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An-225 ムリーヤ

ブランを積載したAn-225

ブランを積載したAn-225

An-225 ムリーヤウクライナ語Ан-225 Мрія)は、ソビエト連邦ウクライナ共和国のアントノフ設計局(現ウクライナANTK アントーノウ)が開発した6発の大型輸送機であり、現在、世界最大の航空機である[1][2]

ウクライナでは、ウクライナ語で「」(睡眠中にみる方でなく、希望などを意味する方の「夢」)を意味するムリーヤМрія)の愛称で親しまれている。一方、NATOコードネームコサック(Cossack)であった。

概要編集

1980年代後半のソ連では、宇宙往還機「ブラン」の開発が進められていた。ブランを輸送するための方法として計画されたのが始まりである。ちなみに、同じくブラン輸送のためにVM-T アトラントも製造された。

2機が製造されていたが1機しか完成しなかったため、世界に1機しか存在しない。ソ連時代には、An-225に載せたMAKS・スペースプレーンを空中から打ち上げる構想もあった。

最大離陸重量が600 tと、世界一重い航空機であるほか、240ものギネス世界記録をもつ。

2016年8月アントノフ航空英語版ロシア語版ウクライナ語版は中国空域産業集団(AICC)にAn-225の技術や設計図に亘る所有権を全て移転し、2019年中華人民共和国の工場で再生産させる契約を交わしたと報じられた[3][4]。ただし、アントノフは知的所有権の譲渡は合意しておらず、報道にあるような所有権の移転はないと説明している。第一段階では、ウクライナで生産・近代化した改良型An-225の1機を2019年までに中国のAICCに納入。続く第二段階では、アントノフのライセンスの元で中国国内でのライセンス生産を認める契約である[5]。再生産される最初のAn-225に関しては、後述の破棄された2号機を再整備するのか、完全新規に生産されるものかは明らかになっていない。

運用編集

An-225が実際にブランを搭載して本来の任務を果たしたのは一回限りで、ブランが宇宙に行ったのも一度限りであった。その後はソ連崩壊に伴う混乱のために運用予算が打ち切られた。

存在意義を失ったAn-225は、長い間ウクライナ工場の一角に放置され、An-124An-70の補修用部品取りとして次々と主要なパーツを失うなど、事実上のスクラップ扱いとなっていた。しかし、1999年になって、アントノフ航空などAn-124を使用した超大型貨物の運送ビジネスを行い、大成功を収めた実績から、An-225を商用として現役復帰させることを発表した。1年近い改修の末、デジタル化と機体の補修・強化を行い、An-225は再就役した。以来、大型/大重量貨物運送用として就役しており、主に欧州を中心とした大西洋方面で運用されている。

2009年7月末には、3度目の塗装変更が行われ、機体は地にウクライナの国旗を想起させる黄色空色の緩やかなラインが入るデザインとなった。ただし、厳密にはこれはウクライナのナショナルカラーではない。機体は白地に上が黄色、下が空色のラインであるが、現在のウクライナの国旗は上が(空色ではないと特に言及されている青色)、下が黄色であるためである。

2010年2月9日ハイチ大地震復興支援で使用する重機類100 t以上を輸送する目的で防衛省がチャーターし、成田国際空港に初飛来した。An-225が日本に姿を見せたのはこれが初である[6]。また、東日本大震災の際にフランス政府が150トンの救援物資を輸送するためチャーターしている[7]。2010年6月21日には、テクニカルランディング中部国際空港にも飛来している。

2号機の存在編集

2006年9月にはアントノフ設計局で、組み立て途中のままの2号機を完成させる計画が決定された。2号機は2008年に完成される予定であった[8]が、遅延された。そして、2009年8月に2号機が未完成のまま計画は放棄された[9]。この時点でフレームの60~70%が組み上げられており、完成には追加で3億ドル(約300億円)が必要とされている。計画破棄後も機体自体は解体はされておらず、2018年時点ではキエフ工場の格納庫にモスボール保存されている[10]

3号機、4号機の存在編集

香港のメディアのNextbigfutureによると、アントノフとAICCが設立した合弁会社により、成都市と陝西省でそれぞれ1機のAn-225が製造中だとしている[11]。しかし、アメリカからの圧力により、3月頃に上記の2号機の建造共々、量産計画が白紙撤回されたとも伝えられている。

