鹿島 茂(かしま しげる、1949年11月30日 - )は、日本のフランス文学者文芸評論家

専門は19世紀フランス文学[1]。元明治大学国際日本学部教授。息子鹿島直写真家

経歴 編集

神奈川県横浜市金沢区出身[1]神奈川県立湘南高等学校を経て[2]、1973年東京大学文学部仏文科卒業[1]。1978年同大学院人文科学研究科博士課程単位習得満期退学[1]。大学院の指導教官は蓮實重彦[要出典]共立女子大学助教授・教授を経て、2008年より明治大学教授。2020年に定年退職。

オノレ・ド・バルザックエミール・ゾラヴィクトル・ユーゴーら19世紀作家を題材にしたエッセイで知られるが、その他にも幅広い分野での評論活動を行っている。

当初はフランス文学の研究翻訳を行っていたが、1990年代に入ると活発な執筆活動を開始し、1991年に『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞受賞[3]、1996年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞[3]、2000年『パリ風俗』で読売文学賞[1]をそれぞれ受賞した。近年は、セックス関係(セクソロジー)や、人物・街を通じ近代日本を論じた著書も刊行している。

人物 編集

発言など 編集

  • 週刊現代』2008年6月14日号で、天皇制の支持を明言した上で、皇位の女系継承容認論を展開している。その理屈は、皇室の特殊な立場からの結婚の難しさや、社会的な晩婚化とそれに伴った少子化から、皇位を男系男子で安定的に継承するのは無理があるというもの。また女系を容認すると、選択肢が非常に増えてしまうので、一定の制限をかけることが必要だとしている。
  • 毎日新聞・2006年1月15日付に掲載された書評で『脳内汚染』(岡田尊司・著)を激賞した[1]。ただし同書は、根拠とする研究結果の信憑性や筆者の主張ありきの論理展開、議論の前提となる事実の誤認が指摘されている[7]脳科学神経学の立場から、その信憑性に疑問を投げかける声も少なくない。[誰?]

