2012年ルーマニア反政府運動

2012年ルーマニア反政府運動(2012ねんルーマニアはんせいふうんどう)は、ルーマニアにおける緊縮財政政策への反発が発端となり発生した。この結果、エミール・ボック首相は退陣に追い込まれることとなった。財政再建を進めるため国民に負担を求めることが難しいことを改めて示した事件とされる[1]

2012年ルーマニア反政府運動
2012年1月15日、ブカレストにおける反政府デモ
目的
対象 バセスク大統領
ボック首相
結果 ボック首相辞任
発生現場 ブカレストなど40以上の地域
期間 2012年1月12日 - 2012年4月20日
行動 デモ活動暴動
死者 3人
負傷者 88人
参加者 1万人以上

背景編集

2007年に始まった金融危機により東欧諸国の経済状況は悪化の一途をたどり、ルーマニアも2009年3月に欧州連合国際通貨基金(IMF)に支援を要請[2]。この結果、IMFが129億ユーロ、欧州連合が50億ユーロ、世界銀行欧州復興開発銀行が20億ユーロの計200億ユーロ(当時のレートで約2兆6300億円)を融資することとなった[3][4]。こうして約1年後の2010年3月には株価指数が2倍以上になるなど効果も現れた[5]一方、融資を受けるためにIMFによりルーマニアは財政赤字を国内総生産(GDP)比6.8%以内に収めることが義務付けられ、そのため歳出削減を進めることとなった[6]。こうして政府は公務員給与の25%削減、年金15%減額といった緊縮策を提示したが、このうち年金制度については憲法裁判所が憲法違反とする判断を下す[7]。このため政府は代替策として2010年7月よりVAT(付加価値税)を19%から24%に引き上げるといった新たな財政再建策を実施し[8][9]、国民の間には緊縮政策に対する不満が高まっていった[10]

目的編集

推移編集

2012年1月12日、政府の進める医療制度改革案に反対したラーイド・アラファト英語版保健省次官が解任され、これをきっかけにバセスク大統領の退陣を求めるデモが首都ブカレストなどで始まり、全国へと広がった[11][13][14]。翌13日にはバセスク大統領が改革案を取り下げたが、14日にはブカレストの大学広場英語版などに数千人のデモ隊が集まり、警官隊が催涙弾を発射。デモ隊も投石などで応戦し17人が負傷、15日には約100人の若者が石や爆竹、発煙筒を用いて機動隊と衝突し[11]負傷者33人となった[12]。16日には約40の都市で1万人が参加、113人が身柄を拘束された[13]。一連の反政府デモはバセスク大統領の就任以来、最大規模のデモとなった[14]

事態沈静化のため、政府は17日付でアラファトを次官へ復職させた[13]ものの抗議デモは収まらず、24日には主要な16の労働組合が反政府デモを実施し、約1万人が参加[15][16]。23日には反政府デモ隊に対し自身のブログで「馬鹿な国民」「無能で暴力的」などと暴言を吐いたとしてテオドア・バコンスキ英語版外務大臣が更迭されている[16][17]。反政府デモはその後も収まらず、政権内からもボック首相は辞任すべきとの声が高まった。2月6日にボック首相は閣議後の演説で辞任を表明[18][10]。バセスク大統領は法務大臣のカタリン・プレドユ英語版を暫定首相に任命し[19]、後任の首相には元外務大臣で対外情報庁長官であったミハイ・ラズヴァン・ウングレアーヌを指名[20][21]。2月9日に新内閣が議会によって承認された[22]

その後編集

バセスクは引き続き緊縮財政を推し進める路線を堅持し、2012年5月に首相に就任したヴィクトル・ポンタとの対立が激化。大統領権限を越えて緊縮政策を進めたという理由で同年7月6日にて大統領職務を停止する決議が代議院にて可決された[23]。ポンタの属する政党連合:社会自由同盟が主導してバセスクの罷免を問う国民投票の実施を推し進め、7月29日に投票が行われた[24]。財政緊縮を進めた結果、国民からの人気は低いとも言われ、国民投票でも投票者の大半が罷免に賛成したとみられたが成立に必要な投票率に届かず、バセスクは続投することとなった[25]

