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HyperTalk(はいぱーとーく)はHyperCardに用いられるプログラミング言語。

目次

概要編集

インタプリタ方式を採用するスクリプト言語で、その文法は英語に近く、初心者にもなじみやすい。

HyperCard開発チームのダン・ウィンクラーがデザインした。拡張性を考え、XCMD(外部コマンド)とXFCN(外部関数)という機構も用意され、プラグイン的に機能を追加可能である。

HyperCardがオブジェクト指向環境の為、それぞれのスクリプトは、HyperCardのスタック上のオブジェクトであるカードやボタン、フィールドなどのパーツ(オブジェクト)に付随する。

概念編集

  • 一連の処理は、スタック、バックグラウンド、カード、ボタン、フィールドのプロパティであるスクリプトに書かれる。
  • 処理内容は、「on {命令名}」〜「end {命令名}」または「function {関数名}」〜「end {関数名}」に挟まれた行内に記載する。これらに挟まれていない内容は無視される(文法エラーになることもある)。
  • 処理を示す行は、必ず命令(answer、go、put等)かキーワード(if、repeat、do等)で始まる。
    • 関数や、単なる数値や文字列で文を始めることはできない。この点、HyperTalkでは命令と関数には明確な区別が存在する。
    • キーワードは主に制御構造を示し、同名の命令を定義(オーバーライド)することはできない。先述のon、function、endもキーワードである。
    • なお、先頭にインデントを示す空白を入れることは可能で、スクリプトエディタではifやrepeatの深さに応じて自動的にインデントが挿入される。
  • パラメータに対する計算処理(sin、max、random等)や、システムの状態等を取得する処理(time、date、systemVersion等)を関数と呼ぶ。関数は「the {関数名} of {パラメータ}」または「{関数名}({パラメータ})」の形で呼び、命令や関数、キーワードのパラメータ内で使用することができる。
  • ボタンやフィールド、カード等のオブジェクトが持つ属性(id、name、rectangle、location等)をプロパティと呼ぶ。プロパティを設定する場合はset命令を用いる(変更不可のプロパティも存在する)。プロパティを参照する場合は「the {プロパティ名} of {オブジェクト名、オブジェクトID等}」の形で記載し、関数呼び出しに似ている。
  • 値を内部に含むものをコンテナと呼ぶ。変数、メッセージボックス、ボタン、フィールドなどがコンテナに該当する。put命令によって値を設定することができ、命令や関数、キーワードのパラメータとして渡した場合は、コンテナ名として記載した部分が値で置き換えられる。
    • コンテナで保持する値にはは存在せず(文字列型のみ)、算術計算に使用した場合は自動的に数値に変換され、ブール値は「true」「false」の文字列で扱う。
  • 変数にはグローバル変数ローカル変数がある。グローバル変数として使用する前にはglobalキーワードで宣言する必要がある。ローカル変数には宣言は必要ない。
    • いずれも、値を代入する場合はput命令の値の代入先として指定する。ただしit変数はanswer命令やget命令の結果の格納先として暗黙的に使用される。


  • 他、文法に関する細かい仕様
    • 行の区切り文字は改行である。1つの処理を複数行で記載したい場合は、行末に「~」(チルダ)を記載する。
    • 大文字と小文字は区別されない。「on mouseUp」は「On MouseUp」と記載しても同じ動作をする。また、「"hypercard" = "HyperCard"」の評価値は「true」である。
    • 「--」から改行までは、コメントとして扱われる。

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簡単な例

on mouseUp
  Beep
  put sqrt(2+4) into card field "計算結果" 
end mouseUp

この例は、このスクリプトが付加されているオブジェクト(パーツ)の上で、 マウスがクリックされたら、ビープ音を鳴らし、 2と4を加えた結果の平方根を、このオブジェクトが乗っているカードに存在する『計算結果』という名のフィールドに送る。 mouseUpとなっているのは、マウスクリックのチャタリングを防止するために、クリック後のアップを取り出している。

