2020年東京オリンピック・パラリンピック

2021年に東京で開催された夏季オリンピック・パラリンピック競技大会

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(とうきょうニーゼロニーゼロオリンピック・パラリンピックきょうぎたいかい[注釈 1]TOKYO 2020)は、2021年令和3年)7月23日から9月5日まで日本東京都で開催されたスポーツの総合大会である。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的流行を受けて、2020年夏の開催日程から1年延期となった[1]。大会延期により開催年は変わるが「東京2020」の名称に変更はない[1]。なお、公用文では第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大会の表記も用いられている[2]。また、「東京オリパラ」とも略される[3][4]。本大会では、パンデミックによる大会延期だけでなく、運営者の相次ぐ辞任、緊急事態宣言下での開催、無観客開催など、前代未聞の事態が次々と起きた[5][6][7]

ランタンに納められた聖火

2013年9月の第125次IOC総会開催都市が東京に決定した。東京でのオリンピックパラリンピックの開催は、1964年大会以来57年ぶり[注釈 2]となる。大会組織委員会は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 (TOCOG) 。

大会のモットーは“United by Emotion”(参考和訳:感動で、私たちは一つになる)[8]

概要編集

オリンピック編集

東京2020オリンピック競技大会
第32回オリンピック競技大会
Jeux de la XXXIIe olympiade
Games of the XXXII Olympiad
 
 
開催都市   日本 東京都
参加国・地域数 205並びに難民選手団
参加人数 11,092人
競技種目数 非追加種目 28競技321種目
追加種目 5競技18種目
合計 33競技339種目
開会式 2021年7月23日
閉会式 2021年8月8日
開会宣言 今上天皇 徳仁
選手宣誓 山縣亮太
石川佳純
審判宣誓 加藤将門
津崎明日美
コーチ宣誓 井上康生
宇津木麗華
最終聖火ランナー 大坂なおみ(国立競技場)
高橋礼華(夢の大橋)
主競技場 オリンピックスタジアム
国立競技場
夏季
冬季
  Portal:オリンピック
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東京2020オリンピック競技大会は、2021年7月23日から8月8日まで開催された。東京での開催は1964年の大会に続き2回目[注釈 3]、同一都市による複数回開催はアジア初となる。

パラリンピック編集

東京2020パラリンピック競技大会
第16回パラリンピック競技大会
Tokyo 2020 Paralympic Games
 
開催都市   日本 東京都
参加人数 4,400人以上(予定)
競技種目数 22競技539種目[9]
開会式 2021年8月24日
閉会式 2021年9月5日
開会宣言 今上天皇 徳仁
選手宣誓 国枝慎吾
浦田理恵
審判宣誓 東伸行
コーチ宣誓 谷口裕美子
最終聖火ランナー 上地結衣
内田峻介
森崎可林(国立競技場)
多川知希(夢の大橋)
主競技場 オリンピックスタジアム
国立競技場
夏季
冬季
  Portal:オリンピック
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東京2020パラリンピック競技大会は、東京2020オリンピック競技大会に続けて開催された障害者スポーツの国際総合大会国際パラリンピック委員会 (IPC) が統括する第16回夏季パラリンピックであり、2021年8月24日から9月5日まで開催された。

2021年への延期編集

東京大会はもともと2020年7月24日からの日程で開催される予定であった。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 世界的流行により、2020年3月24日、首相安倍晋三国際オリンピック委員会(IOC)会長のトーマス・バッハが電話会談を行い、1年程度日程を延期して2021年夏までに開催することを合意し、直後のIOC理事会で決定した[1][10]。延期は近代オリンピック史上初、奇数年開催も初である。2020年3月30日、IOCと大会組織委員会、東京都、日本政府が2021年(令和3年)7月23日からの日程で開催することで合意した[11]

延期の決定に伴い、聖火リレーテスト大会なども正式に中断された[12]

経緯編集

開催地選考の流れ編集

2011年9月2日、IOCはバクードーハイスタンブールマドリードローマ東京の6都市からの立候補申請を受理したと発表した[13]。ローマは財政難から2012年2月に立候補を取りやめ、ドーハとバクーは2012年5月の1次選考で落選し、大会の開催能力があると認められたイスタンブール、東京、マドリードの3都市が正式立候補都市に選出された[14]

