1989年サンマリノグランプリ

1989年サンマリノグランプリは、1989年F1世界選手権の第2戦として、1989年4月23日イモラ・サーキットで開催された。

サンマリノの旗 1989年サンマリノグランプリ
レース詳細
日程 1989年シーズン第2戦
決勝開催日 4月23日
開催地 イモラ・サーキット
イタリア エミリア=ロマーニャ州イモラ
コース長 5.040km
レース距離 58周(292.320km)
決勝日天候 晴れ(ドライ)
ポールポジション
ドライバー
タイム 1'26.010
ファステストラップ
ドライバー フランスの旗 アラン・プロスト
タイム 1'26.795(Lap 45)
決勝順位
優勝
2位
3位

概要 編集

開幕戦のブラジルグランプリを終え、ヨーロッパラウンドの初戦として行われた。

高速コーナーのタンブレロでゲルハルト・ベルガーが大クラッシュを起こしたこと、マクラーレンのアイルトン・セナアラン・プロストの確執が表面化したことなどで知られる。

1988年にエンツォ・フェラーリが死去したことを受け、サーキット名にエンツォの名前を入れ、アウトドローモ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリへと改名された。

予選 編集

金曜日の予選は雨の中で行われ、フェラーリのゲルハルト・ベルガーがトップタイムを記録し、暫定ポールポジションを獲得した。

土曜日の予選はドライコンディションで行われ、このタイムで予選の順位が決定した。マクラーレンの2台が1列目を独占し、2位プロストが3位マンセルを1.4秒も引き離すほどのタイム差があった。

決勝 編集

最初のスタート 編集

スタートが切られると、ポールポジションのセナがスタートを決め、トップを守った。上位は順位を維持して周回を重ねるが、4周目に入ったところで、5位を走行していたベルガーがタンブレロでコースを飛び出し、コンクリートウォールに激突した。これは、左フロントウィングが破損したことが原因との結論に達した[1]

この衝撃で、右サイドポンツーン内のラジエターが変形し、コクピットの横に張り出していたガソリンタンクを壊してしまった[1]。ベルガーのフェラーリは激しくスピンし、停止すると漏れ出した燃料に引火し炎に包まれた。この事故で負傷(肋骨骨折、火傷)したベルガーは、次戦1989年モナコグランプリを欠場した。

レースは赤旗が提示され、中断された。

二度目のスタート 編集

ベルガーのチームメイト、ナイジェル・マンセルはサーキットに来ていたジェームス・ハントに気が進まないと打ち明け、ハントはそれなら出走を控えるようアドバイスを送った[1]。しかし、事故原因が不明のままマンセルは出走を決意した。

再スタートを前に、ティエリー・ブーツェンウィリアムズアレックス・カフィダラーラはパンクしており、オリビエ・グルイヤールリジェはアンダーカウルを破損していた[1]。再スタート前にマシンへの作業を行うことは禁止されているが、ウィリアムズとダラーラはピットスタートを条件にオフィシャルからタイヤ交換の許可を得た。リジェはグリッド上でアンダーカウルを交換する作業を行ったことにより、失格処分となった[1]

2度目のスタートが切られると、今度は2番グリッドのプロストがリードを奪った。プロストとセナの間にあった協定は、スタートで先行した方がトサ・コーナーまでの優先権を得るというものであった[1]。ところがセナは、トサ・コーナーでプロストが開けていたインに飛び込み、プロストを抜いてしまった。

プロストはセナを追う中でスピンを喫し、レースの趨勢は決した。

レース後、プロストは記者会見を拒否してサーキットを去り、罰金を科された。

中嶋悟はバッテリートラブルのため[2]長時間のピットストップを強いられ、規定周回数を走行することができなかった。

開幕戦ブラジルグランプリ前のテストでクラッシュし脊髄損傷を負ったフィリップ・ストレイフに代わり、このレースよりAGSチームにガブリエル・タルキーニが加入した。

ラルースチームは新車ローラ・LC89を2台投入。ティレルチームは、ミケーレ・アルボレート用に新車018を1台投入したが、アルボレートは予選落ちしたためジョナサン・パーマーが決勝に使用した。