出典編集

  1. ^ “ルーマニア首相 緊縮策で辞任”. NHK. (2012年2月7日). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120207/t10015828791000.html 2012年2月11日閲覧。 
  2. ^ “EU首脳会議:財政厳しい国への支援上限引き上げを検討-声明草稿”. bloomberg.co.jp (ブルームバーグ). (2009年3月16日). http://www.bloomberg.co.jp/news/123-KGMGD00YHQ0X01.html 2012年2月6日閲覧。 
  3. ^ “IMF、対ルーマニア融資プログラムで合意”. ロイター (ロイター). (2009年3月25日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-37162320090325 2012年2月7日閲覧。 
  4. ^ “IMFやEU、世銀:ルーマニア救済で200億ユーロを融資へ(2)”. bloomberg.co.jp (ブルームバーグ). (2009年3月25日). http://www.bloomberg.co.jp/news/123-KH25AK07SXKX01.html 2012年2月6日閲覧。 
  5. ^ “「リーマンショック後」の安値から1年、東欧が株式相場の上昇を主導”. bloomberg.co.jp (ブルームバーグ). (2010年3月9日). http://www.bloomberg.co.jp/news/123-KZ07CJ0D9L3501.html 2012年2月6日閲覧。 
  6. ^ “ルーマニア:IMF・EUと融資継続で協議-緊縮策の違憲判決受け”. bloomberg.co.jp (ブルームバーグ). (2010年6月26日). http://www.bloomberg.co.jp/news/123-L4KT920YHQ0X01.html 2012年2月6日閲覧。 
  7. ^ “ルーマニアの通貨レイが6週間ぶり大幅安-緊縮財政策に違憲判断”. bloomberg.co.jp (ブルームバーグ). (2010年6月25日). http://www.bloomberg.co.jp/news/123-L4KMBH1A74E901.html 2012年2月6日閲覧。 
  8. ^ “ルーマニア上院委がVAT増税拒否、IMFとの合意に暗雲”. ロイター (ロイター). (2010年8月24日). http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-16915020100824 2012年2月7日閲覧。 
  9. ^ “IMF:ルーマニアの財政赤字削減の取り組みを好感-代表団責任者”. bloomberg.co.jp (ブルームバーグ). (2010年7月5日). http://www.bloomberg.co.jp/news/123-L52F0Y0YHQ0X01.html 2012年2月6日閲覧。 
  10. ^ a b “ルーマニア首相が辞任表明 緊縮財政に批判、デモ続発”. 朝日新聞. (2012年2月6日). http://www.asahi.com/international/update/0206/TKY201202060506.html 2012年2月7日閲覧。 
  11. ^ a b c “ルーマニアで抗議デモ、緊縮財政に抗議 大統領の辞任求める”. AFPBB News (フランス通信社). (2012年1月16日). http://www.afpbb.com/article/politics/8309339/8309339 2012年2月7日閲覧。 
  12. ^ a b “ブカレスト 30名以上がデモの際に負傷”. ロシアの声. (2012年1月16日). http://japanese.ruvr.ru/2012/01/16/63914900.html 2012年2月7日閲覧。 
  13. ^ a b c “<EMeye>ルーマニア政府、新保険法制定めぐる反政府デモ鎮静化に動き出す”. モーニングスター. (2012年1月19日). http://www.morningstar.co.jp/portal/RncNewsDetailAction.do?rncNo=622710 2012年2月7日閲覧。 
  14. ^ a b “ルーマニアの反政府デモ、4日目に 緊縮策に反発”. CNN.co.jp (CNN). (2012年1月16日). http://www.cnn.co.jp/world/30005285.html 2012年2月7日閲覧。 
  15. ^ “<EMeye>ルーマニア労組、緊縮財政に抗議して1万人超の反政府デモ実施へ”. モーニングスター. (2012年1月24日). http://www.morningstar.co.jp/portal/RncNewsDetailAction.do?rncNo=625565 2012年2月7日閲覧。 
  16. ^ a b “<EMeye>ルーマニア首相、反政府デモを嘲笑した外相を更迭”. モーニングスター. (2012年1月25日). http://www.morningstar.co.jp/portal/RncNewsDetailAction.do?rncNo=626100 2012年2月7日閲覧。 
  17. ^ “【ルーマニア】反政府デモ隊に暴言---バコンスキ外相、解任される!”. ネット選挙ドットコム. (2012年1月25日). http://news.livedoor.com/article/detail/6221950/ 2012年2月7日閲覧。 
  18. ^ “ルーマニア首相が辞任、緊縮財政に反対するデモ多発で引責”. ロイター (ロイター). (2012年2月6日). http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE81K2E420120206 2012年2月7日閲覧。 
  19. ^ “財政緊縮策に抗議デモ、ルーマニア首相辞任”. 読売新聞. (2012年2月6日). http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120206-OYT1T00990.htm 2012年2月7日閲覧。 
  20. ^ “ルーマニア新内閣が発足”. 日本経済新聞. (2012年2月10日). http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C889DE1EAE5E2E0E4E5E2E3E2E2E0E0E2E3E09494E3E2E2E2 2012年2月11日閲覧。 
  21. ^ “ルーマニア首相辞任、緊縮策に国民反発-後任にウングレアーヌ氏”. bloomberg.co.jp (ブルームバーグ). (2012年2月7日). http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LYZVDS07SXKX01.html 2012年2月7日閲覧。 
  22. ^ “首相にウングレアーヌ氏=財政再建へ決意-ルーマニア”. 時事通信. (2012年2月10日). http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012020901038 2012年2月11日閲覧。 
  23. ^ “大統領の職務停止決議 ルーマニア、緊縮政策めぐり”. 朝日新聞. (2012年7月8日). http://www.asahi.com/international/update/0707/TKY201207070604.html 2012年7月29日閲覧。 
  24. ^ “大統領罷免問う国民投票、緊縮反発のルーマニア”. 読売新聞. (2012年7月29日). http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20120729-OYT1T00941.htm 2012年7月29日閲覧。 
  25. ^ “バセスク大統領続投へ=罷免めぐる国民投票不成立-ルーマニア”. 時事通信. (2012年7月30日). http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012073000264 2012年7月30日閲覧。