東京の開催計画編集

東京の立候補は日本オリンピック委員会 (JOC) 会長の竹田恆和と当時の東京都知事石原慎太郎が招致委員会を率い、リオデジャネイロ開催となった2016年大会の招致から2回連続となった。2013年3月にはクレイグ・リーディーを筆頭に10名で構成されたIOC評価委員会が立候補3都市を現地視察し、6月25日に各立候補都市の長所と短所を記した評価報告書を公表した。報告書は公平性を保つため各都市の優劣を直接示す文言は盛り込まれていないが、東京は根幹部分での指摘がなく、財政や治安ほか全体的に高い評価を受けた[14]

投票編集

2013年9月7日、ブエノスアイレスで開かれた第125次IOC総会において開催都市選定投票が行われた。第1回目投票と選定投票では48票、第2回目投票では49票が必要とされた。東京は第1回目投票で3都市中最多票を集めたが48票には届かなかった。他の2都市への票は同数であったため選定投票が行われ、イスタンブールが東京との第2回目投票に進んだ。第2回目投票(決選投票)では60票を獲得した東京がイスタンブールを制し、IOC会長ジャック・ロゲによって現地時間午後5時20分頃、開催都市が東京と発表された[15]

2020年夏季オリンピック開催都市投票結果
都市 国名 第1回投票 選定投票 第2回投票
東京   日本 42 60
イスタンブール   トルコ 26 49 36
マドリード   スペイン 26 45

大会ビジョン編集

大会ビジョンの基本コンセプトとして「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」の3つが掲げられた[17]

多様性と調和編集

2014年にロシアソチオリンピックが開催される直前、パブリックスペースで同性愛についてポジティブに語ることなどを禁止する「同性愛宣伝禁止法」が制定され、西洋諸国から非難を浴び、政府要人らの開会式へのボイコットが相次ぎ[18]、2015年に国際オリンピック委員会 (IOC) がオリンピック憲章の根本原則に「性別性的指向に関する差別を禁止すること」を明文化した。この理念に則り、組織委員会は当初からLGBTに対する配慮をしていく方針を示している[19]

未来への継承編集

大会開催により開催都市東京や開催国日本が長期にわたり享受できる遺産(オリンピック・レガシー)を発展・継承するため、検討や提案が行われた。この場合の遺産とは単に競技会場などの建造物のみならず、再開発に伴う都市景観環境持続可能性、さらにオリンピックで醸成されたスポーツ文化やホスピタリティ精神といった「無形の遺産」も含まれる。文化プログラム観光立国の推進など様々な分野で取り組みが実施された。これに加えて、パンデミックという状況における大会の開催実績もレガシーとして謳われるようになった。

会場編集

 
東京ベイゾーンに新設された有明アリーナ(建設中、2019年5月)

大会招致時のコンセプトとして「都心で開催するコンパクトな大会」を掲げ、東京都心に近い選手村から8キロメートル圏内に、約9割の競技会場を集中させる計画となっていた。2014年、『オリンピック・アジェンダ2020』がIOC総会で採択されオリンピックの持続可能性、低費用などを優先し脱コンパクト五輪となり、東京都以外の地域での競技実施が多くなった。

メインスタジアムは、1964年東京オリンピックでメインスタジアムとなった国立競技場の建て替えにより建設されたオリンピックスタジアム国立競技場)。その他、主に内陸部のヘリテッジゾーンと臨海部の東京ベイゾーンに分けられる各会場群にて競技が行われた。

サッカーの会場の一つである札幌市1972年に札幌オリンピックが開催されたため、馬術競技(1964年東京オリンピック)とカーリング1998年長野オリンピック)が開催された軽井沢町に続き、世界で2例目の夏季・冬季両五輪の会場が置かれた都市となる見込みである。オリンピックのマラソン競歩についても、IOCが猛暑を懸念して開催地を札幌市に移すこととなった[20]。しかし、札幌市でも高温多湿の気候となり、避暑という意味では殆ど意味を成さなかった[21]

