鼻疽(びそ、glanders)は、鼻疽菌 (Burkholderia mallei) 感染によるロバラバなどの感染症。鼻疽菌はヒトにも感染し症状を示すことがあるため、人獣共通感染症の一つである。

鼻疽対策が施されたウマの水飲み場(1917年、フィラデルフィアにて)

ウマやロバのほか、山羊にも感染する。日本での発生はみられないが、海外から侵入する可能性が心配されている(海外悪性伝染病)。日本では家畜伝染病予防法における法定伝染病の一つであり、対象動物は馬。臨床症状の違いにより肺鼻疽、鼻腔鼻疽。皮疽と呼ばれる場合もある。

原因 編集

グラム陰性芽胞桿菌である鼻疽菌の感染を原因とする。

疫学 編集

東欧、アジア、アフリカ、中東、南アフリカなどで報告される。日本での発生は報告されていない。飛沫感染および経口感染により、馬からヒト、ヒトからヒトへと伝播する。感染様式は、馬同士の直接的、間接的な接触により、経口感染、経気道感染、経皮感染、創傷感染。

病原体は環境中(土壌など)で生存することが出来ないため、病原体を有した動物との接触及び汚染された分泌物(膿)との接触が主な感染経路となる。

症状 編集

  • ヒト
    • 潜伏期間は、1〜14日(希に数年)で、肺炎膿胸、肺に鼻疽結節を形成する。初発症状は発熱、頭痛などであるが、重篤な敗血症性ショックを起こすこともある。
    • 発熱、血様膿性鼻汁、潰瘍喀血リンパ管に沿って念珠状の乾酪化結節や膿瘍を形成する。

診断 編集

グリセリンあるいは血液を添加した培地を用いて菌を分離・同定することが最も信頼性のある診断方法である。ストラウス反応モルモットの雄の腹腔内に菌を摂取すると3~4日で精巣炎が認められる)、マレイン反応(菌体成分であるマレインを点眼するとアレルギー反応が認められる)も診断に有用である。そのほか、CF反応ELISA凝集反応などの抗体検査法が用いられる。鑑別疾患として、炭疽類丹毒天然痘梅毒など。

治療 編集

ヒトではサルファダイアジンテトラサイクリンセフタジジムイミペネムなどが有効。未治療の場合、100%に近い致死率を示す。馬は治療を行わず、殺処分する。

予防 編集

ヒト用のワクチンは存在しない。輸入動物の検疫、常在地での馬、患者との接触回避、馬の殺処分により予防する。

出典 編集

参考文献 編集

  • 鹿江雅光、新城敏晴、高橋英司、田淵清、原澤亮編 『最新家畜微生物学』 朝倉書店 1998年 ISBN 4254460198
  • 見上彪監修 『獣医感染症カラーアトラス』 文永堂出版 2006年 ISBN 4830032030

関連項目 編集

外部リンク 編集