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米海軍向け PV-1

ロッキード PV-1(Lockheed PV-1)は、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国ロッキード社で製造された哨戒/爆撃機である。

アメリカ海軍の他、イギリス空軍ではベンチュラ(Ventura)の名称で、アメリカ陸軍航空隊ではB-34/B-37の制式名称で使用された。

概要編集

ロッキード L-18 ロードスター旅客機軍用機化した機体で、同様にロッキード L-14 スーパーエレクトラ旅客機を軍用機化したハドソンの成功を踏まえてイギリス空軍が発注したものである。

機体性能自体は前作ハドソンを大幅に上回っていたが、投入された1942年末はイギリス空軍では戦時体制へ移行し、ようやくブリストル ボーファイターデ・ハビランド モスキートなど、高性能の爆撃機をまとまった数が投入可能な時期に当たり、本機は民間機転用の軍用機であったために見劣りが目立ち、数的劣勢に追い込まれていた時期にビンチヒッターとして「必要な時期に、必要な数が間に合った」ハドソンほどの成功作とはみなされなかったが、アメリカ海軍によってPV-1の名称で哨戒爆撃機として採用され、こちらの方が生産数、活躍共に多い。

アメリカ陸軍でもB-34およびB-37の名称で軽爆撃機や偵察機、高等練習機、そして軽輸送機として運用されたが、アメリカ海軍と違って目立った活躍はない。

戦後はアメリカの同盟国に供与された。

開発編集

沿岸哨戒機としてロッキード・ハドソンを大量発注していたイギリス海軍は、ロッキード社に対してハドソンの後継機となるさらに強力な哨戒爆撃機の開発を要請した。ロッキード社への発注は1940年に行われ、ロッキード社では、L-18 ロードスターをベースとした機体をModel37の社内名称で開発した。

基体となったロードスターはハドソンの原型であるロッキード L-10 エレクトラ旅客機の改良型であるスーパーエレクトラの発展型ということもあり、ベンチュラの機体形自体はハドソンに類似していたが、エンジンは強力なプラット&ホイットニーSIA4-G ダブルワスプ(離昇出力1,800馬力)を搭載した。武装は機首前面の爆撃手席に連装の7.7mm機関銃、胴体背面にボールトンポール製7.7mm連装動力機銃塔の位置を変更して射界を改良し、胴体後方下面にも本格的な7.7mm連装の銃座が設けられた。爆弾搭載量は爆弾倉に2,500ℓb(1,135Kg)である。イギリス軍はこの機体にベンチュラVenturaアメリカの都市名)という愛称を与え、生産された型をベンチュラI(またはベンチュラMK.1)と呼んだ。

ベンチュラは合計675機が発注され、試作1号機は1941年7月に初飛行した。しかし、同年の暮れには対日戦が開戦、ロッキード社はアメリカ本国向けの各種軍用機の開発と生産に全力を傾けねばならなくなり、生産の遅れから1号機がイギリス軍に引き渡されたのは1942年の夏のことであった。

ベンチュラIは発注された675機のうち188機生産されたところで発展型のベンチュラII(またはベンチュラMK.2)の生産に切り替えられることになった。ベンチュラIIはエンジンがさらに強化され、民間型から軍用型のR-2800-31ダブルワスプ(離昇出力2,000馬力)に換装され、武装もベンチュラIと同じだったが、生産200機目から規格を米軍仕様に改め、これをベンチュラIIAと呼称した。

ベンチュラIIAは機首をソリッドノーズ化して12.7mm機関銃を2挺固定配置して、機首下に12.7mmを3挺固定装備するガンパックを追加。旋回機銃塔をマーチン社製に換装して12.7mm連装に強化。下面の銃座も7.62mm機関銃連装に換装した。爆弾搭載量も3,000ℓb(1,363Kg)に増加し、爆弾倉内へ2,953ℓ入りのフェリータンクが装備可能となり、これは必要に応じて1,855ℓ入りの二分割式フェリータンクと交換可能だった。なお、フェリータンクは爆弾倉を占有するので使用時は爆裝不可能になる(二分割式は片方だけ使えば、搭載量は半減するが爆裝可能になる)。

機体自体の燃料搭載量もベンチュラIIから増加しており、5,090ℓから6,083ℓになり、標準で外翼下面に587ℓ入りの増槽が1本ずつ懸架可能になった。主翼には各4基の5inロケット弾(HVAR)が懸架可能になり、爆弾倉に爆弾に変えてMk13魚雷、または11,75in大型ロケット弾ティニー・ティムが搭載可能になっていた。これらは重量的には2本搭載可能だが、爆弾倉のサイズが小さいので1本しか搭載できず、後のPV-2では爆弾倉が拡大される原因となった。

イギリス空軍の発注分の残り487機がベンチュラIIとして完成したが、この内イギリス空軍に引き渡されたのは196機だけで、残りは本機に注目したアメリカ軍により買い上げられ、陸軍と海軍により装備された。イギリス空軍ではさらに200機の追加発注を行ったが、これもイギリス空軍に引き渡されたのは25機のみで、残りはアメリカ陸軍に引き渡された。

