風が強まる

ウィンスロー・ホーマーの油彩画

風が強まる』(かぜがつよまる、Breezing Up)、別名『順風』(A Fair Wind)は、アメリカ合衆国の画家、ウィンスロー・ホーマー油彩画である。1873年から 1876年にかけて制作された。キャンバスに油彩の作品で、サイズは 61.5 x 97 cmである。 風の強い海上の 3人の少年と年配の漁師が乗ったキャットボート(catboat:船首に近いマストに一枚の帆を持つボート)がおそらく釣り場に移動する情景を描いた明るい印象の作品である。現在は、ワシントンのナショナル・ギャラリーに収蔵されている。

『風が強まる(順風)』
英語: Breezing Up(A Fair Wind)
Winslow Homer - Breezing Up (A Fair Wind) - Google Art Project.jpg
作者ウィンスロー・ホーマーアメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
製作年1873年-1876年
種類カンバス油彩
寸法61.5 cm × 97 cm (24.2 in × 38 in)
所蔵ナショナル・ギャラリー (ワシントン)ワシントンD.C.
クールベの海洋画『波』
ホーマーの1895年の海洋画『北東の風(Northeaster)』

漁業の街で、保養地でもあるマサチューセッツ州グロスターをホーマーは訪れ、水彩画の習作を描いた後、1873年から 1876年にかけてニューヨークでこの作品は描かれた。1876年に完成して、その年のナショナル・アカデミー・オブ・デザイン(National Academy of Design)の展覧会に展示された後、その年開かれた、フィラデルフィア万国博覧会(the Centennial Exposition in Philadelphia)でも、展示され、批評家から好意的な評価をえた。銀行家で美術収集家のアンドリュー・メロンの所有を経て、1943年にナショナル・ギャラリーが購入した。

1873年にニューヨークでこのカンバスにとりかかった時、制作していたスケッチや習作りのうち最も緊密な関係があったのは習作である『キャットボートを走らせる』(Sailing the Catboat)(1873年)であった。[1]この作品にホーマーは3年近くの歳月を費やしたが、赤外線撮影による調査で、当初の作品にはマストの近くに4番目の少年が描かれたことや、円形にもう一隻のスクーナーが描かれたことが分かり、ホーマーが作品の構図に多くの変更を加えたことか示された。[1]

ホーマーのこの絵に示したメッセージは明るい肯定的、積極的なものである。 三角波にもかかわらず、ボートに乗っている人々は、くつろいだ表情をうかべている。 へさきの少年にとってかわったは、希望を象徴していると理解された。[2] 舵柄をにぎっている少年は水平線を楽しみに待っているし、これは彼の未来と若き合衆国のそれにかんする楽観主義の表明である。

仕上げられた作品は、日本の美術作品の影響が見られとされ、ことに動きのある画面の左半分に対して画面の右半分に広い空間を設けるという構図が日本的なスタイルであるとされる。ホーマーは1866年と1867年にフランスを訪れていてフランスの画家ギュスターヴ・クールベの海洋場面の影響もまた明白とされる。

ホーマーの海洋画のすべてがかならずしも『風が強まる』のように穏やかなものばかりではなく、クールベ(たとえば 『波』のような、岸にくだける波を描いた1895年の作品『北東の風(Northeaster)』などもある。 モネの比較的に初期の作品、『海景:嵐』(英語:Seascape: Storm)(1867年)と『緑いろの波』(英語:The Green Wave)(1866年)も、やや荒れ狂う海上のボートを描いている。

メキシコ湾流』 ウィンスロー・ホーマー 1899年 『風が強まる』から10年ほど後に描かれたホーマーの作品、『メキシコ湾流』は『風が強まる』における明るさはなくなり、より悲観的な印象の作品になっている。[3]

アメリカ建国100年記念の年である1876年に完成したこの作品は、その年のナショナル・アカデミー・オブ・デザイン(National Academy of Design)の展覧会に展示され、それから、フィラデルフィア万国博覧会(the Centennial Exposition in Philadelphia)で、展示された。 1879年までにこれは『風が強まる』(Breezing Up)として知られるようになっていたし、この題は美術家のものではなかったが、しかし彼は反発していないように思われた。 同時代の批評家は絵を評した: 「これは、ホーマーのいつもの粗っぽい、部屋着のスタイルで描かれているが、しかしそよ風の吹く夏の日の沖合いでの生き生きとした動きを間違えようのない力で思い出させる。風に屈している漁船は、じっさいに波を切り分けているように見える。これ以上、真実で元気な展示作はない。」[4] またべつの者はこのように書いた、「帆船の一行の人物らのゆったりとした、しなやかな動きは高く賞賛されてきたし、帆船は「順風」('a fair wind')をうけて青い水のうえを疾走している。彼らは横揺れしているボートとともに揺れ、そして軽い竜骨が波に上昇しあるいは下降するにつれてくつろぎあるいは硬直する。同じような状況に置かれたものはだれでも、下方の波の起伏を感じたとき自分の背がこわばったあるいは両膝が曲がったことを思い出すことができる。」[5]

こんにち、『風が強まる』は、聖像的なアメリカ絵画作品、ホーマーの最高の作品のひとつ、と見なされている。 ナショナル・ギャラリーは1943年に絵を購入し、ギャラリーのウェブ・サイトには「19世紀アメリカの最もよく知られかつ最も愛された、生活の美術的なイメージのひとつ」と説明された。[6]

注釈編集

  1. ^ a b Cikovsky, 143
  2. ^ Cikovsky, 144
  3. ^ Cikovsky, 383
  4. ^ Unnamed critic quoted in Hand, 259
  5. ^ Appleton's Journal critic quoted in Johns, Elizabeth (2002). Winslow Homer: the nature of observation, University of California Press, pp. 77–78. ISBN 0-520-22725-5
  6. ^ Breezing Up (A Fair Wind), National Gallery of Art web site. Accessed August 18, 2010.

参考文献編集

  • Cikovsky, Jr., Nicolai; Kelly, Franklin. (1995). Winslow Homer. National Gallery of Art, Washington. ISBN 0-89468-217-2
  • Hand, J. O. (2004). National Gallery of Art: master paintings from the collection. New York, National Gallery of Art, Washington. ISBN 0-8109-5619-5

外部リンク編集