007 リビング・デイライツ

007 リビング・デイライツ』(ダブルオーセブン リビング・デイライツ、The Living Daylights)は、1987年公開、ジョン・グレン監督のスパイアクション映画007シリーズ第15作。

007 リビング・デイライツ
The Living Daylights
Timothy Dalton abd Jeroen Krabbé 1987.jpg
ティモシー・ダルトンとジェローン・クラッベ
監督 ジョン・グレン
脚本 リチャード・メイボーム
マイケル・G・ウィルソン
原作 イアン・フレミング
製作 マイケル・G・ウィルソン
アルバート・R・ブロッコリ
出演者 ティモシー・ダルトン
マリアム・ダボ
ジェローン・クラッベ
音楽 ジョン・バリー
主題歌 「The Living Daylights」a-ha
撮影 アレック・ミルズ
編集 ジョン・グローヴァー
ピーター・デイヴィス
製作会社
配給 アメリカ合衆国の旗 MGM/UA Communications Co.
イギリスの旗日本の旗 UIP
公開 イギリスの旗 1987年6月29日
アメリカ合衆国の旗 1987年7月31日
日本の旗 1987年12月19日
上映時間 130分
製作国 イギリスの旗 イギリス
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $40,000,000[1]
興行収入 世界の旗 $191,200,000[1]
配給収入 日本の旗 7億7300万円[2]
前作 007 美しき獲物たち
次作 007 消されたライセンス
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シリーズ誕生25周年の記念作品でもあり、大型予算で製作された。ジェームズ・ボンドをティモシー・ダルトンが演じた初の作品である。原作は、イアン・フレミングの短編『ベルリン脱出』(The Living Daylights)。ユーモアを重視した前作までのロジャー・ムーアのシリーズとは打って変わり、全編通してシリアスな展開が多い。

ストーリー編集

00メンバーらによるジブラルタルでのNATOの演習訓練中、「スパイに死を」との標札とともに、004が殺害された。訓練に参加していた007ことボンドは暗殺者を追跡。死闘の末に暗殺者を倒す。

その後、ボンドはソ連の影響下にある東側チェコスロバキアブラチスラヴァにいた。ソ連の重要人物コスコフ将軍から、ボンドを名指ししての亡命の協力依頼が英国情報部に入りその任務のために現地へ潜入していた。先に潜入していた同僚のソーンダースとともに、クラシック演奏会場から脱出したコスコフを援護する。そのとき、会場の窓からコスコフを狙撃する人物を発見したボンドは、それが演奏会にいた女流チェリストだと気づく。ボンドはとっさの判断で彼女が狙撃の素人であることを見抜き、あえて狙いを外し命を奪わなかった。そのことでソーンダースの叱責を受けるが、当初の目的であるコスコフ将軍の亡命はQの天然ガスパイプラインを使うアイディアによって、西側オーストリアへの亡命に無事成功する。

コスコフがストーナー・ハウスでMたちに明かした事件の黒幕とは、KGBのプーシキン将軍であった。先日の004殺害を皮切りに、プーシキンが「スパイに死を」の合言葉の下、英米のスパイの総抹殺を企んでいるとの告白に驚愕するMたち。その直後、牛乳配達人に化けた殺し屋ネクロスにコスコフ将軍は奪還されてしまう。

この非常事態にMはボンドにプーシキン将軍暗殺の指令を出す。単純にプーシキン将軍が黒幕とは信じられないボンドが異議を唱えると、Mは008に任務交代させると脅しをかける。コスコフ将軍を狙撃しようとしたカーラという女流チェリストに引っかかりを感じたボンドは任務を受け、Mには内緒で正体を隠して独自にブラチスラヴァに住むカーラと接触する。コスコフの恋人だと名乗るカーラを、Qがそりや自爆機能などの改造を施した車による雪上の逃走劇の末に、オーストリアへ連れ出した。