交通渋滞対策編集

2019年2月6日、組織委員会と東京都は「交通輸送技術検討会」を開き、通常料金に上乗せ課金する「ロードプライシング」など首都高速道路の交通量を減らす議論を開始した。他にも企業などに、時差出勤在宅勤務の要請などしてきたが、このままでは不十分と判断し、追加対策の必要性を確認した。「ナンバープレート規制」や複数人乗車車両の専用レーンを設ける「HOV(複数乗客)レーン導入」などの案もあるが、機器と人員が必要になるため、検討を重ね、今年度中にいずれかの追加対策を決める[22][23]

テスト大会編集

東京2020オリンピックパラリンピックに向けて、延べ56競技のテスト大会(東京2020テストイベント)の開催が予定され、本大会開催予定前年の2019年夏季から本格的に実施された。テスト大会には国内および国際競技連盟が主催する既存の大会に組み込まれるものと大会組織委員会 (TOCOG) が主催するものとがあり、TOCOGが担当するテスト大会は「READY STEADY TOKYO」の名称で開催された[24][25]

東京2020本大会の期間中は連日の猛暑が予想され、開催にあたり暑さへの対策が求められた。2019年夏季のテスト大会では、テント型の休憩所やミストシャワーの設置、人工降雪機の導入などの検証が重ねられた。2020年3月中旬以降のテスト大会は、COVID-19の流行のため延期され、スケジュールが見直された。

メダル編集

東京2020オリンピックおよびパラリンピックメダルにはリサイクル金属が使用され、リサイクル率100%のメダルはオリンピック・パラリンピック史上初の試みとなった[26]大会組織委員会 (TOCOG) は2017年4月から使用済みの携帯電話等を回収するためのボックスを設置し、メダルの材料となる金属を都市鉱山から入手する電子機器リサイクルプロジェクトを開始した[27]。メダルの製造には32kg、3,500kg、2,200kgを収集する必要があり、2年間で目標量に到達した[28]

パラリンピックのメダルのデザインは松本早紀子の作品。をモチーフとし、岩、花、木、葉、水が触覚的にも異なる質感で描かれる。表の面には帯状に「東京2020」と英語の点字で記され、側面には銅メダルがそれぞれ触って識別できるよう順位の数の丸いくぼみが施されている[29]。オリンピック・パラリンピックともに、メダルは日本産のタモ材から作られた藍色のケースに納められる[26]。入賞者に渡される表彰状には美濃手漉き和紙が使われる[29]

聖火編集

オリンピックの聖火リレー編集

 
聖火を輸送するボーイング787-8 JA837J

オリンピックの聖火は、2020年3月12日に古代オリンピック発祥の地であるギリシャオリンピア遺跡ヘーラー神殿英語版前で採火され、3月20日に日本に到着後は宮城県岩手県福島県で展示された。その後、新型コロナウイルスの影響で延期になり翌2021年3月25日に福島県のJヴィレッジを出発し、東日本大震災東北地方太平洋沖地震)の津波に耐えた奇跡の一本松や、熊本地震で被害を受けた熊本城などの被災地のほか、世界遺産なども通過する。121日をかけて全国857市区町村を回り、7月23日の開会式で点火された[30][31]

聖火ランナーは公募により1万人程度が選ばれた[32]。日本人最初のアテネを走る聖火ランナーとして、2004年アテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずきが選ばれた[33]

オリンピックスタジアムモーリス・ラヴェルの「ボレロ」が流れている中で、大坂なおみがオリンピックの最終聖火ランナーとして聖火台への点火を行った[34]

聖火トーチ編集

 
オリンピックトーチを持つ安倍晋三とパラリンピックトーチを持つ森喜朗

聖火リレーで使用されるトーチは、デザイナーの吉岡徳仁がデザインを手がけている。アルミニウム製の長さ71 cm、重さ1.2 kg。上部が桜の花びらにかたどられ、5つの花びらから炎が出る。火力や炎の大きさを一定に保つために一定量のガスを供給し続ける仕組みや、燃焼部の中心の白金製メッシュ状ドームにより、秒速17メートル以上の風や1時間に50ミリメートル以上の雨でも炎が消えないようになっている。素材の一部には東日本大震災による仮設住宅のアルミサッシの廃材を再利用している。新幹線の車両製造技術を活用し、つなぎ目のないトーチに作製されたことも特徴となっている[35][36]

