Complainteフランス語、コンプラント)とは、中世フランスプロヴァンス抒情詩の一種。日本語では哀歌(あいか)、悲歌(ひか)、嘆き歌(なげきうた)と訳される。

プラーニュとは違って、「死」だけでなく、それ以外の不幸も扱った。よくあるテーマは、十字軍遠征中の戦争での敗北、習慣の腐敗、聖墳墓教会の喪失などだったが、報われない愛といった個人的な出来事も歌われた。また聖書や中世の伝説を題材にすることもあった。自由な形式で作られ、同時代にあった他のジャンル、ディ(Dit)、サリュ・ダムール(Salut d'amour)、シルヴェンテスとははっきりと区別される。

代表的なcomplainteには、ルイ8世の死(1226年)を悼んだRobert Sainceriauxの『Sermon』、ルイ9世の死(1270年)を悼んだ『Regres au roi Loëys』、リュトブフ(Rutebeuf)の『C’est la complainte d’outremer』などがある。

ルネサンス期になって、クレマン・マロRoger de Collerye、そしてプレイヤード派ピエール・ド・ロンサールらがcomplainteを復活させた。この時期のcomplainteには、ロンサールの『Complaintes contre Fortune』(1559年)、ジョアシャン・デュ・ベレーの『Complainte du Désespéré』(1559年)といったものがある。

フランス革命の時には、ジャン=ポール・マラーなどへのComplainteもあった。

イギリスには、14世紀ジェフリー・チョーサーが『The Compleynt of Venus』でcomplainteを移植し、エドマンド・スペンサーの『瞑想詩集(Complaints Containing sundrie small Poemes of the Worlds Vanitie)』(1591年)、エドワード・ヤング(Edward Young)の『The Complain(Night Thoughts on Life, Death and Immortality)』などが作られた。

音楽のcomplainte 編集

参考文献 編集

  • John Peter: Complaint and Satire in Early English Literature. Oxford 1956
  • Monika Wodsak: Die Complainte. Zur Geschichte einer französischen Populärgattung. Heidelberg 1985 ISBN 3-533-03561-1

関連項目 編集

  • エレジー - 悲しみを歌った詩、歌、楽曲。「哀歌」「悲歌」「挽歌」。
  • ラメント - 嘆き、遺憾、哀悼を表した詩や歌、楽曲。「哀歌」「嘆き歌」「悲歌」「挽歌」。