FC-1 (航空機)

中国とパキスタンが共同開発した単座式全天候型多用途戦闘機
JF-17から転送)

FC-1 梟龍
JF-17 Thunder

パキスタン空軍のJF-17(2017年)

パキスタン空軍のJF-17(2017年

FC-1英語Fighter China)またはJF-17Joint Fighter)は、中国パキスタンが共同開発した単座式全天候型多用途戦闘機。中国では「梟龍」(枭龙)、パキスタンでは「サンダー」(Thunder:「」)が愛称となっている。

成都で開発されている殲撃10型と同様、1980年代アメリカ合衆国第二次天安門事件以降はソ連およびロシア連邦の技術支援により開発された第4世代機である。

開発編集

 
ナンガ・パルバットで飛行するパキスタン空軍のJF-17(2015年)

中国は、長らくMiG-21派生のJ-7を生産し、人民解放軍防空戦闘機として運用するとともに、中小国家に安価に輸出してきた。しかし、1980年代に入ると、自国での使用のみならず輸出商品としても性能の陳腐化が目立つようになったため、アメリカ合衆国航空機メーカー・グラマンの協力のもと、J-7をベースにアメリカ合衆国の技術を取り入れた新戦闘機スーパー7超七)を開発する計画を開始した。ところが、開始直後に発生した第二次天安門事件の余波によりアメリカはじめ西側からの技術提供が打ち切られることとなり、遅滞を余儀なくされた。

スーパー7は新たにFC-1と名前を変えて開発を再開し、中国第132航空廠が担当することになった。そして、パキスタン空軍からの協力でF-16の特徴を参考にし、開発を加速した。また、関係を改善したロシアミコヤン設計局で開発を進めていた単発小型戦闘機41の開発で得られた技術も開発計画に活かされている。しかし、パキスタンもまた度重なる核実験により国際制裁の対象となった結果、パキスタン空軍が熱望していた西側製アビオニクスの調達が不可能になってしまったため、アビオニクスは機体開発よりも後の段階で別途開発することとなった。

FC-1は、2003年9月3日に初飛行を行い、2005年までに試作機3機が完成し各種飛行試験を行った。2006年に完成した試作4号機(PT-04)では性能向上のため、大きな特徴であるDSI(ダイバータレス超音速インレット)の採用や機体の軽量化などの改設計を実施。この仕様が量産型の元になった。

発展編集

2013年6月のパリ航空ショーにおいて、複座型FC-1B(JF-17B)の模型が展示された。これは転換訓練用の複座機で、後部座席を設置したため搭載燃料では少し不利であるが、単座型と同様に実戦への投入が可能な機体を目指している。パキスタン向けのJF-17Bは、2017年4月28日に初飛行した[1]

2015年には初期型のブロック1の機上酸素供給システムおよび電子戦システムに改良を加えたブロック2が初飛行している[2]。さらに発展したブロック3は2020年1月1日に初飛行に成功したと報じられた[3]

設計編集

J-7の機首にあったエアインテークは、電子機器搭載スペース拡大のため機体側面に移り、機体各部もJ-7より空力的に洗練された。大幅な改設計の結果、今までのJ-7系列とは外見が大きく異なり、主翼前部のストレーキや垂直安定板基部の処理など、むしろ、F-20に近いフォルムとなっている。そして、F-35より早く、世界で初めてDSIを実機に装備している。

 
パキスタン空軍のJF-17(2011年)

コックピットは3基の多機能ディスプレイを装備したグラスコックピットとなり、ブロック3では、J-20で使用されるものと同様の新しいより大きなホログラフィック広角ヘッドアップディスプレイおよび統合コックピットディスプレイになった[2]。 大型化・高性能化が図られた中国国産のKLJ-7レーダーにより探知範囲は増加し、視界外攻撃能力を獲得した。更にブロック2では、改良型のKLJ-7 V2[4]、ブロック3ではAESA方式の新型が搭載されている[3]。 この他、ブロック2では改良された空対空および精密誘導兵器の統合を処理するための改良されたデータバスが装備され、機上酸素供給システムおよび電子戦システムの改良がおこなわれている[2][4]。ブロック3ではJ-10C、J-16、およびJ-10Cで使用される高度な赤外線ミサイル警報装置が新たに装備され、アビオニクスのCOTS化も行われている[3]

機体制御には縦方向のみデジタル・フライ・バイ・ワイヤを採用し、横方向はコンピュータ補助の機械式制御となっている。FC-1Bでは操縦系統が一新され、3軸安定式4重デジタル・フライ・バイ・ワイヤとなった[1]。この改良は、以降製造される単座型にも適応される。エンジンは、ロシアクリーモフRD-33の派生型RD-93を採用。全量をロシアから輸入しているが、中国ではRD-33をベースにしたWS-13が開発されており、1機がこれを搭載して飛行したと報じられている[5]

