メインメニューを開く

2020年以降の経済財政構想小委員会(2020ねんいこうのけいざいざいせいこうそうしょういいんかい)は、多様な生き方・働き方の観点から、自助の支援を基本とした社会保障制度改革などを提言している、自民党の若手議員を中心に構成された、財政再建特命委員会傘下の小委員会である[1]。本項では後に発足した「人生100年時代の制度設計特命委員会」についても扱う[2]

目次

概要編集

2015年12月、政府の2015年度補正予算案に、低所得の高齢者に一人あたり3万円を支給する臨時給付金が計上されたことについて、少子化対策が大事と言いながら高齢者向けの政策が優遇されすぎではないかと小泉進次郎村井英樹小林史明ら若手議員から指摘が相次いだのがきっかけとなり、翌年の2月、小泉を中心として発足した[3][4][5]。自民党、公明党、旧民主党の三党合意で取り決められた、「社会保障と税の一体改革」の改革工程表は2020年までだが、この小委ではその先の2020年以降を見据えた、人口減少や高齢化に対応する社会像や、年金や医療介護などの社会保障制度改革の提言を行っている[1][5]

党内の政策の立案などを行う部会は、農業なら農林部会、厚生労働なら厚労部会など、それぞれ専門化しているが、この小委では、まずはどういう社会像を示すかという総論から入り、メンバーでビジョンの共有をおこなった後で各論に入っている。また、ほとんどの会議では、会議の資料説明に時間をとられ、議論する時間が短くなりがちだが、事前に資料を読んできてもらうことで、すぐに議論始めることができて、効率的であるとメンバーは語っている[6]。小泉は提言を通じて、将来の社会保障について国民全体で考えるきっかけを作っていきたいと述べている[7]

2017年4月、小委の提案の具体的な検討に向けて、「人生100年時代の制度設計特命委員会」が発足した。委員長は茂木敏充政調会長[2]

提言内容編集

レールからの解放編集

 
日本の人口構造の推移と見通し。全体の人口減少と同時に65歳以上の人口(青)の割合が上昇する。

2016年4月、将来の社会像「レールからの解放」を発表。戦後の経済成長を支えた、「20年学び、40年働き、20年老後を過ごす」といった新卒一括採用終身雇用による生活保障や、それに基いて設計された国民皆保険・皆年金などの画一的な日本型経済モデルを「第一創業期」と位置づけ、それらが加速度的に進む人口減少高齢化の中では通用しないとし、これからの人口減少や高齢化を逆に強みに変える新しい経済社会像、「第二創業期」が必要と主張。「第二創業期」では、人工知能ロボットなどの革新的な技術を経済成長に活用、また、65歳を超えても働く意欲のある高齢者や、仕事と子育てを両立する女性、転職や学び直しなど、年齢や性別等に関係なく、それぞれの価値観とタイミングで自分の人生を選択できる社会を創造。加えて、現在の日本の社会保障は高齢者に給付が中心で、負担は現役世代がしているが、高齢化が進むと更に偏りが大きくなるとして、年齢ではなく、所得や資産に応じた「全世代型」の給付・負担で、社会保障の基本である、本当に助けが必要な人を社会全体が支える仕組みに転換すべきであるとの総論をまとめた[8][9][10]

厚生労働省再編案編集

同年5月、厚労省の予算規模が国債費を除く一般会計支出の4割以上を占め、また、国会での厚労大臣の答弁回数や、厚労委員会での審議時間も、ほかと比べて突出して多いなど、業務の肥大化が顕著である点を挙げ、そして厚労省の業務が、例えばアメリカでは社会保障・年金・労働政策の3つの省庁に分類されているなどの諸外国の事例を参考に、今後の社会の構造変化に対応するためとして厚労省の再編案を示した[11][12][13]。案では2~3の分割・新省設置や2大臣制の検討を提示[13]

人生100年時代の社会保障へ編集

同年10月、「レールからの解放」を具体化した提言を発表[1]

