C-9 (航空機)
C-9
C-9は、ベストセラー短距離旅客機であるダグラス DC-9-30を軍用輸送機としたモデル[1]。1967年に制式採用が決定し、アメリカ空軍は航空医療後送型のC-9A 21機と、政府高官輸送型C-9C 3機を使用していた。
C-9A
編集C-9A型の愛称はナイチンゲール (Nightingale)。1968年 - 1973年にデリバリーされ[1]、アメリカ合衆国本土のスコット空軍基地およびドイツ・ラインマイン空軍基地、フィリピン・クラーク空軍基地(後に日本・横田基地に移動)の各基地に配備された。
本機は航空医療後送を想定した機体であり、担架40床または座席40(双方のコンビも可能)と、重症患者用のスペシャルケア・コンパートメント(特別空調装置を備える)を持ち、通常5名の医師、看護員を乗せる。また、前胴左側には車椅子や担架搬入のための緩やかな傾斜のタラップを自蔵した、大型昇降口(3.5m×2.1m)を備えている。
ただし本機は航続距離が短く空中給油にも対応できないという問題があり[2]、2005年にC-9Aが退役すると[3]、直接の後継機は導入されず、短距離であればC-21A(担架2床)やC-130(74床)、長距離であればKC-135やKC-10、C-141、C-17といった輸送機にそのための設備を搭載してAEミッションを行うようになっていった[2]。
C-9B
編集C-9B型の愛称はスカイトレインII (Skytrain II)[4]。アメリカ海軍及び海兵隊で使用された型[5]で、こちらは通常の人員・貨物輸送機である。1973年より受領を開始している[6]。C-9Aと同等の機体であり、患者輸送型にも転換できる[4]。新規に製造されたほか、1982年以降は民間で就役していた中古のDC-9を購入した上で所要の改装を施された[4]。
海軍と海兵隊の兵站輸送を長い間担っていたが、旧式化は否めずC-40Aと交代しつつある。退役したC-9Bのうち1機はNASAの微小重力訓練機「嘔吐彗星」となった。
C-9C
編集C-9Cは1973年にVIP輸送機VC-9Cとして3機発注された[1]。1975年にアンドルーズ空軍基地の89MAWに配備されている[1]。本機は大統領をはじめとするアメリカ政府要人の国内移動に使用されているが、ジミー・カーター政権時にVがとれてC-9Cと改称された。
その他
編集クウェート空軍がC-9Kを2機[4]、ベネズエラ空軍がDC-9-15型機を1機、イタリア空軍がDC-9-32型機を2機。それぞれ導入したがいずれも退役している。
要目
編集DC-9-30に同じ。
- 全長:36.37m
- 全幅:28.47m
- 全高:8.38m
- エンジン:プラット・アンド・ホイットニー JT8D-15 ターボファン 2基
脚注
編集- ^ a b c d 航空ファン別冊 No.32 アメリカ軍用機1945~1986 空軍編 P158 雑誌コード 03344-8 1986年 文林堂
- ^ a b 石川 2020.
- ^ USAF (September 22, 2005). “Historic C-9 heads to Andrews for retirement”. 2016年3月2日閲覧。
- ^ a b c d 航空ファン別冊 No.35 アメリカ軍用機1945~1987 海軍/陸軍編 文林堂 雑誌コード03744-2 P46
- ^ Douglas Jetliners, Guy Norris&Mark Wagner ,Zenith Pr ,P30 ISBN 9780760306765
- ^ Classic American Airliners, Bill Yenne ,Zenith Pr ,P160 ISBN 9780760307861
参考文献
編集- 石川, 潤一「航空医療輸送 : Aeromedical Evacuationの歴史と現状」『航空ファン』第69巻第5号、文林堂、2020年5月、50-57頁、NAID 40022194775。
外部リンク
編集- C-9 Skytrain fact file and C-9 history page on U.S. Navy site - ウェイバックマシン(2001年1月5日アーカイブ分)andC9 RMT