ANK免疫細胞療法[読み疑問点]: Amplified Natural Killer Therapy)(別名、ANK療法、活性化自己リンパ球移入法等)は、NK細胞を取り出し刺激を与えて活性化を高め、増殖させる特殊な培養を行い、がん細胞を攻撃する役割のNK細胞の機能を特異的に上げて、体内に戻すと主張する治療法である。一般にすべてのがんが対象になる。基本的には、最大活性化されたNK細胞が、多くの癌センサーを用いて、がん細胞を見分け認識し攻撃するという理論にもとづくとされる。またADCC活性を有する分子標的薬の併用により、さらなる高い効果を有する。成人T細胞白血病に対するANKがん免疫療法の治療の効果について、イギリスのBMLに論文が掲載されており、注目を集めている。[1]

概要 編集

ジャーナリストである岩澤倫彦によれば、2020年3月現在、日本では300以上のクリニックで、「活性化リンパ球療法」「樹状細胞療法」「ネオアンチゲン免疫治療」「がんペプチドワクチン」などの名称で、多種多様な自由診療免疫療法が行われている。進行がんでは世界的にも最高レベルにある日本の「標準治療」ですら限界があるため、そこに着眼した自由診療を謳う多くのクリニックにより安全性・有効性ともに確立されておらず標準治療として認められていない治療法が患者に施されている現状がある。厚生労働省再生医療等安全性確保法を制定して、その現実を把握している。 細胞免疫療法という体系も認められ、CAR T細胞療法も保険診療となっている。免疫チェックポイント阻害剤も保険診療であるが、T細胞の癌細胞ブロックを阻害するものであるが、T細胞は癌センサーが単一であり、癌治療において著効を期待出来るものではない。

機序 編集

この療法を推進する企業・リンパ球バンクによると、免疫細胞は多種類存在し、そのほとんどがウイルス細菌などを認識・攻撃するが、がん細胞は本人の細胞であって異物ではないため認識・攻撃ができない。こうした数ある免疫細胞の中でも、複雑なセンサー群を多数または多様に備え、がん細胞を見つけ攻撃する能力のあるNK細胞を、がん攻撃に利用する単純ながん治療だとする[2]

歴史 編集

深刻な急性感染症感染した進行がん患者に、非常に強い免疫刺激が加わった場合に、がんが消失して再発せずに一見完治したかに見える現象が古くから知られていた。このため、免疫にはがんを克服する能力があると考えられてきた。免疫細胞の一種であるT細胞のごく一部が、がん細胞を傷害することは知られていたが、その中でもごく特定の一部のT細胞が、ごく特定のがん細胞のみを攻撃するだけであり、「完治」という現象を説明するに足りるものではなく、さらにがん殺傷能力を備えた免疫細胞が存在するはずだと考えられてきた[2]

そこで健康な被治験者の血液に強い免疫刺激を加えた後、多種類のがんの標本細胞を投入する実験が繰り返された。その結果、活性が高いという条件で、あらゆるがん細胞を出会った瞬間に直ちに攻撃し、かつ正常細胞は傷つけない性質をもつリンパ球(免疫細胞)が発見される。これを「自然免疫に属する殺し屋」という意味で「ナチュラルキラー細胞」と名付け、略してNK細胞とも呼ばれるようになった[2]

NK細胞は培養が難しかったが、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、「培養が難しいならば大量に採取すればいい」との発想に基づき、一人の患者から3日がかりで延べ数十ℓの血液を体外に循環させ、リンパ球を分離採取。体外に採り出したNK細胞を含むリンパ球集団に大量のインターロイキン2を加えて刺激を与えた(インターロイキン2を進行がんへの直接大量投与で、がんが消失できることは分かってた。が同時に副作用は激しく使用が困難であった)[2]

NK細胞は培養条件が非常に難しく自爆をするため、扱いが困難であった。このため一緒にいるT細胞が爆発的な速度で増殖し過ぎる前に、培養期間を3日以内に制限して、活性化したNK細胞を体内に戻す方法が考案された。これを抗がん剤が効かなくなった進行がん患者数百人全員に投与し、何らかの効果が観察された。この臨床試験によりNK細胞を用いる免疫細胞療法の有効性が証明されたとされる[2]

この臨床試験を指揮したNIHの医学博士ロッテからNK細胞のさらに実用的な培養技術について相談を受けた京都大学の研究者と、その共同研究者の2人のさらなる研究により、NK細胞だけを増殖させる「活性化と選択的増殖」培養技術を実地にがん治療に使えるレベルで実現した。これを活性化と増殖の両方の意味を込めて(Amplified = 増強された)、ANK自己リンパ球免疫療法(ANK療法)と名付けた[2]

