[5]
8331 8451 ---- ---- ---- ---- ---- ---- 1993年1月[5]
8332 8452 8313 8863 8963 8883 8813 8413 1994年1月[5]
---- ---- 8314 8864 8964 8884 8814 8414 1994年7月[5]
8333 8453 ---- ---- ---- ---- ---- ---- 1994年9月[5]
---- ---- 8315 8865 8965 8885 8815 8415 1995年10月[5]

改造編集

 
前面改造を施した8300F
 
工場公開時の記念撮影用に作られた8302の前頭部モックアップ 2011.5.8 正雀工場にて

8300Fの大阪方の8300と8301Fの京都方の8401は、改造により腰部が埋められ[6]空気抵抗に対する実験的要素で前面下部の灯火類周りを一段高くした形状となっている。

2015年より前照灯がLEDに交換された編成が発生し、全編成の交換が完了した。

2014年10月から運用を離脱していた8315Fは、VVVFインバータ装置と主電動機のASSY交換が行われ、2015年5月18日に本線試運転が行われた[12]。1300系や7300系VVVF更新車とは異なり1C4M×1群制御であるが、同一のユニットを採用する事で機器の共通性を確保している[13]。その後も8302F,8330F+8310Fも同様の交換がなされている。

阪急ミュージアムに移された5251の代わりに工場公開時の記念撮影用に8302の前頭部モックアップが製作されている。

運用編集

登場当時は8両固定編成のみで、運用も京都線の急行のみに限定されていたが、2019年現在では8両編成は京都線内の特急通勤特急快速急行快速準急普通千里線大阪市営地下鉄堺筋線の普通・堺筋準急に使用されている。

8両編成のうち2+6両編成の6両側は、多客期には嵐山線で通常運用されている4両編成の6300系の代走として線内折り返し運用に充当されている。

2019年のダイヤ改正までは土休日運行の快速特急京とれいん」が検査などで運用につけない場合は代走に入っていた。ダイヤ改正以降は、改正初日から2月17日まで快速特急A「京とれいん」が検査のため、本系列が代走についており、快速特急についても「京とれいん 雅洛」が営業運転を開始する2019年3月23日まで本系列が代走についていた[14][15]。快速特急Aについては、本系列による代走であっても十三駅は通過扱いとなる。

8300系は総数84両が阪急電鉄からケイマン諸島リース会社であるS&H Railway Co.,Ltd.に、2002年(平成14年)3月29日付けで売却され、そこからのリースによって使用するようになっていた[16]。その後、2007年の契約満了後に阪急電鉄に買い戻されている[17]

ラッピング列車編集

 
京都ラッピングの8313F「古都」
(2015年1月31日 梅田駅)

8331F+8312Fは、2008年12月1日から2009年7月31日までの間、先頭車の車体側面までラッピングが施され、車内広告も環境をテーマにしたものが掲載されている「エコトレイン 未来のゆめ・まち号」として運行された。

8332F+8313Fは2015年1月17日から2017年11月まで京都方面の名所旧跡を散りばめたラッピングが行われていた。2015年2月22日までは「京とれいん」に運用される6300系6354Fが検査入場で運用から外れたため、その代走として梅田駅 - 河原町駅間の快速特急の運用に入っていた[18]。2015年3月には一般公募で「古都」という愛称が付けられた[19]。当初は2016年3月までの運行予定だったが、その後、神戸線、宝塚線にもラッピング列車が登場し、両線のラッピング列車に運行期間を合わせる形で2017年11月まで期間が延長された。

2019年1月19日から4月16日まで、神戸線の8000Fをステッカーにて、前面窓下飾り帯・Hマーク・旧社章を貼り付け、デビュー当時のスタイルに復元し、両先頭車にヘッドマークを掲げた記念列車として運行していたが、好評のため、記念列車の第2弾が運行されることとなり、京都線にも登場することが決まった。2019年5月24日から11月1日までの予定で、8300Fに前回同様の装飾が行われている。なお、梅田寄り先頭車の8300は前面改造がなされているが、そのままの状態で飾り帯が装飾される。ヘッドマークは神戸線・宝塚線とは異なるデザインで運行される。ヘッドマーク掲出は9月30日まで行われ、それ以降は純粋なデビュー当時のスタイルで運行する予定[20][21][22]

