JR東日本キヤE991形気動車

東日本旅客鉄道の事業用気動車

キヤE991形気動車(キヤE991がたきどうしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)と鉄道総合技術研究所(JR総研)が共同開発した試験用鉄道車両である。ハイブリッド気動車として試験を行った。

JR東日本キヤE991形気動車
E991NEtrain.JPG
キヤE991-1
(2004年5月29日 大宮工場)
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
製造所 東急車輛製造
製造年 2003年
製造数 1両
運用開始 2003年
運用終了 2007年
廃車 2007年3月
主要諸元
編成 両運転台付単行車
軌間 1,067 mm
最高速度 100 km/h[1]
全長 20,000 mm[1]
全幅 2,800 mm[1]
全高 4,052 mm[1]
車体 ステンレス
台車 DT959 / TR918
発電機 3相誘導発電機 DM927
主電動機 MT936
主電動機出力 95 kW
制動装置 回生ブレーキ
電気指令式空気ブレーキ
保安装置 ATS-P,ATS-SN
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本項では、2008年にクモヤE995形電車(クモヤE995がたでんしゃ)に改造されてからの、燃料電池ハイブリッド車両や蓄電池電車としての試験についても記述する。

概要編集

シリーズ方式のハイブリッド気動車の実用化に向けて1両のみ製作された試験車両で、営業運転には入らなかった。愛称は"New Energy Train"から「NEトレイン」と名付けられた。

2007年をもってハイブリッド気動車としての試験を終了し、燃料電池ハイブリッド車両、次いで蓄電池電車に改造されて試験を行った。

開発の経緯編集

東日本旅客鉄道(JR東日本)は鉄道総合技術研究所(JR総研)と共同で2003年平成15年)、シリーズ方式のハイブリッド気動車キヤE991形(キヤE991-1)を試作した[2]。システムとしては電気式気動車に大容量の蓄電池を設けた構造である。発進・加速・登坂などの高負荷時には発電機と蓄電池の電力を併用し、減速・制動時にはモーターから回生させた電力を蓄電池に充電することで、エンジンの負荷を抑え、燃費節減や排出ガス削減を図っている。従来の気動車では不可能だった「走行エネルギーの回収・再利用」を実現したという点で画期的な車両であった。

構造編集

蓄電池は容量 10 kWh(当初)のものを屋根上に搭載し、マンガン系の正極を使ったリチウムイオン二次電池を採用した。発電用エンジンは出力 331 kW / 2,100 rpm の国際的な鉄道の排出ガス規制に対応したもので、発電機は 180 kW の3相誘導発電機 DM927 である。電機品はE231系のものをベースにした日立製作所製であり、主電動機は MT73 に電圧変更対応を施した 95 kW の MT936 、主変換装置もE231系のVVVFインバータ制御装置をベースに DC 340 V のインバータ・コンバータとした CT905 で、この制御装置部が蓄電池やエンジンも制御するハイブリッドシステム統括制御装置となっている。台車は軽量ボルスタレス式空気ばね台車の DT959 / TR918 で、これもE231系のものをベースとしている。なお、後述のような燃料電池動車に容易に改造できる構造で製造された[1]

車体はステンレス製で、両開き扉が片側2ヶ所設置されており、単行運転が可能な両運転台車となっている。

基本的には駅停車時や低速走行時にはエンジンを極力停止させることとし(サービス電源は蓄電池から供給)、蓄電池で発車後 25 km/h でエンジンが始動する。この時はエンジンは最高効率域での発電となり、蓄電池からの電力も併せて使用するが、長い上り坂などではエンジンを最高出力で発電させ、エンジン発電のみで走行する。ブレーキは回生発電併用電気指令式空気ブレーキで、回生時は主電動機の発電で蓄電池を充電するが、抑速時はエンジンの排気ブレーキも使用される。その場合、主発電機をモーターとして作動させ、燃料噴射を停止して排気ブレーキを作動させたディーゼルエンジンを強制的に回すことで、走行用モーターに対する抵抗器としての役割を持たせる[3]

