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MSXturboR(エム・エス・エックス・ターボアール)とはMSX規格の一つで、MSX2+の後継規格として1990年に発表された。海外のMSXフリークやエミュレーターしかしらない人は MSX TurboR と書く傾向があるが正式な名称は MSXturboR である(MSXの本体にturboRと書かれている)。 16ビットCPUの「R800」を採用し、MSX2+まではオプションのMSX-DOS2MSX-JEMSX-MUSICを標準搭載する。 また、turboRのRはR800のRを意味する。 一連のMSX規格で、最後の規格となった。

目次

主な仕様編集

 
R800 CPU
 
FM音源(OPLL) YM2413
 
MSX-ENGINE2 T9769
(写真はVer.C)
 
システムLSI S1990
ザイログZ80A相当品(クロック周波数3.579545MHz、割り込みはモード1)+アスキーR800を搭載し、排他使用。
MSX2+比で平均10倍(5~20倍)の高速化[1]
MSX2+準拠
  • 画面モード
MSX2+準拠
  • メインメモリ
FS-A1ST:256KB
FS-A1GT:512KB
  • サウンド
MSX1準拠+MSX-MUSIC(ヤマハ YM2413
  • PPI
MSX1準拠

MSX2+との比較表編集

MSXturboR MSX2+
CPU R800相当品(7.15909MHz) Z80A相当品(3.579545MHz)
メモリ ROM 160KB(MSX BASIC ver.4)

MAIN:32KB / SUB:16KB

漢字ドライバ:32KB

MSX-DOS1:16KB / DOS2:48KB

MSX-MUSIC:16KB

96KB(MSX BASIC ver.3)

MAIN:32KB / SUB:16KB

漢字ドライバ:32KB

MSX-DOS1:16KB

RAM 256KB以上 64KB以上
VRAM 128KB
画面表示 VDP V9958相当品
解像度(最大) 512x212(ノンインターレース時) / 512x424(インターレース時)
表示色(最大) 19268色
ハードウェアスクロール 縦・横
カセットインターフェイス なし FSK方式 1200・2400bps
サウンド PSG AY-3-8910相当品
FM音源 MSX-AUDIO(オプション)
MSX-MUSIC (オプション)
MIDI MSX-MIDI(オプション) なし
キーボード 英数、ひらがな、カタカナ、グラフィックス文字対応、JIS配列・50音配列対応
フロッピーディスク 3.5インチ2DD(1DDも可)

MS-DOS 2.11準拠のフォーマット

プリンタ 8ビットパラレル セントロニクスインターフェイス準拠
カートリッジスロット 1つ以上
ジョイスティック端子 2
漢字機能 漢字ROM 第1水準
第2水準(オプション)
漢字入力 単漢変換(MSX-JE対応)
リアルタイムクロック RP5C01相当

概要編集

turboRでのR800の入力クロック周波数は28.636360MHzだが、実動作クロック周波数はそれを内部で1/4に分周した7.15909MHzだった。ただしR800は、Z80の大半の命令を1クロックで実行できるなど、同一クロックにおける実効速度がほぼ4倍速であるため、カタログでは「Z80換算で28MHz相当」という巧妙な記述がなされた。

turboRは従来のMSXとの互換性を維持するために、Z80相当品(MSX-ENGINE2)と、R800使用時のZ80バスサイクルエミュレーション機能を搭載するシステムLSI S1990を実装している。R800自身はメモリー管理なども含めハードウェア、ソフトウェア共にZ80を拡張したCPUであるが、turboRではそれらを使用せず、乗算命令の追加された高速なZ80として使われている。R800は、Z80A相当のCPUと排他的に使用するようになっており、双方のCPUを同時に使用することは出来ない。turboRもまた、その規格の柔軟性を生かし、モードスイッチなどによらない起動モードの選択が行われる。起動時にBIOSが判定を行い、従来のソフトウェアは自動的に互換モード(Z80)でMSX2+相当として動作するようになっていた。ソフトウェアにより起動後も切り替えが行えることもあって、ブートブロックの書き換えにより強制的に高速モードで動作させるツールや、あらかじめシステムの一部をフックした上で処理を移すことによって任意で動作を切り替えられるようなソフトウェアも制作された。ただし、従来機種用のソフトウェアではタイミングが大きく変わってしまうため保証外であり、実際にZ80の挙動に強く依存したソフトウェアでは不具合が出ることもあった。また、turboRリリース後に発売されたゲームの中にはMSX2/2+用として発売されながら、高速モードで動作するゲームもあった。

