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JR東日本GV-E400系気動車

東日本旅客鉄道の気動車

GV-E400系気動車(GV-E400けいきどうしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の一般形気動車である。

JR東日本GV-E400系気動車
新津駅にて(2019年7月27日)
新津駅にて(2019年7月27日)
基本情報
製造所 川崎重工業
主要諸元
最高速度 100 km/h
起動加速度 2.3 km/h/sまたは1.8 [1] km/h/s
減速度(常用) 3.5 [1] km/h/s
減速度(非常) 3.5 [1] km/h/s
車両定員 座席36・立席99(GV-E400)
座席40・立席111(GV-E401)
座席51・立席121(GV-E402)
自重 42.2t (GV-E400)
40.3t (GV-E401)
39.7t (GV-E402)
車体長 20,000 mm
車体幅 2,800 mm
車体高 3,640 mm
車体 軽量ステンレス(efACE)
台車 軸梁式ボルスタレス台車
DT87(動台車)
TR270(従台車)
機関 DMF15HZB-G直噴式直列6気筒ディーゼルエンジン
機関出力 450PS/2000rpm
主電動機 かご形三相誘導電動機 MT81
主電動機出力 105kw
歯車比 7.07
制御方式 コンバータ+VVVFインバータ制御
制御装置 C127形主変換装置
制動装置 電気指令空気ブレーキ
抑速ブレーキ
機関・排気ブレーキ
直通予備ブレーキ
耐雪ブレーキ
保安装置 統合型ATS装置(ATS-P・ATS-Ps)
EB
乗務員無線、防護無線
デッドマン装置
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目次

概要編集

老朽化したキハ40系気動車の置き換えを目的に新造された車両である[2]

2019年令和元年)8月19日に営業運転を開始した。[3]

ディーゼルエンジンの動力で発電した電力で主電動機を駆動する、いわゆるディーゼル・エレクトリック方式電気式気動車である。ただし、本系列はこれまでJR東日本で開発・採用されてきた、シリーズ式ディーゼルハイブリッドは採用されていない[4][注釈 1]

両運転台車のGV-E400形と、片運転台車のGV-E401形トイレ付き)およびGV-E402形(トイレなし)からなる2両固定編成がある。車体や各機器はキハE130形500番台に続き、国内外を対象に公募調達を行っている[2][JR 1][JR 2]。製造は川崎重工業が担当した。

開発・採用の経緯編集

新潟・秋田地区への車両新造にあたって行われた公募調達では、当初から「当社としては新方式となる新型電気式気動車」を調達するとされていた[JR 1]。本系列を採用した理由についてJR東日本は以下のように説明している[2][JR 2]

  • 電車で培われた技術やメンテナンス方法がフィードバックできる
  • 液体式気動車特有の機械的駆動部分[注釈 2]がなくなること
  • 電車との共通部品の採用や駆動軸の多軸化による、安全安定輸送と質の高いサービスの提供

また、登場時に『鉄道ジャーナル』誌ではハイブリッド車とならなかった理由について、以下の点を指摘している[4][5]

  • イニシャルコストの面で不利
  • 走行用蓄電池を積むことによる相応の重量増・メンテナンスの必要性

形式について編集

「GV」は「Generating Vehicle」の意であり、液体式気動車の「キ」、ディーゼルハイブリッド車両の「HB」に相当する駆動方式を表す記号である[2]。また、形式名の百の位の数字「4」も、「電気式気動車」を表す[注釈 3]

車体編集

エクステリアデザイン編集

「長年に渡り沿線の日常を支える公共交通としての信頼感[2]」「時代が変わっても風化しないシンプルさ[2]」を志向した。

先頭部は「金属の塊から削り出した印象[2]」を狙った大きなガラス面とエッジの立った構成とし[注釈 4]、先頭部から側面へ繋がる面構成と稜線の工夫により、全体の一体感を高めている[2]

塗装については、新津運輸区所属の量産先行車は、前面・側面の下部にいわゆる「新潟色(黄色とトキピンク色[注釈 5])」をドットでライン状に配している[2]

構造編集

車体長は20 m 級(19,500 mm)であり、車体下部の台枠を除き、ステンレス鋼を使用している。車体幅は2,800 mm で、裾絞りのないストレート車体としている。踏切事故対策として前頭部を強化しており、側面からの衝撃に対する安全向上対策として「リング構造[注釈 6]」を採用し、衝撃荷重を受けた時の車体構体の変形量抑制を図っている[2]

