電子マネー(でんしマネー、: Electronic payment system)とは、企業により提供される情報通信技術を活用した支払手段の一種である。

駅の改札口にて電子マネー機能付き乗車カード (Suica) を使用する場面

定義編集

電子マネーはクレジットカードと同じく電子決済手段の一種[1]である。電子マネーは取引ごとに決済情報をやりとりするクレジットカードとは異なり、あらかじめ現金や預金と引換えに電子的貨幣価値を引き落としておき、経済活動の際に同貨幣価値のやりとりを通じて代価を支払うストアドバリュー型となる[1]

電子マネーという和製英語編集

なお、英語での電子マネー(electronic money)は紙幣硬貨を持たないデジタル通貨の事を指し、暗号通貨ビットコイン中央銀行発行デジタル通貨などの新しい形態の電子的なマネタリーシステム(monetary system)を意味する。和製英語の「電子マネー」は、あくまでも円などの既存の法定通貨電子決済(キャッシュレス決済)サービスを意味しているに過ぎない。

もともと英語で電子決済electronic payment)と言えば、クレジットカードデビットカードなどで行ってきた長い歴史があり、1998年から既にペイパルと言ったオンライン決済サービスも存在しているため、わざわざ「電子マネー」と表現するほどの特段新しい概念ではない。英語であえて日本的な意味での「電子マネー」をクレジットカードなどと区別して言う場合、カード型のものは単なるプリペイドカードstored value card)であり、再チャージ等の機能が充実したものはスマートカード(smart card for making electronic payments)と言う。携帯(スマートフォン)での利用、つまりモバイル決済は単にmobile paymentである。非接触型決済のものであれば、カードにしろモバイルにしろ、単にcontactless をつけて表現するだけである。

つまり、和製英語の「電子マネー」とは、プリペイド型の電子決済サービスを意味するに過ぎない。

各国の「電子マネー」編集

日本編集

日本では原則として、金券プリペイドカード等と同様に、資金決済に関する法律が適用される。磁気カード式やICカード式、通信手段を用いるサーバー型の電子マネーも規制の対象である。NFCの中で通信速度が最も高速なFeliCaが、少額決済手段としては最も普及している(ガラパゴス化 § 非接触ICカードを参考)。

2020年の発行枚数(少額決済方式)[2]
  1.  前払  楽天Edy:1億3,000万枚 (7.8%)
  2.  前払  WAON:8,263万枚 (7.0%)
  3.  前払  Suica:8,157万枚 (7.1%)
  4.  前払  nanaco:7,097万枚 (6.5%)
  5.  後払  iD:4,194万枚 (18.3%)
  6.  前払  PASMO:3,956万枚 (2.9%)
  7.  前払  ICOCA:2,400万枚 (11.7%)
  8.  後払  QUICPay:1,695.6万枚 (28.1%)
  9.  前払  majica:1,097万枚 (-)
  10.  前払  manaca:724.5万枚 (6.6%)
  11.  前払  nimoca:432万枚 (8.0%)
  12.  後払  PiTaPa:339万枚 (2.1%)
  13.  前払  SUGOCA:321万枚 (11.0%)
  14.  前払  TOICA:310万枚 (6.5%)
  15.  前払  Kitaca:176万枚 (10.0%)
  16.  前払  はやかけん:147万枚 (10.5%)
※カッコ内は前年同月比。
電子マネーの有効期限
プリペイド型および仮想マネー型の電子マネーには有効期限を設定しているものがある。すなわち、現金をチャージするなどして電子マネー化しても、その後利用せずに一定の期間を経過するとその価値が滅失すると言うことである。参考までに、民法における債権消滅時効は10年間である。

アメリカ合衆国編集

アメリカでは、いわゆる「電子マネー」のようなプリペイドカードではなく、クレジットカード の利用が主要な形態として利用されており、2008年の時点で既に約90%のオンライン取引がクレジットカードやデビットカードで行われていた。[3] そのため、VisaやMasterCardといったクレジットカード会社のサービスの一環としてプリペイド型として提供されているに過ぎない。

歴史的には1994年にニューヨーク市地下鉄で電子マネーを利用したプリペイドカード(紙ベース)が運賃の支払手段として初めて導入された[4]。1995年には石油大手のMobilがガソリンスタンドでの決済方法として導入したプリペイドカードが米国初のプラスチックカード型のプリペイドカードとされている[4]。なお、1993年には高速道路での自動料金収受システムが商用展開されている[4]

その他については乗車カードモバイル決済サービスを参照。

ヨーロッパ編集

Swishに代表されるように、いわゆる「電子マネー」のようなプリペイドカードではなく、デビットカード的に銀行口座と紐ついた非接触型のモバイル決済が主流となっている。その他については乗車カードモバイル決済サービスを参照。

アジア編集

乗車カードモバイル決済サービスを参照。

実装例編集

日本では、ソニーの非接触型ICカード通信技術・FeliCaを採用したものが多い。FeliCaを使用していることから物理的な互換性はあるが、システムの互換性は図られていない事が多い。現在では、元々ICチップを利用したカードタイプが、モバイル決済に対応し、ICチップ型などとは単純に分類できなくなっている。 以下には、代表的なものを記す。

ICカード系
おサイフケータイにも対応
カード型のみ
その他

(前述の交通系ICカード全国相互利用サービス対応カード等や後述のPiTaPaとは電子マネーの互換性なし)

その他編集

注釈編集

出典編集

  1. ^ a b 総務省|平成27年版 情報通信白書|電子マネーの普及、2021年07月07日閲覧。
  2. ^ 『月刊 消費者信用(2020年9月号)』金融財政事情研究会、2020年、31頁。
  3. ^ Turban, E. King, D. McKay, J. Marshall, P. Lee, J & Vielhand, D. (2008). Electronic Commerce 2008: A Managerial Perspective. London: Pearson Education Ltd. p.550
  4. ^ a b c 米国における電子決済を巡る最近の動向(和田 恭) 情報処理推進機構、2018年11月15日閲覧。

参考文献編集

  • David Chaum, "Blind Signatures for Untraceable Payments", Advances in Cryptology: Proceedings of CRYPTO '82, pp.199-203, 1982.
  • 日本銀行決済機構局、決済システム等に関する調査論文 最近の電子マネーの動向について、2008年8月

関連項目編集

外部リンク編集