やがて、ウィーンで落ち合ったソーンダースの報告によって、コスコフとカーラの間に、国際的武器商人のウィテカーの名が浮かび上がる。ボンドはコスコフの亡命とネクロスによる奪還はウィテカーと結託したコスコフの芝居であり、カーラは捨て駒に過ぎなかったと推測する。だがネクロスの手はソーンダースにも延び、ボンドの目前で彼も殺害されてしまう。怒りに燃え、プーシキンがいるタンジールへと向かい、真相を知るべくプーシキンと対決するボンド。そこでボンドはコスコフがソ連の公金を横領していることを知り、ウィテカーとコスコフの狙いは、MI6を罠にはめボンドにプーシキンを殺害させて横領の件を闇に葬る計画だと確信し、逆にプーシキンと組んで一芝居打ち、狂言を演じてプーシキン殺害犯となる。

ところが、カーラがコスコフの甘言に乗ってしまい、ボンドはカーラとともに捕らわれて、タンジールのイブン・バットゥータ国際空港からソ連空軍の軍用機でアフガニスタンのソ連空軍基地に連行されてしまう。だが、Qの秘密兵器により脱出。牢屋にいた対ソ抵抗組織「ムジャハディン」の副司令官で、英語が堪能なカムランを助けたことによって彼のところへ身を寄せる。ボンドとカーラはコスコフ達がそこで、地元のアフガン商人「白豹団」から、横領した公金のダイヤモンドでアヘンを仕入れて裏金を稼いでいることを知る。それを阻止するため、カムランの協力を得て、アヘンを満載した輸送機を奪い、息詰まる空中での死闘の末、ネクロスを倒す。

そして、CIAのライターとともにウィテカーの屋敷に突入するボンド。ウィテカーは防盾つきのサブマシンガンを振り回して悪あがきをするが、ボンドの敵ではなかった。そのボンドの前にプーシキンが現れ、コスコフを逮捕する。プーシキンはボンドに感謝を表し、カーラの亡命を認めた。

キャスト編集

スタッフ編集

ボンドガール編集

 
マリアム・ダボ(1987年撮影)

ボンドガールにはイギリス、ロンドン出身のマリアム・ダボが抜擢された。ダボは、低予算のSF ホラー映画『Xtro』(1982)でスクリーンデビューを果たし、フランス人のAnalise Mercierを演じ、エイリアンを演じた。彼女は映画『9月まで』(1984)に出演し、さらに『Master of the Game』(1984)、『White Nights』(1985)、『Arthur the King』(1985)で脇役として登場した。彼女はリヨンのフレンチ・ステージで活躍し、1981年にジャックウェーバー監督の『スパルタクス』でヴァリニアを演じ、1982年に『シラノ・ド・ベルジェラック』でロクサーヌを演じ、その後1987年のフランスのテレビ映画「レイディオ」でも活躍した

ダボは『リビング・デイライツ』(1987)で大役を射止めた[3]。カーラ・ミロヴィはジェームズ・ボンドと恋に落ちる役柄だった。マリアム・ダボは、ボンド役候補のスクリーンテストの相手役をしていて、ボンドガールに抜擢された。ダボは映画との提携として、1987年9月号のボンドをテーマにした「プレイボーイ」のカバーと複数ページのセミヌード、及びヌード写真にも登場したが、後にPeople誌のインタビューで、「今はそれらの写真はしません。それ以来、たくさんのことを学びました。」と語っている。

テレビでは、ダボはサイエンスフィクション・ミニシリーズ「サムシング・イズ・アウトゼア」(1988)のエイリアン・メディカル・オフィサー、タラを演じた。

興行成績編集

本作は1987年の映画の世界興行成績で第3位[4]。日本では1988年度の外国映画の配給収入で第9位[5]

