ISO 80000-3:2006は、空間及び時間とその単位について定めた国際規格である。

国際標準化機構(ISO)によって2006年に発行された。規格の名称は「量及び単位―第3部:時間及び空間」(Quantities and units -- Part 3: Space and time)である。

この規格は、それまでのISO 31-1およびISO 31-2を置き換えたもので、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)が共同で発行しているISO/IEC 80000の一部である[1]日本工業規格(JIS)ではJIS Z 8000-3:2014が相当する。

内容 編集

ISO 80000-3は以下の章からなる。

  • 序文 (Foreword)
  • 0 (導入) (Introduction)
  • 1 適用範囲 (Scope)
  • 2 引用規格 (Normative references)
  • 3 名称、記号及び定義 (Names, symbols and definitions)
  • 附属書 A(参考)特別な名称をもつCGS系の単位 (Units in the CGS system with special names)
  • 附属書 B(参考)フート、ポンド及び秒を基本とする単位並びにその他の関連単位 (Units based on the foot, pound, second, and some other related units)
  • 附属書 C(参考)その他の非SI単位及びその換算率 (Other non-SI units given for information, especially regarding the conversion factors)

名称・記号・定義 編集

ISO 80000-3では、空間と時間に関する以下の量とその単位が定義されている。量の番号と記号の番号の"."より左側が対応している。例えば、3-8.1(速度・速さ)と3-8.2(波の伝播速さ)の両方の単位が3-8.a(メートル毎秒)と3-8.b(キロメートル毎時)である。

なお、ISO 80000-3には量の定義も記されているが、ここではそれは記載しない。個別の項目を参照のこと。

単位 備考
番号 名称 記号 番号 名称 記号 定義
3-1.1 長さ l, L 3-1.a メートル(metre) m 1 秒の 1/299 792 458 の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ。 オングストローム(Å): 1 Å = 10-10 m
海里: 1 海里 = 1 852 m
3-1.2 b, B
3-1.3 高さ h, H
3-1.4 厚さ d, δ
3-1.5 半径 r, R
3-1.6 回転半径 rQ, ρ
3-1.7 直径 d, D
3-1.8 行程の長さ英語版 s
3-1.9 距離 d, r
3-1.10 デカルト座標 x, y, z
3-1.11 位置ベクトル r
3-1.12 変位 Δr
3-1.13 曲率半径英語版 ρ
3-2 曲率 κ 3-2.a 毎メートル m-1 κ = 1/ρ
3-3 面積 A 3-3.a 平方メートル 単位アール(1 a = 100 m²)とヘクタール(1 ha = 100 a)を土地の面積を表すのに用いる。
3-4 体積 V 3-4.a 立方メートル
3-4.b リットル l, L 1 L = 1 dm³ 人名由来の単位ではないが、例外的に大文字のLも採用されている。
3-5 角度平面角 α, β, γ, ϑϕ 3-5.a ラジアン rad 1 rad = 1 mm = 1
