FTIコンサルティング

アメリカの経営コンサルティング企業

FTI コンサルティング(英:FTI Consulting) はアメリカ合衆国ワシントンDCに本社を置くビジネスアドバイザリーファーム。FTIは世界有数の金融コンサルティングファームの1つであり、最高峰のグローバル経営コンサルティングファームの1つとしてランク付けされている[1][2]

FTIコンサルティング
FTI Consulting, Inc.
市場情報
本社所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設立 1982
業種 サービス業
法人番号 9700150005595 ウィキデータを編集
従業員数 5,700
関係する人物 Steve Gunby (President and CEO)
外部リンク https://www.fticonsulting.com
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組織は「コーポレート・ファイナンスおよびリストラクチャリング」「経済コンサルティング」「フォレンジックおよび訴訟コンサルティング」「ストラテジックコミュニケーション」「テクノロジー」の5つのセグメントで構成される。同社は1982年にForensic Technologies International Ltdとして設立され、現在は6大陸31か国を拠点に展開。全世界で7,800人のスタッフを有する[3][4]

同社はリーマンブラザーズゼネラルモーターズの経営破綻、バーナード・L・マドフの詐欺事件調査[5]ブッシュ対ゴア事件[6]、メジャーリーグ野球のステロイド調査、石油・ガス会社のためのメディアキャンペーン[4][7][8][9][10][11][12][13]などに関与[14]

2019年にはフォーチュン誌が発表したフォーチュン1000企業に選ばれたほか、Law Business Research社の「Who’s Who Legal」にて「Consulting Firm of the Year」を獲得した。

沿革 編集

1982年、2人のエンジニア、Joseph ReynoldsとDaniel Luczakによって、メリーランド州アナポリスにて[4]、Forensic Technologies Internationalが設立され、訴訟時の専門家証言や、陪審員に対して複雑な技術的問題を論証する視覚的なプレゼンテーションを提供した。1996年5月、同社は株式公開で1株8.50ドルで上場を果たし、1110万ドルを調達。訴訟支援サービス会社として最初に上場した企業の1つであった[15][6]

1998年、Forensic Technologies InternationalはFTIコンサルティングとしてブランドを変更。1999年にニューヨーク証券取引所でFCNとして取引を開始した[16][17]

FTIコンサルティングは2002年、破産、事業再生、事業再編サービスで米国最大のプロバイダーであったPricewaterhouseCoopers(PwC)の米国ビジネスリカバリーサービス部門(BRS)を2億5000万ドルで買収[18]。翌2003年にはKPMGの紛争解決サービス部門を買収。同年にシカゴを拠点とするCompass Lexeconを買収し、その社名を維持したまま子会社化した[19]

2006年、ロンドンを拠点とするコミュニケーションコンサルティングファームFinancial Dynamics(FD)を買収し、現在は同社のストラテジックコミュニケーション部門となっている。 2007年にはラテンアメリカに進出し、初めて10億ドルの年間売上を達成した[17][20]

2010年には香港でFS Asia Advisory Limitedを買収することでFTIの活動がアジアに拡大[21]。2014年1月、Steven H. Gunbyが社長兼最高経営責任者(CEO)に着任[22]

サービス 編集

FTIコンサルティングは5つのビジネスセグメントで構成[23]。プロアクティブなリスク管理から予期せぬ事態や環境の変化に適応するための危機対応に至るまで、ビジネスのサイクル全体にわたってクライアントを支援する包括的なサービスを提供する。

コーポレート・ファイナンスおよびリストラクチャリング 編集

企業取締役会投資家、融資機関、債権者に対し、リストラクチャリング、ビジネストランスフォーメーション、トランザクションソリューションなどのサービスを提供。価値創造プロセス全体を一貫して支援することを強みとする。証券訴訟、M&A独占禁止法リスク管理、バリュエーション、国際仲裁に関する専門知識も有する。