床面高さは1150 mm であり、客室扉は片開き・片側2扉としステップ(レール面高さ970 mm)を設けている[2]

前部標識灯後部標識灯は、前面上部のきせの中に2灯のLED前部標識灯を外側に、2灯のLED後部標識灯を内側にそれぞれ配置しており、ガラス防曇対策として、前面窓の熱線ガラスを前部上部のきせ内まで大形化している[2]

側窓は面積確保のため上下分割の上部降下窓と下部固定窓の組合わせとし、可視光線日射熱線紫外線の透過率が少なく紫外線を100%カットする強化型のIRカットガラスの採用により、客室内はブラインドカーテンを省略している[2]

主要機器編集

床下の主回路搭載スペースを確保するため、トイレの汚物タンクは床上タンク式とし、制御用蓄電池の2段化、機器箱の一体化などにより、床下のぎ装スペースを確保している。床下の機器配置はGV-E400形を基本配置に、GV-E401形は同配置、GV-E402形は点対称配置としている[2]

なお、以下文中で「前位」「後位」の語を用いるが、GV-E400形・GV-E401形は羽越本線基準で新津方が後位、GV-E402形は逆となっている[5]

動力・電源関係編集

 
主回路の大まかな見取り図

本形式は前述するように電気式気動車であり、動力はディーゼルエンジンで主発電機を駆動して得られた三相交流電源をPWM(パルス幅変調方式)コンバータで直流に変換し、それをVVVFインバータで三相可変電圧可変周波数に変換して主電動機の三相誘導電動機を駆動させている[2]。主電動機の制御は1C2M方式[注釈 7]を採用している[2]

なお、主回路は以下の3つのモードを持つ[2][4]

  • 機関始動モード
    • 主変換装置に内蔵されたシステム起動用バッテリー(総電圧346V・最大出力32kW)により、主変換装置のコンバータによる制御を介して機関に直結している主発電機を起動用モーターとして駆動させ、機関が自立回転するまで機関始動を行う。機関自立回転後には定電圧制御モードへ移行する。
  • 定電圧制御モード
    • 主発電機で発電した電力を車両の補助回路機器と主電動機とで分け合う。安定した電力供給のため、中間リンク電圧は負荷に応じて一定に制御される。
  • 抑速制御モード
    • 抑速ブレーキ時には、主発電機の回生ブレーキにより発生した回生電力を車両の補助回路機器の電力と、機関を主発電機で回す電力として消費させる。

機関・主発電機編集

機関は燃料直接噴射式のDMF15HZD-G形(定格出力331kW≒450PS/2000rpm、総排気量15.24リットル、4サイクル直列6気筒横形、ターボチャージャーアフタークーラー付き)である。排出ガスの清浄化と低騒音化のため、燃料噴射系統にコモンレールと高圧フェエルサプライポンプを採用している[2][4]

主発電機は開放形強制通風方式ののDM115形三相誘導発電機(定格出力305kW)を搭載し、機関とは直結駆動され、車両に必要な電力を供給している[2]

なお、前述のように機関始動には主発電機を用いるため、スターターは省略されている[2]

制御装置編集

PWMコンバータ部とVVVFインバータ部と補助電源装置部で構成されたC127主変換装置を搭載している。半導体素子にはダイオード側にSiC素子を採用しており、PWMコンバータは三相2レベル方式電圧形PWMコンバータ、VVVFインバータは三相2レベル方式電圧形VVVFインバータ、補助電源装置部は半導体素子にハイブリッドSiC素子を採用した2レベル方式の静止形インバータ(SIV)である[2]

補助電源装置部はPWMコンバータで変換した直流を三相または単相一定電圧一定周波数に変換して車両の補助回路機器に電力を供給しており、出力63kVAの三相交流440V、出力7kVAの単相交流100Vをそれぞれ出力する[2]

台車編集

動台車を車体後位、付随台車を車体前位に配置する。いずれも軸梁式ボルスタレス台車で、軸距離は2100mmである。車軸軸受は円錐ころ軸受を採用した。基礎ブレーキは踏面片押し式のユニットブレーキとしている。また、ミュージェット噴射装置を装備している。形式は電動台車がDT87形、付随台車がTR270形である[2]

主電動機編集

全閉形自己通風方式のMT81形三相誘導電動機(出力105kw)を動台車に2基搭載する。全閉構造としたことで内部清掃は不要としている。軸受とそのグリース交換時には、電動機の回転子の分解が不要な回転子非解体交換構造を採用している[2]

