男子プロテニス協会

男子プロテニスツアーを運営する団体
ATPワールドツアーから転送)

男子プロテニス協会(だんしぷろてにすきょうかい 英語: Association of Tennis Professionals ATP)は、男子プロテニスツアーを運営する団体である。1972年に男子プロテニス選手の権利・利益を保護するためにジャック・クレーマークリフ・ドリスデール英語版らが中心となって創設した。

現在の会長は、2020年1月からイタリアアンドレア・ガウデンツィが務めている。

ATPツアー 編集

ATPに加盟するプロ選手は、1月から始まる毎週世界各地で開催されるトーナメント方式のテニス競技大会を転戦しながら世界を回る。競技大会はグランドスラムを頂点に規格が決まっており、規格が大きい程に大会の規模が大きく、獲得賞金やランキングに繋がるポイントが多くなる。プロ選手がATPツアーに参戦するためには、ATPチャレンジャーツアーやITFワールドテニスツアーといった下部大会に出場し、勝利(ランキングポイント)を重ねることで各々の大会規模あるいは規定に基づく一定の世界ランキングにつく必要がある。

前年度のランキング上位30位以内の選手については出場義務のある大会があり、グランドスラムは4大会すべて、ATPツアー・マスターズ1000は9大会の内モンテカルロを除く8大会、ATPツアー500は13大会中4大会(内1大会は、全米オープン後の大会であること)が該当する(ただしモンテカルロ・マスターズは、ATPツアー500相当として大会出場条件にカウントされる)。[1]

選手は年初にスケジュールを組むが、移動の利便性や自国開催の大会の参加も考え合わせると毎年ほぼ同じ大会に出場することになる。[1]

1月、ツアーのスタートはオーストラリアおよび中東。真夏のハードコート全豪オープンが開催される。2月はヨーロッパ、北米、南米で大会が開催され、3月はアメリカでハードコートのマスターズ2連戦がある。4月からはヨーロッパでクレーコートのシーズンとなる。その締めくくりが全仏オープンである。6月から7月は短い芝コートの季節で、伝統のウィンブルドンを戦う。その後は8月最終週にスタートする全米オープンを目指してアメリカでハードコートを戦う。全米オープン以降はアジア、ヨーロッパで室内ハードコートの大会を経て、1年の締めくくりは11月のATPファイナルズでシーズン最後の戦いが繰り広げられる。[1]

トーナメントカテゴリ 編集

カテゴリ 大会数 賞金総額 (USD) 優勝賞金 (USD) 管轄
グランドスラム 4 各大会の記事を参照 ITF
ATPファイナルズ[2] 1 9,000,000[4] 2,871,000[5] ATP
ATPツアー・マスターズ1000 9 4,500,000 - 7,000,000 00895,000 - 1,190,000 ATP
ATPツアー500[6] 13 1,460,000 - 3,150,000 00315,000 - 00678,000 ATP
ATPツアー250[7] 40[8] 00437,000 - 1,240,000 00078,000 - 00210,000 ATP
ATPチャレンジャーツアー[9] 166[10] 00054,160 - 0162,480 00007,200 - 00021,600 ATP
ITFワールドテニスツアー 646[10] 00015,000 または 25,000[11] 00002,160 または 3,600 ITF

ランキング 編集

ATPランキング 編集

従来のランキング形式であり、世界ランキングとして扱う。選手のシード権はこのランキングを元に決定される。算出法は過去52週に出場した大会で獲得ポイントが高かった上位18大会の合計(ただし、ATPファイナルズ出場者は、ATPファイナルズで獲得したポイントが19大会目のポイントとして加算される。また出場義務のある大会は、ポイントが加算対象の18大会での最少ポイントより低い場合でも優先して加算される。)で決める。
加算ポイントは、年始に獲得ポイントを「0」にリセットせず、大会毎に更新が施される点でレースランキングとは異なる。例えば、ある選手がウィンブルドン選手権で優勝して2000ポイントを獲得した場合、この2000ポイントはその後翌年のウィンブルドン選手権までの1年間保持される。この選手が翌年の決勝で敗退した場合は1200ポイントがウィンブルドン選手権での持ち点となり(この場合個人の獲得ポイントは差し引きで800ポイントの減少になる)、この1200ポイントが次の年のウィンブルドン選手権まで保持される。