3-5.b ° 1° = π180 rad これら上付き形の単位記号と数値との間は間隔を開けない。度は、十進法による分割が望ましい(例: 12°30′よりも12.5°)。
3-5.c 1′ = (160
3-5.d 1″ = (160)′
3-5.e ゴン gon 1 gon = (π200) rad
3-6 立体角 Ω 3-6.a ステラジアン sr 1 sr = 1  = 1
3-7 時間継続期間 t 3-7.a s セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造の間の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770 倍の継続時間。 時刻の表現法は、ISO 8601で定められている。
3-7.b min 1 min = 60 s
3-7.c 時間 h 1 h = 60 min = 3 600 s
3-7.d d 1 d = 24 h = 86 400 s
3-8.1 速度速さ u(速度ベクトル)
u, v, wuの成分)
3-8.a メートル毎秒 m/s
3-8.2 波の伝播速さ c 3-8.b キロメートル毎時 km/h 1 km/h = (1/3.6) m/s ≈ 0.277 778 m/s
ノット(kn): 1 kn = 1 海里毎時 = (1 852/3 600) m/s ≈ 0.514 444 m/s
3-9.1 加速度 a 3-9.a メートル毎秒毎秒 m/s²
3-9.2 自由落下の加速度 g 自由落下の標準加速度: gn = 9.806 65 m/s²
3-10 角速度 ω, ω 3-10.a ラジアン毎秒 rad/s ω=dφdt
3-11 角加速度 α 3-11.a ラジアン毎秒毎秒 rad/s² α=dωdt
3-12 周期 T 3-12.a s
3-13 時定数 τ, (T) 3-13.a s ある量が時間の関数 で表されるときのτ
3-14 回転 N 3-14.a (数の)1 1 N = ϕ/2π(ϕは平面角)
N は回転数に等しく、通常は回転(記号 r)という単位で使われる。
3-15.1 周波数 f 3-15.a ヘルツ Hz
3-15.2 振動数回転速度 n 3-15.b 毎秒 s-1
3-16 角周波数角振動数円振動数 ω 3-16.a ラジアン毎秒 rad/s
3-16.b 毎秒 s-1 回毎秒(記号 r/s)や回毎分(記号 r/min)という形で使われる。
3-17 波長 λ 3-17.a メートル m オングストローム(Å): 1 Å = 10−10 m
3-18 波数 σ 3-18.a 毎メートル m-1 σ = 1/λ
3-19 角波数波長定数位相定数 k 3-19.a ラジアン毎メートル rad/m k = 2πσ
3-19.b 毎メートル m-1
3-20.1 位相速度位相速さ c, v
cφvφ
3-20.a メートル毎秒 m/s cは電磁波の速さに使用する
3-20.2 群速度 cg, vg
3-21 場の量のレベル LF 3-21.a ベル B  
ベルは10分の1のデシベル(dB)の形で用いられる。
3-21.b ネーパ Np
3-22 工率の量のレベル LP 3-22.a ベル B  
ベルは10分の1のデシベル(dB)の形で用いられる。
3-22.b ネーパ Np
3-23 減衰係数 δ 3-23.a 毎秒 s-1 ある量が時間の関数  で表されるときのδ
3-23.b ネーパ毎秒 Np/s
3-24 対数減衰率 3-24.a (数の)1 1 Λ = δT
3-24.b ネーパ Np
3-25.1 減衰定数 α 3-25.a 毎メートル m-1 ある量が距離xの関数  で表される時、αが減衰定数、βが位相係数
3-25.2 位相定数 β
3-25.3 伝播定数 γ γ = α +