第二創業期のセーフティネット(勤労者皆社会保険制度の創設) 
今の企業の厚生年金や健康保険は正社員に主眼が置かれており、一定の所得や労働時間に満たないと加入できない。これを週20時間以上働く人であれば、正規・非正規に関係なく社会保険に加入できるようにする。企業側には社会保険料の事業主負担を維持するが、働く方の低所得者には保険料を免除・軽減。あわせて解雇規制の見直しや、大学などでの学び直し・再就職支援の拡充を行う。こうした改革によって、一時的には労働コストの拡大などの痛みが伴うが、保険料の免除・軽減で手取り所得が増え、将来受け取る年金額も充実し、若者の将来不安の解消が期待される。また、現在、若者の半数近くが国民年金保険料を支払っていない状況では、将来、無年金・低年金の高齢者が増えて、生活保護費が激増する恐れがあるが、そうした問題も解決され、これからの時代に対応した、より自由に転職・兼業・副業がしやすい、企業も働く側も選びやすい労働市場が形成されるとしている[1][14]
人生100年型年金(年金受給開始年齢の柔軟化) 
今の年金制度では、厚生年金の保険料を納付できるのは69歳まで、受給開始の繰り下げも70歳までで、また、年金を受給しながら働くと、年金が減額される仕組み(在職老齢年金)となっているが、それらが働く意志も能力もある高齢者の就労を妨げてしまう恐れがあるとして、年金保険料を70歳を超えても納付可能化や、年金受給開始年齢(現行60~70歳)のより一層の柔軟化、在職老齢年金の見直し[1][14]
健康ゴールド免許(自助を促す自己負担割合の設定) 
高齢化社会の進展に加え、医療技術の更なる高度化は医療介護費の増加となる。そして、医療介護費の多くを占める、生活習慣病がん認知症といった病気は、普段から健康管理に気を配れば予防や進行の抑制ができるものも多い。しかし、現行制度では健康管理をしっかりやってきた人も、そうでない人も、保険料の自己負担は同じである。これでは健康管理を促す動機付けが十分とは言えないとして、運転免許証のゴールド免許のように、健康管理に努力すれば保険料の自己負担を低くする「健康ゴールド免許」の導入。また、現行制度では自助で対応できる軽微のリスクも、大きな疾病リスクも同じような負担だが、かぜ薬やうがい薬、湿布薬などの市販品類似薬(医師の処方がなくても、薬局などで購入できる医薬品[15])での軽微のリスク対応には公的保険の適用範囲の見直し。ただし、健康管理などで対応できない人には、きめ細やかな対応が必要ともしている[1][14][16]

こども保険編集

2017年3月発表。待機児童問題や金銭的な理由で、幼児教育・保育を受けられないという不安から子どもを持たないという選択をするなど、少子化で社会保障の将来的な担い手が減ることは、社会保障制度の持続可能性を脅かす恐れがあり、日本社会にとって大きな損失である。そうした問題を社会全体のリスクと捉え、「全世代型社会保険」の第一歩として、子どもが必要な保育・教育などを受けられないリスクを社会全体で支える「こども保険」の創設。具体的には、年金、医療、介護、雇用の社会保険料(2017年度の勤労者・事業主負担は共に15.275%)に加え、当初は勤労者と事業者のそれぞれから保険料率0.1%(年収400万の世帯だと月240円程度の負担)で約3400億円の財源を確保し、月5000円の児童手当の加算やバウチャーの配布などで幼児教育・保育の負担軽減や、保育所等の受け皿拡大で待機児童ゼロの実現。将来的には0.5%(年収400万の世帯だと月1200円程度の負担)に拡大で約1.7兆円の財源を確保し、月25000円の児童手当の加算やバウチャーの配布などで幼児教育・保育の実質無償化を目指すとしている[17][18][19][20]。加えて、「こども保険」の導入をきっかけに、社会保険全体について横断的に議論する枠組みを設定し、医療介護の給付改革と、こどものための財源確保を同時に進め、全世代型社会保障への移行。また、省庁再編案として、現状では少子化対策は内閣府、保育園は厚労省、幼稚園は文科省と担当官庁が分かれているが、そうした政策を一元的に扱う、「子ども・子育て省」の創設[21]