運用編集

イギリス軍での運用編集

イギリス、オーストラリア、ニュージーランド空軍では1942年10月より本機を昼間爆撃任務に就かせたが、大した活躍もなく、また鈍重で実戦に耐えられないという用兵側からの非難もあり、これらの部隊はモスキートに装備改編された。

1943年後半からは爆撃任務からは退役し、沿岸航空隊の哨戒任務に就くことになった。その後は、ハドソンの後継機として終戦まで利用された。また、カナダ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド等の英連邦各国にも譲渡されて運用された。

なお、イギリスおよび英連邦諸国で用いられた機体にはアメリカ陸軍向けとして生産・納入された後にアメリカ軍から譲渡された機体もあり、これらにはベンチュラではなくレキシントン(Lexington)の名称がつけられている。

アメリカ陸軍での運用編集

アメリカ陸軍ではベンチュラIにB-34Aの名称を与え、イギリス向けとして生産された機体の中から250機を自軍の装備とし、この250機のうち少数機を航法訓練機B-34Bの名称で訓練に使用している。

アメリカ陸軍ではエンジンをライトR-2600-31(離昇出力1,700馬力)に換装したベンチュラIIもO-56の名称で550機発注したが、大半はキャンセルされ、最終的に18機をB-37として受領した。B-37は胴体左右側面に7.67mm機銃1挺ずつ備えた透明銃座を配置しているのが、B-34との相違点である。

B-34/37共にニックネームはレキシントンであった。

アメリカ海軍での運用編集

哨戒飛行艇が冬期に港湾施設の凍結に悩まされる事から、陸上基地で使用する長距離哨戒爆撃機を要望していたアメリカ海軍は、まずイギリス空軍向けの哨戒爆撃機ロッキード・ハドソンをPBO-1として20機採用した。

続いて本格的な機体として、陸軍が発注しイギリス空軍に供与する形をとっていたベンチュラに注目し、これを海軍の管理に移管することを陸軍に要請した。陸軍はこの要請を受け入れ、イギリス軍向けの生産機の一部を海軍に供与した他、イギリス向けの生産終了後に、生産を海軍へ移管することにした。

ベンチュラIがPV-3 ベンチュラとして27機。その後、ベンチュラIIAがPV-1 ベンチュラとして運用された。番号こそPV-3の方が新しいが、これは書類上の手続きから来る物で、実際、早急に戦力化を急いだためにPV-3はイギリス軍仕様のままとされ、1942年10月からPBO-1の任務を引き継ぐ形で配備された。これはPV-1の戦力化が遅れるためのつなぎとしての措置であり、1943年1月にPV-1を受領すると共にPV-3は引退している。海軍ではPV-1を1942年11月から1944年5月まで生産し、総計1,600機が配備された。

派生機編集

PV-1、PV-3共に主な戦場は大西洋アリューシャン戦線であったが、夜間戦闘機として改造された本機が、ソロモン方面で投入されている。仕様は各機バラバラで夜間消炎排気管を装備した機、追加の4連装12.7mm機銃パックを搭載した機など様々である。機上レーダーは標準装備だが、これもASVやAIIVなど時期によって仕様が違う。乗組員は爆撃機型の5名ではなく、3名乗務だった。海軍初の夜間戦闘機部隊VFM(N)-531に配備され、1943年4月から翌年6月まで、夜間撃墜数12機を数えている。なお。夜間戦闘機型の名称はPV-1のままで、A-20攻撃機を夜間戦闘機化したP-70双発夜戦のような、特別な形式名やニックネームは与えられていなかった。

偵察機型も存在し、PV-1Pと呼称され、射角撮影カメラなどを搭載しているが詳細は不明。

後継機編集

ベンチュラIIの燃料搭載量を増加するなどした改良型がPV-2として開発されて装備された。PV-2はイギリス名称をそのまま転用した“ベンチュラ”に替えて“ハープーン(Harpoon:捕鯨用の意)”の愛称が命けられている。日本の海上自衛隊でも創設期に供与され、主に訓練機として運用されている。

スペック編集

 
PV-1 三面図
PV-1
  • 全長:15.77 m
  • 全幅:19.96 m
  • 全高:3.63 m
  • 翼面積:51.9 m2
  • 自重:9,160 kg
  • 全備重量:14,096 kg
  • エンジン:P&W R-2800-31 空冷星型18気筒 離昇出力2,000馬力×2
  • 最大速度:518 km/h=M0.42(4,025 m)
  • 巡航速度:274 km/h=M0.22
  • 着陸速度:134 km/h=M0.11
  • 上昇率:680 m/min
  • 実用上限高度:8,015 m
  • 航続距離:2,670 km
  • 武装
  • 乗員 5名

出典・参考文献編集

  • 航空ファンイラストレイテッドNo.73『第二次大戦米海軍機全集』文林堂 1994年 106-107頁
  • 航空ファンイラストレイテッドNo.74『第二次大戦米陸軍機全集』文林堂 1994年 90頁

関連項目編集

  • PV-2 - 米海軍向けの発展型