著書 編集

単著 編集

  • 『「レ・ミゼラブル」百六景』(文藝春秋、1987年/文春文庫、1994年、新装版2012年)
  • 『新聞王伝説 パリと世界を征服した男ジラルダン』(筑摩書房、1991年)
  • 『デパートを発明した夫婦』(講談社現代新書、1991年/改訂版「デパートの誕生」講談社学術文庫、2023年11月)
  • 『馬車が買いたい!』(白水社、1991年、増補版2009年、新版2024年5月) - サントリー学芸賞
  • 『絶景、パリ万国博覧会 サン・シモンの鉄の夢』(河出書房新社、1992年、小学館文庫、2000年、講談社学術文庫、2022年)
  • 『パリ時間旅行』(筑摩書房、1993年、中公文庫、1999年)
  • 『パリの王様たち ユゴー・デュマ・バルザック三大文豪大物くらべ』(文藝春秋、1995年、文春文庫 1998年)
  • 『この人からはじまる』(新潮社、1995年、小学館文庫、2000年)- 現代日本人12名の評伝
  • 『歴史の風 書物の帆』(筑摩書房、1996年、小学館文庫、2009年)- 書評
  • 『子供より古書が大事と思いたい』(青土社、1996年、増補版2008年、新版2019年、文春文庫、1999年)- 講談社エッセイ賞
  • パサージュ論 熟読玩味』(青土社、1996年、新装版2004年)- ベンヤミン最後の論考を論じる
  • 『パリ・世紀末パノラマ館』(角川春樹事務所、1996年、中公文庫、2000年)
  • 『かの悪名高き 十九世紀パリ怪人伝』(筑摩書房、1997年、小学館文庫、2000年)
  • 『明日は舞踏会』(作品社、1997年、中公文庫、2000年)
  • 『愛書狂』(角川春樹事務所、1998年)- ゲスナー賞
  • 『暇がないから読書ができる』(文藝春秋、1998年)- 読書案内
  • 『空気げんこつ』(文春ネスコ、1998年、角川文庫、2001年)
  • 『パリ五段活用 時間の迷宮都市を歩く』(中央公論社、1998年、中公文庫、2003年)
  • 『上等舶来・ふらんすモノ語り』(文春ネスコ、1999年)
    • 『クロワッサンとベレー帽 ふらんすモノ語り』(中公文庫、2007年)
  • 『職業別パリ風俗』(白水社、1999年、新装版2012年、白水Uブックス、2020年)- 読売文学賞
  • 衝動買い日記』(中央公論新社 2000年、中公文庫、2004年)
  • 『セーラー服とエッフェル塔』(文藝春秋 2000年、文春文庫、2004年)
  • 『文学は別解で行こう』(白水社 2001年)- 初の文芸評論集
  • 『人獣戯画の美術史』(ポーラ文化研究所、2001年)
  • 『解説屋稼業』(晶文社 2001年)- 文庫「解説」集
  • 『背中の黒猫』(文藝春秋 2001年)- エッセイ集
  • 『破天荒に生きる』(PHP研究所 2002年)- 近代日本の起業家たちの伝記
  • 『妖人白山伯』(講談社 2002年、講談社文庫 2009年)- 長編小説
  • 『成功する読書日記』(文藝春秋 2002年)- 書評集
  • 『フランス歳時記 生活風景12か月』(中公新書 2002年)
  • 『オール・アバウト・セックス』(文藝春秋 2002年、文春文庫、2005年)
  • 『勝つための論文の書き方』(文春新書 2003年)
  • 『それでも古書を買いました』(白水社 2003年)
  • 『関係者以外立ち読み禁止』(文藝春秋 2003年)
    • 『乳房とサルトル』(光文社知恵の森文庫、2007年)
  • 『平成ジャングル探検』(講談社 2003年、講談社文庫、2007年)
  • 『悪女入門 ファム・ファタル恋愛論』(講談社現代新書 2003年)
  • 『情念戦争』(集英社インターナショナル 2003年)
  • 『社長のためのマキアヴェリズム』(中央公論新社 2003年、中公文庫、2006年)
  • 『文学的パリガイド』(日本放送出版協会 2004年、中公文庫、2009年)
  • 『怪帝ナポレオンIII世 第二帝政全史』(講談社 2004年、講談社学術文庫、2010年)
  • モモレンジャー@秋葉原』(文藝春秋 2005年)
  • 『悪女の人生相談』(講談社 2005年、講談社文庫、2008年)
  • 『60戯画 世紀末パリ人物図鑑』(中公文庫 2005年)
  • 『甦る昭和脇役名画館』(講談社 2005年)
    • 『昭和怪優伝 帰ってきた昭和脇役名画館』(中公文庫、2013年)
