防衛装備庁
防衛装備庁(ぼうえいそうびちょう、英: Acquisition, Technology & Logistics Agency、略称: ATLA)とは、日本の行政機関のひとつ。装備品等の開発及び生産のための基盤の強化を図り、研究開発・調達・補給・管理の適正かつ効率的な遂行並びに国際協力の推進を図ることを任務とする防衛省の外局である。日本語略称・通称は、装備庁(そうびちょう)。
防衛装備庁 ぼうえいそうびちょう Acquisition, Technology & Logistics Agency | |
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![]() | |
![]() 防衛装備庁が設置されている防衛省庁舎D棟(右) | |
役職 | |
長官 | 深澤雅貴 |
防衛技監 | 市橋孝浩 |
組織 | |
上部組織 | 防衛省 |
内部部局 |
長官官房 装備政策部 プロジェクト管理部 技術戦略部 調達管理部 調達事業部 |
施設等機関 |
航空装備研究所 陸上装備研究所 艦艇装備研究所 次世代装備研究所 千歳試験場 下北試験場 岐阜試験場 |
審議会等 | 防衛調達審議会 |
概要 | |
法人番号 | 8000012120002 |
所在地 |
〒162-8870 東京都新宿区市谷本村町5-1 |
定員 | 1,892人(内訳自衛官以外1,484人[1]、406人(自衛官)[2] |
年間予算 | 1949億4482万8千円である[3](2022年度) |
設置 | 2015年(平成27年)10月1日 |
ウェブサイト | |
防衛装備庁 |
概要 編集
防衛装備品の開発・取得・輸出を一元的に担う機関とされている。この意味では、太平洋戦争(大東亜戦争、第二次世界大戦)中に設けられた軍需省に通じるものがあるが、当時の軍需省は国家総動員の名の下に民間経済のすべてを戦争に振り向ける役割を担うため、商工省(現・経済産業省)を改組して設置されたものであり、防衛省の外局として設置する本組織とは根本的に異なる(なお、任務は全く異なるものの名称が類似していた防衛施設庁(2007年〈平成19年〉廃止)は、「防衛庁に設置される機関」として設置され、防衛庁が防衛省となった2007年1月以降は「防衛省の外局」であった)。
政府は、2015(平成27)年度予算の概算要求で防衛装備庁設置のための予算を要求しており[5][6]、同年6月10日の第189回国会で防衛装備庁設置を柱とする改正防衛省設置法が成立している[7]。
経理装備局の装備グループ、各幕僚監部の装備品調達部門、装備施設本部、技術研究本部を集約・統合する組織と位置づけられている。職員数は1,817人[注 1]で、内訳は事務官・技官等1,410人[1]、自衛官407人。また調達や装備品の輸出に関わる権限がこの機関に集中する為、先述したかつての防衛施設庁でも見られた汚職や腐敗を防ぐ処置として庁内部に20人規模の監察担当者が設置されているほか、外部からの監視体制も旧機関に比して強化された体制となっている[8]。
現在、国際的に見て調達コストが高いことから、防衛装備庁を設置することで、装備品の開発と管理の一元管理を行い、防衛装備移転三原則に基づく防衛装備の輸出による生産規模を確保することや国際共同開発を行うことでコスト削減を図ることを目的としている[9][7]。
沿革 編集
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- 長官官房装備開発官の定数を1人増員し5人とする。
- 装備政策部装備制度管理官を廃止し、同部に装備保全管理官1人を置く。
- プロジェクト管理部統合装備計画官を廃止し、同部事業監理官の定数を1人増員し4人とする。
所掌事務 編集
防衛省設置法第36条に規定された任務を達成するために、防衛省設置法第4条に列記された事務のうち、第5号から第7号まで、第9号から第11号まで、第13号から第15号まで及び第32号から第34号までに掲げる事務(第8条第6号に掲げるものを除く。)をつかさどる。具体的には、以下のことに関する事務がある。
- 職員の人事に関すること。(第5号)
- 職員の補充に関すること。(第6号)
- 礼式及び服制に関すること。(第7号)
- 所掌事務の遂行に必要な教育訓練に関すること。(第9号)