解説編集

 
フォルクスオパー
 
ガソメーター
 
シェーンブルン宮殿(オーストリア、ウィーン)
  • プロデューサーは、ティモシー・ダルトンに「まだ他の俳優のオーディションを実施し続けている」と告げることで、ダルトンにボンド役を引き受けるよう催促したという[6]
  • 4代目ボンドはサム・ニールに決まりかけたが、プロデューサーのブロッコリが却下した。後に5代目ボンドとなるピアース・ブロスナンも有力候補だったが、『探偵レミントン・スティール』の撮影でスケジュールの都合がつかず見送られた。
  • 制作サイドはサム・ニールに固執し、ニールを起用したかったと回想している。
  • ティモシー・ダルトンは、1971年にショーン・コネリーの後任としてボンド役を依頼されたが、ボンドを演じるには若すぎるという理由で辞退していた。また、本作の8年前にもロジャー・ムーアが降板を考えていたため依頼が来たが断っており、今回3度目の依頼でようやく引き受けた[7]
  • 本作よりマネーペニー役がキャロライン・ブリスに代わる。ブリスは歴代最年少でマネーペニーを演じた(26歳)。
  • 悪役が赤十字のマークがついた車両で麻薬を運搬したため、赤十字関係者は激怒した。イギリスの赤十字は裁判所に提訴することも検討したが、結局提訴は見送られた。
  • 悪役コスコフのキャラクターは実在のKGB将校ヴィタリー・ユルチェンコにまつわる事件を参考に作られた。
  • この作品で悪役の武器商人を演じたジョー・ドン・ベイカーは、後に『ゴールデンアイ』『トゥモロー・ネバー・ダイ』で、ボンドの協力者であるCIA情報員ジャック・ウェイドを演じることになる。

主題歌編集

 
a-ha(2005年撮影)
  • 当初は「ペット・ショップ・ボーイズ」が唄う"This Must Be the Place I Waited Years to Leave"の予定だったが、歌詞の内容が宗教色が濃いという問題で不採用になった。
  • 83年以降、楽曲のレベル低下が激しくなってきた。前作の成功から、本作も主題歌はボンド映画ベテランのジョン・バリーと、1980年代中期の産業ポップ・バンド、ノルウェーa-haのコラボレーションによるものとなった。しかし前回とは異なりバリーと a-ha は意見がことごとく対立し、その結果主題歌 Living Daylights にはジョン・バリーのミックスによる版とa-haのミックスによる版の二つが存在するという異例の事態となった。これを機にバリーは「もはや自分の出る幕ではない」とボンド映画からの引退を表明している[8]
  • 本作ではシリーズで初めて、オープニングとエンディングで異なるテーマ曲が歌われた[9]。エンディングテーマを歌ったのは、イギリスのバンドのプリテンダーズである。
  • a-haが担当した主題歌は、イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高位5位と健闘したが、アメリカでは発売されなかった為チャート入りを果たせなかった。また、エンディング・テーマだったプリテンダーズの"If There Was A Man"は、イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高49位だったが、こちらも、アメリカではチャート入りしていない。さらに、アルバム・チャートでもランク入りを果たせなかった。

エピソード編集

 
プラーター公園(オーストリア、ウィーン)の大観覧車
  • ソ連KGB内部の権力闘争やアフガニスタン侵攻など当時の国際情勢を色濃く反映している。
  • 原題は『意識、正気』などの意味。公開当時の日本では「生きている日光」などの珍訳も取りざたされた。surprise the living daylights outで「気を失うほど驚かせる」の意味になるが、同様のボンドの台詞に「死ぬほど驚いた」(I must have scared the living daylights out of her.)[10]の字幕がつけられたため、「living daylights=死ぬほど驚くこと」との誤解まで生じた。このタイトルは短編からのもの。
  • 冒頭のアクションは、ジブラルタルのザ・ロック(ロック・オブ・ジブラルタル)山頂にあるイギリスのレーダー基地に、SASが守備する中、00要員(002、004、007)がパラシュート降下するという演習で始まる。ジブラルタルはイギリスの海外領土で、地中海と大西洋を結ぶジブラルタル海峡に臨む要衝であり、対岸は中盤以降の舞台となるモロッコのタンジールである。ザ・ロックにはバーバリーマカクという猿が生息しており、画面にも登場する。