  • 『パリでひとりぼっち』(講談社、2006年)- 長編小説、主人公は20世紀初頭の「日本人留学生」
  • 『パリの秘密』(中央公論新社、2006年、中公文庫、2010年)- 歴史エッセイ集
  • 『悪党(ピカロ)が行く』(角川選書、2007年)
  • 『ドーダの近代史』(朝日新聞出版、2007年)
  • 『鹿島茂の書評大全 和物篇』(毎日新聞社、2007年)
  • 『鹿島茂の書評大全 洋物篇』(毎日新聞社、2007年)
  • 『神田村通信』(清流出版、2007年)
  • 『SとM』(幻冬舎新書、2008年)
  • 『パリの異邦人』(中央公論新社、2008年、中公文庫(増補版)、2011年)- パリに滞在した作家たちの肖像
  • モンマルトル風俗事典』(白水社、2009年)
  • 『プロジェクト鹿鳴館!』(角川oneテーマ21新書、2009年)
  • 吉本隆明1968』(平凡社新書、2009年、平凡社ライブラリー、2017年) 
  • 『パリの日本人』(新潮選書、2009年、中公文庫、2015年)- 文庫は「パリの昭和天皇」を増補
  • 『パリ、娼婦の館』(角川学芸出版、2010年) 
    • 『パリ、娼婦の館 メゾン・クローズ』(角川ソフィア文庫、2013年)
  • 『「ワル姫さま」の系譜学 フランス王室を彩った女たち』(講談社、2010年)
  • 『パリが愛した娼婦』(角川学芸出版、2011年)
    • 『パリ、娼婦の街 シャン=ゼリゼ』(角川ソフィア文庫、2013年)
  • 渋沢栄一 I 算盤篇』、『II 論語篇』(文藝春秋、2011年/文春文庫(上・下)、2013年) 
  • 『蕩尽王、パリをゆく 薩摩治郎八伝』(新潮選書、2011年)
  • 『とは知らなんだ』(幻戯書房、2012年)
  • 『幸福の条件 新道徳論』(潮出版社、2012年)
  • 『「悪知恵」のすすめ ラ・フォンテーヌの寓話に学ぶ処世訓』(清流出版、2013年/PHP文庫、2020年)
  • 『悪の引用句辞典 マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき』(中公新書、2013年)
  • 『モンフォーコンの鼠』(文藝春秋、2014年)- メタフィクション
  • 『進みながら強くなる——欲望道徳論』(集英社新書、2015年)
  • アール・デコの挿絵本 ブックデザインの誕生』(東京美術、2015年)
  • 『大読書日記』(青土社、2015年)
  • 『フランス文学は役に立つ! 『赤と黒』から『異邦人』まで』(NHK出版、2016年7月)
  • 『ドーダの人、小林秀雄』(朝日新聞出版、2016年7月)
  • 『ドーダの人、森鷗外』(朝日新聞出版、2016年9月)
  • 『悪知恵の逆襲 毒か?薬か? ラ・フォンテーヌの寓話』(清流出版、2016年11月)
  • 『聖人366日事典』(東京堂出版、2016年12月)
  • 神田神保町書肆街考』(筑摩書房、2017年2月、ちくま文庫、2022年10月)
  • 『太陽王ルイ14世 ヴェルサイユの発明者』(角川学芸出版、2017年2月)
  • 『失われたパリの復元 バルザックの時代の街を歩く』(新潮社、2017年4月)- 大著・図版解説
  • エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層』(ベストセラーズ〈ベスト新書〉、2017年5月)
  • 『最強の女——天才たちを虜にした5人の女神』(祥伝社、2017年10月)
  • 『東京時間旅行』(作品社、2017年10月)- 図版解説
  • 『悪の箴言(マクシム)』(祥伝社、2018年3月)
  • カサノヴァ——人類史上 最高にモテた男の物語』(キノブックス(上・下)、2018年3月)
  • 明治の革新者 ロマン的魂と商業』(ベスト新書、2018年7月)
  • 小林一三 日本が生んだ偉大なる経営イノベーター』(中央公論新社、2018年12月)
  • 『「失われた時を求めて」の完読を求めて 「スワン家の方へ」精読』(PHP研究所、2019年8月)
  • 『本当は偉大だった 嫌われ者リーダー論』(集英社、2019年12月)
  • 『稀書探訪』(平凡社、2022年5月)- 大著・図版多数
  • 『『パンセ』で極める人間学』(NHK出版新書、2022年6月)
  • 『思考の技術論 自分の頭で「正しく考える」』(平凡社、2023年3月)
  • 『書評家人生』(青土社、2023年8月)