制動装置編集

電気指令式空気ブレーキ方式を採用しており、ブレーキ指令には引通し線による電気指令で行なわれる。常用ブレーキ・非常ブレーキ・直通予備ブレーキ・耐雪ブレーキの4つのブレーキ系統を有する[2]。常用ブレーキはブレーキ制御装置内のブレーキ制御器でマスコンのノッチ指令に応じた指令空気圧の指令と制御を行い、指令空気圧は応荷重機能付きの中継弁に送られた後に、ノッチ指令に応じたブレーキシリンダー圧力が出力される。 なお、制御装置はドイツクノールブレムゼの製品が採用されている[5]

電動空気圧縮機編集

各車1台設置し、空気圧縮機には、スクロール式の潤滑油が不要なオイルフリータイプを採用しており、空気圧縮機(スクロールコンプレッサー)で圧縮・加熱された後にアフタークーラーにより冷却され、除湿装置で除湿された後に2次側に供給される。なお、除湿された水分はパージ空気とともに、水蒸気として大気に排出している。なお、電動空気圧縮機はブレーキ制御装置内のブレーキ制御器で制御している[2]

その他装置編集

空調装置編集

屋根上に室外上面カバーの板厚アップや補強追加により耐寒耐雪仕様とした集中形空調装置AU741形(出力38.4kW≒33000kcal/h)を搭載し、冷房のほか、内蔵されたヒータ(12kW)で急速暖房と除湿運転も行う[2]

また、暖房については、座席下の吊り下げ式のヒータ、デッキ部の壁設置ヒータ(約13kW)などで行う[2]

空調制御は年間を通じて、カレンダー機能による季節認識と車内の温度・湿度・車外温度および乗車率を検知して、冷房・暖房・送風・除湿モードを自動で選択する全自動制御とし、最適温度設定を行っている。なお、空調制御で用いた各種データは、空調制御器に蓄積可能なデータロガー機能を有している。[2]

戸閉装置編集

直動空気式で、押しボタンにより開閉する半自動機能を持つ。戸閉力弱め機構により、ドアに挟まった際には、ドアが閉まった後に一旦に戸閉力を弱めて容易に脱出できるようにしている[2]

保安装置編集

ATS-P形とATS-Ps形を機能集約した統合型ATS車上装置を搭載し、装置自体の小型化と艤装配線削減を狙っている。車上装置は送受信制御部・継電器盤・PPs切換器で構成され、運転台選択スイッチの設定により、関係機器類が自動的に切り替わる[2]

放送装置編集

通常の車内外放送と連絡通話機能を有しており、車内外放送の切替えは5km/h未満では車内外放送、5km/h以上では車内放送をそれぞれ行うことが可能であり、車内放送の入・切はモニタ装置画面から設定可能である。非常通話装置はブザー音とともに乗務員と相互に通話可能なタイプとしており、どの車両から非常通報が扱われているかを後述のモニタ装置画面から確認可能としている。

モニタ装置編集

モニタ装置は主回路・ブレーキ制御装置・空調制御器・ワンマン制御装置・ディーゼル機関などと接続され、各機器の状況・情報を把握可能なほか、乗務員支援機能としてワンマンおよびツーマン運転時の設定、自動放送や前面・側面表示器などの案内表示器の設定、自動放送装置および前面・側面表示器に対するテスト指令の送信、モニタ装置の動作チェック機能の自己診断機能、運転状況記録・故障記録・状況監視記録をすべてモニタ装置に記録する検修支援機能がある。基幹伝送は従来標準のARCNET方式からイーサネット方式に変更、機器間伝送はRS-485、編成間伝送はARCNETを採用している[2]

屋根上機器編集

前述の空調装置のほか、GPS/準天頂衛星アンテナ、次世代閉塞アンテナの台座を準備工事として設置している[2]

車内設備編集

インテリアデザイン編集

新津運輸区所属の量産先行車は全体をトキピンク色を基調とした色彩に統一している。天井照明はLED照明としている[2]

客室設備編集

座席編集

車内中央部をクロスシート(2+1列)3区画、その他をロングシートとしたセミクロスシートである。ロングシート部は中間にスタンションポールを設置したほか、出入口部の袖仕切は冬季での寒さ対策として大型化している。なお、優先座席は、GV-E400形は車いすスペース隣接のロングシート、そのほかは車端部のロングシートに設定した。吊り手高さはロングシート部1,630mm、車端部1,580mmとした[2]

便所編集

GV-E400形・GV-E401形の客室後位寄りに、JIS規格の電動・手動車椅子対応のもの(洋式)を設置しており、客室内の見通しを妨げないように枕木方向の寸法を抑えた構造としている。汚物処理装置は臭気対策のため真空式としている[2]