聖火台編集

聖火台は開会式で点火するオリンピックスタジアム用のものと、大会期間中に点火しておく屋外用(夢の大橋に設置)のものの2種類が製作される。聖火台は太陽をモチーフにした球体が富士山の上に乗った形状をしており、点火の際に球体が花のように開いた。燃料は水素を使用。[37]

プロモーション編集

マスコットキャラクター編集

2017年5月22日、組織委員会はアンバサダーとなるマスコットキャラクターを公募することを決め発表した[38]。公募後、候補作数点を発表し小学生による決選投票を行うとした。

2017年12月7日に候補作3点が発表され[39]、日本の小学生による投票が2018年2月22日まで行われた。2018年2月28日、最多得票を得た福岡県在住でデザイナーの谷口亮がデザインした(ア)案に決定した[40]。名前は同年7月22日にミライトワとソメイティに決まった[41]

記念ナンバープレート編集

2020年東京オリンピック・パラリンピック記念ナンバープレートは白基調にオリンピックにちなんだ意匠が入ったナンバープレートである[42][43]

費用対効果編集

費用編集

2017年5月、東京オリンピックにかかる費用は約1.39兆円の費用だと東京都が試算を発表[44]。内訳は組織委員会が6000億円、東京都が6000億円、国が1200億円である[45]

2020年1月、「大会組織委員会が昨年末に発表した最終の予算案は1兆3500億円。そのうち国の負担は1500億円」[46]とされた。

費用の国際比較編集

ブラジル政府が過去の開催都市よりも経費削減に成功したと自負している2016年リオデジャネイロオリンピックが総額約120億ドル(約1.3兆円)であり、 2012年ロンドンオリンピックではスポーツ関連のみの費用が約140億ドル(約1.5兆円)であった[47]。そのため、ロサンゼルス五輪以降の8回の夏季大会の総額では1位が2008年の北京オリンピックの約3.4兆円で、2012年のロンドンが約3.17兆円で2位だった[48]。東京の2019年末の発表は1兆3500億円であり、ロンドンや北京に比べて低い。

経済効果編集

民間企業でも、メインスタジアムと選手村をつなぐ道路の間にある港区虎ノ門一帯を再開発するのに5800億円を出資するなど、オリンピックに関する各民間企業による投資や開発も活発になっている[49]。東京五輪を招致したことよる日本国内への経済効果は合計32兆3000億円を超え、新たな雇用が194万人増加すると東京都は試算している[50]

疑惑編集

招致不正疑惑編集

2016年5月11日には英紙『ガーディアン』が、東京五輪決定前後にあたる2013年7月と10月の2回に分け、東京五輪招致委員会シンガポールに拠点を置くタン・トンハンが代表を務めていた「ブラック・タイディングス」社 (Black Tidings) [51][52][53][54]の口座に総額130万ユーロ(約1億6000万円)を送金していたと報道した。[55] 2016年5月12日には仏検察当局が東京五輪招致委員会とパパ・マッサタ・ディアックとの間に280万シンガポールドル(約2億2000万円)の金銭授受があったことを確認したと発表した。

2018年12月、フランス捜査当局は東京五輪招致をめぐる贈収賄容疑でJOC会長の竹田恆和を容疑者とする捜査の開始を決定した[56][57]。2019年3月、これを受けて「会長辞任は避けられない見通し」と報じられた[58]。3月19日竹田がJOCの理事会にて、会長職を6月をもって退任することを表明した[59]

国際陸連への賄賂疑惑編集

2016年1月に、世界アンチ・ドーピング機関は、国際陸上競技連盟 (IAAF) 元会長のラミン・ディアックの息子であるカリル・ディアックと、イスタンブールのトルコ当局者との間の会話を詳述する報告書に引用された会話の写しの中で、日本の入札チームがIAAFダイヤモンドリーグまたはIAAFのいずれかに「スポンサーシップ」の支払いとしての400から500万ドルは賄賂行としてだった可能性を示唆する結論を出した。東京都側はこれを否定している[60]

8.9億円のロビー活動費疑惑編集

2020年3月31日ロイター通信がオリンピック招致を巡り高橋治之が招致委員会から820万ドル相当の資金を受け取り、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じたことについて、支払いの一部はスポンサー集めの「コミッション(手数料)」だと説明した[61]