共著 編集

編著・写真・図集 編集

  • 『バルビエ・コレクション』〈1・2・3〉(バルビエ画集の編・解説、リブロポート、1992年 - 1994年)
    (1):アール・デコのファッションカレンダー〈1922-1926〉
    (2):ピエール・ルイスビリチスの歌」挿画
    (3):ロシアバレエダンサーのニジンスキーカルサーヴィナを描く。
  • 『バースデイ・セイント』(飛鳥新社、2000年) - 守護聖人占い本
  • 内田魯庵 明治の文学 第11巻』(編・解説 筑摩書房、2001年) 
  • ギュスターヴ・モロー 絵の具で描かれたデカダン文学』(六耀社、2001年)
  • 『バルザックを読む (1)対談篇』、『(2)評論篇』(山田登世子共編、藤原書店、2002年)
  • 宮家の時代 セピア色の皇族アルバム』(朝日新聞出版、2006年)
  • 『あの頃、あの詩を』(文春新書、2007年) - 昭和30~40年代の「国語教科書」からの選詩集
  • ジョルジュ・バルビエ画集-永遠のエレガンスを求めて』(写真鹿島直、六耀社、2008年)
  • 『パリのパサージュ 過ぎ去った夢の痕跡』(写真鹿島直、平凡社コロナ・ブックス、2008年)、改訂版・中公文庫、2021年5月
  • 『鹿島茂が語る山田風太郎』(角川文庫、2010年)- 元はNHK教育テレビ私のこだわり人物伝」放送テキスト(日本放送出版協会、2006年1月)
  • 『鹿島茂コレクション1 グランヴィル -19世紀フランスの幻想版画-』(求龍堂、2011年)
  • 『鹿島茂コレクション2 ルビエ×ラブルール アール・デコ -色彩と線描のイラストレーション-』(求龍堂、2012年)
  • 『鹿島茂コレクション3 モダン・パリの装い』(求龍堂、2013年)[9]
  • 『19世紀パリ 時間旅行 失われた街を求めて』(青幻舎、2017年)
  • 『鹿島茂コレクション フランス絵本の世界』(青幻舎、2017年)
  • 『病膏肓に入る 鹿島茂の何でもコレクション』(生活の友社、2017年)

翻訳 編集

  • 『映画と精神分析 想像的シニフィアン』(クリスチャン・メッツ、白水社〈白水叢書〉、1981年、改訂版2008年) - ※処女出版 
  • 現代SFの歴史』(ジャック・サドゥール、鈴木秀治共訳、早川書房、1984年)
  • バルザック 『ジャーナリズム博物誌』(新評論、1986年)
    • 「ジャーナリズム性悪説」ちくま文庫、1997年/「ジャーナリストの生理学」講談社学術文庫、2014年
  • バルザック 『役人の生理学』(編訳、新評論、1987年/ちくま文庫、1997年/講談社学術文庫、2013年)
  • 『においの歴史 嗅覚と社会的想像力』(アラン・コルバン、山田登世子共訳 新評論、1988年/藤原書店、1990年)
  • 『自由・平等・清潔 入浴の社会史』(ジュリア・クセルゴン、河出書房新社、1992年)
  • タブロー・ド・パリ』(解題・訳、新評論、1993年)
ジャン=アンリ・マルレ画、ギョーム・ド・ベルティエ・ド・ソヴィニー解説、石版画紹介の大著
フランチェスカ・プレモリ=ドルーレ解説、エリカ・レナード写真、ジャン・コクトーヘルマン・ヘッセ他、著名な作家20名の自宅書斎を紹介。

脚注 編集

  1. ^ a b c d e 鹿島 茂”. 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS. 2022年12月25日閲覧。
  2. ^ 鹿島茂さんに聞く 開かれたコレクション パリ街並み復元 K-Person”. カナロコ by 神奈川新聞. 2023年6月12日閲覧。
  3. ^ a b c 作家の読書道:第45回 鹿島 茂”. www.webdoku.jp. 本の雑誌社. 2022年12月25日閲覧。
  4. ^ 鹿島茂『子供より古書が大事と思いたい』文春文庫、1999年。pp.109-112.
  5. ^ ”ALL REVIEWS”上のPRリリース-「好きな書評家、読ませる書評。」 書評アーカイブWEBサイト・ALL REVIEWSがオープン。-より
  6. ^ 横綱審議会委員に仏文学者の鹿島茂氏」『産経新聞』、2024年2月1日。2024年2月1日閲覧。
  7. ^ 森津太子『『脳内汚染』岡田尊司(著)(2005年 文藝春秋)』NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会、2006年6月25日。doi:10.32165/jasag.16.1_56https://doi.org/10.32165/jasag.16.1_562022年12月25日閲覧 
  8. ^ 関連出版に、監修『渋沢栄一 天命を楽しんで事を成す 別冊太陽』平凡社 などがある。
  9. ^ 各・小野寛子(学芸員)編、練馬区立美術館群馬県立館林美術館東京都庭園美術館で行われた。

外部リンク 編集