駅集中管理システム
駅集中管理システム(えきしゅうちゅうかんりシステム)とは、一部の鉄道事業者が導入している、無人駅または駅員が常時対応していない駅(特殊勤務駅)の無人時間帯で、自動券売機、自動改札機、自動精算機などを管理駅で遠隔管理・制御するシステムのことである。駅務自動化システム、無人駅システム、駅遠隔案内システムとも呼ばれる。
北総開発鉄道(現在の北総鉄道)が1979年の開業当初から短期間(正式廃止は都心直通を開始した1991年)、駅集中管理システムの原型のような方法を導入していた(同社記事の「その他」の節を参照)が、2000年代に名古屋鉄道(名鉄)が本格的なシステムを導入するまで、採用歴のある鉄道事業者は同社の他数例のみであった。
名古屋鉄道編集
導入の経緯編集
交通輸送において自動車への依存度が高い名古屋圏の中で、自社の持つ広範な営業線区には閑散線区も多く、またこれらの多くは無人駅であるため、車掌の改札作業の負担やキセル乗車による減収などの問題を抱えていた。また人口減少などによる運賃収入の減少も見込まれ、一層の省力化も必要となるため、これらに対応すべく、北総鉄道のそれを発展させた駅集中管理システム導入が図られることになった。
同時にストアードフェアシステム「SFパノラマカード」(トランパス)も導入されることにより、利用客へのサービス向上などの効果も期待されている。これらの導入により、車内精算が2012年4月から廃止された。
名鉄ではまず、高横須賀駅の高架化をきっかけに同駅で試行導入を行い、2001年から各線に本導入を始めた。最初の導入は三河線(山線側)の三河知立~平戸橋の各無人駅。この当時はまだトランパスが導入されておらず、車内運賃収受を行わないワンマン運転開始に伴う措置として導入した。その後はトランパスの導入を間近に控えた路線の無人駅、あるいは無人化予定駅で一斉に導入を進めていたが、藤浪駅や黒田駅など高架化や駅舎の改築・駅前への大型スーパーの開店で先行導入した駅もある。
- 各路線でのトランパス導入以前に駅集中管理システムを先行導入した駅
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- 名古屋本線 黒田駅:名鉄一宮駅が管理。2004年6月24日に開業した『イオンモール木曽川』による利用者増に対応するため。同時に「トランパス」にも同日から対応した。
- 三河線 平戸橋駅 - 三河知立駅間の各駅:豊田市駅が管理。車内運賃収受を行わないワンマン運転開始に伴う措置。若林駅は一部時間帯に駅員配置。
- 常滑線 新日鉄前駅:太田川駅が管理。明確な理由は不明だが、同駅で試行導入をしたものと思われる。
- 常滑線 榎戸駅・多屋駅:常滑駅が管理。榎戸 - 常滑間高架化工事完了に伴う。
- 河和線 高横須賀駅:太田川駅が管理。駅高架化をきっかけに、同駅で試行導入をしたため。
- 津島線 藤浪駅:須ヶ口駅が管理。駅高架化に伴う。
- 広見線 日本ライン今渡駅:犬山駅が管理。駅ビルの解体に伴う。
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このシステムは機器の購入・設置と駅の部分改良が必要で設備投資が高額になるため、名鉄は利用者が非常に少なく、かつ市街地に位置しない駅は廃止とする方針をとった。
このため、2005年1月29日に名古屋本線の東笠松駅と広見線学校前駅を、2006年12月16日に西尾線の鎌谷駅・三河荻原駅、河和線の椋岡駅・布土駅、尾西線の弥富口駅の、計7駅が廃止された。
設備・詳細編集
このシステムは、無人駅に自動券売機・自動改札機・自動精算機が設置されている他に、構内放送装置・モニタリングカメラやインターホンを備え付け、管理駅の駅員が磁気非対応券の精算や問い合わせを受け付けることができる。何らかの原因で乗車券の磁気が乱れるか抜けてしまったり、非磁気券を持っている場合にはインターホンで管理駅の駅員を呼び、インターホンのカメラ部分にその乗車券をかざすと、遠隔操作で改札機が開放される。その際、乗車券は備え付けの回収箱に入れる。システム導入に伴い、駅舎を改築した駅も多いが、そのほとんどは緑色の屋根に白と茶色の濃淡のタイルの壁面である。