その他編集

移動制約者対応として、各客室扉引戸鴨居部に扉開閉表示灯、GV-E400形・GV-E401形の便所向かいに車椅子スペースを設けている[2]。また、各車とも、客室中央の前位寄りに機器室を配置している[2]

客室を仕切る妻引戸は内蔵されたドアクローザーで自然に閉まる機能を有している[2]

乗務員室編集

半室仕様の貫通構造となっており、非貫通時は、客室との間に設けられた妻引戸により客室と完全に仕切ることが可能である。ワンマン運転時には助手側背面に収納された運賃箱を客室側に展開して仕切ることも可能であり、貫通時は、運転室側の引戸と助手側の開戸で仕切ることが可能である[2]

運転台は、モニタ装置(前述)と接続された7.5インチのタッチパネル式表示設定器を搭載したほか、既存の気動車と同等の前方視認性を確保しつつ計器盤内の機器を従来より大型化したが、機器配置は既存の気動車を基本に電気式気動車特有の機器を配置している。主幹制御器は左手操作のワンハンドル式とした[2]

このほか、助士側開戸上部にワンマン運転時に使用する後方確認のミラーを取付けている[2]

配置・運行予定編集

2018年(平成30年)1月に量産先行車として各車種1両ずつの3両が登場し新津運輸区に配置された。

2019年 (令和元年) 8月19日より、羽越本線(新津駅 - 鼠ケ関駅間)及び磐越西線(馬下駅 - 新津駅)で営業運転を開始した[3]

今後の走行予定線区は以下の通り[JR 2]

新潟地区編集

秋田地区編集

今後の予定編集

量産先行車は各機器の基本性能の評価と検証のため、新潟地区で性能試験・乗務員訓練を実施している。

量産車は新潟地区においては2019年8月19日に営業運転を開始し、2019年度中には本系列の投入によって信越本線・羽越本線・磐越西線におけるキハ40系の定期運用を終了させる計画となっている。また、秋田地区においては2020年度に投入予定であり、2地区あわせて両運転台車19両、2両編成22本44両の計63両の投入が計画されている[JR 2][5]

なお、JR東日本では2015年(平成27年)時点で、前述の63両を含めて約150-250両程度の電気式気動車の新造を計画している[JR 1]

脚注編集

注釈編集

  1. ^ シリーズ式ハイブリッド車では、エンジンで発電機を回し電力供給をするだけでなく、走行用電力を供給・貯蔵する蓄電池を搭載し、その電力も組み合わせて主電動機を駆動する。このため、起動時や停車時は蓄電池の容量が十分な場合エンジンを停止する。
  2. ^ 液体変速機推進軸変速機構・逆転機構・減速機
  3. ^ 新系列以降の国鉄気動車以降、気動車は百の位で駆動方式を分類しており、JR東日本発足後の形式では、ディーゼルハイブリッド車登場後、液体式気動車が「1」、ディーゼルハイブリッド車が「2・3」を用いていた。
  4. ^ 形状は、オフセット衝突(前面の片側だけが衝撃を受ける正面衝突の仕方)時の衝撃分散を考慮している。JR北海道H100形気動車#構造を参照。
  5. ^ E129系電車でも使用。
  6. ^ 台枠の横梁と側構体の柱と屋根構体の垂木の位置を合わせている。
  7. ^ 制御装置1台で2台の主電動機を駆動させる方式

出典編集

  1. ^ a b c 『車両技術』256号 p.66
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap 渡邊(2018)
  3. ^ a b 7月27日(土) 新津駅でお祝いのイベントを開催します! (PDF)”. 東日本旅客鉄道株式会社新潟支社 (2019年6月27日). 2019年6月27日閲覧。
  4. ^ a b c d 松沼(2018)
  5. ^ a b c d 『鉄道ジャーナル』通巻618号 p.92

JR東日本編集

  1. ^ a b c “新潟・秋田地区への新型電気式気動車の投入について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道, (2015年5月19日), オリジナルの2018年12月8日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20181208103229/https://www.jreast.co.jp/press/2015/20150510.pdf 2018年12月8日閲覧。 
  2. ^ a b c d “八戸線および新潟・秋田地区への車両新造計画について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道, (2017年7月6日), オリジナルの2018年12月8日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20181208102056/https://www.jreast.co.jp/press/2017/20170706.pdf 2018年12月8日閲覧。 

参考文献編集

関連項目編集