首都圏新都市鉄道

日本の鉄道会社

首都圏新都市鉄道株式会社(しゅとけんしんとしてつどう、: Metropolitan Intercity Railway Company, MIR)は、つくばエクスプレスを運営している日本鉄道事業者である。

首都圏新都市鉄道株式会社
Metropolitan Intercity Railway Company
本社が入居するJEBL秋葉原スクエア
本社が入居するJEBL秋葉原スクエア
種類 株式会社
略称 MIR
本社所在地 日本の旗 日本
101-0022
東京都千代田区神田練塀町85番(JEBL秋葉原スクエア)
北緯35度42分4.8秒 東経139度46分29.5秒 / 北緯35.701333度 東経139.774861度 / 35.701333; 139.774861座標: 北緯35度42分4.8秒 東経139度46分29.5秒 / 北緯35.701333度 東経139.774861度 / 35.701333; 139.774861
本店所在地 110-0016
東京都台東区台東四丁目25番7号(TX佐竹ビル)
北緯35度42分25.0秒 東経139度46分52.4秒 / 北緯35.706944度 東経139.781222度 / 35.706944; 139.781222
設立 1991年3月15日
業種 陸運業
法人番号 3010501015419 ウィキデータを編集
事業内容 鉄道事業、不動産売買・賃貸など
代表者 代表取締役社長 渡邊良[1]
代表取締役専務 境勉
代表取締役専務 松葉佳文
資本金 1850億1630万円
(2021年3月31日現在)[2]
発行済株式総数 370万0326株
(2021年3月31日現在)[2]
売上高 単独: 313億1621万5000円
(2021年3月期)[2]
営業利益 単独: △58億5162万8000円
(2021年3月期)[2]
経常利益 単独: △79億0162万2000円
(2021年3月期)[2]
純利益 単独: △79億6426万8000円
(2021年3月期)[2]
純資産 単独: 1895億2567万1000円
(2021年3月31日現在)[2]
総資産 単独: 8167億2447万9000円
(2021年3月31日現在)[2]
従業員数 単独: 732人
(2021年3月31日現在)[2]
決算期 3月31日
会計監査人 有限責任あずさ監査法人[2]
主要株主 茨城県 18.05%
東京都 17.65%
千葉県 7.06%
足立区 7.06%
つくば市 6.67%
埼玉県 5.88%
台東区 5.30%
柏市 5.30%
流山市 5.30%
千代田区 2.65%
荒川区 2.65%
八潮市 1.62%
守谷市 1.47%
つくばみらい市 1.47%
三郷市 1.32%
(2021年3月31日現在)[2]
外部リンク https://www.mir.co.jp/
特記事項:鉄道事業では社名に代わって「つくばエクスプレス」を多用する。
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概要 編集

現在のつくばエクスプレスである常磐新線の建設を目的に、沿線地方公共団体と民間企業が出資する第三セクター方式で設立された。資本金額は1,850億円で、2,500億円の大阪市高速電気軌道 (Osaka Metro)、2,000億円の東日本旅客鉄道(JR東日本)に次いで日本の鉄道を本業とする会社では3位である。出資株主は、茨城県東京都千葉県など沿線地方公共団体が89パーセントを占め、代表取締役など役員は国土交通省や都県庁出身の官僚が占めている[3]など、公的機関主導の第三セクターである。会社創立当時から日本民営鉄道協会第三セクター等鉄道協議会などの業界団体には加盟していない。

北総鉄道東葉高速鉄道埼玉高速鉄道のようなニュータウン開発型第三セクター鉄道が建設費の利子負担と返済に苦しんだことを教訓として、建設費の大部分を無利子で調達していることが特徴である。建設費の圧縮、ATOワンマン運転の採用により、経費節減を行っている。

運賃は4 - 30km程度の近距離では割高だが、50km程度ではJR幹線の運賃水準と大差ない。全線運賃は既存高速バスに合わせて設定され、1 - 3km区間も東京の地下鉄並みとするなど割高感を抑えている。