- 職員の保健衛生に関すること。(第10号)
- 経費及び収入の予算及び決算並びに会計及び会計の監査に関すること。(第11号)
- 所掌事務に係る装備品、船舶、航空機及び食糧その他の需品(以下「装備品等」という。)の調達、補給及び管理並びに役務の調達に関すること。(第13号)
- 装備品等の研究開発に関すること。(第14号)
- 前号の研究開発に関連する技術的調査研究、設計、試作及び試験の委託に基づく実施に関すること。(第15号)
- 所掌事務に係る国際協力に関すること。(第32号)
- 防衛大学校、防衛医科大学校その他政令で定める文教研修施設において教育訓練及び研究を行うこと。(第33号)
- 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき防衛省に属させられた事務(第34号)
組織 編集
防衛省組織令[17]及び「防衛装備庁内部部局の内部組織に関する訓令(平成27年防衛装備庁訓令第1号)において、防衛装備庁の編成は次のとおりとなっている。
特別な職 編集
防衛装備庁長官は防衛会議を構成する役職のひとつである。なお、次長の官職はない。
内部部局 編集
- 長官官房(政令171条)
- 装備官(4)(政令178条1項)
- 審議官(1)
- 総務官(1)(政令180条)
- 人事官(1)
- 会計官(1)
- 監察査察・評価官(1)
- 装備開発官(5)
- 艦船設計官(1)
長官官房には官房長の官職がない。また、課を置かず、課長に準ずる官職が置かれている。装備開発官は船舶を除く装備品等の考案及び試作に関する事務をシステム装備、陸上装備、艦船搭載装備及び航空機装備の4分野に分け、1人につき1分野を分掌している。
- 装備政策部
- 装備政策課(政令187条)
- 国際装備課
- 装備保全管理課
- プロジェクト管理部
- プロジェクト管理総括官(3)(政令179条1項)
- 事業計画官(1)(政令191条)
- 事業監理官(4)
- 装備技術官(3)
- 技術戦略部
- 革新技術戦略官(1)(政令179条1項)
- 技術戦略課(政令196条)
- 技術計画官(1)
- 技術振興官(1)
- 技術連携推進官(1)
- 調達管理部
- 調達企画課(政令200条)
- 原価管理官(1)
- 企業調査官(1)
- 調達事業部
- 調達総括官(1)(政令179条1項)
- 総括装備調達官(2)(訓令31条1項)[19]
- 需品調達官(1)(政令204条)
- 武器調達官(1)
- 電子音響調達官(1)
- 艦船調達官(1)
- 通信電機調達官(1)
- 航空機調達官(1)
- 輸入調達官(1)
施設等機関 編集
- 航空装備研究所(政令213条)(防衛省東立川地区)
- 陸上装備研究所(神奈川県相模原市中央区)
- 研究企画官(1)(省令14条1項)
- 総務課(省令15条)
- システム研究部
- 弾道技術研究部
- 機動技術研究部
- 艦艇装備研究所(防衛省目黒地区)
- 次世代装備研究所(防衛省三宿地区)
- 千歳試験場(北海道千歳市)[注 2]
- 下北試験場(青森県下北郡東通村)
- 岐阜試験場(航空自衛隊岐阜基地)
審議会等 編集
- 防衛調達審議会(政令212条)
主要幹部 編集
官職名 | 氏名 | 補職発令日 | 前職 |
---|---|---|---|
防衛装備庁長官 | 深澤雅貴 | 2023年 | 7月14日地方協力局長 |
防衛技監 | 市橋孝浩 | 2023年 | 7月14日航空装備研究所長 |
長官官房審議官 | 西脇修 | 2023年 | 7月 4日経済産業省官房参事官 |
長官官房装備官(統合装備担当) | 堀江和宏 | 2023年 | 7月14日防衛装備庁技術戦略部長 |
長官官房装備官(陸上担当) | 叶謙二 | 2022年 | 8月 1日第6師団副師団長 兼 神町駐屯地司令 |
長官官房装備官(海上担当) | 今吉真一 | 2022年 | 8月 1日海上幕僚監部装備計画部長 |
長官官房装備官(航空担当) | 後藤雅人 | 2020年12月22日 | 防衛装備庁プロジェクト管理部 プロジェクト管理総括官 |
装備政策部長 | 坂本大祐 | 2023年 | 7月14日防衛装備庁プロジェクト管理部長 |
プロジェクト管理部長 | 片山泰介 | 2023年 | 7月14日技術戦略部革新技術戦略官 |
