高等裁判所長官
高等裁判所長官とは編集
高等裁判所の長たる裁判官は高等裁判所長官とされる[1]。最高裁判所の指名に基づき内閣により任命される。任命に当たっては天皇の認証が必要とされる認証官である[2]。任命資格は判事と同じである。
なお、知的財産高等裁判所は東京高等裁判所の「特別の支部」で、その長は「知的財産高等裁判所長」であり判事から補する[3]。
高等裁判所長官は、各高等裁判所の司法行政事務を総括し、裁判官会議の議長となる。各高等裁判所に高等裁判所長官秘書官各一人が置かれ、高等裁判所長官の命を受けて、機密に関する事務をつかさどる[4]。
また、その勤務する裁判所及びその管轄区域内の下級裁判所の裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、最高裁判所に対し、その旨を報告しなければならない[5]。
報酬等の待遇は、裁判官の中では最高裁判所長官・判事に次ぎ、東京高等裁判所長官については政府における副大臣等に相当する。
その他の高等裁判所長官については東京高等検察庁検事長と同等であり、政府における副大臣等よりも低く、大臣政務官等よりも高い待遇である。つまり、東京高等裁判所長官は、他の高等裁判所長官より名実共に格上とされている。
東京高等裁判所以外の長官は、法律上定められた報酬などの待遇面では同格である[注 1]。高裁長官人事の序列として東京高等裁判所長官、大阪高等裁判所長官、名古屋高等裁判所長官、福岡高等裁判所長官、広島高等裁判所長官。仙台高等裁判所長官、札幌高等裁判所長官、高松高等裁判所長官と考えられている[6]。
判事が高等裁判所長官に任命されると、多くの場合、東京、大阪以外の高等裁判所長官に就任する。その相互間での転任なども経て、その中から東京高等裁判所長官及び大阪高等裁判所長官への転任者が選ばれることが多い。
東京高等裁判所長官及び大阪高等裁判所長官は最高裁判所裁判官への出世コースの通過ポストであり、定年退官した者など一部を除けば、そのほとんどが後に最高裁判所裁判官に就いている。
東京・大阪以外の高等裁判所長官から最高裁判所裁判官に就く例もあるが少ない[注 2]。一方、札幌高等裁判所長官や高松高等裁判所長官は、それを最後に定年退官となる例が比較的多く、このポストから直接最高裁判所裁判官になった例はない。
現在の高等裁判所長官編集
裁判所 | 氏名 | ふりがな | 修習期 | 任官年 | 生年月日 | 就任日 | 学歴 | 前職 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
東京高等裁判所 | 中村慎 | なかむら まこと | 40期 | 1988年 | 1961年9月12日 | 2022年6月24日 | 京都大学法学部卒 | 最高裁判所事務総長 |
大阪高等裁判所 | 後藤博 | ごとう ひろし | 35期 | 1983年 | 1958年4月18日 | 2022年7月5日 | 東京大学法学部卒 | 福岡高等裁判所長官 |
名古屋高等裁判所 | 団藤丈士 | だんどう じょうじ | 36期 | 1984年 | 1958年4月28日 | 2022年4月25日 | 東京大学法学部卒 | 横浜地方裁判所所長 |
福岡高等裁判所 | 中里智美 | なかざと ともみ | 37期 | 1983年 | 1959年9月10日 | 2022年7月5日 | 中央大学法学部卒 | 東京家庭裁判所所長 |
広島高等裁判所 | 笠井之彦 | かさい ゆきひこ | 42期 | 1990年 | 1958年5月21日 | 2022年5月23日 | 東京大学法学部卒 | 司法研修所長 |
仙台高等裁判所 | 森純子 | もり じゅんこ | 40期 | 1988年 | 1958年5月23日 | 2022年9月2日 | 東京大学法学部卒 | 大阪家庭裁判所所長 |
札幌高等裁判所 | 白石史子 | しらいし あやこ | 36期 | 1984年 | 1958年8月17日 | 2021年8月2日 | 東京大学法学部卒 | 東京高等裁判所部総括判事 |
高松高等裁判所 | 岩井伸晃 | いわい のぶあき | 38期 | 1986年 | 1960年2月25日 | 2023年1月10日 | 東京大学法学部卒 | 東京高等裁判所部総括判事 |
その他編集
- 石坂修一は仙台高裁長官、広島高裁長官、名古屋高裁長官、大阪高裁長官と歴代最多である4つの高裁長官の経歴を持つ。
脚注編集
注釈編集
出典編集
参考文献編集
- 西川伸一 『裁判官幹部人事の研究―「経歴的資源」を手がかりとして (増補改訂版)』五月書房、2020年。ISBN 9784909542298。