機内には2300kgの燃料を搭載でき、戦闘行動半径は空対空任務で1,200km、対地攻撃任務で700km、フェリー航続距離は1,800kmとされている。パキスタンでは、JF-17に空中受油能力を付与する事で航続距離延伸を計画しており、空中給油プローブについてブロック1仕様の機体で試験を行っており、ブロック2で装備されるとされている[2]。プローブについては2種類あり2013年初期のものではキャノピーフレームのすぐ後ろに配置されており、その形状と配置からデネルが設計支援していると推測される。2016年に確認されたプレーブはコックピットキャノピーフレームの下にあり、取り外し可能となっている[4]

ハードポイントは7箇所となり、新型のPL-12などの中距離レーダーホーミングミサイルをはじめとした各種空対空空対地空対艦ミサイル誘導爆弾や通常爆弾を搭載できる。更にJF-17B及び以降製造のの単座型では、WMD-7英語版照準ポッドに対応し、各種誘導爆弾の単独運用が可能となった[1]

1機1,500万ドルと作戦用ジェット機としては比較的安価であり、共同開発相手のパキスタン空軍のみならず、発展途上国のMiG-21やF-5の代替として積極的な輸出を見込める価格となっている。

配備編集

 
購入した国
 
中国の政府専用機を護衛するパキスタン空軍のJF-17(2015年)

パキスタンは、2003年12月に中国と購入了解覚書を交わし、最初の16機を中国とパキスタンで8機ずつ生産することになった。2007年3月23日に最初の2機がパキスタンに到着。同発表によれば2機の配備は実戦配備ではなく飛行評価を主とするものである。そして、2009年3月7日、中国は先述のパキスタン製機を含む42機をパキスタンに売却し、同国と共同生産を進める契約に調印した。中国紙・環球時報3月10日付)によると、パキスタンは将来的に計250機まで増やす計画だという[6]。パキスタンでの生産初号機は2009年11月23日に引き渡された。その後2013年12月18日にはブロック1の最終号機たる50号機の納入式典が行われ、さらにブロック2仕様機50機の生産を行うことを明らかにした。また、2014年11月には既存のブロック1もブロック2仕様に改修することを決定した[7]

パキスタンとしては人民解放軍空軍にも同機が配備されることを望んでいるとされる。しかし中国でハイ・ローミックスのロー側(ハイ側はSu-27の輸出型にあたる殲撃11型英語版)を担うのは、FC-1よりも大型・重武装な殲撃10型であり、こちらはすでに量産体制に入っている。そのため、あくまで中小国向けの軽戦闘機FC-1が大国の中国にも配備されるかどうかは未定である。

2019年2月27日、パキスタン空軍は係争地のカシミールで自軍機のJF-17がインド空軍機のMig-21Su-30MKIを撃墜してパイロットの身柄を確保したと発表した[8]

輸出編集

FC-1の海外へのセールスはパキスタン・中国の双方が各々行っており、パキスタン側での成約が多い。前出の環球時報の記事は、パキスタンの軍事アナリストの話として、北朝鮮アゼルバイジャンタンザニアなど、世界で1,500機の需要があるという見通しだと伝えている。約300機程度を中東アフリカ諸国に輸出したいとされている。2017年11月12日にはアラブ首長国連邦アール・マクトゥーム国際空港にて開催された第15回ドバイ国際航空ショーに出展した[9]

アゼルバイジャン空軍は装備品の近代化の一途としてパキスタンからJF-17の購入を計画しており、契約が交わされれば24機(一説には26機)が導入される予定[10][11]

また、スーダンが12機のJF-17を購入する交渉を行っているとされる[12]

ジンバブエも12機のJF-17を導入するとされているが、未だ実現していない[11]

さらに、アルゼンチンFAdeA英語版が2013年のパリ航空ショーにて中国の成都飛行機とFC-1の合同生産について議論したとされる[13]。2015年2月、アルゼンチンクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領が訪中してFC-1を20機購入する合意を結んだが[14][15]、後のマウリシオ・マクリ政権はこれを中止したとされる[16]

2015年6月、LTTE掃討戦を通じて中国およびパキスタンと親密な関係にあるスリランカが採用を決定した。18-24機を2017年から導入する予定[17]だったが、翌年インドからの圧力によってキャンセルとなった[18]

同機の最初の輸出としてミャンマーが16機の導入を決定したことが報じられ[19]、2019年4月24日に最初の6機のJF-17Mを受領した[20]

評価編集

パキスタン空軍高官によると、2001年アフガン空爆を支援した見返りにアメリカから導入したF-16A/Bよりも高性能であると評価されている[21]。 また、本機はSu-30MiG-29にも対抗し得るとも言われている(年間飛行時間が200時間もあるパキスタン空軍のパイロットの腕を加味した可能性あり)[22]