クモヤE995形電車編集

 
クモヤE995-1
(2009年11月8日 大宮総合車両センター)

電気式気動車の一種であるシリーズ式ハイブリッドを採用した理由のひとつには将来の燃料電池動車の導入があった。2006年4月に同年7月以降水素燃料による燃料電池(65 kW×2台)を搭載して試験を実施することが発表され[1]、キヤE991形は2008年(平成20年)に燃料電池ハイブリッド車両に改造された。同時に形式称号もクモヤE995形(クモヤE995-1)に改称されたが、愛称はハイブリッド気動車時代と変わらず「NEトレイン」 (New Energy Train) とした。

さらに2009年(平成21年)には「蓄電池駆動電車システム」試験車両として再改造され、愛称も「NE Train スマート電池くん」と改められた。電化区間は通常の電車として走行しながら充電し、非電化区間は電化区間や駅停車中に充電した電力を元に蓄電池駆動で走行するもので、将来への実用化に向けた研究試験が実施された。

運用編集

ハイブリッド気動車(キヤE991形)時代は宇都宮運転所に所属し、2007年(平成19年)3月に一旦廃車(除籍)となった。燃料電池動車への改造後(無車籍)は長野総合車両センター、蓄電池駆動車に改造された後は小山車両センターに所属し、周辺の各路線で各種試験を行った。車籍は2010年(平成22年)2月に復活した(新製車扱い)。

試験終了後は所属先の小山車両センターに長らく留置されていたが、2019年(令和元年)12月18日に廃車のため長野総合車両センターへ回送され[4]、同年12月19日付で廃車[5]、2020年(令和2年)2月19日に解体された。

技術の実用化編集

ハイブリッド気動車の技術は、世界初の営業実用化となるキハE200形に反映された。同車は2007年夏より小海線に3両が投入され、営業運転を行いながら長期試験を行っている[6]。これらとE231系電車の開発・導入によって、JR東日本は「省エネ車両の継続的導入と世界初のハイブリッド鉄道車両の開発・導入」という理由により、第16回地球環境大賞の文部科学大臣賞を受賞した。

燃料電池技術のJR東日本における営業実用化は2021年現在も実現していないが、クモヤE995形と同様のシステムを搭載し、航続距離の延長などを行った試験車両FV-E991系の製作が発表され、2022年2月6日に登場している[7]

蓄電池電車の技術はEV-E301系に反映され、2014年3月15日のダイヤ改正から烏山線および直通運転先の東北本線で運用されている。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f 世界初の燃料電池ハイブリッド鉄道車両の開発 (PDF) - JR東日本 プレスリリース(2006年4月11日)
  2. ^ 参考までに日本ではないが、営業用でない(試作車・デモンストレーション車)ハイブリッド気動車では、2000年アルストムなどが製作した、ドイツ鉄道の618型気動車「コラディア・リレックス」 (Coradia LIREX) の事例が存在する。こちらは電池ではなく、フライホイールにエネルギーを蓄えるシステムである。また、燃料電池の搭載も可能としている。2000年に開催された鉄道技術見本市「イノトランス」で実車が出展された。
  3. ^ ディーゼルハイブリッド車両の開発 (PDF) - 日本機械学会誌 2008年4月 Vol. 111 p331
  4. ^ “クモヤE995-1が長野総合車両センターへ”. 鉄道ニュース. 鉄道ファン・railf.jp (交友社). (2019年12月19日). https://railf.jp/news/2019/12/19/180000.html 
  5. ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2020夏 ジェー・アール・アール、交通新聞社、2020年、p.358。ISBN 9784330050201
  6. ^ 営業車として世界初のハイブリッド鉄道車両の導入 -キハE200形式- (PDF) - JR東日本 プレスリリース(2005年11月8日)
  7. ^ JR東日本に新型の燃料電池式ハイブリッド車…世界初、700気圧の高圧水素を用いるFV-E991系 2021年度内に落成” (日本語). レスポンス(Response.jp). 2020年7月16日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集