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音響光学型スペクトル分析器(おんきょうこうがくがたスペクトルぶんせきき)とは、電波望遠鏡の受信機からの電波を音響光学偏向素子に送り、レーザー光の回折効果を利用して周波数解析を行う装置のこと。

目次

概説編集

音響光学型スペクトルの名前から、AOSと呼ばれる。AOSとは、Acousto-Optical Spectrometerのこと。現在のアメリカ国立電波天文台が運用を行う、VLA用やグリーンバンク天文台の大型電波望遠鏡用に開発されたものが知られている。日本では、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45mミリ波電波望遠鏡の開発時に、精度が高く精密な宇宙電波のスペクトル解析を行うことを目的として開発が行われた。 国立天文台のものは、AOS-Hが40MHz幅、AOS-Wが250MHz幅、AOS-Uが480MHz幅のものであり、それぞれ2048ch相当の分解能を持つ分光計である。

現在は、GHzを超える帯域のAOSも開発されてきており、国内では、東京大学の60cmサブミリ波電波望遠鏡VST(国立天文台野辺山宇宙電波観測所で運用中。)、富士山頂サブミリ波望遠鏡(1.2m口径、東京大学、分子科学研究所の共同開発)において1GHz帯のものが使用されていた。

世界的には超高性能の分光計では32000ch(精度換算で、15bit相当)の装置が開発され運用が行われている。

仕組み編集

電波望遠鏡の受信機のバックエンド部に接続され、周波数変換を行った後、音響光学偏向素子に電気信号を送る。音響光学偏向素子の入り口には圧電素子があり、電気信号はここで超音波に変換される。この超音波は音響光学偏向素子内部に疎密波として伝わり、ここに単色のレーザ光(野辺山の場合には、He-Neレーザ)を当てるとレーザー光は回折を生じる。回折された光は光学系を通り、ラインセンサー(その間隔を精密に調整されたフォトダイオード)で検出を行う。

この仕組みによって、光学変換によるフーリエ解析を直接的に行うことが可能。難点としては、基準レーザ光の調整や光学系の調整、フォトダイオードの調整などが必要なため、開発及び運用の両面において、極めて高度な技術が必要である。また、光学系と同時に、システムを入れる部屋も恒温調整(野辺山の場合には、20℃±0.1℃以下。湿度20%以下。室内容積:8立方m)が必要である。このため、装置内部の直接一般公開はできなかったが、野辺山開設時において、科学雑誌からの取材によって写真等の撮影は許可している。なお、撮影された写真は、科学雑誌出版社に著作権があるため、野辺山宇宙電波観測所では公開していない。

アナログ型のため、微調整が重要であり、光学系では0.1μm以下の精度で調整が必要になる。また、圧電素子も帯域全てでリニアリティが出るわけではないので、そのあたりの調整も重要。近年は、圧電素子のリニアリティを高めることと一緒に、補正回路を工夫することで、電気回路系の調整は楽になってきている。しかしながら、機械精度を限界まで高めるために、様々な工夫が必要だった。

その後編集

デジタル分光計が開発されたため、最近はそちらが用いられる。しかしながら、精密なスペクトル分析などでは、現在もこの性能を上回るものが産まれていないため、野辺山宇宙電波観測所の45mミリ波電波望遠鏡では、精密スペクトル分析のために用いられている。現在は、デジタル分光計などによって、その性能は補完されており、LSI素子などの高速化によって、将来は不明。

捕捉編集

VST-1では、500MHz帯域の小型AOSを開発した。VST-2では、富士山頂サブミリ波望遠鏡での素子開発などによって、GHz帯域のものを搭載することが出来た。精度は、リニアラインセンサーの素子数と同じで、2048ch相当である。小型化する上での工夫点は、機械精度と光学系の精度を合わせるところ。また、小型化できたため、恒温調整も楽になった。

関連項目編集

外部リンク編集