仕様 (JF-17 / FC-1)編集

 
ファーンボロー国際航空ショーにて展示されるJF-17と搭載武装
  • 乗員:1名
  • 翼幅:9.46m
  • 全長:14.96m
  • 全高:4.77m
  • 空虚重量:6,411kg
  • 通常離陸重量:9,072kg
  • 最大離陸重量:12,474kg
  • 最大兵器ペイロード:6,063kg
  • 最大兵器搭載量:3,629kg
  • エンジン:RD-93(ミリタリー推力:50.0 kN アフターバーナー使用時:81.3 kN)ターボファンエンジン×1
  • 最大速度:マッハ1.6-1.8
  • 通常航続距離:2,037km
  • 戦闘行動半径:900km
  • 実用上昇限度: 15,240m
  • 最大上昇率:
  • 荷重制限: 8.5G
  • 武装

登場作品編集

小説編集

『第三次世界大戦』
JF-17が空対艦ミサイルを装備しヘリコプター搭載護衛艦「ほうしょう」の攻撃に向かうも、F-35Bに迎撃され全機撃墜される。

脚注編集

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  1. ^ a b c 田辺義明「最新・中国航空・軍事トピック 梟龍B型が登場」 『航空ファン』第66巻第7号(2017年7月号) 文林堂
  2. ^ a b c d Block 2 JF-17 makes first flight ahead of Block 3 improvements (英語)
  3. ^ a b c Upgraded JF-17 fighter jet makes maiden flight, equipped with J-20 tech: report
  4. ^ a b c JF-17 Block II advances with new refuelling probe
  5. ^ Sweetman, Bill (5 November 2012). “China’s Warplane Industry Expands”. Aviation Week. http://www.aviationweek.com/Article.aspx?id=/article-xml/AW_11_05_2012_p72-508347.xml 2014年6月23日閲覧。. 
  6. ^ 中国、新型戦闘機42機を輸出 パキスタンで共同生産
  7. ^ PAF retrofitting older Block I JF-17s to Block II configuration (英語)
  8. ^ “JF-17 used to shoot down Indian aircraft, says Pakistan military”. The Economic Times. (2019年3月25日). https://economictimes.indiatimes.com/news/defence/jf-17-used-to-shoot-down-indian-aircraft-says-pakistan-military/articleshow/68564241.cms 2019年5月23日閲覧。 
  9. ^ 中パ共同開発戦闘機「梟竜」、ドバイ航空ショーに登場―中国メディア Record China(2017年11月14日)2017年12月9日閲覧
  10. ^ Today.Az - Azerbaijan to buy JF-17 multirole fighters from Pakistan (英語)
  11. ^ a b Pakistan starts domestic production of JF-17 fighter AVBuyer.com. January 29, 2008. Retrieved on March 2, 2008 (英語)
  12. ^ China sells arms to Sudan (英語)
  13. ^ Argentine officials confirm joint-production talks over China's FC-1 fighter (英語)
  14. ^ “China To Supply 20 Thunder Fighter Jets To Argentina”. Defenseworld.net Bureau. (2015年2月16日). オリジナルの2019年6月21日時点におけるアーカイブ。. https://www.webcitation.org/6WOHShGQL?url=http://www.defenseworld.net/news/12186/China_To_Supply_20_Thunder_Fighter_Jets_To_Argentina 
  15. ^ CHINA’S MILITARY AGREEMENTS WITH ARGENTINA: A POTENTIAL NEW PHASE IN CHINA-LATIN AMERICA DEFENSE RELATIONS (pdf)” (English). 米中経済安全保障委員会 (2015年11月5日). 2019年6月21日閲覧。
  16. ^ “Could China Help Ignite a Second War over the Falkland Islands?”. ナショナル・インタレスト. (2018年9月14日). https://nationalinterest.org/blog/buzz/could-china-help-ignite-second-war-over-falkland-islands-31197 2019年6月21日閲覧。 
  17. ^ Sri Lanka revealed as first foreign buyer of JF-17 (英語)
  18. ^ Indian pressure stalls Pakistani JF-17 sale to Sri Lanka (英語)
  19. ^ 総額600億円分の戦闘機16隻をミャンマーが購入
  20. ^ イカロス出版 Jwing No.251 2019年7月号 90頁-95頁 「行くぞ!NEWSマン 海外軍関係NEWS」
  21. ^ 新浪軍事 (中国語)
  22. ^ 新浪軍事 梟龍性能深度分析

関連項目編集

  • JL-9 - J-7の複座練習機型であるJJ-7を基にサイド・エアインテーク化した、超音速複座練習機。よって、J-7を基にサイド・エアインテーク化したFC-1の従兄弟と言える。機体サイズもFC-1とほぼ同じであるため、純粋な練習機としては大柄な部類に入る。

外部リンク編集