結果 編集

予選 編集

順位 No ドライバー コンストラクタ 1回目 2回目
1 1   アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 1'42.939 1'26.010
2 2   アラン・プロスト マクラーレンホンダ 1'44.558 1'26.235
3 27   ナイジェル・マンセル フェラーリ 1'49.665 1'27.652
4 6   リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 1'47.486 1'27.920
5 28   ゲルハルト・ベルガー フェラーリ 1'42.781 1'28.089
6 5   ティエリー・ブーツェン ウィリアムズルノー 1'49.451 1'28.308
7 19   アレッサンドロ・ナニーニ ベネトンフォード 1'45.536 1'28.854
8 11   ネルソン・ピケ ロータスジャッド 1'48.124 1'29.057
9 21   アレックス・カフィ ダラーラフォード 1'48.868 1'29.069
10 26   オリビエ・グルイヤール リジェフォード 1'47.371 1'29.104
11 23   ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフォード 1'47.321 1'29.152
12 9   デレック・ワーウィック アロウズフォード 1'47.859 1'29.281
13 16   イヴァン・カペリ マーチジャッド 1'48.178 1'29.385
14 17   ニコラ・ラリーニ オゼッラフォード 1'47.577 1'29.488
15 24   ルイス・ペレス=サラ ミナルディフォード 1'46.800 1'29.503
16 22   アンドレア・デ・チェザリス ダラーラフォード 1'53.681 1'29.669
17 8   ステファノ・モデナ ブラバムジャッド 1'48.415 1'29.761
18 40   ガブリエル・タルキーニ AGSフォード 1'48.795 1'29.913
19 15   マウリシオ・グージェルミン マーチジャッド 1'52.119 1'30.163
20 30   フィリップ・アリオー ローラランボルギーニ 2'00.293 1'30.168
21 10   エディ・チーバー アロウズフォード 1'45.375 1'30.233
22 7   マーティン・ブランドル ブラバムジャッド 1'46.279 1'30.271
23 20   ジョニー・ハーバート ベネトンフォード 2'05.126 1'30.347
24 12   中嶋悟 ロータスジャッド 1'46.483 1'30.697
25 3   ジョナサン・パーマー ティレルフォード 1'51.229 1'30.928
26 29   ヤニック・ダルマス ローラランボルギーニ 1'58.083 1'31.137
DNQ 4   ミケーレ・アルボレート ティレルフォード 1'51.329 1'31.206
DNQ 25   ルネ・アルヌー リジェフォード 1'48.091 1'31.268
DNQ 38   クリスチャン・ダナー リアルフォード 1'47.967 1'31.342
DNQ 31   ロベルト・モレノ コローニフォード 1'50.947 1'31.775

決勝 編集

順位 No. ドライバー コンストラクタ 周回 タイム/リタイヤ グリッド ポイント
1 1   アイルトン・セナ マクラーレンホンダ 58 1:26'51.245 1 9
2 2   アラン・プロスト マクラーレンホンダ 58 +40.225 2 6
3 19   アレッサンドロ・ナニーニ ベネトンフォード 57 +1 Lap 7 4
4 5   ティエリー・ブーツェン ウィリアムズルノー 57 +1 Lap 6 3
5 9   デレック・ワーウィック アロウズフォード 57 +1 Lap 12 2
6 3   ジョナサン・パーマー ティレルフォード 57 +1 Lap 25 1
7 21   アレックス・カフィ ダラーラフォード 57 +1 Lap 9  
8 40   ガブリエル・タルキーニ AGSフォード 57 +1 Lap 18  
9 10   エディ・チーバー アロウズフォード 56 +2 Laps 21  
10 22   アンドレア・デ・チェザリス ダラーラフォード 56 +2 Laps 16  
11 20   ジョニー・ハーバート ベネトンフォード 56 +2 Laps 23  
12 17   ニコラ・ラリーニ オゼッラフォード 52 +6 Laps 14  
リタイヤ 7   マーティン・ブランドル ブラバムジャッド 51 燃料系 22  
NC 12   中嶋悟 ロータスジャッド 46 規定周回数不足 24  
リタイヤ 24   ルイス・ペレス=サラ ミナルディフォード 43 スピン 15  
リタイヤ 15   マウリシオ・グージェルミン マーチジャッド 39 トランスミッション 19  
リタイヤ 11   ネルソン・ピケ ロータスジャッド 29 エンジン 8  
リタイヤ 27   ナイジェル・マンセル フェラーリ 23 ギアボックス 3  
リタイヤ 6   リカルド・パトレーゼ ウィリアムズルノー 21 エンジン 4  
リタイヤ 8   ステファノ・モデナ ブラバムジャッド 19 スピン 17  
リタイヤ 23   ピエルルイジ・マルティニ ミナルディフォード 6 ギアボックス 11  
失格 26   オリビエ・グルイヤール リジェフォード 4 失格 10  
リタイヤ 28   ゲルハルト・ベルガー フェラーリ 3 アクシデント 5  
リタイヤ 16   イヴァン・カペリ マーチジャッド 1 スピン 13  
リタイヤ 30   フィリップ・アリオー ローラランボルギーニ 0 電気系 20  
リタイヤ 29   ヤニック・ダルマス ローラランボルギーニ 0 電気系 26  
  • 予選、決勝順位は、公式サイト[1] およびF1グランプリ年鑑[1]より。

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g 「F1グランプリ年鑑 1989-1990」CBSソニー出版 1990年2月 ISBN 4-7897-0502-1
  2. ^ 「オートスポーツ 1989年6月15日号」三栄書房

関連項目 編集

前戦
1989年ブラジルグランプリ
FIA F1世界選手権
1989年シーズン
次戦
1989年モナコグランプリ
前回開催
1988年サンマリノグランプリ
  サンマリノグランプリ 次回開催
1990年サンマリノグランプリ