諸問題編集

大会関係者によって多数の不祥事[5]が起き、予定が何度も大きく変わるなど、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(TOCOG)のガバナンスの欠如が指摘されている[62]

科学軽視編集

政府対策分科会の尾身茂会長による東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う新型コロナウイルスの感染拡大リスクの提言について、田村憲久厚生労働相は「自主研究の発表」[63]丸川珠代五輪相は「全く別の地平から見てきた言葉」[64]など、黙殺を暗にちらつかせた。これ以外にも政府・TOCOGは硬直した政治的判断により専門家からの提言を度々無視ないし黙殺しているのではないかと指摘されている[6][65]。また、バブル方式で大会関係者を隔離する方法についても制度上の穴が多くある状態で[66]、開幕前の段階でもバブルの外での会食[67]やウガンダの選手の逃亡騒ぎ[68]が起きた。

人権軽視編集

TOCOG幹部や演出担当から人権侵害とも取れる様々な失言が相次ぎ、海外から批判が相次いだ[69][70][71][72][73]。結果として、オリンピック運営の重要人物がドミノ的に次々と辞任する騒ぎとなった。

女性蔑視発言による森会長辞任編集

日本オリンピック委員会(JOC)評議員会の席上において、女性理事の割合を40%にすることに関連して「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげて言うと、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」、「女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困ると言っておられた。だれが言ったとは言わないが」などという女性蔑視とされる発言を公然と行ったとして批判が殺到し、森喜朗はTOCOG会長辞任に追い込まれた[74]国際オリンピック委員会(IOC)も森喜朗の発言を「森氏の最近の発言は完全に不適切であり、IOCのコミットメントや五輪アジェンダ2020の改革にも反している」とした[69]。森喜朗自身は一旦は反省の意を示したが、TOCOG会長を辞任した後、東京都内で開かれた河村建夫元官房長官のパーティーで、衆院議員会館の河村氏事務所にいるベテラン女性秘書について「河村さんの部屋に大変なおばちゃんがいる。女性と言うには、あまりにもお年だ」という差別発言を行い、再度批判が殺到した[75]

演出関係者の辞任劇編集

電通による強引な演出統括の変更と容姿侮辱案による後任演出統括の辞任編集

電通がIOCから受注していた開閉会式の演出について、2020年3月、オリンピック延期により開閉会式の準備が一時停止された際に、電通が演出統括のMIKIKOに対して準備再開の際は連絡すると約束しながら、準備再開後には電通がMIKIKOへの連絡を一切行わず、演出統括を電通出身のクリエイティブディレクターである佐々木宏に交代した。結果として、電通はMIKIKO率いる演出チームを約半年間放置し、2020年11月になってからMIKIKOに対して新しい演出統括の下で進行中のプロジェクトへの途中参加を求めたが、MIKIKOは結果に責任を持てないことと、電通から不誠実な対応があったとして辞退を表明した。この辞退表明について、電通が謝罪せずMIKIKOの主張を退けるような正当化を行ったことが広く物議を醸した。また、2021年7月の東京オリンピック開催まで半年を切っている時点で、佐々木宏が渡辺直美の容姿に対する侮辱案を提案したことが明るみとなり、佐々木宏も辞任することになった[76][77]。JOCは開閉会式の演出が完成に近いことを理由に、佐々木宏の後任となる演出統括を置かないことを決定した[78]

過去の暴力・差別行為による開閉会式の音楽担当の辞任編集

オリンピック開閉会式の音楽を担当していた小山田圭吾がデビュー前に行っていた暴力・差別行為を1990年代に音楽雑誌のインタビューで自慢気に語っていたことについて、あらゆる差別を撤廃すると定めたオリンピック憲章に反するとして批判が殺到[79][80]した。結果として、開幕4日前の2021年7月19日に本人が辞任を表明する事態となった[81][82]。小山田から被害者への贖罪は全く無く、辛うじて辞任表明で謝罪文を記載したのみである点も、客観的には無反省と解釈されている[83][83][84]。また、小山田は雑誌の記事には面白さを重視した事実と異なる記載も含まれると弁明しているが、そうであれば雑誌編集・インタビューの体制にも問題が有ったことになる[83]。問題の記事に関わった編集者・インタビュアーの1人である山崎洋一郎も自身の公式サイトで謝罪文を発表した[85]