トーナメントカテゴリ 優勝 準優勝 準決勝 準々決勝 ベスト16 ベスト32 ベスト64 ベスト128 予選通過 予選3回戦 予選2回戦
グランドスラム 2000 1200 720 360 180 90 45 10 25 16 8
ATPファイナルズ +900 +400 ラウンドロビン3試合、1勝につき200ポイント。決勝進出で左記ポイント加算。最大で1500ポイント獲得する。
ATPマスターズ1000 (96S) 1000 600 360 180 90 45 25 10 16 - 8
ATPマスターズ1000 (48/56S) 1000 600 360 180 90 45 10 - 25 - 16
ATPカップ 最大750ポイント(詳細は「ATPカップ」を参照)
ATPツアー500 (48S) 500 300 180 90 45 20 - - 10 - 4
ATPツアー500 (32S) 500 300 180 90 45 - - - 20 - 10
ATPツアー250 (48S) 250 150 90 45 20 10 - - 5 - 3
ATPツアー250 (32S) 250 150 90 45 20 - - - 12 - 6
ATPチャレンジャーツアー125 125 75 45 25 11 - - - - - -
ATPチャレンジャーツアー110 110 65 40 22 10 - - - - - -
ATPチャレンジャーツアー100 100 60 36 20 9 - - - - - -
ATPチャレンジャーツアー90 90 55 33 18 8 - - - - - -
ATPチャレンジャーツアー80 80 50 30 16 7 - - - - - -
ATPチャレンジャーツアー50 50 30 17 9 4 - - - - - -
ITFワールドテニスツアーM25 25 16 8 3 1 - - - - - -
ITFワールドテニスツアーM15 15 8 4 2 1 - - - - - -

※ 予選通過の場合は、本戦ポイントに予選通過ポイントが加算される。

※ ITFワールドテニスツアー$25,000および$25,000+Hは、ITFワールドテニスツアーM25。

  ITFワールドテニスツアー$15,000および$15,000+Hは、ITFワールドテニスツアーM15。

※ 2019年より新ポイントに改定(2018年獲得のポイントは、新ポイントへ換算)。

  2019年8月5日に再改定(再改定以前に獲得のポイントは、新ポイントへ換算)。

  再改定前は$15,000はポイントの対象外、$25,000+Hは準決勝以上、$25,000は決勝進出者のみポイントの対象[12]。下記参照。

※ オリンピックは、2016年リオデジャネイロよりポイント対象外。(優勝の場合、750ポイントだった。)

※ デビスカップは、2016年よりポイント対象外。(2015年獲得のポイントは、失効日まで対象だった。)

下記は、2019年改定から2019年8月5日に再改定するまでに使用されたポイント。

トーナメントカテゴリ 優勝 準優勝 ベスト4 ベスト8 ベスト16
ITFワールドテニスツアー $25,000+H 5 3 1 - -
ITFワールドテニスツアー $25,000 3 1 - - -
ITFワールドテニスツアー $15,000+H
ITFワールドテニスツアー $15,000
- - - - -

下記は、2017年改定以前のATPチャレンジャーツアー・ITFプロサーキット(フューチャーズ)のポイント。(2016年まで)

トーナメントカテゴリ 優勝 準優勝 ベスト4 ベスト8 ベスト16 ベスト32 予選通過
チャレンジャー $125,000+H 125 75 45 25 10 0 5
チャレンジャー $125,000
チャレンジャー $100,000+H
110 65 40 20 9 0 5
チャレンジャー $100,000
チャレンジャー $75,000+H
100 60 35 18 8 0 5
チャレンジャー $75,000
チャレンジャー $50,000+H
90 55 33 17 8 0 5
チャレンジャー $50,000 80 48 29 15 7 0 3
チャレンジャー $40,000+H 80 48 29 15 6 0 3
フューチャーズ $25,000+H 35 20 10 4 1 0 0
フューチャーズ $25,000
フューチャーズ $10,000+H
27 15 8 3 1 0 0
フューチャーズ $10,000 18 10 6 2 1 0 0

ATPレース 編集

2000年に開始されたレース形式のランキングであり、いわゆる年間ランキングと呼ばれるものである。シーズン開始から一律0ポイントより始め、シーズン終了までに出場した大会で、獲得ポイントの高かった上位18大会の合計ポイントにより順位を決める。また、レース上位8名および8組はATPファイナルズ(シーズン最終戦)の出場権を得る事が出来、出場選手はこれを含めた19大会の合計で順位を決める。 ただし現在は、レースも「ATPランキングと同様のポイント配分」で行われている。