経済・金融コンサルティング 編集

クライアントが直面する複雑な経済問題に関する課題や機会の把握を支援するため、法律事務所企業政府機関等に対して経済分析や専門家証言を提供。法令等手続、意思決定、政策立案の議論において専門家としての見解や証言を提供するなど、業務は広範に渡る。

フォレンジックおよび訴訟コンサルティング 編集

包括的なフォレンジック、調査、データ分析、訴訟サービスを提供。独立系コンサルティング企業として、リスク、紛争、調査、訴訟シナリオ等の分野において専門知識を有する他、世界の主要企業、政府、法律事務所へのサービス提供で広範な経験を有する。

ストラテジックコミュニケーション 編集

財務、規制、評判を巡る課題の解決を目指すクライアント向けに戦略的なコミュニケーションアドバイザリーサービスを提供。ファイナンシャル・コミュニケーション、コーポレート・レピュテーション、パブリック・アフェアーズのサービスを統合的に提供し、包括的な戦略的コミュニケーションを支援する。

テクノロジー 編集

データに関連するビジネス上の課題を解決するため、組織が情報を適切に管理、保護、検索、分析し、迅速に情報を把握できるように支援。革新的なテクノロジー、エキスパートサービス、徹底的な問題解決により、同社は全世界のクライアントに訴訟や当局調査に耐え得る防御性と再現性を持つソリューションを提供。組織は不正の根絶、規制コンプライアンスの維持、法務およびITのコスト削減、機密情報の保護、迅速な事実調査、データの活用によるビジネス価値の創出に関してアドバイスを提供する。

ジャニー喜多川の性的虐待の記者会見担当 編集

ジャニーズ事務所創業者による性加害問題を巡って2023年9月7日および10月2日に開いた記者会見の運営を担当した[24][25]

NG記者リストの作成 編集

ジャニーズ事務所の性加害問題において10月2日に開いた記者会見で、特定の記者やフリージャーナリストを指名しないようにするための「指名NG記者」のリストを作成[26]。同事務所は、NGと書かれたリストを事前に見せられていたことを認めた。なお「今回流出した資料は、弊社の関係者は誰も関与しておりません」「弊社は誰か特定の人を当てないでほしいなどという失礼なお願いはしていない」「井ノ原が『これどういう意味ですか? 絶対当てないとダメですよ』とPR会社に要望した」と事務所自体の関与は否定している[27]

同月5日にFTIは声明を出し、指名NG記者リスト(6名)と指名候補記者リスト(8名・社)の作成を認め、謝罪した。リストについて「弊社が作成し、運営スタッフ間で共有した」とした。会見場の使用時間が限られるなかで「円滑な運営準備のため」だったと釈明した。また「ジャニーズ事務所は作成に一切関与していない」とした[28]。会見の司会進行を担当し、質問する記者の指名を行った元NHKアナウンサー松本和也は、会見開始約30分前にスタッフからリストを渡され、リストが手元にあったことを認めている。松本は、リストは無いものとして進行すると決め、できる限り偏りのないように指名したと主張しているが、約200人いる記者の中から1番目、2番目、4番目に指名されたのは、リスト掲載の指名候補記者(社)だった[29][30]

FTI側の責任者で同社ストラテジック・コミュニケーションズ日本チームのシニア・マネージング・ディレクター野尻明裕は、週刊文春の電話取材に応じ、「リストの準備はいいシステムだと思ったか」という問いに対して、「まあ、いいかどうかというのは私自身は判断する立場じゃないと思ってますので。一回目の会見では、(質問を)一人一回というのはあったように記憶していますけれども、そういう制限があったりとか、時間で区切るとか、あるいはもう少し酷い話になると質問を打ち切ったりとか、いろんなやり方があると思いますので。何が絶対良くて、何が絶対ダメだということはなくて、それぞれの物理的な状況とかのなかで対応せざるを得ないのかなという風に思います。それで特に、10月2日というのは(企業の)内定式も各社あって、非常に会場探しも大変でしたので、そういった中で考えると、そういった時間的な制約というのがどうしても出てきたということはあって。私どもお手伝いする立場としては考えたということでございます」と回答した[31]

