LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇
LCAC-1級エア・クッション型揚陸艇は、アメリカ海軍や海上自衛隊で使用されているエア・クッション型揚陸艇(上陸用舟艇)。「Landing Craft Air Cushion」の頭文字からLCAC(エルキャック)と通称されている。海上自衛隊では「エアクッション艇1号型」として配備している。
LCAC | |
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種類 | 揚陸艇 |
原開発国 |
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運用史 | |
配備期間 | 1986年 - 運用中 |
開発史 | |
製造業者 |
テキストロン・マリン&ランド エイボンデール |
値段 |
2,700万米ドル (1996) ~4,100万米ドル (2015)[1] |
諸元 | |
重量 | 185 t(満積載時) |
全長 | 26.4 m |
全幅 | 14.3 m |
要員数 | 5 |
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主兵装 |
機関銃用架台×2基 |
エンジン | ハネウェルTF-40 ガスタービン×4基 |
搭載容量 |
標準:54 t 速度を落とした場合:68 t |
行動距離 |
200海里(40ノット、積載時) 300海里(35ノット、積載時) |
速度 |
最大積載時:40ノット(74 km/h)以上 最大速度:70ノット以上 |
概要編集
1970年代から本格的な開発が開始され、就役は1984年から行われた。水陸両用のホバークラフトであるため、揚陸艦から直接海上に出て水上を航行し、目的の海浜から陸地に上がった後は、そのまま陸上を走行して移動することも可能。兵員や物資を揚陸する場合、従来は上陸用舟艇や揚陸艇を用いて海岸へ輸送していたが、ホバークラフト型ではこれらの舟艇より移動速度が向上し、条件の厳しい海浜にも上陸可能となった。ただし2m以上の高波が出ると最高速度などの性能が制限される。
1970年代初頭にJEFF AとJEFF Bの実物大の試験機が2隻建造された。JEFF Aは、カリフォルニア州のエアロジェット・ゼネラル社で建造され、4基のダクテッドファンを搭載していた。JEFF Bは、ルイジアナ州ニューオーリンズのベル・エアロスペース社で建造された。JEFF Bは、後部に2基のダクテッドファンを備え、以前にベトナムで試験されたSK-5/SR.N5から派生したSK-10 ホバークラフトに似ていた。これら2隻は、技術的な有効性と運用能力を確認し、成果は生産型へ反映された。JEFF Bの設計が選択され、現在のLCACの基になっている[3]。
最初の33隻が1982年-1986年の予算で購入され、15隻が1989年、12隻が90・91・92年で7隻が93年に購入された。最初のLCACは1984年に海軍に納入され、1986年に初期作戦能力を獲得した。1987年に量産が承認された。
2012年より、後継としてSSC(Ship-to-Shore Connector)の開発が始まったが、納入は2017年、初期作戦能力獲得は2020年の予定のため、延命改修工事を実施して2028年まで運用される予定。
日本向けには1994年(平成6年)4月8日にアメリカ政府から輸出が承認され、ルイジアナ州ニューオーリンズのテキストロン・マリン&ランドシステムズで建造された。93年度予算で1隻目が購入され、95年に2隻目、99年に3隻目、5・6隻目が2000年度予算で購入された。
構造編集
艇の中央部は全通式の車両甲板となっており、艇の前後に傾斜路がある。機関は艇の左右に分けて搭載されており、右側前部に操縦席、左側前部には見張所がある。見張所の下層には人員を収容できる船室があり、高速走行による合成風とガスタービンエンジンの排気と騒音、それに、高速走行中に艇が巻き上げる激しい波飛沫を避けるため、後述の人員輸送用モジュール(PTM)を搭載しない場合には、人員はこの船室内にのみ収容して輸送する。艇の後部には4翅の推進用シュラウド付大型プロペラが2基装備されている。
約70tの積載能力があり、M1エイブラムスや90式戦車といった主力戦車を1両輸送できる。人員輸送用モジュールを搭載した場合には180名(搭載最大限界は240名)を輸送可能である。
取得数と搭載隻数編集
アメリカ海軍は91隻取得し74隻を運用している。