また、車掌による車内検札や乗車券の発券作業や無人駅での改札作業が、各駅に設置されたこれらの機器に置き換えられたことで車掌の乗務が不要となり、ワンマン運転が可能となる(小牧線と三河線で実施)他、システム導入線区内の駅員配置駅を無人化、または特殊勤務駅にすることもできる。
導入する自動改札機にストアードフェアシステム「SFパノラマカード」(トランパス)対応の機能を併せ持たせることで、利用客は対応カードを持っていれば乗車券を購入する必要がなくなる。
現況編集
名鉄ではこのシステムを2007年度までに全線に導入する予定であったが、計画を変更し、蒲郡線の全駅(吉良吉田駅を除く)、広見線の4駅、並びに尾西線の弥富駅には導入しないことを正式に発表した。また、モンキーパークモノレール線は導入されることなく、2008年12月28日付けで路線自体が廃止された。なお、築港線については1駅間のみの路線であることから、接続駅である大江駅で運賃の収受を行っているため、導入予定から外されている[注 1]。
- †:特殊勤務駅(時間帯によっては駅員が不在になる駅)
- ‡:列車が来た際に、西枇杷島駅の信号係によって、駅構内の踏切が開けられる。列車が来ない間は待合室で待機する。
非導入路線・駅編集
- 蒲郡線(対応策として、吉良吉田駅に中間改札を設置)
- 広見線(明智駅 - 御嵩駅。対応策として、新可児駅に中間改札を設置)
- 尾西線(弥富駅。JR東海管轄のため)
- 豊田線(赤池駅。名古屋市交通局管轄のため)
有人駅への設置編集
有人駅でも改札口を増設する際にこのシステムを導入する例が時々見受けられる。2014年現在の導入駅と改札口は以下の通り。
- 笠松駅(一宮方面改札口)
- 名鉄一宮駅(南改札口・4階駐車場改札口)
- 国府宮駅(橋上改札口)
- 名鉄名古屋駅(4番線入口・南改札口・西改札口)
- 金山駅(東改札口)
- 鳴海駅(東改札口)
- 新安城駅(北改札口)
- 東岡崎駅(東改札口)
- 徳重・名古屋芸大駅(西改札口)
- 犬山駅(北改札口)
- 犬山遊園駅(新鵜沼方面改札口)
- 新鵜沼駅(東改札口)
- 南加木屋駅(西改札口)
- 巽ヶ丘駅(東改札口)
- 知多武豊駅(東改札口)
- 西尾駅(エレベーター専用改札口)
- 田県神社前駅(平安通方面改札口)
- 大森・金城学院前駅(北改札口)
- 三郷駅(南改札口・東改札口)
- 木田駅(南改札口)
- 甚目寺駅(北改札口)
- 知立駅(南改札口)※駅高架化工事に伴う臨時改札口
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その他の例編集
- 関東鉄道:常総線で導入。
- 新京成電鉄:新京成線 上本郷駅・松戸新田駅・みのり台駅・三咲駅・滝不動駅・高根木戸駅・習志野駅・前原駅で導入。
- 東京都交通局:日暮里・舎人ライナーで導入。
- 東京急行電鉄:こどもの国線 恩田駅・こどもの国駅で導入。長津田駅から遠隔監視・制御をしている。
- 西武鉄道 : 夜間、早朝無人駅の西武園駅、遊園地西駅、東吾野駅、正丸駅で導入。
- ゆりかもめ
- 多摩都市モノレール
- 横浜シーサイドライン:金沢シーサイドライン全駅で、1989年の開業当初より新杉田駅と並木中央駅から各駅の集中監視を行っている。
- 三岐鉄道:北勢線で駅務機器自動化システムを導入。
- 能勢電鉄:1990年に全駅に自動改札機が設置された後、1991年から駅集中管理システム(遠隔操作システム)が稼動している。各無人駅の改札口は山下駅に設置された遠隔制御センターから遠隔管理される。
- 神戸電鉄
- 東日本旅客鉄道(JR東日本):「駅遠隔操作システム」の呼称で、2014年2月2日に八王子支社管内の片倉駅・八王子みなみ野駅・相原駅(以上八王子駅が管理)[1]を皮切りに、以下の駅で導入[2]。早朝時間帯を中心に導入し、従来一部時間帯に改札を閉鎖していた駅でも終日運用を行うことで「利用状況に合わせた効率的な駅運営」を目指すとしている[3]。かっこ内は導入日。
