Fukushima 50 (映画)

2020年の日本の映画

Fukushima 50』(フクシマフィフティ)は、2020年3月6日に公開された日本映画

Fukushima 50
(フクシマフィフティ)
監督 若松節朗
脚本 前川洋一
原作 門田隆将
『死の淵を見た男 吉田昌郎福島第一原発
製作 椿宜和(企画プロデュース)
二宮直彦
製作総指揮 角川歴彦(製作代表)
井上伸一郎
出演者 佐藤浩市
渡辺謙
吉岡秀隆
緒形直人
火野正平
平田満
萩原聖人
吉岡里帆
斎藤工
富田靖子
佐野史郎
安田成美
音楽 岩代太郎
撮影 江原祥二J.S.C.
編集 鄺志良中国語版
製作会社 「Fukushima 50」製作委員会
配給 松竹
KADOKAWA
公開 日本の旗 2020年3月6日
上映時間 122分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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門田隆将著のノンフィクション書籍『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』を原作に[1]東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故発生時に発電所に留まって対応業務に従事した約50名の作業員たち・通称「フクシマ50」の闘いを描く。

監督は若松節朗、主演は佐藤浩市渡辺謙[2][3][4]。新作の日本映画の中では初めてドルビービジョン、ドルビーアトモスを用いた制作作業を日本国内で完結した。ドルビーシネマでも上映された。

尚、東電は制作に於いて一切無関係であり協力等はしていない。

あらすじ編集

2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0、最大震度7という日本の観測史上最大となる地震が発生し、巨大津波が福島第一原子力発電所を襲った。津波による浸水で全電源を喪失してステーション・ブラック・アウト(SBO)となり、冷却不能の状況に陥った原子炉は、このままではメルトダウン (炉心溶融) により想像を絶する被害がもたらされることは明らかだった。

1・2号機当直長伊崎ら現場作業員は、原発内に残り原子炉制御に奔走する。全体指揮を統括する吉田所長は部下たちを鼓舞する一方、状況を把握しきれていない本店や官邸に対し怒りをあらわにする。しかし、現場の努力もむなしく事態は悪化の一途をたどり、近隣の人々は避難を余儀なくされる。

官邸が試算したこの事故による最悪のシナリオでは被害範囲は半径250km、避難対象人口は約5000万人にも及び、それは「東日本の壊滅」を意味する。現場に残された唯一の手段は「ベント」で、未だかつて世界で実施されたことのないこの手段は作業員が体ひとつで原子炉内に突入して行う手作業が要求される。外部と遮断され何の情報も入らない中、ついに作戦は始まる。

登場人物編集

主要人物編集

伊崎利夫
演 - 佐藤浩市
福島第一原発 1・2号機当直長。
吉田昌郎
演 - 渡辺謙
福島第一原発 所長。
前田拓実
演 - 吉岡秀隆[5]
福島第一原発 5・6号機当直長。
野尻庄一
演 - 緒形直人[6][7]
福島第一原発 発電班長。
大森久夫
演 - 火野正平[6][7]
福島第一原発 管理グループ当直長。
平山茂
演 - 平田満[6][7]
福島第一原発 第2班当直長。
井川和夫
演 - 萩原聖人[6]
福島第一原発 第2班当直副長。
伊崎遥香
演 - 吉岡里帆[6][7]
伊崎利夫の一人娘。避難先の富岡町避難所にて音信不通となった父の身を案じる。
伊崎智子
演 - 富田靖子[6]
伊崎利夫の妻。遥香とともに避難所に避難し、伊崎を案じる。
滝沢大
演 - 斎藤工[6][7]
遥香の恋人。会津若松にて遥香の無事を願う。
内閣総理大臣
演 - 佐野史郎[6][7]
首相官邸内の危機管理センターにて陣頭指揮を執り、突如自ら福島第一原発へ向かう。
浅野真理
演 - 安田成美[5]
福島第一原発 緊急対策室総務班職員。