歴代チャンピオン 編集

チャンピオン ポイント(1)
2000   グスタボ・クエルテン 4,195 (7,585)
2001   レイトン・ヒューイット 4,365 (7,450)
2002   レイトン・ヒューイット 4,485 (7,830)
2003   アンディ・ロディック 4,535 (7,825)
2004   ロジャー・フェデラー 6,335 (12,030)
2005   ロジャー・フェデラー 6,725 (12,370)
2006   ロジャー・フェデラー 8,370 (15,495)
2007   ロジャー・フェデラー 7,180 (13,345)
2008   ラファエル・ナダル 6,675 (12,085)
2009   ロジャー・フェデラー 10,550
2010   ラファエル・ナダル 12,450
2011   ノバク・ジョコビッチ 13,630
2012   ノバク・ジョコビッチ 12,920
2013   ラファエル・ナダル 13,030
2014   ノバク・ジョコビッチ 11,360
2015   ノバク・ジョコビッチ 16,585
2016   アンディ・マリー 12,685
2017   ラファエル・ナダル 10,645
2018   ノバク・ジョコビッチ 9,045
2019   ラファエル・ナダル 9,985
2020   ノバク・ジョコビッチ 12,030
2021   ノバク・ジョコビッチ 11,540
2022   カルロス・アルカラス 6,820
2023   ノバク・ジョコビッチ 11,245
  • (1) 2009年にポイントシステムが変更されたため、2009年以前のデータには現在のポイントシステムでのポイントも記載してある。

記録 編集

歴代シングルス1位選手 編集

順位 選手 在位
総週
1.   ノバク・ジョコビッチ * 422
2.   ロジャー・フェデラー 310
3.   ピート・サンプラス 286
4.   イワン・レンドル 270
5.   ジミー・コナーズ 268
6.   ラファエル・ナダル * 209
7.   ジョン・マッケンロー 170
8.   ビョルン・ボルグ 109
9.   アンドレ・アガシ 101
10.   レイトン・ヒューイット 80
11.   ステファン・エドベリ 72
12.   ジム・クーリエ 58
13.   グスタボ・クエルテン 43
14.   アンディ・マリー * 41
15.   イリ・ナスターゼ 40
16.   カルロス・アルカラス * 36
17.   マッツ・ビランデル 20
18.   ダニール・メドベージェフ * 16
19.   アンディ・ロディック 13
20.   ボリス・ベッカー 12
22.   マラト・サフィン 9
23.   ジョン・ニューカム 8
  フアン・カルロス・フェレーロ
25.   トーマス・ムスター 6
  エフゲニー・カフェルニコフ
  マルセロ・リオス
28.   カルロス・モヤ 2
29.   パトリック・ラフター 1
* - 現役選手

在位総週は2024年4月22日時点での記録*[13]
太字 は現役1位

歴代シングルス優勝数 編集

順位 選手
1.   ジミー・コナーズ 109
2.   ロジャー・フェデラー 103
3.   ノバク・ジョコビッチ * 98
4.   イワン・レンドル 94
5.   ラファエル・ナダル * 92
6.   ジョン・マッケンロー 77
7.   ロッド・レーバー 72
8.   ビョルン・ボルグ 66
9.   イリ・ナスターゼ 64
  ピート・サンプラス
11.   ギリェルモ・ビラス 62
12.   アンドレ・アガシ 60
13.   ボリス・ベッカー 49
14.   スタン・スミス 48
15.   アンディ・マリー * 46
16.   アーサー・アッシュ 45
17.   トーマス・ムスター 44
18.   ジョン・ニューカム 41
  ステファン・エドベリ
20.   ケン・ローズウォール 40
21.   トム・オッカー 35
22.   マニュエル・オランテス 34
  マイケル・チャン
24.   マッツ・ビランデル 33
25.   アンディ・ロディック 32
26.   レイトン・ヒューイット 30
27.   ダビド・フェレール 27
28.   ビタス・ゲルレイティス 26
  エフゲニー・カフェルニコフ
30.   ブライアン・ゴットフリート 25
  ホセ・ルイス・クレール英語版
* - 現役選手

25勝以上を記載
現役選手の優勝数は2024年3月18日時点での記録*
引退者はATP公式サイトの優勝数を記載[14]

歴代シングルスマッチ勝利数 編集

順位 選手
1.   ジミー・コナーズ 1274
2.   ロジャー・フェデラー 1251
3.   ノバク・ジョコビッチ * 1098
4.   ラファエル・ナダル * 1071
5.   イワン・レンドル 1068
6.   ギリェルモ・ビラス 951
7.   イリ・ナスターゼ 908
8.   ジョン・マッケンロー 883
9.   アンドレ・アガシ 870
10.   ステファン・エドベリ 801
11.   アーサー・アッシュ 799
12.   スタン・スミス 779
13.   ピート・サンプラス 762
14.   アンディ・マリー * 738
15.   ダビド・フェレール 734
16.   マニュエル・オランテス 724
17.   ボリス・ベッカー 713
18.   ブライアン・ゴットフリート 702
19.   トム・オッカー 666
20.   マイケル・チャン 662
21.   ビョルン・ボルグ 654
22.   トマーシュ・ベルディハ 640
23.   トーマス・ムスター 625
24.   レイトン・ヒューイット 616
25.   アンディ・ロディック 612
26.   エフゲニー・カフェルニコフ 609
27.   エディ・ディブズ英語版 608
28.   リシャール・ガスケ * 604
* - 現役選手