編成編集

2012年4月1日現在[23]。cは中間運転台の位置を指す。

備考
Mc1 M2 T1 T2 T2 T1 M1 Mc2
8300 8900 8850 8950 8980 8870 8800 8400
8301 8901 8851 8951 8981 8871 8801 8401
8302 8902 8852 8952 8982 8872 8802 8402
8303 8903 8853 8953 8983 8873 8803 8403
8315 8904 8865 8965 8984 8885 8815 8415
Mc1 Tc Mc1 T1 T2 T1 M1 Mc2
8330 8450 c c 8310 8860 8960 8880 8810 8410
8331 8451 c c 8312 8862 8962 8882 8812 8412
8332 8452 c c 8313 8863 8963 8883 8813 8413
8333 8453 c c 8314 8864 8964 8884 8814 8414
Mc Tc Mc1 T1 T2 T1 M1 Mc2
7326 7456 c c 8304 8854 8954 8874 8804 8404
7325 7455 c c 8311 8861 8961 8881 8811 8411

脚注編集

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  1. ^ a b 東洋電機技報 第134号 阪急電鉄株式会社8300系更新車両・7300系更新車両用電機品 - 東洋電機製造
  2. ^ a b c d e f g h i 山口益生『阪急電車』216頁。
  3. ^ この編成の導入により、2800系の置き換えが本格化した。
  4. ^ a b 山口益生『阪急電車』214頁。
  5. ^ a b c d e f g h i 山口益生『阪急電車』217頁。
  6. ^ a b c d 山口益生『阪急電車』218頁。
  7. ^ 広島電鉄3900形など同時期に東洋電機製造製のGTO-VVVFインバータ制御装置を採用した各車両に類似する音である。
  8. ^ 東京急行電鉄1000系名古屋鉄道3500系などに類似する磁励音である。
  9. ^ これに伴い車両形式も8300形→8304形、のように変更されている。
  10. ^ 『日本の私鉄 阪急』1998年、53頁。
  11. ^ 『鉄道ピクトリアル』2018年10月号の阪急8000系特集より。
  12. ^ 阪急8300系8315編成がVVVF換装後の試運転を実施 - 『鉄道ファン』交友社 railf.jp鉄道ニュース 2015年5月19日
  13. ^ 東洋電機製造技報 第131号
  14. ^ 阪急京都線で「快速特急A」の運転開始railf.jp
  15. ^ 1月19日京都線ダイヤ改正後の京とれいん「快速特急A」「快速特急」ご案内
  16. ^ 固定資産の譲渡に関するお知らせ (PDF) インターネットアーカイブ
  17. ^ 日本の鉄道車両がケイマン諸島で資産になっていた過去 NEWSポストセブン(2016年4月17日)
  18. ^ 阪急8300系に京都名所旧跡ラッピングrailf.jp
  19. ^ 阪急、京都線8300系を名所旧跡でラッピング…来年1月17日から運行開始
  20. ^ 8000系車両誕生30周年記念列車・第2弾を運行”. 阪急電鉄 (2019年4月22日). 2019年4月22日閲覧。
  21. ^ 阪急「8000系車両誕生30周年記念列車」第2弾の運転開始railf.jp
  22. ^ 阪急8300系による「誕生30周年記念列車」運転開始railf.jp
  23. ^ 山口益生『阪急電車』238頁。

参考文献編集

  • 阪急電鉄車両部発行カタログ「HANKYU 8000」1989年/1990年(改訂版) 両方とも8300系の記載もされている。
  • 山口益生『阪急電車』JTBパブリッシング、2012年。ISBN 4533086985