- タラワ級強襲揚陸艦:1隻搭載
- ワスプ級強襲揚陸艦:3隻搭載
- アメリカ級強襲揚陸艦:3番艦以降で運用予定
- アンカレッジ級ドック型揚陸艦:3隻搭載
- ホイッドビー・アイランド級ドック型揚陸艦:4隻搭載
- ハーパーズ・フェリー級ドック型揚陸艦:2隻搭載
- オースティン級ドック型輸送揚陸艦:1隻搭載
- クリーブランド級ドック型輸送揚陸艦:1隻搭載
- トレントン級ドック型輸送揚陸艦:1隻搭載
- サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦:2隻搭載
- 機動揚陸プラットフォーム:3隻搭載
海上自衛隊は6隻を取得し、当初はおおすみ型輸送艦各艦の搭載艇扱いとされ、LA-01からLA-06までの艇番号が付されていたが、2004年より自衛艦に種別変更し、LCAC-2101からLCAC-2106までの艇番号とエアクッション艇1号からエアクッション艇6号までの艇名称が付与された。また、新たに第1輸送隊隷下に第1エアクッション艇隊を編成し、状況に応じ母艦搭載を変更できる弾力的な運用が可能になった。
平成23年度と24年度予算で2隻分の艦齢延伸のための部品調達予算が、25年度予算で2隻分の艦齢延伸のための改修工事予算が計上された。
LCAC乗員と運用作業に従事する海上自衛官の服装として『エアクッション艇服装』と『エアクッション艇誘導服装』が規定されている。
- おおすみ型輸送艦:2隻搭載
派生型編集
登場作品編集
映画編集
- 『トランスフォーマー/リベンジ』
- 対ディセプティコン特殊部隊NESTを支援するアメリカ海兵隊を揚陸するために登場。紅海から上陸する。
- 『日本沈没』(2006年版)
- 海上自衛隊所属艦が登場。国外に脱出する避難民を「おおすみ」に運ぶ。また、ラストシーンにて声明を発表する際の舞台としても使用される。
漫画編集
- 『D-LIVE!!』
- 『蒼き鋼のアルペジオ』
- Depth030-Depth035の間において実施されたイ401奪還作戦において陸軍が使用する。
- 『空母いぶき』
- 中国軍に占領された与那国島を奪還するため、おおすみ型輸送艦「おおすみ」「くにさき」の2艦に搭載され、陸上自衛隊隊員たちの陸揚げに使われる。
- 『続・戦国自衛隊』
- 戦国時代にタイムスリップした、おおすみ型輸送艦「おおすみ」とワスプ級強襲揚陸艦「エセックス」に搭載されているものが登場。
小説編集
- 『自衛隊三国志』
- 三国時代へタイムスリップした架空のアメリカ海軍ドック型揚陸艦「フライング・タイガース」に2隻搭載されており、航行するこれに載りながら10式戦車が射撃を行う。
- 『ストライク・ザ・ブラッド』
- 第11話にて、メイガスクラフト社が戦闘用オートマタを輸送するために使用する。
- 『超空自衛隊』
- 第二次世界大戦時にタイムスリップした、おおすみ型輸送艦「おおすみ」に搭載された2隻が登場。日本軍への救助活動や物資・車両の揚陸に使用する。
- 『ルーントルーパーズ 自衛隊漂流戦記』
- 異世界に飛ばされた国連平和維持軍派遣艦隊に配備されていた、おおすみ型輸送艦「しもきた」と「くにさき」に搭載されたものが登場。異世界の民を救助するために使用される。
ゲーム編集
- 『EXTERMINATION』
- クライマックスの脱出シーケンスに使用し、搭載機関銃でラストバトルを行う。
- 『コール オブ デューティシリーズ』
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- 『CoD:MW3』
- ハンブルクの上陸戦に登場し、M1A2 エイブラムスを2両ずつ揚陸する。
- 『CoD:G』
- ゾンビモードの一部マップにオブジェクトとして搭載されている。
- 『大戦略シリーズ』
- 『バトルフィールドシリーズ』
- 『マブラヴ オルタネイティヴ』
- 『信長の野望 201X』
- 特地解放機構所属艦が登場。
出典編集
- ^ “LCAC vs LCU: Are LCAC Worth the Expenditure?”. United States Marine Corps, Command and Staff College. 2015年7月19日閲覧。
- ^ The Naval Institute Guide to the Ships and Aircraft of the U.S. Fleet .
- Saunders, Stephen (RN). Jane's Fighting Ships, 2003-2004. ISBN 0 7106 2546 4.