非同盟運動

東西冷戦期においていずれにも公式加盟していない国による国際組織
非同盟主義から転送)

非同盟運動(ひどうめいうんどう、英語: Non-Aligned MovementNAM)とは、第二次世界大戦後の東西の冷戦期以降に、西のいずれの陣営にも公式には加盟していない諸国による国際組織である。

青色は非同盟諸国会議の参加国(2009年)。淡い青色はオブザーバー参加国

1961年に設立され、2016年の時点で参加国は120、オブザーバー参加国は17、オブザーバー参加組織は10。ほぼ3〜5年間隔で開催されている非同盟諸国首脳会議の他、非同盟諸国外相会議、常設の非同盟諸国常任委員会などがある[1]

概要 編集

 
ベオグラードでの第一回会議に出席した各国指導者、1961年

「非同盟」はインド首相ジャワハルラール・ネルーによって、スリランカコロンボでの演説において、1954年の中華人民共和国周恩来との会談で示された平和五原則の説明の際に用いられた[2]。翌年1955年にはアジア・アフリカ29カ国が集まって開催されたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)においては平和十原則に発展した。1961年の第一回会議でのベオグラード宣言では、中華人民共和国の国連代表権支持や当時キューバ革命を起こしたフィデル・カストロ体制の尊重なども掲げられた[3]

非同盟主義が賛同を集めた背景には、アメリカ合衆国ソビエト連邦の冷戦構造がかつての植民地・半植民地であった地域における覇権抗争を招き、インドシナ戦争朝鮮戦争のような実際の軍事衝突を引き起こしていたことがある。その点で、この運動は反帝国主義・反植民地主義としての性格も有していた。

四半世紀すぎた1986年、第八回ハラレにおける首脳会議において、それらの運動の目標を、軍事ブロックの拡大を防ぎ、諸民族の民族自決権を守り、国連その他の場で、平等な国際協力と対話を促進することを通じて、新しい、公正で、民主的な国際秩序の樹立することがその歴史的使命であると位置づけている[4]

1960年にアフリカで17カ国の国家が独立したことで、国際社会におけるアジア・アフリカの発言力は一層強化された。こうした中で、ユーゴスラビアチトーソビエト連邦とは距離をおいた独自の社会主義政策をとっていた)らの主導によって、1961年9月ベオグラードで第一回非同盟諸国首脳会議が開催されることになった。当初の参加国は25カ国であった。2011年5月の外相会議[注釈 1]にはフィジーとアゼルバイジャンが加入し、120ヵ国となった。

非同盟運動に加わる国家は年々増加している。しかし、増加する国々の中には米ソ中と軍事的に繋がりの強かった国があり、印パ戦争イラン・イラク戦争カンボジア・ベトナム戦争アフガニスタン紛争などの代理戦争では非同盟諸国が協調した姿勢をとれず、「非同盟」の内実が問われることもあった。

オブザーバー参加組織にはアフリカ連合アラブ連盟日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会などがある。