性能編集

機体構成編集

An-225は、開発期間を短くするために、機体の基本設計はAn-124 ルスラーンを基にしている。

変更点は、胴体を延長し、エンジン数(4基から6基)と後部降着装置(10脚から14脚)を増強している。また、軽量化のため後部搬入口を廃止し、そのかわり傾斜台に加え前脚を傾斜し前傾姿勢になって積載作業を支援できるようになっている[12]

なお、尾翼がH字型の双尾翼となっているのは、搭載したブランによって生ずる後流の影響を小さくするためで、機体上部に設けたブラン搭載装置が撤去された後も外観上の特徴となっている。

機内編集

操縦室も部品取りの対象となっていたため、副操縦士側の操縦輪やラダーペダルまで取り外されていた。改修時にはオリジナルの部品ではなく新型が取り付けられたが機長側は旧式のままという状態だった。2003年前後に機長側も新型に交換された。計器類はブラウン管の補助モニタが設置されているものの、アナログ計器中心の伝統的な設計である。しかし航空機関士が2名体制であるためエンジンに関しては大きく委譲されており、6発機ながら操縦席側の計器類は比較的少ない。

機体が大型であるため操縦室内に余裕があり、室内後部の航空機関士と航法士・通信士の席には広いテーブルがある。これらの席は外側を向いた状態で背中合わせに配置されているが、中央の通路は人が余裕を持って通行できる。

操縦室の後方にはキッチン付きのギャレーと座席を備えた与圧区画があり乗員の休憩以外にも、取り扱いに注意が必要な貨物を監視するロードマスターや同行したい顧客などを70名程度輸送できる。また開発当初は測定機材を設置した部屋があったが、改修後は機材が撤去され空き部屋となったため、乗員の着替えや荷物を置くスペースに転用されている。

ペイロード編集

An-225の貨物搭載能力は、アメリカ空軍C-5(122 t)やAn-225の基となったAn-124(150 t)を圧倒している。

ペイロードは公称では250 tであるが、これは安全を考慮しての値であり、最大離陸重量600 t、空虚重量175 tというスペックからして、燃料を満載量搭載したとしても300 t以上のペイロードを持つ(無論、搭載する貨物の体積と貨物室の容積から来る搭載限界は別の問題であるが)。

元来、機体上に宇宙船ブランを搭載して運搬するために設計された機体であるため、胴体上部に250 tまでの貨物を搭載することも可能である。ディスカバリーチャンネルで放映された特集番組での取材時には、VM-T アトラントの様に背面に貨物を搭載した際の空気抵抗を軽減するため、設計中のカプセル形カバーの三次元CADの図面が放送された。貨物室は与圧されていないが、仮に貨物室に座席を設置して旅客機に転用したならば、1,500-2,000人程度を収容できるほどの容積があるという。

機動性編集

「世界一重い航空機」の肩書きを持つ程非常に大きな航空機であるが、高出力で反応の良いエンジン、H字型尾翼や主翼に取付けられた大型の前縁と、後縁のフラップなどの基本性能の高さから、劣悪と言われたVM-T アトラントとは逆に「戦闘機なみの機動が可能」と機長に言わしめるほど機動性は高い。

航空ショーに参加した際には、離陸直後に急上昇し旋回、観客席を低空でフライパスしながら急旋回するなどの機動飛行が恒例となっており、貨物を搭載していない状態では、大きさの割に旋回性能が良いことが窺える。また公称の離陸滑走距離は3500 mであるが、高出力エンジンのため、デモ飛行ではより短い距離で離陸している。

世界記録編集

 
巨大航空機5機種の比較図
An-225は緑色
青色はボーイング747-8
赤色はエアバスA380-800
黄色はヒューズ H-4 ハーキュリーズ
ピンクはモデル351 ロック
を示している。

最大離陸重量の大きさが注目を集めることの多いAn-225だが、「一定重量のペイロードを搭載しての速度記録」といった数多くの世界記録を達成してもいる。2004年11月、FAI(Fédération Aéronautique Internationale; 国際航空連盟)は、240もの世界記録をギネス世界記録に登録した。現在でも、FAI公式サイトの「ジェットエンジン推進の陸上機で、最大離陸重量が500t以上のクラス」のページを見ると、すべてAn-225で占められている様子を見ることができる(#外部リンクを参照)。