その他編集

加納勝次
演 - 堀部圭亮[8]
福島第一原発 第1班当直副長。
矢野浩太
演 - 小倉久寛[8]
福島第一原発 第3班当直長。
本田彬
演 - 和田正人[8]
福島第一原発 第1班当直主任。
工藤康明
演 - 石井正則[8]
福島第一原発 管理部当直長。
内藤慎二
演 - 三浦誠己[8]
福島第一原発 5・6号機当直副長。
西川正輝
演 - 堀井新太[8]
福島第一原発 第1班補機操作員。
宮本浩二
演 - 金井勇太[8]
福島第一原発 第1班補機操作員。
小宮弘之
演 - 増田修一朗[8]
福島第一原発 第1班補機操作員。
山岸純
演 - 須田邦裕[8]
福島第一原発 第1班当直主任。
小川昌弘
演 - 邱太郎[8]
福島第一原発 第1班主機操作員。
松田宗介
演 - 池田努[8]
福島第一原発 第1班主機操作員。
樋口伸行
演 - 皆川猿時[8]
福島第一原発 保全部部長(復旧班長)。
辺見秀雄
演 - 前川泰之[8]
陸上自衛隊 陸曹長
ジョニー
演 - ダニエル・カール[8]
在日米軍 将校
佐々木明
演 - 小野了[8]
福島第一原発 防災安全部部長。
五十嵐則一
演 - 金山一彦[8]
福島第一原発 復旧班電源チーム。
望月学
演 - 天野義久[8]
福島第一原発 復旧班注水チーム。
内閣官房長官
演 - 金田明夫[8]
原子力安全委員会委員長
演 - 小市慢太郎[8]
首相補佐官
演 - 伊藤正之[8]
経済産業大臣
演 - 阿南健治[8]
原子力安全・保安院 院長
演 - 矢島健一[8]
前田かな
演 - 中村ゆり[8]
前田拓実の妻。
福原和彦
演 - 田口トモロヲ[8]
福島第一原発 ユニット所長(副本部長)。
小野寺秀樹
演 - 篠井英介[8]
東都電力 常務。
福島民友新聞記者
演 - ダンカン[8]
松永
演 - 泉谷しげる[8]
避難住民。
伊崎敬造
演 - 津嘉山正種[8]
伊崎利夫の父。
竹丸吾郎
演 - 段田安則[8]
東都電力 フェロー

スタッフ編集

製作編集

「復興五輪」と銘打たれた「2020年東京オリンピックパラリンピック」の開催を控え、「今一度、震災の記憶と向き合い、復興への思いを新たにする作品を世に問う、それこそが映画人の使命である」として、東日本大震災における福島第一原発事故を描いた本作が製作された[3]。撮影は実際の現場を忠実に再現した巨大セットを用いて、2018年11月から2019年4月にかけて行われた[9]

原子力発電所以外の描写についてもリアリティを追求し、「トモダチ作戦(Operation Tomodachi)」を再現したシーンでは在日米軍横田基地にて撮影が行われた。米国大使館関係者の協力を得て前例のないアメリカ国防総省への撮影申請を行い、粘り強い交渉を経て撮影が実現。作戦会議の場面では施設内の作戦会議室を用いて、東北支援へ発進する場面では米軍のヘリコプターUH-1を実際に飛行させて撮影が行われ、また基地内で募集した本物の米兵が多数エキストラとして出演している[10][11]

本作には在日米軍が撮影に協力しているが、これは日本の映画史上初の試みである[10][11]

さらに陸上自衛隊の協力の下、総理大臣が福島第一原発を緊急訪問した場面では要人移動用の輸送ヘリコプターES-225LP「スーパーピューマ」を用いて、空から原子炉建屋へ放水を行った場面では大型輸送用ヘリコプターCH-47を用いて撮影が行われ、放水シーンでは実際に作戦に従事した隊員らの協力により被曝を防ぐためのアクリル板や装備などが機体内部に忠実に再現されている[10][11]

評価編集

キネマ旬報社が運営するKINENOTEの「キネ旬Review」では、3人のレビュアーが全員星5つ中1つの最低評価とし、映画評論家の川口敦子は「戦後日本への道をなぞり、迷いなく美化するような展開に呆然とした」、佐野亨は「この作品は検証や哀悼や連帯ではなく、動揺や怒りや対立を呼びおこす」、福間健二は「自然を甘く見ていたというだけの結論。何を隠蔽したいのか。若松監督、承知の上の職人仕事か」と揃って厳しいコメントをつけた[12]

中川右介は、作中で混乱の元凶のように描かれている「総理」は、他の登場人物は実名であるのに対して、彼だけ実名ではなく言い逃れできるようになっており、なぜ所長と同程度に描かなかったのかと疑問を呈し[13]。それは首相側の事情の視点の欠落につながり、作中では「総理が現地へ行くことになったのでベントが遅れ、被害が拡大した」となっているが、東電側にも不備があった事実が抜け落ちていると指摘する[13]。また、実際は各種報告書でも推察できるように「想定外の大津波」ではなかったにも関わらず、まるで人間の想定を超えた事態だったと作中では描かれており、東電の責任から目を背けているという批判もある[14]