非同盟諸国首脳会議の開催地 編集

事務総長 編集

[8] 肖像 名前 政党 就任年 退任年
1   ヨシップ・ブロズ・チトー   ユーゴスラビア ユーゴスラビア共産主義者同盟 1961年 1964年
2   ガマール・アブドゥル=ナーセル   アラブ連合共和国 アラブ社会主義連合英語版 1964年 1970年
3   ケネス・カウンダ   ザンビア 統一民族独立党英語版 1970年 1973年
4   フワーリー・ブーメディエン英語版   アルジェリア 革命評議会英語版 1973年 1976年
5   シリマヴォ・バンダラナイケ   スリランカ スリランカ自由党 1976年 1977年
6   ジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ   スリランカ 統一国民党 1977年 1978年
7   ラナシンハ・プレマダーサ   スリランカ 統一国民党 1978年 1979年
8   フィデル・カストロ   キューバ キューバ共産党 1979年 1983年
9   インディラ・ガンディー   インド インド国民会議 1983年 1984年
10   ラジーヴ・ガンディー   インド インド国民会議 1984年 1986年
11   ロバート・ムガベ   ジンバブエ ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線英語版 1986年 1989年
12   ヤネス・ドルノウシェク   ユーゴスラビア ユーゴスラビア共産主義者同盟 1989年 1990年
13   ボリサヴ・ヨヴィッチ   ユーゴスラビア セルビア社会党 1990年 1991年
14   スティエパン・メシッチ   ユーゴスラビア クロアチア民主同盟 1991年 1991年
15   ブランコ・コスティッチ英語版   ユーゴスラビア モンテネグロ社会主義者民主党 1991年 1992年
16   ドブリツァ・チョシッチ   ユーゴスラビア 無所属 1992年 1992年
17   スハルト   インドネシア 無所属 1992年 1995年
18   エルネスト・サンペール   コロンビア コロンビア自由党英語版 1995年 1998年
19   アンドレス・パストラーナ・アランゴ   コロンビア コロンビア保守党英語版 1998年 1998年
20   ネルソン・マンデラ   南アフリカ共和国 アフリカ民族会議 1998年 1999年
21   タボ・ムベキ   南アフリカ共和国 アフリカ民族会議 1999年 2003年
22   マハティール・ビン・モハマド   マレーシア 統一マレー国民組織 2003年 2003年
23   アブドラ・バダウィ   マレーシア 統一マレー国民組織 2003年 2006年
24   フィデル・カストロ   キューバ キューバ共産党 2006年 2008年
25   ラウル・カストロ   キューバ キューバ共産党 2008年 2009年
26   ホスニー・ムバーラク   エジプト 国民民主党 2009年 2011年
27   ムハンマド・フセイン・タンターウィー   エジプト 無所属 2011年 2012年
28   ムハンマド・ムルシー   エジプト 自由と公正党 2012年 2012年
29   マフムード・アフマディーネジャード   イラン イラン・イスラーム建設者同盟英語版 2012年 2013年
30   ハサン・ロウハーニー   イラン 建設の幹部党英語版 2013年 2016年
31   ニコラス・マドゥロ   ベネズエラ ベネズエラ統一社会党 2016年 2019年
32   イルハム・アリエフ   アゼルバイジャン 新アゼルバイジャン党 2019年 現職

加盟国 編集

現在の加盟国 編集

[9]