附属書 A 特別な名称をもつCGS系の単位 編集

特別な名称を持つCGS系の単位として、以下のものが挙げられている。なお、この附属書は参考として記載されたもので、規定の一部ではなく、ここに挙げた単位は使用するべきではないとしている。

単位 備考
番号 名称 番号 名称 記号 定義
3-9.1 加速度 3-9.A.a ガル Gal 1 Gal = 1 cm/s2 = 0.01 m/s2

附属書 B フート、ポンド及び秒を基本とする単位並びにその他の関連単位 編集

ヤード・ポンド法の単位として、以下のものが挙げられている。なお、この附属書は参考として記載されたもので、規定の一部ではなく、ここに挙げた単位は使用するべきではないとしている。

単位 備考
番号 名称 番号 名称 記号 定義
3-1 長さ 3-1.B.a インチ in 1 in = 25.4 mm インチの1000分の1(ミリインチ)を示すのにmilやthouが使われることがある
3-1.B.b フート[2] ft 1 ft = 12 in = 0.304 8 m USサーベイフート(測量フィート)は93732001 m = (0.304 8 m)/0.999 998 ≈ 0.304 800 6 mと定義されている。
3-1.B.c ヤード yd 1 yd = 3 ft = 36 in = 0.914 4 m
3-1.B.d マイル mi 1 mi = 1 760 yd = 5 280 ft = 1 609.344 m 1 USサーベイマイル = 5 280 USサーベイフート ≈ 1 609.347 m
3-3 面積 3-3.B.a 平方インチ in2 1 in2 = 645.16 mm2 (π/4)×10-6 in2 ≈ 506.707 µm2を「サーキュラーミル」という。
3-3.B.b 平方フート ft2 1 ft2 = 0.092 903 04 m2
3-3.B.c 平方ヤード yd2 1 yd2 = 0.836 127 36 m2 通常は sq in, sq ft, sq yd などの省略形を使用する。
3-3.B.d 平方マイル 1 平方マイル ≈ 2.589 988 km2 1 USサーベイ平方マイル ≈ 2.589 998 km2
3-3.B.e エーカー 1 エーカー = 4 840 yd2 ≈ 4 046.856 m2 1 USサーベイエーカー ≈ 4 046.873 m2
3-4 体積 3-4.B.a 立方インチ in3 1 in3 = 16.387 064 cm3
3-4.B.b 立方フート ft3 1 ft3 = 28.316 85 dm3
3-4.B.c 立方ヤード yd3 1 yd3 = 0.764 554 9 m3 通常は cu in, cu ft, cu yd などの省略形を使用する。
3-4.B.d ガロン gal (UK) 1 gal (UK) = 277.420 in3 ≈ 4.546 099 dm3 ≈ 1.200 95 gal (US)
3-4.B.e パイント pt (UK) 1 pt (UK) = (1/8) gal (UK) ≈ 0.568 261 25 dm3≈ 1.200 95 liq pt (US)
3-4.B.f 液用オンス fl oz (UK) 1fl oz (UK) = (1/160) gal (UK) ≈ 28.413 06 cm3≈ 0.960 760 fl oz (US)
3-4.B.g ブッシェル bushel (UK) 1 bushel (UK) = 8 gal (UK) ≈ 36.368 72 dm3 ≈ 1.032 06 bu (US)
3-4.B.h 米ガロン gal (US) 1 gal (US) = 231 in3 ≈ 3.785 412 dm3 ≈ 0.832 674 gal (UK)
3-4.B.i 米液用パイント liq pt (US) 1 liq pt (US) = (1/8) gal (US) ≈ 0.473 176 5 dm3 ≈ 0.832 674 pt (UK)
3-4.B.j 米液用オンス fl oz (US) 1 fl oz (US) = (1/128) gal (US) ≈ 29.573 53 cm3 ≈ 1.040 84 fl oz (UK)
3-4.B.k バレル bbl (US) 1 bbl (US) = 42 gal (US) = 9 702 in3 ≈ 158.987 3 dm3 ≈ 34.972 3 gal (UK) 石油用
3 -4.B.l 米ブッシェル bu (US) 1 bu (US) ≈ 2 150.42 in3 ≈ 35.239 07 dm3 ≈ 0.968 939 bushel (UK)
3-4.B.m 米穀物用パイント dry pt (US) 1 dry pt (US) = (1/64) bu (US) ≈ 0.550 610 5 dm3 ≈ 0.968 939 pt (UK)
3-4.B.n 米穀物用バレル bbl (US) 1 bbl (US) (dry) = 7 056 in3 ≈ 115.627 1 dm3
3-8 速度速さ 3-8.B.a フート毎秒 ft/s 1 ft/s = 0.304 8 m/s
3-8.B.b マイル毎時 mi/h 1 mi/h = 0.447 04 m/s
3-9 加速度 3-9.B.a フート毎秒毎秒 ft/s2 1 ft/s 2 = 0.304 8 m/s2

附属書 C その他の非SI単位及びその換算率 編集

その他の非SI単位として、以下のものが挙げられている。なお、この附属書は参考として記載されたもので、規定の一部ではない。

単位 備考
番号 名称 番号 名称 記号 定義
3-1 長さ 3-1.C.a 光年 (l.y.) 1年間に光が真空中を伝わる距離
1 l. y. ≈ 9.460 730×1015 m
l.y.は"light year"の略号で、単位記号ではない。
3-1.C.b 天文単位 ua 太陽から地球までの平均距離
1 ua ≈ 1.495 978 706 91(30)×1011 m[3]
3-1.C.c パーセク pc 1 天文単位が円弧で1秒の角度を張る距離
1 pc ≈ 206 264.8 ua ≈ 30.856 78×1015 m
3-7 時間継続時間 3-7.C.a a 1 a = 356 d 又は 366 d

関連項目 編集

出典・脚注 編集

  1. ^ ISO 80000-3:2006”. International Organization for Standardization. 2013年7月20日閲覧。
  2. ^ 日本の計量法やJISでは「フート」「フット」(foot)の語を使用しているが、一般には「フィート」(feet)と呼ばれる。
  3. ^ 国際天文学連合が2012年に天文単位の値を正確に 149 597 870 700 m とすることを決議しており、また、国際単位系では2014年に国際天文学連合の決議に基づいて単位記号を au としているが、これらは本規格(ISO 80000-3)には反映されていない。

外部リンク 編集