JR貨物タキ1000形貨車(JRかもつタキ1000がたかしゃ)は、1993年平成5年)から製作されているガソリン専用の貨車タンク車)である。日本石油輸送または日本オイルターミナル所有する私有貨車で、日本貨物鉄道(JR貨物)に車籍編入されている。

JR貨物タキ1000形貨車
タキ1000-290 日本石油輸送所有車 (2006年10月 八王子駅)
タキ1000-290
日本石油輸送所有車
(2006年10月 八王子駅)
基本情報
車種 タンク車
運用者 日本貨物鉄道
所有者 日本石油輸送
日本オイルターミナル
製造所 日本車輌製造川崎重工業[注釈 1]
製造年 1993年平成5年) -
製造数 1008両(2021年11月現在)
常備駅 郡山駅根岸駅
主要諸元
車体色 グリーン/グレー、青15号、他
専用種別 ガソリン
化成品分類番号 燃32
軌間 1,067 mm
全長 13,570 mm
全幅 2,960 mm
全高 3,918 mm
荷重 45 t
実容積 61.6 m3
自重 17.2 t
換算両数 積車 6.0
換算両数 空車 1.8
台車 FT21・FT21A
車輪径 810 mm
台車中心間距離 9,370 mm
最高速度 95 km/h
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概要 編集

1984年2月ダイヤ改正貨物列車の輸送体系が拠点間直行方式に改められて以降、貨物列車の運用は行先別・荷種別に集約する「専用列車」への転換が進行した。コンテナ列車は従来よりコキ50000系コキ100系などを用いた最高速度95 km/h以上の高速貨物列車が主体となったが、タンク車など一般の車扱貨物に用いられる貨車は依然として最高速度は75 km/hにとどまり、到達時分の短縮やダイヤを組成する際の懸案事項となっていた。

これを受け、専用列車のうち特に占める割合の大きい石油類専用貨物列車の高速化を図る目的で製作されたのが、本形式である。タンク車初の高速貨車として開発された本形式は、輸送効率と高速走行とを両立させた形式として製作されている[1][2][3]

構造 編集

 
FT21形台車(2006年10月 八王子駅

車体の基本構造はタキ43000形のフレームレス構造を踏襲したが、本形式では車高を下げてタンク体の形状を変更し、昇降ハシゴ・タンク上部の踏み板は軽量化のためアルミニウム合金を使用した。タンク体が大型化したため、車両限界に抵触しないよう手すり高さを低くしている。以上の仕様変更によって荷重はタキ43000形の43 tから45 tに増大した。

台車はコキ100系のFT1形を基本とし、車高を下げるため直径810 mmの小径車輪を用いたFT21形を採用した。403番以降には、台車側面に補強板の無い改良されたFT21Aが採用されている。最高速度は従来車両の75 km/hから95 km/hに向上している。軸重は15 tのままで、運用線区は限定される。

車体塗装 編集

外部塗色は所有者によって異なり、車体帯や標記類の有無で以下のパターンが存在する。

日本石油輸送所有の車両は、タキ43000形243000番台の後期車と同一のグリーンとグレーの2色塗り分けとされた。ENEOS油槽所製油所の間で使用される一部車両については、タンク体右側に同社の「ENEOS」ブランドマーク[注釈 2]エコレールマーク[注釈 3]の標記が施されており、アメリカ空軍横田基地のジェット燃料輸送に使用されている車両は、積載物を表す米軍表記(JP-8等)が施されている。

日本オイルターミナル所有の車両は、同社伝統の青15号(インクブルー)で塗装されている。初期の車両 (93 - 102・303 - 347・373 - 417・443 - 462) はスカイブルーと銀色の帯を入れていたが、2004年(平成16年) - 2005年(平成17年)製の643 - 676はタキ43000形・タキ44000形と同様の青単色塗装で導入されるようになり、2006年(平成18年)度以降製作の693 - 752は同社の40周年記念としてカラフルな「矢羽」をあしらったステッカーを車体に貼付していたが、いずれも後年の検査時に順次青単色塗装に変更されて消滅している。