国名 加盟年 地域 備考
  アゼルバイジャン 2011年 アジア
  アフガニスタン 1961年 アジア 原加盟国
  アラブ首長国連邦 1970年 アジア
  アルジェリア 1961年 アフリカ 原加盟国 第4回首脳会議開催地
  アンゴラ 1964年 アフリカ
  アンティグア・バーブーダ 2006年 アメリカ
  イエメン 1961年 アジア イエメン王国として原加盟国。後にイエメン・アラブ共和国となり、イエメン人民民主共和国は1970年加入。1990年に南北統一。
  イラク 1961年 アジア 原加盟国
  イラン 1979年 アジア 第16回首脳会議開催地
  インド 1961年 アジア 原加盟国 第7回首脳会議開催地
  インドネシア 1961年 アジア 原加盟国 第10回首脳会議開催地
  ウガンダ 1964年 アフリカ
  ウズベキスタン 1992年 アジア
  エクアドル 1983年 アメリカ
  エジプト 1961年 アフリカ 原加盟国 第2回・第15回首脳会議開催地
  エチオピア 1961年 アフリカ 原加盟国
  エリトリア 1993年 アフリカ
  オマーン 1973年 アジア
  ガイアナ 1970年 アメリカ
  カタール 1973年 アジア
  ガボン 1970年 アフリカ
  カメルーン 1964年 アフリカ
  ガンビア 1973年 アフリカ
  カンボジア 1961年 アジア 原加盟国
  ガーナ 1961年 アフリカ 原加盟国
  カーボベルデ 1976年 アフリカ
  ギニア 1961年 アフリカ 原加盟国
  ギニアビサウ 1976年 アフリカ
  キューバ 1961年 アメリカ 原加盟国 第6回・第14回首脳会議開催地
  グアテマラ 1992年 アメリカ
  クウェート 1964年 アジア
  グレナダ 1979年 アメリカ
  ケニア 1964年 アフリカ
  コモロ連合 1976年 アフリカ
  コロンビア 1983年 アメリカ 第11回首脳会議開催地
  コンゴ共和国 1964年 アフリカ
  コンゴ民主共和国 1961年 アフリカ 原加盟国
  コートジボワール 1973年 アフリカ
  サウジアラビア 1961年 アジア 原加盟国
  サントメ・プリンシペ 1976年 アフリカ
  ザンビア 1964年 アフリカ 第3回首脳会議開催地
  シエラレオネ 1964年 アフリカ
  ジブチ 1983年 アフリカ
  ジャマイカ 1970年 アメリカ
  シリア 1964年 アジア
  シンガポール 1970年 アジア
  ジンバブエ 1979年 アフリカ 第8回首脳会議開催地
  スリナム 1983年 アメリカ
  スリランカ 1961年 アジア 原加盟国 第5回首脳会議開催地
  エスワティニ 1970年 アフリカ
  スーダン 1961年 アフリカ 原加盟国
  セネガル 1964年 アフリカ
  セントクリストファー・ネイビス 2006年 アメリカ
  セントビンセント・グレナディーン 2003年 アメリカ
  セントルシア 1983年 アメリカ
  セーシェル 1976年 アフリカ
  ソマリア 1961年 アフリカ 原加盟国
  タイ 1993年 アジア
  タンザニア 1964年 アフリカ
  チャド 1964年 アフリカ
  チュニジア 1961年 アフリカ 原加盟国
  チリ 1973年 アメリカ
  ドミニカ共和国 2000年 アメリカ
  ドミニカ国 2006年 アメリカ
  トリニダード・トバゴ 1970年 アメリカ
  トルクメニスタン 1995年 アジア
  トーゴ 1964年 アフリカ
  ナイジェリア 1964年 アフリカ
  ナミビア 1979年 アフリカ
  ニカラグア 1979年 アメリカ
  ニジェール 1973年 アフリカ
  ネパール 1961年 アジア 原加盟国
  ハイチ 2006年 アメリカ
  パキスタン 1979年 アジア
  パナマ 1976年 アメリカ
  バヌアツ 1983年 オセアニア
  バハマ 1983年 アメリカ
  パプアニューギニア 1992年 オセアニア
  バルバドス 1983年 アメリカ
  パレスチナ 1976年 アジア
  バングラデシュ 1973年 アジア
  バーレーン 1973年 アジア
  フィジー 2011年 オセアニア
  フィリピン 1992年 アジア
  ブルキナファソ 1973年 アフリカ
  ブルネイ 1992年 アジア
  ブルンジ 1964年 アフリカ
  ブータン 1973年 アジア
  ベトナム 1973年 アジア ベトナム民主共和国として。1976年に南北統一。
  ベナン 1964年 アフリカ
  ベネズエラ 1989年 アメリカ 第17回首脳会議開催地
  ベラルーシ 1998年 ヨーロッパ
  ベリーズ 1976年 アメリカ
  ペルー 1973年 アメリカ
  ボツワナ 1970年 アフリカ
  ボリビア 1979年 アメリカ
  ホンジュラス 1993年 アメリカ
  マダガスカル 1973年 アフリカ
  マラウイ 1964年 アフリカ 第17回首脳会議開催地
  マリ 1961年 アフリカ 原加盟国
  マレーシア 1970年 アジア 第13回首脳会議開催地
  ミャンマー 1961年 アジア 原加盟国
  モザンビーク 1976年 アフリカ
  モルディブ 1976年 アジア
  モロッコ 1961年 アフリカ 原加盟国
  モンゴル 1991年 アジア
  モーリシャス 1973年 アフリカ
  モーリタニア 1964年 アフリカ
  ヨルダン 1964年 アジア
  ラオス 1964年 アジア
  リビア 1964年 アフリカ
  リベリア 1964年 アフリカ
  ルワンダ 1970年 アフリカ
  レソト 1970年 アフリカ
  レバノン 1961年 アジア 原加盟国
  赤道ギニア 1970年 アフリカ
  中央アフリカ 1964年 アフリカ
  東ティモール 2003年 アジア
  南アフリカ共和国 1994年 アフリカ 第12回首脳会議開催地
  北朝鮮 1976年 アジア

過去の加盟国 編集

[10]

  1.   アルゼンチン(1973年~1991年)
  2.   ユーゴスラビア(1961年~1992年) 原加盟国。第1回・第9回首脳会議開催地。
  3.   キプロス(1961年~2004年) 原加盟国
  4.   マルタ(1973年~2004年)

オブザーバー 編集

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[11]

機関 編集

[12]

ゲスト 編集

恒久的に設定されているゲストは存在しない[13]。活動に対して関心のある国、非政府組織と関連するNGOは、首脳会議と閣僚会議のゲストとして招待される。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 第16回非同盟諸国外相会議はインドネシア・バリ島のヌサドゥアで2011年5月25日から27日まで開催された。テーマは「今後50年に向けた非同盟運動の貢献に関する共有ビジョン」、「バリ紀年宣言」を採択した。

出典 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集