技術戦略部長 | 松本恭典 | 2023年 | 7月14日装備政策部装備政策課長 |
調達管理部長 | 森卓生 | 2022年 | 7月 1日防衛研究所企画部長 |
調達事業部長 | 久澤洋 | 2023年 | 7月14日長崎防衛支局長 |
航空装備研究所長 | 森重樹 | 2023年 | 7月14日航空装備研究所研究企画官 |
陸上装備研究所長 | 森下政浩 | 2023年 | 7月14日陸上装備研究所研究企画官 |
艦艇装備研究所長 | 有澤治幸 | 2021年 | 4月 1日陸上装備研究所システム研究部長 |
次世代装備研究所 | 鈴木茂 | 2023年 | 7月14日次世代装備研究所先進機能研究統括官 |
歴代長官 編集
代 | 氏名 | 在職期間 | 出身校 | 前職 | 後職 |
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1 | 渡辺秀明 | 2015年10月 | 1日 - 2017年 7月28日慶應義塾大学工学部 | 技術研究本部長 | 退職 |
2 | 鈴木良之 | 2017年 | 7月28日 - 2018年 8月 3日中央大学法学部 ・桐蔭横浜大学大学院 |
人事教育局長 | |
3 | 深山延暁 | 2018年 | 8月 3日 - 2019年 7月30日東京大学経済学部 | 地方協力局長 | |
4 | 武田博史 | 2019年 | 7月30日 - 2021年 7月 1日慶應義塾大学法学部 | 大臣官房長 | |
5 | 鈴木敦夫 | 2021年 | 7月 1日 - 2022年 7月 1日早稲田大学政治経済学部 | 地方協力局長 | 防衛事務次官 |
6 | 土本英樹 | 2022年 | 7月 1日 - 2023年 7月14日京都大学経済学部 | 整備計画局長 | 退職 |
7 | 深澤雅貴 | 2023年 | 7月14日 -中央大学法学部 | 地方協力局長 |
脚注 編集
注釈 編集
出典 編集
- ^ a b 防衛省定員規則(平成27年10月1日防衛省令第14号)」(最終改正:令和4年3月31日防衛省令第8号)] - e-Gov法令検索
- ^ 防衛省設置法(昭和29年6月9日法律第164号)第6条
- ^ 令和4年度一般会計予算 (PDF) 財務省
- ^ 研究開発から調達まで 防衛装備庁きょう発足 NHK NEWS WEB 2015年10月1日
- ^ 自民、防衛省設置法案了承 防衛装備庁を新設[リンク切れ] 産経ニュース、2015年2月17日
- ^ 防衛装備庁、2000人規模で来夏にも発足 開発など一元化 日本経済新聞、2014年6月18日( 要購読契約)
- ^ a b 防衛装備庁10月にも 輸出・国際共同開発を推進、改正法成立日本経済新聞
- ^ 防衛装備庁が発足 調達、研究開発を一元化 2015.10.1 産経ニュース
- ^ 防衛省の装備調達は、これから大きく変わる東洋経済
- ^ 防衛省組織令等の一部を改正する政令令和2年3月30日公布政令第83号
- ^ 防衛省組織令等の一部を改正する政令令和3年3月31日公布政令第81号
- ^ 2021年9月5日(日)岸防衛大臣が視察 岩国海洋環境試験評価サテライト発足式[リンク切れ]2021年9月5日、山口朝日放送、2021年9月6日閲覧
- ^ “水中無人機試験施設発足 防衛相「戦闘一変へ研究」”. 産経新聞. (2021年9月5日) 2021年9月6日閲覧。
- ^ 防衛省組織令の一部を改正する政令(令和5年政令第228号)2023年6月30日、官報号外第137号9面
- ^ “東立川(3)試験棟新設等建築設計”. 入札情報速報サービスNJSS. 株式会社うるる (2021年7月2日). 2023年9月14日閲覧。
- ^ 次世代装備研 実験棟、試験棟新設へ設計2021年11月11日、建通新聞。2023年9月14日閲覧。
- ^ 防衛省組織令 (昭和29年6月30日政令第178号)(最終改正:令和3年3月31日政令第81号) - e-Gov法令検索
- ^ 防衛装備庁の技術顧問に関する省令 - e-Gov法令検索
- ^ 支出負担行為担当官等一覧(令和3年9月30日現在)
- ^ 防衛省組織令及び防衛省の職員の給与等に関する法律施行令の一部を改正する政令[リンク切れ]平成30年3月30日政令89号