関連項目 編集

脚注 編集

  1. ^ The Top 50 Consulting Firms In 2019 By Revenue, Prestige, Growth & Employee Satisfaction” (英語). www.consulting.com. 2020年5月21日閲覧。
  2. ^ America's Best Management Consulting Firms 2020” (英語). Forbes. 2020年5月21日閲覧。
  3. ^ Office Locations | FTI Consulting Offices”. www.fticonsulting.com. 2020年5月21日閲覧。
  4. ^ a b c (2ページ目)ジャニーズ会見運営のコンサル会社「FTI」の正体…ヤバい世論工作を本国でもやらかしていた|日刊ゲンダイDIGITAL
  5. ^ Madoff mess winners: Lawyers get $290 million - Feb. 16, 2011”. money.cnn.com. 2020年5月21日閲覧。
  6. ^ a b O'Hara, Terence (2001年8月13日). “It's a Grand Time to Be a Workout Artist” (英語). Washington Post. ISSN 0190-8286. https://www.washingtonpost.com/archive/business/2001/08/13/its-a-grand-time-to-be-a-workout-artist/49c5c577-e470-4aa3-babb-3e063d876283/ 2020年5月21日閲覧。 
  7. ^ Paul D. Thacker (2019年12月18日). “Fossil Fuel Giants Claim To Support Climate Science, Yet Still Fund Denial” (English). HuffPost. https://www.huffpost.com/entry/climate-denial-energy-in-depth_n_5df7eff6e4b0ae01a1e59371 2023年10月9日閲覧。 
  8. ^ Hiroko Tabuchi (2020年11月11日). “How One Firm Drove Influence Campaigns Nationwide for Big Oil” (English). New York Times. https://www.nytimes.com/2020/11/11/climate/fti-consulting.html 2023年10月9日閲覧。 
  9. ^ Billy Nauman (2020年11月16日). “FTI Consulting faces client backlash over oil industry work” (English). Financial Times. https://www.ft.com/content/e23b1e17-6a5a-4e18-bd0a-5ad289dfc05c 2023年10月9日閲覧。 
  10. ^ Chair Grijalva, Rep. Porter Send Second Request Letter to Fossil Fuel Public Relations Firm FTI Consulting, Threaten Subpoena”. U.S. House Committee on Natural Resources (2022年8月17日). 2023年10月8日閲覧。
  11. ^ Billy Nauman; Attracta Mooney; Chris Flood (2020年11月22日). “FTI axed by clients in fallout over oil industry work” (English). Financial Times. https://www.ft.com/content/1eb50b8e-5640-4da8-a718-911a0cb7e4fd 2023年10月9日閲覧。 
  12. ^ Nick Cunninghamon (2022年8月26日). “House Committee Poised for Potential Subpoena of PR Firm for Climate Disinformation” (English). DeSmog. https://www.desmog.com/2022/08/26/fti-consulting-fossil-fuels-work-climate-disinformation-house-natural-resources-subpoena/ 2023年10月9日閲覧。 
  13. ^ Nick Cunninghamon (2022年11月30日). “The PR Industry Has Been a 'Major' But 'Overlooked' Influence in Climate Politics for Decades, Says Study” (English). DeSmog. https://www.desmog.com/2021/11/30/pr-industry-major-overlooked-influence-climate-politics-brulle/ 2023年10月9日閲覧。 
  14. ^ Inc, Kiplinger Washington Editors (2008-06) (英語). Kiplinger's Personal Finance. Kiplinger Washington Editors, Inc.. https://books.google.co.jp/books?id=aT8j6zFKSzkC&redir_esc=y 