600勝以上を記載
現役選手の勝利数は2024年4月22日時点での記録*
引退者はATP公式サイトの勝利数を記載[15]

生涯獲得賞金 編集

順位 選手 生涯獲得賞金 (US$)
1.   ノバク・ジョコビッチ * 181,658,118
2.   ラファエル・ナダル * 134,659,704
3.   ロジャー・フェデラー 130,594,339
4.   アンディ・マリー * 64,534,250
5.   ピート・サンプラス 43,280,489
6.   アレクサンダー・ズベレフ * 40,541,820
7.   ダニール・メドベージェフ * 40,369,322
8.   スタン・ワウリンカ * 36,696,484
9.   ダビド・フェレール 31,483,911
10.   マリン・チリッチ * 31,301,586
11.   アンドレ・アガシ 31,152,975
12.   ドミニク・ティーム * 30,146,603
13.   トマーシュ・ベルディハ 29,491,328
14.   ステファノス・チチパス * 29,364,745
15.   カルロス・アルカラス * 28,762,147
16.   グリゴール・ディミトロフ * 26,280,250
17.   フアン・マルティン・デル・ポトロ * 25,896,046
18.   錦織圭 * 25,125,362
19.   ボリス・ベッカー 25,080,956
20.   エフゲニー・カフェルニコフ 23,883,797
* - 現役選手

獲得賞金総額は2024年4月1日時点での記録* [16]

組織 編集

組織は大きくBoard of Directors(役員会)、ATP Tournament Advisory Council(ATP大会諮問委員会)、ATP Player Advisory Council(ATP選手諮問委員会) に分かれている[17]Board of Directorsが最終決定権を持ち、ATP Tournament Advisory CouncilATP Player Advisory Council は助言を行う。

Board of Directors はチェアマン1名、Player Representatives(選手代表)4名、Tournament Representatives(大会代表)4名で構成され、Tournament Council はヨーロッパ代表3名、インターナショナルグループ3名、南北アメリカ3名で構成される[17]

Player Council は世界ランキングのシングルス1位から50位までの選手で3名、51位から100位までで2名、ダブルスの1位から25位までで1名、1位から75位までで1名、全体から2名、コーチ1名、引退選手から1名の計11名選ばれる[17]

選手会メンバー

・シングルス1位から50位:グリゴール・ディミトロフアレクサンダー・ズベレフマッケンジー・マクドナルド

・シングルス51位から100位:ペドロ・マルティネスドゥシャン・ラヨビッチ

・ダブルス1位から25位:ウェスリー・クールホフ英語版

・ダブルス1位から75位:ミゲル・アンヘル・レジェス=バレラ英語版

・全体:マシュー・エブデンペドロ・カチーン英語版

・コーチ:フェデリコ・リッチ

・引退選手:ニコラス・ペレイラ英語版

2024年1月8日現在[17][18]

脚注 編集

  1. ^ a b c 『Number』869号(2015年1月22日号)
  2. ^ 不定期に名称が変更される
  3. ^ a b Points and Prize Money”. NittoATPFinals.com. ATP Tour. 2019年11月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月27日閲覧。
  4. ^ 2019年[3]
  5. ^ 全勝による最高金額(2019年)[3]
  6. ^ 旧インターナショナルシリーズゴールド
  7. ^ 旧インターナショナルシリーズ
  8. ^ 2017年開催予定数
  9. ^ かつてはチャレンジャーツアーとフューチャーズの間に同一国で4週に渡って開催される「サテライト」と呼ばれるカテゴリが存在したが、2006年シーズンを最後に廃止されている
  10. ^ a b 2016年開催実数
  11. ^ 2017年よりフューチャーズの賞金総額の低限が$10,000から$15,000へ改定
  12. ^ ITF, WTA and ATP deliver optimised pro tennis structure”. ITF (2019年5月23日). 2019年9月16日閲覧。
  13. ^ No 1s”. ATP Tour. ATP. 2024年1月29日閲覧。
  14. ^ Win/Loss”. ATP Tour. ATP. 2024年1月29日閲覧。
  15. ^ Win/Loss”. ATP Tour. ATP. 2024年1月29日閲覧。
  16. ^ Career Prize Money”. protennislive.com. 2024年4月1日閲覧。
  17. ^ a b c d Structure”. atptour.com. ATP Tour. 2023年9月18日閲覧。
  18. ^ player advisory council”. ATP. 2024年1月29日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集