黒猫の遊歩あるいは美学講義

森晶麿による日本の推理小説

黒猫の遊歩あるいは美学講義』(くろねこのゆうほあるいはびがくこうぎ)は、森晶麿による日本推理小説の連作短編集。早川書房主催の第1回アガサ・クリスティー賞を受賞した、作者のデビュー作。

黒猫の遊歩あるいは美学講義
著者 森晶麿
イラスト 丹地陽子
発行日 2011年10月21日
発行元 早川書房
ジャンル ミステリ
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判
コード ISBN 978-4-15-209248-9
ウィキポータル 文学
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収録作品 編集

全6編が収録されており、各話でポオの小説がモチーフとして使われている。

  • 月まで
  • 壁と模倣
  • 水のレトリック
  • 秘すれば花
  • 頭蓋骨のなかで
  • 月と王様

あらすじ 編集

僕が行うのは美的推理であって、(中略)美的でない真相は真相の名に値しない。

24歳にして大学教授になった若き天才、通称「黒猫」が「付き人」の女性ポオ研究者と共に、不正確な地図の謎や学生の自殺の真相など、数々の謎に「美しい」答えを導き出す。

登場人物 編集

黒猫
教授、24歳。誰も本名で呼ばない。
ベルクソン的美学の眼差しから芸術史を洗い直す」が研究テーマで、留学先のパリから持ち帰った論文第一弾『ベルクソンの図式から見るマラルメ』で脚光を浴び、同論文に留学先の学長の推薦文が付いていたことから、若くしての教授就任となった。
性格は、冷たさと優しさの比率が7:3。
付き人
「黒猫」の付き人。彼とは学生時代からの腐れ縁の仲。24歳。博士課程1年目、エドガー・アラン・ポオの研究者。将来は学問で身を立てたいと志している。
母ゆふきは女手一つで娘を産み育てたシングルマザーで、『竹取物語』の研究では右に出る者はいない研究者。
唐草(からくさ)
大学の学部長。「黒猫」の論文に惚れ込み、彼の教授就任を熱望した。彼の論理の進め方を猫にたとえ、「黒猫」とあだ名を付けた。

選評 編集

選考委員:北上次郎若竹七海、『ミステリマガジン』編集長

  • 作中でポオ作品のネタばらしがある点は、原作に対する敬意と配慮が欠けたマナー違反であるが、そこさえ直せば蘊蓄や魅力的なキャラクター、さわやかに読ませる文章力など総合評価が高かった。扱われる謎に派手さはなく小さいが、ポイントは謎の大きさ、派手さではなく、その謎がいかに人間の営みを映し出しているかという点にある。

関連項目 編集

作中に登場するエドガー・アラン・ポオの作品

出典 編集

  • 森晶麿 『黒猫の遊歩あるいは美学講義』 ISBN 978-4-15-209248-9
  • 『ハヤカワミステリマガジン』2011年10月号 p.112 - p.115