2020年1月のイランによる在イラク米軍基地攻撃
2020年1月のイランによる在イラク米軍基地攻撃(2020ねん1がつのいらんによるざいいらくべいぐんきちこうげき、英語: January 2020 Iranian attack on American military bases in Iraq)は、2020年1月8日にイラン・イスラム共和国のイスラム革命防衛隊(IRGC)が、イラク共和国西部のアンバール県にありアメリカ軍が駐留するアル・アサード航空基地とアルビールの空軍基地を対象として複数の弾道ミサイルを発射した攻撃である[1]。IRGCは30発以上のミサイルを発射したと発表し[2]、アメリカ国防総省(ペンタゴン)はアル・アサード航空基地とアルビール空軍基地の両方が攻撃されたことを確認した[3][4]。後に、1発の弾道ミサイルがアルビール国際空港に不発弾として着弾し、もう1発はアルビールの西約30キロメートル地点に着弾した。いずれの攻撃でも死傷者は出なかったとされた[5]が、同年1月下旬のアメリカ国防総省の発表によれば、軍事基地への攻撃でアメリカ兵64人が負傷。いずれも外傷性脳損傷や脳震盪の診断を受けていたことが明らかになっている[6][7]。
2020年1月のイランによる在イラク米軍基地攻撃 ペルシャ湾危機 イラン・サウジアラビア間の代理紛争中 | |
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場所 |
イラク、アンバール県、アル・アサード航空基地 イラク、アルビール県、アルビール国際空港 |
座標 | 北緯33度48分 東経42度26分 / 北緯33.800度 東経42.433度座標: 北緯33度48分 東経42度26分 / 北緯33.800度 東経42.433度 |
目的/目標 | アルビール国際空港 |
実行組織 | イスラム革命防衛隊(IRGC) |
計画責任者 |
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年月日 | 2020年1月8日 |
標準時 | UTC+03:00 |
結果 |
6発から10発のファーテフ313ミサイルがアル・アサード航空基地に着弾 1発のギヤーム1ミサイルがアルビール国際空港から30キロメートル離れた地点に着弾(当事者による主張) 1発のギヤーム1ミサイルがアルビール国際空港に着弾、不発(当事者による主張) 3発のギヤーム1ミサイルが空中爆発(当事者による主張) |
損害 | 重大 |
死亡 |
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イスラム革命防衛隊は、この攻撃はアメリカ合衆国によるガーセム・ソレイマーニーの暗殺に対する報復であると述べた[8]。
国営の報道機関であるイラン学生通信が報じるところによると、イランは「数十の地対地ミサイル」を航空基地目掛けて発射し、攻撃声明を発表した[9]。イラン学生通信は、この攻撃は「殉教者ソレイマニ作戦(Operation Martyr Soleimani)」と題された軍事作戦の始まりであり[10]、ミサイルの発射に使用された暗号略号は「Oh, Zahra」であったとも報じた。
アメリカ合衆国当局は、これらの弾道ミサイルがイラン国内からイラクの複数箇所を標的として発射されたことを確認した[9]。着弾直後の犠牲者は報告されていない。
背景編集
ロイター通信は、2019年12月3日にアル・アサード航空基地に5発のミサイルが着弾したものの、負傷者は出なかったと報道していた[12]。一方、2020年1月3日の同通信社の記事によると、「防衛政策筋」と「付近の町の地元当局者」らは、去年12月の報道は虚偽であると話した[13]。
反響編集
オバマ政権の元メンバーであるフィル・カーターは、「イラクのアメリカ軍基地に対する短距離ミサイル攻撃」は自身の政権入り当時は「よくあること (commonplace)」であったと述べた。彼はさらに次のように述べた: 「確かに、サドル市からの短距離ミサイル発射とイランからの中距離ミサイル発射はかなり違うと認められますが、ここは戦術的な忍耐力で冷静さを保ちましょう」[14]
連邦航空局は、アメリカ合衆国の民間航空会社がイラク、イラン、ペルシャ湾、オマーン湾の上空での運航を禁止するノータムを発効した[1][15]。
オーストラリアのスコット・モリソン首相は、 オーストラリア国防軍司令官のアンガス・キャンベルに、イラクのオーストラリア軍と外交官を「守るために必要なあらゆる行動をとる」ように命じた[1]。
関連記事編集
脚注編集
- ^ a b c Washington (earlier), Maanvi Singh Joan E. Greve in; Doherty, Ben; Butler, Ben; Safi, Michael; Safi, Michael; Borger, Julian (2020年1月8日). “Iran launches missiles at US forces in Iraq at al-Asad and Erbil – live updates” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2020年1月8日閲覧。
- ^ “Iran Fires Missiles at Two U.S. Bases in Iraq: Live Updates” (英語). The New York Times. (2020年1月8日). ISSN 0362-4331 2020年1月8日閲覧。
- ^ Borger, Julian; Wintour, Patrick (2020年1月8日). “Iran crisis: missiles launched against US airbases in Iraq”. The Guardian (London). ISSN 0261-3077 2020年1月7日閲覧。
- ^ Alkhshali. “Pentagon says Iran attacked two Iraqi bases housing US forces”. CNN. 2020年1月8日閲覧。
- ^ Alkhshali (2020年1月8日). “Two ballistic missiles hit Erbil, sources say”. cnn.com. CNN. 2020年1月8日閲覧。
- ^ “イランの基地攻撃、米兵34人が脳損傷や脳振とう”. AFP (2010年1月25日). 2020年2月1日閲覧。
- ^ “米兵の負傷者64人に、イランによる在イラク基地攻撃”. AFP (2020年2月1日). 2020年2月1日閲覧。
- ^ Eqbali, Aresu; Malsin, Jared; Leary, Alex (7 January 2020), “Iran Fires Missiles at U.S. Forces in Iraq”, Wall Street Journal 2020年1月7日閲覧。
- ^ a b “Iran launches missiles into US air bases in Iraq: US official” (英語). ABC News. 2020年1月7日閲覧。
- ^ “Iran warns US not retaliate over missile attack in Iraq”. AP NEWS (2020年1月7日). 2020年1月7日閲覧。
- ^ Agency, Source: Fars News (2020年1月8日). “Iran releases footage of missile attack on US airbases in Iraq – video” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2020年1月8日閲覧。
- ^ Rasheed, Ahmed; Hassan, Samar (2019年12月3日). “Rockets hit base hosting U.S. forces in western Iraq”. Reuters (Cairo) 2020年1月7日閲覧。
- ^ “Reports of attacks on U.S. military base in Iraq are false: two sources”. Reuters. (2020年1月3日) 2020年1月7日閲覧。
- ^ Cunningham, Erin; Taylor, Adam; Brice-Saddler, Michael (2020年1月7日). “Live updates: More than 12 Iranian missiles launched at two bases in Iraq, Pentagon confirms”. Washington Post 2020年1月7日閲覧。
- ^ FAA (2020年1月7日). “#FAA Statement: #NOTAMs issued outlining flight restrictions that prohibit U.S. civil aviation operators from operating in the airspace over Iraq, Iran, and the waters of the Persian Gulf and the Gulf of Oman.pic.twitter.com/kJEbpPddp3” (英語). @FAANews. 2020年1月8日閲覧。