評価・論点編集

人生100年型年金
  • 日本老年学会は「高齢者」の定義を、現在の65歳以上から75歳以上に引き上げ、65歳から74歳までの人については「准高齢者」と位置づけて、健康な場合は就労やボランティア活動の後押しなどの社会参加を推進すべきだとする提言をまとめた。提言の背景には、高齢者の定義ができた1956年当時の日本人の平均寿命は男性が63.59歳、女性が67.54歳であったが、2015年は男性が80.79歳、女性が87.05歳と平均寿命が伸び、さらに、介護の必要もなく、健康的に生活できる「健康寿命」も平均で男性が71.19歳、女性が74.21歳と、70歳を上回ったことが挙げられている。一方で、年金の支給年齢の引き上げなどについては慎重な議論を求めている[22]
健康ゴールド免許
  • 健康診断を受けるだけで自己負担や保険料を減免だと、実際に医療費が減るとは限らないとして、まずはどうすれば効果的に健康管理ができるかエビデンスの蓄積が必要。また、一定期間、病院で受診しなければ減免するという方式だと、過度の受診抑制が起こる恐れもある[23]
  • 運動や検診などを行った人に、商品券などと交換できるポイントが受け取れる「健康ポイント制度」を複数の自治体で導入したところ、40代以上の1年間の医療費が参加しなかった人と比べ、一人あたり4万3000円以下になり、医療費抑制の効果が実証された[24]
  • 産まれた環境や労働環境などの社会の状態が、健康にどのような影響を与えるのかを検証する、社会疫学[25]の観点からみると、低所得の家庭で多くみられる、低体重で産まれた人は、64歳の時点で糖尿病になる割合が通常の人と比べ5倍以上になるとの報告や、職場のストレスの有無でメタボリックシンドロームになる割合は2.5倍となるなど、健康格差には社会の環境が要因となる場合もあり、健康管理だけではなく、貧富の格差の縮小や、社会環境を改善したりする政策が必要[26]
こども保険

(※入れ子はメンバーによる回答)

  • 子どものいない世帯にとっては、保険料を払うメリットがなく、負担だけが増えることになるので不公平[27][28][29]
    • 今の社会保障は現役世代が保険料を支払い、高齢者を支える仕組みだが、このまま少子化が進行して担い手が減少すれば、社会保障全体の持続可能性が失われかねない。少子化が改善されれば、経済・財政や社会保障の持続可能性が高まり、就学前の子どもがいない世帯にとっても間接的な利益がある。「社会全体で子育てを支える」ということが必要[29][30][31]
  • 「全世代型社会保障」といいながら、高齢者から保険料を徴収しないのは疑問[27][32]
    • 受益者負担の原則から受益の少ない高齢者には負担を求めていない。その代わり、医療・介護の給付改革で負担の伸びを抑制することによって、間接的な意味での負担になり、公平な負担に繋がる[33][30]
  • 少子化対策として消費増税や国債発行といった他の手段もあるが、保険料収入という形は適切なのか[34][28][29]
    • 消費増税については8%から10%の引き上げ分は、すでに使い道が決まっており、新たな財源を確保するにはさらなる議論・時間が必要で、子育て支援を急ぐためには得策ではない。国債発行では将来世代への負担の先送りである[35][27]

[36]

