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曳航具巻揚機(ウインチ
展開準備中の曳航具
曳航具の繰出し口

AN/SLQ-25 ニクシー英語: AN/SLQ-25 Nixie)は、アメリカ合衆国アルゴンST社(現在はボーイング傘下)が開発した、対魚雷用の曳航型デコイ

音響誘導魚雷に対する欺瞞対抗手段を提供する受動的・電子音響的なデコイ・システム[1]で、アメリカ海軍および同盟国の艦艇に搭載されている。AN/SLQ-25はデコイ装置で、フィッシュと呼ばれる音響投射体TB-14と、艦上の信号生成装置からなり、両者は曳航ケーブルで結び付けられている[2]。デコイは流線型の筐体に封入され、曳航および信号送信用の同軸ケーブルで搭載艦艇の艦尾から曳航される[1]。デコイは信号を発信し、魚雷をその本来の目標から引き離すべく誘引する。ニクシーは、スクリューエンジン音といった、それ自身よりも魚雷のセンサーをより惹きつける艦船のノイズを模擬発信することで魚雷の受聴ソナーを打ち負かそうと試みる。典型的には大型艦艇は艦尾に2セットを搭載し、1基または2基を作動させられるようにするが、より小型の艦艇では1セットのみしか搭載できない。

AN/SLQ-25には、いままでA、B、Cの各改良型がある。AN/SLQ-25Aは、AN/SLQ-25に対して一から図面を起こして設計された。少数の副次的な機械的部品を除いて、AN/SLQ-25とAN/SLQ-25Aの間には共通部品はない。A型は光ファイバー曳航ケーブル(fiber optic tow cable, FOTC)と10馬力の二重ドラム・ウインチ式曳航具巻揚機であるRL-272Cを使用する。いくつかの技術的変更により、COTS機器がシステムに広汎に利用されている。自己診断プログラムはSLQ-25からの遠隔制御ステーションからも起動することができ、あらゆる電気的な機能を検査できる。

AN/SLQ-25BにはA型と、潜水艦および接近中の魚雷を探知するための曳航アレイ・センサーが組み合わされている。B型はまた、魚雷に対してより大きな偽のターゲットを装うために、魚雷からの探信音を受信・増幅・返送する追加の探信ソナー・デコイが組み合わされている。AN/SLQ-25CはA型のアップグレードである。C型には、いっそう長く機能的な曳航ケーブルに新しい対抗モード付きの水上艦艇用魚雷対抗手段が組み合わされている。

SSTD編集

1988年10月26日付のイギリスアメリカの了解覚書のもと、イギリス国防省アメリカ国防総省は、魚雷に対する水上艦艇の生存システムとして4段階からなるSSTD開発計画に着手した。SSTD(Surface Ship Torpedo Defence)は、Mk 32 短魚雷発射管から発射されるMk46短魚雷の改造型により、水上艦艇に限定的なハードキルによる対魚雷防御能力を付与するシステムで、共同開発により開発コストの削減と共同での防衛能力の向上が意図されていた[2]。しかしながら、脅威を物理的に撃破するハードキル型のシステムを推すアメリカと、脅威の誘導手段を妨害するソフトキル型のシステムを推すイギリスとの考え方の相違から共同プログラムは早々に暗礁に乗り上げ、さらにアメリカ議会により必要性にも実現可能性にも欠けるとして予算を打ち切られた。アメリカ政府は2つのコンソーシアム(1つはゼネラル・エレクトリック、他方はウエスティングハウスを中心とする)と契約して開発を続行し、172基のMk46魚雷が改造され、配備された[2]

アメリカ側の開発計画はDCLデモンストレーター・プログラム(DCL(Detection Classification and Localisation)demonstrator program)と称され、脅威となる魚雷に命中させ脅威を破壊するための対魚雷を撃ち返すことができる、充分な時間と精度をもって魚雷群を斉射することを可能にするアクティブ対魚雷探知システムである。DCLシステムは、水中に高周波探信音を発信する探信音源発信機をもち、水中の物体からの反射音は当該の周波数を受信できるようチューニングされた曳航式アレイに受信される。このシステムにはまた、受動的な魚雷探知のために特別に設計された音響曳航アレイが組み合わされている。受聴音響アレイは魚雷が放出する構造化された音響を分析することができ、兵器のタイプと動作モードを識別することができる。

イギリス側の開発計画はSSTD(Surface Ship Torpedo Defence)の名称を引き続き使用したが、当初の構想と異なりソフトキル・システムである。ウルトラ・エレクトロニクス社が開発にあたり、2004年イギリス海軍に就役して以来、60セットが納入されている[3]。イギリス海軍ではS2,170、輸出市場ではシー・セントー(Sea Sentor)として知られている。SSTDのシステムは探知システムと対抗手段システムの両方をそろえた場合、以下の構成部分からなっている[3]

  • 音響受聴曳航アレイ
  • 曳航式音響対抗手段
  • ドラム・ウインチ
  • 信号処理装置キャビネット
  • ディスプレイコンソール(2基)
  • 音響デバイス投射装置(2基)
  • 使い捨て音響デバイス(Expendable Acoustic Device:EAD. 16発、投射装置1基あたり8発を装填)

音響受聴曳航アレイは魚雷を探知するよう設計されており、曳航式音響対抗手段やEADは既定の設定だけでなく、搭載艦において再プログラムすることができる。SSTDは魚雷を探知すると艦の乗員に対して戦術的アドバイスを提供し、探知された脅威の型式や動作モード、単射なのか斉射なのかといった情報を提供する[3]。コンソールはオープン・アーキテクチャ技術によるCOTS機器で、WindowsまたはLinuxベースで動作し、表示はWindowsまたはX-Window互換のフォーマットで生成される。指揮管制システムへの統合オプションでは、SSTDからの情報はTCP/IPで送信される[3]

脚注編集

  1. ^ a b AN/SLQ-25 NIXIE”. GlobalSecurity.org. 2013年12月29日閲覧。
  2. ^ a b c Norman Polmar (2005). The Naval Institute Guide To The Ships And Aircraft Of The U.S. Fleet (18 ed.). U.S. Naval Institute. pp. 566-567. 
  3. ^ a b c d SSTD Datasheet at the Ultra Electronics website

外部リンク編集

  • Anti-Torpedo Defense”. Undersea warfare, Fall 2006, vol.8 No.5. Submarine Warfare Division (N87), Chief of Naval Operations. 2013年12月29日閲覧。