  15. ^ Berselli, Beth (1998年6月8日). “A CASE FOR COURTROOM PRESENTATIONS” (英語). Washington Post. ISSN 0190-8286. https://www.washingtonpost.com/archive/business/1998/06/08/a-case-for-courtroom-presentations/dbff5862-2bcf-4dcc-8bde-e1b2da8bd4d8/ 2020年5月21日閲覧。 
  16. ^ FTI Consulting, Inc. - Company Profile, Information, Business Description, History, Background Information on FTI Consulting, Inc.”. www.referenceforbusiness.com. 2020年5月21日閲覧。
  17. ^ a b Company History | Business Growth | FTI Consulting EMEA”. www.fticonsulting-emea.com. 2020年5月21日閲覧。
  18. ^ Douglas, Danielle (2011年7月31日). “FTI Consulting raises profile” (英語). Washington Post. ISSN 0190-8286. https://www.washingtonpost.com/business/capitalbusiness/fti-consulting-raises-profile/2011/07/27/gIQAcyghlI_story.html 2020年5月21日閲覧。 
  19. ^ Lexecon To Be Acquired by FTI Consulting | Compass Lexecon”. web.archive.org (2015年9月23日). 2020年5月21日閲覧。
  20. ^ Plunkett, Jack W. (2008-03) (英語). Plunkett's Companion to the Almanac of American Employers 2008: Mid-Size Firms. Plunkett Research, Ltd.. ISBN 978-1-59392-107-1. https://books.google.co.jp/books?id=qeZy4K_FolsC&redir_esc=y 
  21. ^ “FTI Consulting (FCN) Completes Acquisition of FS Asia Advisory Limited”. StreetInsider.com. https://www.streetinsider.com/Corporate+News/FTI+Consulting+%2528FCN%2529+Completes+Acquisition+of+FS+Asia+Advisory+Limited/5910358.html 2020年5月21日閲覧。 
  22. ^ Ember, Sydney (1406806382). “FTI Consulting Names New C.F.O.” (英語). DealBook. 2020年5月21日閲覧。
  23. ^ Consulting Services | FTI Consulting Service Areas”. www.fticonsulting.com. 2020年5月21日閲覧。
  24. ^ 質問指名に記者NGリスト PR会社提示とジャニーズ 性加害問題の会見で”. 産経新聞 (2023年10月4日). 2023年10月5日閲覧。
  25. ^ 会見の質問指名に記者NGリスト PR会社提示とジャニーズ事務所”. 東京新聞 (2023年10月4日). 2023年10月5日閲覧。
  26. ^ リストが掲載された書類は2種類が明らかになっており、写真付きのリストでは「氏名NG記者」「氏名候補記者」、写真が無いリストでは「指名NG記者リスト」「指名候補記者リスト」となっていた。「氏名NG」「氏名候補」については、単なる誤記であるとする見方と、カモフラージュのために敢えて「氏名」にしたとの見方がある。
  27. ^ “ジャニーズ会見で「記者指名のNGリスト」存在 事務所はPR会社関係者から事前に見せられていたと認める”. スポーツ報知. (2023年10月5日). https://hochi.news/articles/20231004-OHT1T51263.html 2023年10月7日閲覧。 
  28. ^ “ジャニーズ会見「NGリスト」 PR会社が作成認め謝罪”. 日本経済新聞. (2023年10月5日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE054CN0V01C23A0000000/ 2023年10月7日閲覧。 
  29. ^ 谷, 瞳児; 宮田, 裕介 (2023年10月6日). “NGリスト「手元に」 ジャニーズ会見司会者がコメント 影響は否定”. 朝日新聞デジタル. オリジナルの2023年10月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231006113702/https://www.asahi.com/articles/ASRB66H63RB6OXIE04K.html 2023年10月29日閲覧。 
  30. ^ 谷, 瞳児 (2023年10月6日). “ジャニーズ会見、リストの影響は 司会は否定、実際はどうだった?”. 朝日新聞デジタル. オリジナルの2023年10月7日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231007015431/https://www.asahi.com/articles/ASRB67KKBRB6UTIL01T.html 2023年10月29日閲覧。 
  31. ^ 「この“NG”という言葉がね、非常に…」“ジャニーズ茶番会見”NGリスト作成の責任者を独占直撃!「発案したのは誰か…それは」《チームリーダーは元大蔵エリート官僚》”. 文春オンライン (2023年10月6日). 2023年10月7日閲覧。

外部リンク 編集