高速運転を実施したことで既存交通機関からの移乗を促し、輸送実績は上昇傾向にある。宅鉄法による強制的な沿線開発事業との連動性も強い。

2008年度は約18億円の最終赤字だが約4億円の営業黒字、2009年度は約1500万円の最終黒字、2010年度は約21億円の最終黒字をそれぞれ計上している。

社員は未経験者を多く採用[3]しているが、現場の人手不足や退職者の多さが2014年の第186回国会で取り上げられている[4]

また、創立当時より社内労働組合が存在しない[5]

営業状況の推移 編集

年度 回次 決算年月 営業収益 営業損益 経常損益 当期純損益
2004 第15期 H17/3 n.a. ▲ 10.18億円 ▲ 9.49億円
2005 第16期 H18/3 140.40億円 n.a. ▲ 52.64億円 ▲ 49.64億円
2006 第17期 H19/3 267.74億円 n.a. ▲ 47.20億円 ▲ 37.60億円
2007 第18期 H20/3 307.28億円 ▲ 0.56億円 ▲ 19.01億円 ▲ 19.53億円
2008 第19期 H21/3 333.77億円 4.31億円 ▲ 13.63億円 ▲ 18.91億円
2009 第20期 H22/3 342.48億円 16.78億円 0.30億円 ▲ 0.15億円
2010 第21期 H23/3 353.98億円 29.66億円 26.29億円 21.41億円
2011 第22期 H24/3 360.75億円 26.95億円 21.83億円 25.30億円
2012 第23期 H25/3 379.01億円 37.36億円 29.76億円 30.93億円
2013 第24期 H26/3 398.94億円 48.45億円 37.11億円 35.19億円
2014 第25期 H27/3 404.61億円 56.08億円 42.66億円 34.97億円
2015 第26期 H28/3 420.11億円 66.74億円 51.32億円 37.94億円
2016 第27期 H29/3 432.75億円 66.95億円 50.11億円 37.00億円
2017 第28期 H30/3 443.63億円 79.55億円 61.48億円 46.01億円
2018 第29期 H31/3 463.40億円 80.33億円 60.87億円 40.86億円
2019 第30期 R2/3 468.05億円 96.53億円 76.68億円 60.06億円
2020 第31期 R3/3 313.16億円 ▲58.51億円 ▲79.01億円 ▲79.64億円
2021 第32期 R4/3 348.18億円 ▲21.79億円 ▲43.23億円 ▲46.31億円

沿革 編集

 
本店所在地(旧本社・新御徒町駅A2出口)

路線 編集

車両 編集

車両は、直流電化区間である秋葉原 - 守谷間のみで使用されるTX-1000系と、交流電化区間である守谷 - つくば間を含む全線で使用されるTX-2000系およびTX-3000系があり、ダイヤによって使い分けている。

TX-2000系は開業時に6両編成16本(第51編成 - 第66編成、96両)が在籍していた。2008年に6両編成4本(第67編成 - 第70編成、24両)、2012年に6両編成3本(第71編成 - 第73編成、18両)がそれぞれ追加導入された[10][11]。(第71編成は2019年に発生した脱線事故により一部の車両が廃車[12]

TX-3000系は2020年3月に運行を開始した[9]。30両(6両固定×5編成)が増備された。

車両番号の振り方 編集

TX-○○○○

  • 千の位 … 電気方式:1→直流用、2・3→交直両用
  • 百の位 … 車両番号:つくば方から秋葉原方へ1から6(通称営団方式、号車番号と同じ)
  • 十と一の位 … 編成番号:直流用車両のTX-1000系は01から14、交直両用車両ではTX-2000系は51から73、TX-3000系は81から85

将来に増結を予定している場合、事業者によってはあらかじめ空き番号を設ける場合があるが、TX-1000・2000系は百の位に欠番はない(東京急行電鉄5050(東横)・5080(目黒)系と同じ)。

運賃・企画乗車券 編集

TXカード 編集

パスネットに対応した鉄道乗車カード磁気カード)である。開業と同時に発売を開始し、2008年1月に終売した。カードは5,000円、3,000円、1,000円の3種類があった。図柄は「パスネット」のみの表記となっており、「TXカード」の表記はされなかった。通常カードのほか記念カードがあり、通常カードはTXのマスコットキャラクタースピーフィと路線図がモチーフで記念カードは違う絵柄であった。