2021年令和3年)に製造された1000号車については、タキ1000-1000号記念車両として、日本石油輸送色と日本オイルターミナル色とコンテナブルーが混合した特別塗装となっており、車両展示にも利用されている。

移籍 編集

2000年(平成12年)に日本オイルターミナル所有の338 - 347の10両が日本石油輸送に移籍し、全般検査まで旧社紋部分の上に新社紋を貼付する暫定措置を施された。2007年以降も同様の移籍車両が発生し、それらも検査時の再塗装まで暫定的に社紋の張り替えが行われている。

現況 編集

 
タキ1000形のみで組成された石油専用列車(2019年12月 )

2021年(令和3年)までに1008両が製造され[1][2][3][4]、日本オイルターミナルと日本石油輸送の両社が従来用いてきたタキ9900形タキ35000形などの35 t積タンク車、安全性は高いが積載効率に劣るタキ38000形(36 t積)やタキ40000形(40 t積)、老朽化したタキ43000形の43 t積車両を順次置き換えている。なお、タキ43000形の廃車は進行しているものの、燃料油輸送の斜陽化で余剰車が発生しているため、2017年(平成29年)以降の新造は行なわれていなかったが、2019年(令和元年)と2021年(令和3年)にそれぞれ20両が新造されている。

名古屋地区から東北地区で石油専用列車に使用され、線区によっては本形式のみの編成やコキ100系・コキ200形との混結で組成された最高速度95 km/hの高速貨物列車(列車種別:高速貨B)にて運転されている。日本オイルターミナルでは本形式のみで組成された高速貨物列車の愛称を「スーパーオイルエクスプレス」と命名している。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 平成20年以降は日車のみ
  2. ^ ENEOSブランドが制定された旧・日石三菱発足時にロゴの表示が開始されたもので、当初付された『日石三菱』の表記は社名変更に伴い順次『新日本石油』の表記に変更された。その後、2010年8月には合併による再度の社名変更(JX日鉱日石エネルギー、その後JXエネルギー・JXTGエネルギーを経て現在はENEOS)のため順次『新日本石油』の社名を白で塗りつぶし、新社名への書き換えの準備が進められたが、白紙のまま現在に至っている。
  3. ^ エコレールマークのみ標記した車両も存在する。

出典 編集

  1. ^ a b 【JR貨】臨8862列車で新製タキ1000形6輌を輸送 (RMニュース) ネコ・パブリッシング 2013年7月29日
  2. ^ a b 【JR貨】タキ1000 甲種輸送 (RMニュース) 鉄道ホビダス―実物から鉄道模型まで日本最大級の鉄道専門サイト by ネコ・パブリッシング 2016年9月7日掲載
  3. ^ a b 【JR貨】8862レの話題 (RMニュース) 鉄道ホビダス―実物から鉄道模型まで日本最大級の鉄道専門サイト by ネコ・パブリッシング 2019年6月22日掲載
  4. ^ https://www.jot.co.jp/news/attach/20220509-1636_300.pdf 日本石油運輸株式会社 専用タンク車タキ 1000 形式 1000 号車(記念ラッピングタンク車)について

参考文献 編集

  • 車両のうごき 2008-2009 私有貨車編/手塚一之 ‐ 鉄道ファン2009年8月号 『特集:JR特急形電車最新カタログ』
  • 吉岡心平『プロフェッサー吉岡の私有貨車図鑑』(復刻増補)ネコ・パブリッシング、2008年。ISBN 978-4-7770-0583-3 
  • 『日本の貨車-技術発達史-』(貨車技術発達史編纂委員会編著、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊、2008年)
  • 「タンカートレイン物語/吉岡心平」(j-train Vol.46 2012年)

関連項目 編集