メンバー編集

関連項目編集

外部リンク編集

脚注編集

出典編集

[ヘルプ]
  1. ^ a b c d e f 小泉進次郎世代が描く「人生100年時代」の改革『日本経済新聞』2016年10月27日
  2. ^ a b c 人生100年時代の制度設計 特命委員会が発足しました『自由民主党・衆議院議員 小林史明 公式サイト』2017年4月3日
  3. ^ 補正予算案“3万円給付”に批判出るも了承『日テレNEWS24』2015年12月17日
  4. ^ 社会保障見直し、脱「シルバー」 自民が新組織『日本経済新聞』2016年2月4日
  5. ^ a b 小泉進次郎ら自民若手はなぜ新しい社会保障を構想したのか『Yahoo!ニュース』2016年11月22日
  6. ^ 2020年以降の経済財政構想小委員会による『人生100年時代の社会保障へ』提言の中身とは『自由民主党』2016年11月14日閲覧
  7. ^ 「人生100年時代の社会保障へ」を発表しました『小泉進次郎オフィシャルブログ』2016年10月26日
  8. ^ 社会保障「全世代型」に 自民小委、中長期ビジョン中間報告『日本経済新聞』2016年4月13日
  9. ^ 財政再建特命委員会2020年以降の経済財政構想小委員会『自由民主党』2016年4月13日
  10. ^ 2020年以降の第二創業期に向けた議論の経過 (PDF) 『前述の出典「財政再建特命委員会2020年以降の経済財政構想小委員会」内の資料』2016年4月13日
  11. ^ 小泉氏ら厚労省分割案 党内議論要請へ『毎日新聞』2016年5月11日
  12. ^ 厚労省の分割案、進次郎氏ら提言 省内は慎重意見が多数『朝日新聞デジタル』2016年5月12日
  13. ^ a b 人生100年時代における厚生労働省のあり方について提言をまとめました『小林ふみあきオフィシャルブログ』2016年5月12日
  14. ^ a b c 人生100年時代の社会保障へ (PDF) 『小泉進次郎オフィシャルブログの記事「人生100年時代の社会保障へ」を発表しました内の資料』2016年10月26日
  15. ^ ついに3度目の“仕分け”対象保険外しが狙われる湿布薬など市販品類似薬『ダイヤモンド・オンライン』2012年11月12日
  16. ^ こども保険 概要資料 (PDF) 23頁『「こども保険」で幼児教育無償化 ~2020年以降の経済財政構想小委員会から提言~ – 自由民主党・衆議院議員 小林史明 公式サイト』2017年3月30日
  17. ^ 教育財源を保険で捻出 自民小委、「こども保険」創設提案『日本経済新聞』2017年3月29日
  18. ^ 小泉世代の下克上 「こども保険」が安倍1強に風穴『日本経済新聞』2017年5月9日
  19. ^ こども保険 概要資料 (PDF)「こども保険」で幼児教育無償化 ~2020年以降の経済財政構想小委員会から提言~ – 自由民主党・衆議院議員 小林史明 公式サイト』2017年3月30日
  20. ^ こども保険 FAQ (PDF)「こども保険」で幼児教育無償化 ~2020年以降の経済財政構想小委員会から提言~ – 自由民主党・衆議院議員 小林史明 公式サイト』2017年3月30日
  21. ^ こども保険 本文 (PDF)「こども保険」で幼児教育無償化 ~2020年以降の経済財政構想小委員会から提言~ – 自由民主党・衆議院議員 小林史明 公式サイト』2017年3月30日
  22. ^ 「高齢者の定義75歳以上に」老年学会提言(アーカイブ)『NHKニュース』2017年1月5日
  23. ^ 進次郎氏らが掲げる社会保障の将来像を読む 4頁『東洋経済オンライン』2016年10月31日
  24. ^ 健康ポイント制度で医療費抑制効果 初の実証『NHKニュース』2016年12月8日
  25. ^ 健康格差の研究(2):社会疫学の発展 1頁 (PDF) をもとに編集『国立保健医療科学院>刊行物 -保健医療科学->バックナンバー>第56巻 第2号』2016年12月8日閲覧
  26. ^ 【インタビュー】「殺せ」ブログの長谷川豊アナと「健康ゴールド免許」の小泉進次郎氏は同類なのか?『ハフィントンポスト』2016年11月25日
  27. ^ a b c 子育て世帯の負担軽減?“こども保険”構想『NHK NEWS WEB』2017年4月5日
  28. ^ a b 【主張】こども保険 税負担の議論を逃げるな(1/2ページ)『産経ニュース』2017年4月9日
  29. ^ a b c "こども保険"子育て財源 誰が負担するのか?」(時論公論)『NHK 解説委員室 | 解説アーカイブス』2017年5月5日
  30. ^ a b こども保険 FAQ (PDF) 2頁『「こども保険」で幼児教育無償化 ~2020年以降の経済財政構想小委員会から提言~ – 自由民主党・衆議院議員 小林史明 公式サイト』2017年3月30日
  31. ^ 小泉進次郎氏が「こども保険」を強く推す理由3頁『東洋経済オンライン』2017年5月1日
  32. ^ 【主張】こども保険 税負担の議論を逃げるな(2/2ページ)『産経ニュース』2017年4月9日
  33. ^ 少子化で滅びゆく日本を救うか 「こども保険」提言した小泉氏ら自民若手の真意『BuzzFeed』2017年5月9日
  34. ^ 人材投資は成長と財政の両立が前提だ『日本経済新聞』2017年4月7日
  35. ^ 小泉進次郎氏が「こども保険」を強く推す理由1頁『東洋経済オンライン』2017年5月1日
  36. ^ こども保険 FAQ (PDF) 6頁『「こども保険」で幼児教育無償化 ~2020年以降の経済財政構想小委員会から提言~ – 自由民主党・衆議院議員 小林史明 公式サイト』2017年3月30日
  37. ^ 【人生100年時代の社会保障へ】 2020年以降を見据えた社会保障改革提言を発表しました『自由民主党・衆議院議員 小林史明 公式サイト』2016年10月27日
  38. ^ 人生100年 どう働く?『NHK NEWS WEB』2016年11月8日