MSXturboRは従来機同様、MSX2で追加された仕様であるメモリー・マッパーを使用してメインメモリーを拡張し、日本語対応のMSX-DOS2を内蔵した。内蔵のメモリーマッパーはS1990の仕様による制限があり、512KiBまでは正常に実装可能であるが、マッパーレジスタが6bitまでしかデコードされておらず、1MiBに実装した場合でも、マッパーレジスタの読み込みに問題が生じる。改造により本体に直接メモリを増設した場合、これを原因として動作しないアプリケーションもある。

開発中とされた新規VDP(V9990)の採用は見送られ[2]、MSX2+と同じV9958を採用したが、これによる表示が著しく全体のパフォーマンスの足をひっぱる形となっている。MSXの構造上、VDPを経由しなければVRAMにアクセスできず、VDPへのアクセスそのものがMSX2+よりも多くのウェイトが掛けられるようになっている。描画を行わないソフトウェアでは高速な動作をするものの、描画処理が増えるほどVDP自体の処理速度に依存してしまい、表示そのものに纏わる処理によって遅いソフトウェアについては、旧機種に対し、高速モードのパフォーマンス的な優位性は示せなかった。ただし、後期にはCPUパワーを生かし、Z80では間に合わなかった処理を垂直同期割り込み期間中に行うことで、より高度な処理を見せるプログラムも現れた。起動画面はMSX2+とほぼ同じだが、スクロールが速くなった。

音源としてMSX-MUSICが標準搭載になったほか、8ビットPCMの録音再生機能も持つ。ただし、BIOSのルーチンではPCM再生時にCPUの他の処理を止めてしまうため、他のPCM/ADPCM搭載機のように音楽の同期演奏に使うのには著しく難があり、利用例は多くなかった。後年にはVDPの走査線割り込みを利用することで並列再生させたソフトもあったが、MSXは元々1ビットD/Aのサンプリング機能を持ち、またPSGを使用しての4ビットPCM再生をさせたソフトも存在した事から、それほど注目はされなかった。

MSXViewというGUI環境がオプション規格として用意された。これは1987年HAL研究所から発売されたMSX2向けのGUI環境のHALNOTEというソフトをMSX-DOS2の機能やメモリマッパーに対応させるなど発展させたものである。3.5インチディスクと漢字ROMカートリッジを同梱して1991年にアスキーから9,800円で発売された。MSXturboR本体のみでもMSXViewは動作できたが、12×12ドットのフォントが収められた漢字ROMカートリッジがあれば、16×16ドットの内蔵フォントを1文字ずつ12×12ドットへ圧縮する負荷がなく、より軽快に表示することが可能になっていた。フロッピーディスク版とA1GTに搭載された内蔵ROM版があったが、前者は頻繁にシステムディスクを要求されるため、シングルドライブ環境ではとても実用的とは言えなかった。MSXView向けのソフトは、表計算ソフトのViewCALCやフリーソフトウェアがいくつかある程度で終わっている。なお、MSXViewではHALNOTEのソフトを使うこともできた。

細かいところではデータレコーダへの対応を初めとする使用頻度の低い機器への対応が規格から削除された。これに伴いBASICでは命令ごと削除され、BIOSはエラーか、何もせず戻るような処理へと変更された。それにより、この機種まで維持されていた旧仕様の完全な「上位互換」は崩れる形となっている。