過去のユダヤ人大量虐殺ネタによる演出担当の解任編集

オリンピック開会式の数日前、元ラーメンズ小林賢太郎が、1998年発売の若手芸人を紹介するビデオソフト『ネタde笑辞典ライブ Vol.4』[86]で、ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を題材に反ユダヤ主義的なジョークを披露していたことがSNSにおける動画の拡散で広く知られる事になった。本件は7月22日未明に橋本JOC会長にも知らされ、オリンピック憲章違反だけでなく、外交上の問題もあることから、小林は即座にショー・ディレクターを解任された[87][7]。演出については、各場面ごとに担当者が居るものの、全体の演出調整を担っていた小林が解任されたことで、翌日23日のオリンピック開会式に向けて早急に演出全体を見直す必要が生じた[88][89][90][91][72]。しかし、小林が専任で手掛けた演出は無かったため、オリンピック開会式の演出に変更は発生しなかった[92]。解任前から、一部の日本人SNSで海外の人権団体に向けて告発を続けており、7月21日には中山泰秀防衛副大臣が通報したアメリカサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)が差別行為に対して非難声明を発表していた[73]ホロコーストが起きたドイツでは、ナチス・ドイツホロコーストの再現に繋がるような行動は厳しく取り締まられており、民衆扇動罪も定められている[93][94]

営業秘密の流出編集

文藝春秋が開閉会式演出の内部資料を入手して週刊文春で報じたことで、JOCは文藝春秋に対して著作権侵害として強く抗議しているが、文藝春秋も公共性の観点から徹底抗戦の姿勢を示している。週刊文春への演出内容の掲載については内部資料流出の可能性があり、警察と相談の上でJOCによる徹底的な内部調査が行われている。JOCの主張が法的に認められれば、内部資料の流出に加担した者は、不正競争防止法違反の罪及び業務妨害罪に問われる可能性がある[95]

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では2020部分を「ニーゼロニーゼロ」と呼称している。
  2. ^ 当初の日程では56年ぶり。
  3. ^ 支那事変日中戦争)の影響で中止となった1940年の大会(回次として記録が残されている)を含めると3回目。

出典編集

  1. ^ a b c 東京五輪・パラ、「1年程度」の延期決定 「東京2020」の名称は維持”. BBC NEWS (2020年3月24日). 2020年3月25日閲覧。
  2. ^ 第三十二回オリンピック競技大会及び第十六回パラリンピック競技大会東京招致に関する決議”. shugiin.go.jp. 衆議院. 2018年8月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月5日閲覧。
  3. ^ 東京オリパラ「無観客の覚悟持っている」 橋本聖子会長 - 朝日新聞デジタル (2021年4月28日) 、2021年8月23日閲覧。
  4. ^ アスリート用東京オリパラ準備トラック(通称アスリートトラック) (PDF) - 東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部(首相官邸
  5. ^ a b もはや“呪われた五輪”? デザイン模倣疑惑、大会延期、女性蔑視発言、いじめ…東京五輪トラブルまとめ” (日本語). スポニチ Sponichi Annex (2021年7月22日). 2021年7月22日閲覧。
  6. ^ a b 菅首相、都合の悪い専門家の意見は耳貸さず 「GoTo停止」「五輪無観客」も?” (日本語). 東京新聞 TOKYO Web (2021年6月18日). 2021年7月21日閲覧。
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  8. ^ “オリパラ東京大会、モットーは「United by Emotion」に 選考委員が込めた思いは...”. J-CAST ニュース. (2020年2月17日). https://www.j-cast.com/2020/02/17379823.html?p=all 2021年7月24日閲覧。 
  9. ^ パラリンピック競技スケジュール”. TOCOG (2021年8月10日). 2021年8月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月16日閲覧。 “22競技539種目が21会場で実施され、2021年8月24日の開会式翌日から9月5日の閉幕まで、12日間にわたり繰り広げられます。”
  10. ^ 安倍総理大臣、森会長、バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長との電話会談について”. TOKYO 2020 (2020年3月24日). 2020年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月17日閲覧。
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  18. ^ 日本の首相安倍晋三は参列した。
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参考文献編集

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関連項目編集

外部リンク編集