日本語吹替編集

役名 俳優 TBS テレビ朝日 DVD/BD 機内上映版
ボンド ティモシー・ダルトン 小川真司 鈴置洋孝 大塚芳忠 津嘉山正種
カーラ マリアム・ダボ 勝生真沙子 深見梨加 魏涼子
コスコフ ジェローン・クラッベ 羽佐間道夫 江原正士 内田直哉
ウィティカー ジョー・ドン・ベイカー 内海賢二 玄田哲章 楠見尚己
カムラン アート・マリック 石丸博也 小杉十郎太 大滝寛
プーシキン ジョン・リス=デイヴィス 飯塚昭三 有本欽隆 辻親八
M ロバート・ブラウン英語版 石森達幸 大木民夫 中博史
マネーペニー キャロライン・ブリス 稀代桜子 加藤優子 吉田陽子
Q デスモンド・リュウェリン 北村弘一 田口昂 白熊寛嗣
ネクロス アンドリアス・ウイスニウスキー 中田和宏 諸角憲一 桐井大介
ソンダース トーマス・ウィートリー 秋元羊介 宮本充 髙階俊嗣
ライター ジョン・テリー 大塚芳忠 成田剣 風間秀郎
グレイ国防大臣 ジェフリー・キーン 峰恵研 塚田正昭
ゴーゴル将軍 ウォルター・ゴテル 小関一
フィヨードル大佐 ジョン・ボウ 稲葉実 御友公喜
看守 ケン・シャロック 辻親八 手塚秀彰
ルバビッチ ヴァージニア・ヘイ 横尾まり さとうあい
ロジーカ・ミクロス ジュリー・T・ウォレス 斉藤貴美子
リンダ ベル・アヴェリー 種田文子 沢海陽子
スタッグ軍曹 スコット・ホクスビー 古田信幸 堀川仁
本部の男性 マーク・ボイル 沢木郁也
兵士 ポール・ウェストン 大塚芳忠 緒方文興

※キングレコードから発売の特別版DVDにはTBS版とテレビ朝日版の2バージョンの吹替を収録。

プロデューサー - 上田正人、演出 - 伊達康将、翻訳 - 岩佐幸子、効果 - リレーション、制作 - 東北新社/TBS、解説 - 宮島秀司

 ※『水曜ロードショー』最終回作品となった。

  • テレビ朝日版:初回放送1998年12月27日21:02-23:09 『日曜洋画劇場』(正味約109分)
プロデューサー - 圓井一夫、演出 - 福永莞爾、翻訳 - たかしまちせこ、効果 - リレーション、調整 - 山田太平、制作 - ムービーテレビジョン
  • DVD/BD版:初出2006年11月22日発売 DVD アルティメット・コレクション
演出 - 伊達康将、翻訳 - 松崎広幸、調整 - 大浦伸浩、制作 - 東北新社

キャッチ・コピー/ポスター宣伝文編集

  • 「こんどのボンドは危険なくらい野生的。」(先行予告ポスター)
  • 「危険を生きるニュー・ジェームズ・ボンド」


脚注編集

  1. ^ a b The Living Daylights” (英語). The Numbers. 2009年6月22日閲覧。
  2. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)470頁
  3. ^ Maryam D'Abo Hopes to Bring the James Bond Girl Out of the Dark Ages in The Living Daylights”. 2020年5月8日閲覧。
  4. ^ List movies by worldwide gross” (英語). WorldwideBoxoffice.com. 2009年6月22日閲覧。
  5. ^ 興行成績一覧”. キネマ旬報DB. 2009年6月22日閲覧。
  6. ^ “Bathurst's cure for cold feet”. http://living.scotsman.com/features/Bathursts-cure-for-cold-feet.2404641.jp 2020年6月2日閲覧。 
  7. ^ Nightingale, Benedict (1987年7月26日). “007:A New Bond Meets a New Woman;Thimothy Dalton Finds a Hamlet in the Hero” (英語). ニューヨーク・タイムズ. 2009年7月4日閲覧。
  8. ^ BBCを英語で読む「ボンド映画の主題歌になれなかった名曲たち」(5)
  9. ^ ロシアより愛をこめて』で主題歌がエンディングで歌われオープニングはインストゥルメンタルだけだったり、『サンダーボール作戦』でエンディングがジェームズボンドのテーマ曲だったり、『女王陛下の007』で主題歌がなく挿入歌のみだったりしたことはあったが、オープニングとエンディングの歌が異なるのは本作がはじめてである。
  10. ^ http://www.imdb.com/title/tt0093428/quotes

関連項目編集

外部リンク編集