ANK免疫療法の趣旨 編集

リンパ球バンクの公式サイトによると、日本の公的医療制度は非常に複雑で大きなシステムであるため、新しい変化には弱く、欧米では、がんの治療薬の主流は分子標的薬であり、従来型の抗がん剤はむしろ脇役に過ぎないが、「この薬は海外では標準なので私にも使ってください」と日本の保険診療の医師に頼み込んでも「保険診療のルールに載っていない」のでどうしようもないなどと、あたかも日本の保険診療のために立ち遅れているかの説明がなされ、標準治療を受ける前提で、同時並行で保険診療を補う自由診療の選択肢も検討するよう推奨されている。さらに、ANK療法について病状に合わせて具体的な治療方針について医療相談を受けられるのは、ANK療法実施医療機関として国に届出を受理された医療機関だけであり、ANK療法以外の免疫細胞療法を行っている医療機関は全国に1000ケ所近くあるが、それらを「一般法」だと一ひとくくりにして別物であると強調し、そこではANK免疫療法の説明や治療を受けることは認められていないとしている。また、ANK療法を受けられる医療機関は厚生労働省の公式サイトに記載されているものの、一覧にはなっておらず、膨大なページの中から見つけるのも困難であるとし、直接リンパ球バンクへ連絡するよう呼び掛けている[2]

がんの部位は問わず、年齢不問で実施医師との面談は「早ければ早いほどいい」とする。90歳代の治療実績もあるとする。白血病では、培養器にがん細胞が混入するため、混入がん細胞が培養中に増殖する一般の免疫細胞療法は実施不可だが、ANK療法では、条件によっては培養中にANK細胞が混入がん細胞を一掃できるため治療可能なことがあり、著効症例報告が国際論文に発表したとする。抗がん剤や放射線療法によってNK細胞が傷つく前にANK療法の培養を済ませて凍結保管し、抗がん剤や放射線療法によってがん細胞の総数を減少させた後に、ANK療法で残存がん細胞にとどめを刺すのが理想的だとする。但し、抗がん剤や放射線療法を受けられた後でも治療は可能とする[2]

リンパ球バンクの主張 編集

腫瘍が1個しかない場合は、手術で取り去ることで、ほぼ大丈夫である。問題は、「がん幹細胞」が飛び散ってしまっている場合で、飛び散ったがん幹細胞を直接みつける手段はなく、画像診断では確認できず、腫瘍マーカーも正常で自覚症状がなくても、実際には転移している可能性があり、やがて腫瘍が大きくなって初めて画像で確認できる段階で再発や転移の診断となる。保険診療の枠組みだけでは、ステージ4のような再発転移に至る状況では延命を目的とした治療しかできなくなる。手術、放射線重粒子線陽子線など局所療法ではがん幹細胞の除去は不可能だ。最新の免疫チェックポイント阻害薬でも、主にT細胞の活性を復活させるだけで、NK細胞は活性化されない。T細胞は、がん幹細胞をほとんど認識攻撃できない。がん患者にとって、手強いのは再発転移であり、その種となるのががん幹細胞、さらに体内に飛び散ったがん幹細胞を傷害できるのはNK細胞以外なく、そのための重要な切り札であるとしている[2]

検査 編集

一般のがん治療と同じ検査法。

治療 編集

1クール単位で週2回を原則とし、計12回の点滴を行う。すべて自由診療。治療費は各医療機関にて設定されているため、各医療機関により異なる[2]

なぜ保険診療とならないのか 編集

リンパ球バンクによれば、治療効果の問題ではなく、新しいタイプの医療であるため「該当する法律がなかった」のが理由で、康保険適応となるよう承認申請の準備を進めているが、巨額な資金が必要であるため海外の大手企業との提携を模索中だとしている[2]

副作用 編集

治療開始後、悪寒体温上昇がある。免疫レベルが低下しているほど初回に熱のピークが数回来る場合がある。一般に活性化されたNK細胞免疫が点滴される1回目に体温上昇が激しく2回目以降に落ち着いて行く。体温上昇以外の免疫副反応の症状、関節の痛み、吐き気頭痛、初回、2回目に症状を訴える場合が多い。一過性。

注意事項 編集

問題点 編集

自由診療で治療費が高く、治療をしたとしても、効果が出ないという問題もある。

脚注 編集


外部リンク 編集