2007年3月18日、ICカードPASMO」を導入し、2008年3月14日の終電をもってパスネットの自動改札機利用を終了した。残額のあるTXカードは同年3月15日以降無手数料での払い戻しや、PASMOへ残額の移行を行っているほか、自動券売機での切符の購入、自動精算機、有人改札での乗り越し精算でそれぞれ引き続き利用できる。

TXカードは、券売機等での利用を2015年3月31日に終了し、払い戻しの取り扱いを資金決済に関する法律に基づいて2018年1月31日をもって終了することが発表されている[13]

携帯電話・無線LANサービス 編集

地下区間を含む全線の走行中の車内で、全携帯電話事業者の電波が受信可能であると宣伝しているが、Y!mobilePHSサービスは対象外で地下の駅間など使用できない区間がある。

TX-2000系電車の車内で公衆無線LANが利用できる。開業時から2006年7月まで車内で無線LANによるインターネット接続のモニターテストが行なわれ、同年8月24日からMzoneのサービスが開始された。

しかし、2022年12月に、列車内および駅構内で提供中の公衆無線LANサービスの一部が終了することになった。列車内では全てが、駅構内ではNTTドコモの「d Wi-Fi」が提供を終えた。なお、駅構内の「TX free Wi-Fi」や、「Japan Wi-Fi auto-connect」、「TOKYO free Wi-Fi」は提供を継続している。[14]

不祥事 編集

2005年から2019年までの期間、TX沿線に関する新聞記事の切り抜きを社内の情報共有サイト(イントラネット)へ掲載していたとして、2020年、中日新聞社東京新聞を発行)[15]日本経済新聞社[16][17]から著作権侵害訴訟を受けた。東京地裁は2022年10月6日に中日新聞社へ192万3千円[18][19]、10月30日に日本経済新聞社へ459万5千円[20]の支払いを命じた。その後控訴され[21]、2023年6月8日、二審の知財高裁は首都圏新都市鉄道に対し、中日新聞社へ133万4千円[22][23]、日本経済新聞社へ696万円[24]の支払いを命じた。

2023年10月25日、上掲と同様の内容により、共同通信社が首都圏新都市鉄道を著作権侵害で提訴した[25]

