M/50 375mm対潜ロケット発射機

前投式対潜迫撃砲

M/50 375mm対潜ロケット発射機(M/50 375ミリたいせんロケットはっしゃき)は、スウェーデンボフォース社の開発した375mm 4連装対潜ロケット発射機対潜爆雷を投射するロケット発射機である。海上自衛隊においても、71式ボフォースロケットランチャーとして制式化されていた[2][3][4]

M/50 375mm対潜ロケット発射機
DE-227「ゆうばり」の71式ボフォース・ロケット
種類 対潜ロケット発射機[1]
原開発国  スウェーデン
運用史
配備期間 1956年-
配備先 #使用国と搭載艦を参照
開発史
開発者 ボフォース
開発期間 1948年-
製造業者 ボフォース、クルーゾー・ロワール、三菱重工業
製造期間 1956年-
派生型 Erika, Flora, Mimmi, Nelli
諸元 (ネリ: Nelli)
重量 230kg(弾頭、推進薬)

口径 375mm
銃砲身 4連装
仰角 15-90/15-60°
旋回角 130°
発射速度 1発/秒(再装填時間除く)
最大射程 3.6km
弾頭 HE
炸薬量 80kg
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概要 編集

M/50 375mm対潜ロケット発射機は、1948年ごろより開発開始された対潜前投兵器である。ここから投射されるロケット爆雷としては、弾頭重量と射程に応じて4つのバリエーションが開発された。いずれも胴体直径は375mm[4]

  1. エリカ(Erika):重量 107kg、射程 655-1,635m
  2. フローラ(Flora):重量 230kg、射程 1,400-2,230m
  3. ミミ(Mimmi):重量 100kg、射程 370-875m
  4. ネリ(Nelli):重量 80kg、射程 1,580-3,625m

また、発射機としては、4連装のM/50型が通常用いられ、口径375mm、長さ約3,600mmの発射筒4本を山なりにまとめている[4]。その他、軽量の2連装型、そして、フランスのクルゾー・ロワール社が独自に開発した6連装型がある。いずれも遠隔操作で旋回・俯仰・発射でき[2]、甲板下から12回の再装填が可能である。装填時は、仰角を90度と垂直にし、筒後端より装填する[4]。M/50型発射機は、1954年-1955年にかけて試験を受け、1956年より運用を開始した。また、もっとも長射程のロケット爆雷であるネリ型は1972年に試験を受け、1974年より生産を開始した。

弾体は、後部に安定翼を付けた形状をしており、固体燃料ロケットとして飛翔する[4]。無誘導ロケットであり、発射機の仰角により、飛翔距離を調節する[4]

ボフォース375mm対潜ロケットランチャーは、信頼性・性能に優れた対潜前投兵器として各国で運用されたが、Mk 32 短魚雷発射管アスロック対潜ミサイルなど、誘導式の対潜短魚雷を投射する対潜兵器が普及するにしたがって、無誘導の対潜ロケット弾は旧式と見なされるようになり、現在、徐々に退役が進められている。

しかし、1980年代後半より対魚雷防御兵器として着目されるようになったほか、冷戦終結後の非対称戦争においては、誘導魚雷の使用が困難な浅海域での対潜兵器として再評価されるようになり、1992年にはSAAB社が誘導ロケット弾を発表し、また、改良された軽量発射機の開発も行なわれている。

海上自衛隊 編集

 
4連装型の発砲シーン。
ゆうばり型護衛艦ゆうばり

日本海上自衛隊でも、1960年代初頭よりボフォース375mm対潜ロケット・ランチャーの運用を開始しており、4連装発射機型は71式ボフォースロケットランチャーとして制式化された[2]三菱重工業においてライセンス生産されている[2]。ネリも開発されると同時にこれを導入した。エリカを対潜ロケット2型、フローラを対潜ロケット3型として導入した[3][4]

きたかみ」と「おおい」には、輸入品が装備されたが、その後の艦はライセンス生産品を装備している[4]。「あきづき」、「てるづき」、「いすず」、「もがみ」は「ウェポン・アルファ」ことMk.108対潜ロケットランチャーより、こちらに換装している[4]

使用国と搭載艦 編集

  海上自衛隊

  モロッコ海軍

  マレーシア海軍

  ナイジェリア海軍

  オランダ海軍

  ペルー海軍

  ポルトガル海軍

  スウェーデン海軍

登場作品 編集

海の底
海上自衛隊がレガリス掃討戦で使用する。
ゴジラvsビオランテ
海上自衛隊浦賀水道ゴジラの攻撃に使用する。また、この作品の映像は、『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』に一部流用されており、発射器からハープーンを発射している(実際の本砲ではハープーンの発射は不可能)。
沈黙の艦隊
アメリカ海軍原子力潜水艦やまと」に対して使用する。

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ 多田 2022, p. 66.
  2. ^ a b c d 朝雲新聞社 2006, p. 340.
  3. ^ a b 高須 2000.
  4. ^ a b c d e f g h i 梅野 1983.

参考文献 編集

  • 朝雲新聞社 編『自衛隊装備年鑑 2006-2007』朝雲新聞社ISBN 4-7509-1027-9 
  • 梅野和夫「水雷兵器」『丸スペシャル』第76号、潮書房、10-13頁、1983年。 
  • 高須廣一「兵装 (海上自衛隊護衛艦史1953-2000)」『世界の艦船』、海人社、188-195頁、2000年。CRID 1523388080296267520 
  • 多田智彦「現代の艦載兵器」『世界の艦船』第986号、海人社、2022年12月。CRID 1520012777807199616 

外部リンク 編集