対応機を発表したのは松下電器産業(現:パナソニック)のみ。1990年10月に「FS-A1ST」が発売、年末商戦という機会もあって各店で品切れが続出し、当初は3万台強の出荷が見込まれるほど販売台数が好調だった事もあってか、翌年の1991年11月にはメインメモリを512KBに増設しMIDI端子を装備したマイナーチェンジモデルの「FS-A1GT」を発売した。多機能化が図られた結果、消費税込みで10万円を超えた価格設定で、当時の国内パソコン市場で優位に立っていたPC-9801シリーズの互換機を販売していたセイコーエプソンEPSON PCシリーズ最廉価モデル PC-286Cの販売価格が12万円台と、価格面での優位性を示せなくなっており、出荷台数は約7,000台ほどと大幅に減少した。その後、新たなMSX規格の開発が終了したため、松下電器は3DOを発売する事になる。

音質に関する問題編集

MSXturboR規格に起因する問題ではないが、唯一製品化した松下電器産業製造の機体には、音声回路上に配置されている特定のフィルムコンデンサが原因で、音声信号に強いローパスフィルタがかかり他のMSXに比べ高域が発音されない事象が存在した。一部のユーザーは原因となるコンデンサを外し容量の少ないコンデンサと交換することで音源本来の音色に近づけることが出来た。コンデンサがなくても問題なく動作したが、その場合は高域が過度に強調された。またユーザーの中にはあえて外したままにする人もいた。

しかし2ミリ弱×4ミリ弱の既存のコンデンサの摘出はMSX本体の分解と精密な作業を要するため、電子工作経験を持つ人々以外にとっては現実的な解決法ではない。また上記の解決法が広まったのはインターネット普及後、Chabinnという人物によって公開された事による。

参入したメーカーと発売した機種編集

松下電器産業(現:パナソニック)

  • FS-A1ST(1990年10月発売、価格は87,800円)
メインメモリを256KB搭載した、turboRとしてスタンダードな機種。搭載ワープロは16ビットCPU R800の恩恵を受けて動作が速くなるなど、より実用的になった。
  • FS-A1GT(1991年11月1日発売、価格は99,800円)
メインメモリは倍の512KBを搭載し、μPACK相当のMIDI機能インターフェイスが追加され、MSXViewをROMで内蔵した。ビデオ出力のコネクタのピンアサイン、並びにコネクタの数は変更され、CSyncの信号がビデオコンポジット出力になっており、RCAピンジャックで接続する場合には、RGBの端子からビデオ、音声出力を取り出す形になっている[3]。既に過去のものとなっていたRF出力に関しては削除された。

本体デザインはいずれも、同社のMSX2+モデルからの流用である。

AUCNET(日本ビジネステレビジョン)

  • NIA-2001

AUCNETというオークション運営会社の「中古車衛星TVオークション」用の端末として開発。CPU切り替えスイッチが背面にあり、R800とZ80に切り替えることができる。スーパーインポーズ機能搭載。日本ビジネステレビジョン・アスキー・高岳製作所の3社による共同開発である可能性が高い。サービス終了時に端末は回収されたはずなのだが、近年、Yahooオークションに出品されていることがわかり、海外のコレクターによって落札された。

脚注

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  1. ^ MSX-Datapack Volume3 turboR版(第1章)
  2. ^ 『MSX・FAN』1995年2月号、p.90。
  3. ^ オーダーメイドビデオケーブルinMSX A1GT

参考文献編集

  • 石川直太『MSX turbo Rテクニカル・ハンドブック』MSXマガジン編集部監修、アスキー、1991年7月。ISBN 4756106218
  • 株式会社ジャパックスインターナショナル『MSX-Datapack Volume3 turboR版』株式会社アスキー システム事業部、株式会社アスキー、1991年12月1日。