阿寒に果つ』(あかんにはつ)は、渡辺淳一小説[1][2][3]。『婦人公論』の1971年7月号から1972年12月号にかけて連載された[2]。同作を原作とした映画が1975年東宝で製作されている[4][5][6]

概要 編集

著者の渡辺淳一によれば[7]、時任純子は札幌南高校時代の同級生で天才少女画家と呼ばれた加清純子がモデルであり[8][9]私小説的な側面を持つ[2][3]

ストーリー 編集

天才少女画家と呼ばれた時任純子が北海道阿寒湖で自殺してから20年。作家となった「私」はかつて純子と関係のあった5人の男性に会い、純子の死の真相を探ろうとする[2][10]

映画化 編集

阿寒に果つ
監督 渡辺邦彦
脚本 石森史郎
岡田正代
原作 渡辺淳一
製作 田中収
森岡道夫
出演者 五十嵐じゅん
三浦友和
福田善之
音楽 眞鍋理一郎
撮影 木村大作
編集 小川信夫
製作会社 東宝映画
配給 東宝
公開   1975年6月21日
上映時間 87分
製作国   日本
言語 日本語
テンプレートを表示

1975年6月21日に東宝系で公開された[4][5]。監督は渡辺邦彦

映画の製作決定は1974年秋[10]山口百恵の主演映画として企画されたが[11]裸体シーンなどの問題点があり山口のOKが取れず[11]。急ぎ主演女優を選考し、映画やテレビドラマで主役経験のある6人[10]、もしくは7人の女優が[12]田中収東宝プロデューサーに自ら売り込みをかけ[10][12]、最終選考の中から強く主演を望んだ五十嵐じゅんが抜擢された、と書かれたものと[10][11][12]、五十嵐が原作を読んで渡辺淳一に「映画かテレビドラマになる時は私をヒロインにして欲しい」とファンレターを送っていて、渡辺が田中プロデューサーに五十嵐を推薦し[13]、田中が五十嵐に会い即座にヒロインに決めた、と書かれたものがある[13]。特に後者が事実なら、最終選考は最初から五十嵐で決まっていた出来レースということになる。五十嵐のヒロイン決定は1975年1月17日[10]

キャスト 編集

スタッフ 編集

製作 編集

五十嵐じゅんは1973年4月に正式に芸能界を引退していたが[10][14]、本作のヒロインを演じたい一心で芸能界に復帰してきただけに[10]、「これ1本で女優生活に終止符を打ってもいい」と強い決意を見せ、「ラブシーンもたくさんあるようですが、監督さんのおっしゃるようにやります。これ1本で倒れてもいい」などと話した[10]。キスシーン、全裸シーンもありの体当たり演技を見せる[14]

撮影 編集

1975年2月初めから雪の北海道阿寒湖を中心に3週間ロケが行われた[10]

同時上映 編集

アフリカの光

興行成績 編集

興行成績は振るわなかったとされる[15]。VHSテープは1988年に東宝から発売(B000064SOT)、DVDやBDの発売は2019年9月時点で確認できない。

脚注 編集

  1. ^ 『阿寒に果つ』(渡辺 淳一) - 講談社BOOK倶楽部「阿寒に果つ」作品情報([わ]1−9)阿寒に果つ - 小説・文芸 - ポプラ社阿寒に果つ(渡辺淳一) - 北海道マガジン「カイ」渡辺淳一作「阿寒に果つ」モデルの天才少女画家の絵、札幌で公開へ
  2. ^ a b c d 『阿寒に果つ』 渡辺淳一(中公文庫)
  3. ^ a b 5『阿寒に果つ』(渡辺淳一) 札幌 - UHB 北海道文化放送
  4. ^ a b 阿寒に果つ | ぴあエンタメ情報
  5. ^ a b 芸に生きる 映画を彩る芸能・芸術 |作品解説2ラピュタ阿佐ヶ谷
  6. ^ 銀座で渡辺淳一さん原作の映画特集-「失楽園」など11作一挙公開
  7. ^ 渡辺淳一「雪のなかの日々」『別冊小説新潮』第25巻第2号、新潮社、1971年2月、127-130頁、NCID AN10010653 
  8. ^ 山下武『夭折の天才群像 神に召された少年少女たち』本の友社、2004年11月20日、192頁。ISBN 978-4-89439-474-2 
  9. ^ もうひとつの「阿寒に果つ」〜氷の自画像を尋ねて〜 – TBSテレビ
  10. ^ a b c d e f g h i j k “倒れてもいい!これ1本に全力 『阿寒に果つ』のヒロインに五十嵐じゅん”. 日刊スポーツ (日刊スポーツ新聞社): p. 18. (1975年1月18日) 
  11. ^ a b c “五十嵐じゅんが主役 東宝『阿寒に果つ』”. サンケイスポーツ (産業経済新聞社): p. 11. (1975年1月18日) 
  12. ^ a b c “"役者根性"で金的 五十嵐じゅん『阿寒に果つ』の主演に”. 東京タイムズ (東京タイムズ社): p. 5. (1975年2月12日) 
  13. ^ a b “映画初出演に生き生き カムバックの五十嵐じゅん 原作にベタぼれ 『阿寒に果つ』 実った売り込み”. デイリースポーツ (デイリースポーツ社): p. 8. (1975年2月6日) 
  14. ^ a b 「邦画 芸能界復帰の五十嵐じゅん『阿寒に果つ』」『スタア』1975年8月号、平凡出版、100頁。 
  15. ^ 「興収百億に挑戦する男・松岡副社長は語る 『東京湾炎上』にはじまる東宝夏の陣 製作・配給・興行の見事な積極態勢」『映画時報』1975年7月号、映画時報社、5頁。 

関連項目 編集

外部リンク 編集