脚注 編集

  1. ^ 代表取締役の異動に関するお知らせ』(プレスリリース)。 オリジナルの2023年6月29日時点におけるアーカイブhttps://www.mir.co.jp/assets_rti/pdf/a8be6f46bf8af65fa7e32f4a8ea5d205.pdf 
  2. ^ a b c d e f g h i j k 首都圏新都市鉄道株式会社『第31期(2020年4月1日 - 2021年3月31日)有価証券報告書』(レポート)2021年6月25日。 
  3. ^ a b 首都圏新都市鉄道株式会社の有価証券報告書(2012年04月01日 - 2013年03月31日期)”. 有報リーダー. 2013年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月10日閲覧。
  4. ^ 第186回国会 予算委員会第八分科会 第1号(平成26年2月26日(水曜日))”. 衆議院. 2020年10月10日閲覧。 アーカイブ 2021年10月26日 - ウェイバックマシン
  5. ^ つくばエクスプレスで「トラブル・不祥事多発」一体なぜ!? アーカイブ 2022年12月9日 - ウェイバックマシン - 現代ビジネス 2017年11月8日発信。同年同月10日閲覧。
  6. ^ 都市高速鉄道研究会 編 編『つくばエクスプレス建設物語 ―構想・施工・新技術の紹介―』成山堂書店、2007年3月18日、18頁。ISBN 978-4-425-96121-4オリジナルの2022年4月7日時点におけるアーカイブhttps://books.google.com/books?id=M2-oPUTkaOYC&pg=PA182023年4月8日閲覧 
  7. ^ 平成31年度末の輸送力増強に向けて車両5編成(30両)を増備します” (PDF). 首都圏新都市鉄道 (2016年10月19日). 2017年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月29日閲覧。
  8. ^ つくばエクスプレス,車両増備へ”. 鉄道ファン・railf.jp. 交友社 (2016年10月21日). 2016年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月29日閲覧。
  9. ^ a b 〜TX-3000 系を導入、朝ラッシュ時間帯は 25 本運行へ〜 2020年3月14日(土)「ダイヤ改正」を実施します!』(PDF)(プレスリリース)首都圏新都市鉄道、2020年1月30日。 オリジナルの2020年1月30日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20200130135856/http://www.mir.co.jp/company/release/upload/992fa04038c8c6e6b89444312658ff0a_1.pdf2020年5月23日閲覧 
  10. ^ 3編成18両の車両増強と南流山駅ホーム改良計画について』(PDF)(プレスリリース)首都圏新都市鉄道株式会社、2011年1月11日。 オリジナルの2012年3月6日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20120306022926/https://www.mir.co.jp/uploads/20110112085747.pdf2013年12月17日閲覧 
  11. ^ 輸送力増強に向けて車両を増備! 3編成18両(TX-2000系車両)を導入します。』(プレスリリース)首都圏新都市鉄道株式会社、2012年6月18日。 オリジナルの2012年10月7日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20121007224957/http://www.mir.co.jp/company/release/2012/3182000.html2020年10月3日閲覧 
  12. ^ いちさと (2019年7月13日). “71Fのつくば方2両が廃車”. TSUKUBA EXPRESS STYLE. 2023年3月13日閲覧。 アーカイブ 2023年3月13日 - ウェイバックマシン
  13. ^ パスネットの使用終了と残額の払い戻しについて”. パスネット協議会 (2014年12月15日). 2014年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月3日閲覧。
  14. ^ 公衆無線LAN(Wi-Fi)サービス一部サービス終了のお知らせ”. 首都圏新都市鉄道(MIR). 2023年3月18日閲覧。 アーカイブ 2022年11月25日 - ウェイバックマシン
  15. ^ つくばエクスプレス側を提訴 「著作権侵害」と中日新聞”. 日本経済新聞 (2020年2月17日). 2023年6月10日閲覧。
  16. ^ 記事無断使用、つくばエクスプレスを提訴 本社”. 日本経済新聞 (2020年5月19日). 2023年6月10日閲覧。
  17. ^ 著作権侵害訴訟の提起について” (pdf). 日本経済新聞社 (2020年5月19日). 2023年6月10日閲覧。
  18. ^ 東京新聞の記事をめぐる著作権侵害訴訟の判決について”. 中日新聞Web (2022年10月6日). 2023年6月10日閲覧。
  19. ^ TX運行会社の著作権侵害を認定 本紙記事をスキャンして無断で社内ネットワークに掲載 東京地裁判決”. 東京新聞 TOKYO Web (2022年10月6日). 2023年6月10日閲覧。
  20. ^ つくばエクスプレス側に賠償命令 本社記事を無断使用”. 日本経済新聞 (2022年11月30日). 2023年6月10日閲覧。
  21. ^ 東京新聞の記事をめぐる著作権侵害訴訟の判決に対する控訴について”. 中日新聞Web (2022年10月18日). 2023年6月10日閲覧。
  22. ^ 東京新聞の記事をめぐる著作権侵害訴訟(控訴審)の判決について”. 中日新聞Web (2023年6月8日). 2023年6月10日閲覧。
  23. ^ 東京新聞記事を無断利用、TX運行会社に賠償命令 知財高裁控訴審 著作権侵害あったと認定”. 東京新聞 TOKYO Web (2023年6月8日). 2023年6月10日閲覧。
  24. ^ つくばエクスプレスに賠償命令 知財高裁、著作権侵害で”. 日本経済新聞 (2023年6月8日). 2023年6月10日閲覧。
  25. ^ 共同通信社、つくばエクスプレス運行会社を提訴 配信記事を社内掲示板に無断掲載 著作権侵害で”. www.tokyo-np.co.jp. 東京新聞 TOKYO Web (2023年10月25日). 2023年11月3日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集