他言語との比較編集

C言語との比較編集

ここでは、初心者が初めて学ぶ言語として広く浸透しているC言語を例に比較する。

  • C言語は文章の区切りとしてセミコロンを使い、比較的自由な表記が可能であるが、スクリプト言語であるHyperTalkは改行が文章の区切りとなるため、文章の途中で改行するとエラーになる。例えば「put "Hello, World!" into A」と表記すべきところを「put "Hello,(改行) World!" into A」と表記するとエラーになる。
  • 変数宣言や関数宣言が不要であり、また代入する値(整数、小数、文字列)を意識せずに変数に代入できる。
    • 例えばAという変数に「10」という整数が入っていたとしても、新たに宣言することなく「0.5」という小数や「ten」という文字列を入れることが出来る。
    • ただし、文字(列)が入った変数に整数を加算する…といった動作はエラーとなり動かないため注意が必要である。尚、文字列と文字列、もしくは文字列と数値を繋げる記号は「&」である。
    • また、数値間での型違い(整数、小数、符号付き・無し)が無いため、例えば、「0.5*4」「0.5+1.5」といった小数を元にした計算でも、結果が整数となる物は強制的に整数となり(小数点以下が無くなった状態で)代入される。一方、C言語では最も上位の型に変換され、最終的に代入する変数の型で決定される。このため、例えば「float型 = double型*int型」といった場合は最終的にfloat型に丸められた値が代入される(詳しくは型変換を参照)。
    • 変数の適用範囲もC言語とほぼ同じで、例えばある関数で使われた変数は呼び出した別の関数では適用されない。ただし、グローバル変数はこの限りではない。
  • 変数の代入・取り出しに関しては全て「put」命令を使うことになる。
    • 例えばC言語での「A = B+C」をHyperTalkで書くと「put B+C into A」となり、C言語とは順序が逆になる。
    • また、「put」はinto以下を指定しなければ標準出力(メッセージボックスと呼ばれる小さい文字列表示用のウィンドウ)へ出力するほか、フィールド等へオブジェクトへの代入も可能(詳しくはHyperCardを参照)。
    • ちなみに「=」はHyperTalk上では等号の意味を持ち、代入には使えない(C言語での「==」に相当)。
  • 記号を使った演算子の多くが、より直感的な表記や英単語に置き換えられている。
    • 例えば、C言語における「%」「!」「&&」「||」は、HyperTalkでは「mod」「not」「and」「or」に対応する。
    • ビット演算子、アドレス演算子等は一切存在しない。
  • 配列の概念が存在しないが、文節(word)、(line)、ある任意(標準ではカンマ(,)であるがスクリプト内で変更可能)の文字(item)、文字単位(char)での区切りで代入・取り出しが標準で可能である。ただし、日本語に関する「word」の処理に関しては動作がアバウトであるため、カンマで区切って「item」を使い処理することが望ましい。
    • これを使うことによって配列と同じような処理を行える。例えば、次の二つのコードはほぼ同様の処理をしている(便宜上「main()」や「on openstack」を省略する)。

HyperTalk

put "10,20,30,40"&return&"100,200,300,400" into array -- 「&return&」は改行を意味する
put item 2 of line 1 of array + item 2 of line 2 of array into A
answer "A="&A -- 「A=220」とダイアログに表示

C言語

int A,array[][]={{10,20,30,40},{100,200,300,400}};
A = array[0][1] + array[1][1];
printf("A=%d",A);

また、C言語よりも比較的自由に文字列処理が可能である。

put "ABC,DEF,GHI"&return&"GHI,DEF,ABC" into array
put item 2 of line 1 of array & item 2 of line 2 of array into A
answer A -- 「DEFDEF」とダイアログに表示
  • C言語はポインタを使ったメモリの動的割り当てやシフト演算といったハードウェアレベルでのアクセスが可能であるが、(スクリプト言語であることも関係しているが)HyperTalkはそういった処理は標準では不可能である。
    • ただし、サウンド処理や画像処理などOSレベルにアクセスする処理については前述のXCMDやXFCNを使えば可能である。
  • そのほか、繰り返しや条件分岐においてはC言語とほぼ同じ処理が可能である。
    • 例えば、繰り返しに関してはC言語での「while(1){~}」(無限ループ)は「repeat ~ end repeat」、「for(i=1;i<=10;i++){~}」は「repeat with i = 1 to 10 ~ end repeat」という風に、条件分岐は「if(i==10){~}」は「if i=10 then ~ end if」という風に記述すれば同様の処理が可能。

Javaとの比較編集

次に、代表的なオブジェクト指向言語であるJavaを例に比較する。

  • ボタン、フィールド、カード等はオブジェクト的な性質を持つ。
    • プロパティ(属性)を持つ。プロパティに値を設定するには「set」命令を使用する。
    • マウスやキーボード等によるイベントを受け取る。先述の、ボタンのスクリプトの「on mouseUp」~「end mouseUp」内に処理内容を記載したのは、マウスが離されたイベントを受け取る例である。
  • 「クラス」「インスタンス」「継承」等の、多くのオブジェクト指向言語に存在する概念は、HyperTalkでは存在しない。
    • 「ボタン」をクラス、「カード上に作成したボタンのうち1つ」をインスタンスと考えることはできるが、HyperTalkではそのような呼び方はしない。
    • 独自のクラスを作成することはできない。
  • ポインタ型が存在しないため、カード上、またはバックグラウンド上のボタンやフィールドを参照するには、オブジェクト名、オブジェクト番号、オブジェクトIDを利用することになる。

HyperTalk

 put highlight of card button "I Agreed" into agreed
 set enabled of card button "OK" to agreed

Java

 boolean agreed = agreedCheckBox.getState(); // agreedCheckBox, okButton に値が入っているとする
 okButton.setEnabled(agreed);