当時首相であった菅直人は本作に関して「周囲の人は、描き方が戯画的だとか色々言ってくれるんですが、そんなに、ひどいとは感じていません。劇映画ですしね」と語っている[15]

糸井重里は、Twitterで「約2時間ぼくは泣きっぱなしだった」とツイートした[14]

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ “全世界が震撼した3.11の最前線で戦い続けた作業員たちの実話を佐藤浩市主演で映画化『Fukushima 50』製作決定”. スクリーンオンライン. (2018年11月20日). https://screenonline.jp/_ct/17229275 2019年7月9日閲覧。 
  2. ^ “佐藤浩市&渡辺謙『Fukushima 50』製作決定 福島原発事故に立ち向かった男たち”. シネマトゥデイ. (2018年11月20日). https://www.cinematoday.jp/news/N0105044 2019年7月9日閲覧。 
  3. ^ a b “佐藤浩市&渡辺謙、福島第一原発事故“最前線”で戦う! 映画「Fukushima 50」製作決定”. 映画.com. (2018年11月20日). https://eiga.com/news/20181120/3/ 2020年1月28日閲覧。 
  4. ^ “福島原発の真実に迫る「Fukushima50」、主演の佐藤浩市が力説「絶対に忘れてはいけない」”. 映画.com. (2019年4月17日). https://eiga.com/news/20190417/13/ 2019年7月9日閲覧。 
  5. ^ a b “吉岡秀隆&安田成美、『Fukushima 50』出演決定 吉岡「未来に向かっていくための映画の一つ」”. Real Sound (blueprint). (2019年7月10日). https://realsound.jp/movie/2019/07/post-387204.html 2019年7月10日閲覧。 
  6. ^ a b c d e f g h “佐藤浩市&渡辺謙『Fukushima 50』緊迫感あふれる特報到着!吉岡里帆ら37名の追加キャストも”. Movie Walker (ムービーウォーカー). (2019年9月9日). https://movie.walkerplus.com/news/article/204053/ 2020年1月16日閲覧。 
  7. ^ a b c d e f “「Fukushima 50」特報公開 緒形直人、火野正平、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工ら豪華キャスト参加”. 映画.com. (2019年9月9日). https://eiga.com/news/20190909/1/ 2019年9月9日閲覧。 
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac “佐藤浩市&渡辺謙『Fukushima 50』緊迫感あふれる特報到着!吉岡里帆ら37名の追加キャストも”. Movie Walker (ムービーウォーカー): p. 2. (2019年9月9日). https://movie.walkerplus.com/news/article/204053/p2/ 2020年1月16日閲覧。 
  9. ^ “渡辺謙&佐藤浩市が熱演 福島第一原発 あの日の真実”. FNN.jppプライムオンライン (フジネットワークニュース). (2019年4月17日). https://www.fnn.jp/posts/00416316CX/201904171840_CX_CX 2020年1月28日閲覧。 
  10. ^ a b c “『Fukushima 50』米軍が日本映画初の撮影協力 「トモダチ作戦」描くために横田基地で実施”. ORICON NEWS (oricon ME). (2019年11月19日). https://www.oricon.co.jp/news/2148988/full/ 2020年1月28日閲覧。 
  11. ^ a b c “佐藤浩市『Fukushima 50』、日本映画初!米軍が撮影に協力 自衛隊要人輸送ヘリも”. クランクイン! (ハリウッドチャンネル). (2019年11月19日). https://www.crank-in.net/news/70997/1 2020年1月28日閲覧。 
  12. ^ キネ旬 Review ~キネマ旬報映画レビュアーによる新作映画20本のレビュー”. キネマ旬報. 2020年3月24日閲覧。
  13. ^ a b 映画『Fukushima 50』はなぜこんな「事実の加工」をしたのか?”. 現代ビジネス. 2020年3月24日閲覧。
  14. ^ a b 福島核災害を「美談」に仕立て上げた映画『Fukushima50』が描かなかったもの”. ハーバー・ビジネス・オンライン. 2020年3月24日閲覧。
  15. ^ 元首相は映画『Fukushima 50』をどう見たか 菅直人インタビュー【1】”. 論座. 2020年3月24日閲覧。

関連項目編集

いずれも福島第一原発事故をテーマにしている。

外部リンク編集