- 東海旅客鉄道(JR東海):「集中旅客サービスシステム」の呼称で2013年に武豊線(大府駅・尾張森岡駅・石浜駅・半田駅を除く6駅)に導入[4]。2017年より東海道本線 西小坂井駅 - 相見駅間(蒲郡駅を除く8駅)にも導入されている[5]。2020年12月から西岡崎駅 - 逢妻駅間(安城駅・刈谷駅を除く5駅)と関西本線 八田駅 - 弥富駅間にも導入予定[6]。
- 西日本旅客鉄道(JR西日本):「改札口コールシステム」[7]の呼称で自動改札機のある駅に導入。有人駅の一部改札口にも導入されているケースがある。
- 九州旅客鉄道(JR九州):「ANSWERシステム」の呼称で2015年3月14日から香椎線全線(香椎駅・長者原駅を除く14駅)に導入[8]。導入された駅は「Smart Support Station」の呼称が与えられている[9]。2017年3月4日からは筑豊本線 若松駅 - 新入駅間(折尾駅を除く11駅)にも導入[10]。2018年3月17日から大分市内の3駅(牧駅・幸崎駅・滝尾駅)にも導入。大分大学前駅・敷戸駅にも2018年12月に導入した他、日豊本線高城駅 - 坂ノ市駅間、豊肥本線中判田駅にも導入を検討している[11][12]。このほか2020年5月に指宿枕崎線の郡元駅 - 喜入駅間での導入を予定(谷山駅・慈眼寺駅では同年2月より試行予定)している[13]。
その他、関西の私鉄各社にもスルッとKANSAI加入をきっかけにこのようなシステムを導入した会社も多い。
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脚注編集
注記編集
出典編集
- ^ “JR東日本管内で初めて「駅遠隔操作システム」を導入しました” (PDF) (プレスリリース), JR東日本八王子支社, (2014年3月20日) 2017年3月4日閲覧。
- ^ “首都圏の一部の駅に駅遠隔操作システムを導入します” (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道, (2013年12月19日) 2017年3月4日閲覧。
- ^ “JR東日本、首都圏の駅に遠隔操作システム導入…2014年2~3月に18駅”. Response.. (2013年12月20日) 2017年3月4日閲覧。
- ^ “武豊線への集中旅客サービスシステムの導入について” (プレスリリース), 東海旅客鉄道, (2012年11月5日) 2017年3月4日閲覧。
- ^ “JR東海、東海道本線に集中旅客サービスシステムを導入”. Response.. (2016年12月15日) 2017年3月4日閲覧。
- ^ “集中旅客サービスシステムの導入駅拡大について”. 東海旅客鉄道. 2019年11月13日閲覧。
- ^ “改札口 コールシステムのご案内”. 西日本旅客鉄道. 2017年3月4日閲覧。
- ^ “JR九州、香椎線に遠隔案内システムを導入…大半が無人駅に”. Response.. (2014年12月23日) 2017年3月4日閲覧。
- ^ “香椎線の各駅が「Smart Support Station」に変わります” (PDF) (プレスリリース), 九州旅客鉄道, (2014年12月22日) 2017年3月4日閲覧。
- ^ “筑豊本線の一部が「Smart Support Station」に変わります” (PDF) (プレスリリース), 九州旅客鉄道, (2017年2月23日) 2017年3月4日閲覧。
- ^ “大分市内の一部の駅が「Smart Support Station」に変わります” (PDF) (プレスリリース), (2018年2月16日) 2018年3月6日閲覧。
- ^ “大分市内、牧駅除く7駅は無人化先送り JR九州”. 大分合同新聞. (2018年2月15日) 2018年3月6日閲覧。
- ^ “指宿枕崎線の一部駅が「スマートサポートステーション」に変わります”. 九州旅客鉄道 (2019年9月30日). 2019年10月1日閲覧。