ストラトローンチ・システムズ空中発射ロケットの母機である双胴の6発機『モデル351 ロック』の翼幅は117.35 mとAn-225を上回り、ロケットを搭載した状態の機体重量は540,000 kgを超える。ただし全長は72.54 mである。またロケットの空中発射に特化した機体のため貨物室は無く、ロケットは機体の中央下部に吊す。航続距離も打ち上げ空域までの往復のみでよいため、ロケット搭載時で約1,850 km(打ち上げ高度までの上昇距離を含む)と短く設定されている。

翼幅ではAn-225より長いH-4 ハーキュリーズは、1回だけ高度20 mを1,600 m飛行し終了した。

スペック編集

  • 乗員:6名 - 機長、副操縦士、航空機関士(2名)、航法士、通信士
  • 全幅:88.74 m
  • 全長:84.0 m
  • 全高:18.1 m
  • 空虚重量:175 t
  • 最大離陸重量:600 t
  • 最大搭載量:250 t(実際は300 t以上搭載可能)
  • エンジン:ZMKB イーフチェンコ=プロフレースD-18 ターボファン×6
  • 推力:229.5 kN×6
  • 最高速度:850 km/h
  • 巡航速度:800 km/h
  • 航続距離:15,400 km(貨物最大搭載時は4,000 km)

登場作品編集

映画編集

2012
後部に貨物扉を有する仕様になっている。

ゲーム編集

Saints Row: The Third
本機をモデルとした航空機「Gawalek A36」が登場。後部に貨物扉を有しており、飛行中に開閉が可能。中盤のミッションではAWACS型と思われる、上部に巨大なレドームを搭載した機体も登場する。
ガングリフォン
ガングリフォンII
実機と異なる点として、後部にも貨物扉を有する仕様に改修されており、飛行中でも開閉が可能となっている。
ファイアーキャプテン2 〜緊急!!消防最前線24時〜
最初のシナリオで、プレゼン中に格納庫の火災に巻き込まれる機体として登場。
マブラヴ オルタネイティヴ
現実と異なり、各国に多数が配備されている設定となっている。主に機体胴体上部にコンテナを搭載し、その内部に戦術機と呼ばれる人型機動兵器を収納して輸送する。これ以外の機体では戦術機を一度解体して収納する必要があり、戦術機を稼働状態のまま輸送できるのが利点とされる。
また、本来は想定された運用ではないが、作中にて戦術機のエアボーン作戦にも使用された。

脚注編集

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  1. ^ kohata. “【画像】世界一巨大な航空機「An-225 ムリーヤ」が素敵 - e-StoryPost” (日本語). 2019年9月16日閲覧。
  2. ^ 空飛ぶクジラ。世界最大の飛行機「An-225 ムリーヤ」 オーストラリアへ初飛行”. sorae 宇宙へのポータルサイト (2016年5月13日). 2019年9月16日閲覧。
  3. ^ 中国網 (2016年8月31日). “世界最大の輸送機An-225、中国に生産移転へ 国産第1号2019年に完成か”. 2016年9月1日閲覧。
  4. ^ ジェーン・ディフェンス・ウィークリー (2016年8月31日). “China and Ukraine agree to restart An-225 production”. 2016年9月1日閲覧。
  5. ^ gordonua.com. “Китайская компания AICC: Подписанное с "Антоновым" соглашение не передает права собственности и техническую документацию на Ан-225 "Мрія"”. 2016年9月4日閲覧。
  6. ^ FNNニュース (2010年2月9日). “ハイチPKOの機材運搬のため防衛省がチャーターした「アントノフ225型機」が成田に”. 2010年2月9日閲覧。[リンク切れ]
  7. ^ フランスから日本に追加支援 - La France au Japon - 在日フランス大使館
  8. ^ Antonov An-225 Mriya Aircraft History, Facts and Pictures. Aviationexplorer
  9. ^ "World's largest aircraft, An-225, emerges to set new lift record". Flight International, 17 August 2009.
  10. ^ 格納庫に眠る2機目のAn225 世界最大の未完成機に迫る”. CNN. 2019年1月3日閲覧。
  11. ^ China Completing More Copies of the World Largest Cargo Plane”. Nextbigfuture (2019年1月17日). 2019年9月7日閲覧。
  12. ^ 史上最大の飛行機、再生産か ウクライナが検討開始 そこにある思惑”. 乗りものニュース(メディア・ヴァーグ) (2016年6月18日). 2016年6月23日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集