RIM-174スタンダードERAM
RIM-174スタンダードERAM(RIM-174 Standard Extended Range Active Missile (ERAM))またはスタンダード・ミサイル6 (SM-6) はアメリカ海軍で運用中の長射程艦対空ミサイルであり、対艦ミサイルとしての能力も持つ。
RIM-174 ERAM Standard SM-6 | |
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種類 | 艦対空ミサイル |
原開発国 |
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運用史 | |
配備期間 | 2011 |
配備先 |
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開発史 | |
製造業者 | レイセオン |
製造期間 | 2009 - |
諸元 | |
重量 | 3,300 lbs (1500 kg) |
全長 | 21 ft 6 in (6.55 m) |
直径 | 21 in (0.53 m) max. |
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弾頭 | 爆破破砕弾頭 |
信管 | レーダー・接触信管 |
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エンジン | デュアル・スラスト固体燃料ロケット |
翼幅 | 61.8 in (1.57 m) |
最大高度 | > 110,000 ft (33,000 m) |
誘導方式 | 慣性誘導、アクティブ・レーダー・ホーミング、セミ・アクティブ・レーダー・ホーミング |
発射 プラットフォーム | 水上艦 |
概要編集
SM-6は固定翼機、ヘリコプター、UAV、対艦巡航ミサイルなどを対象とする長距離対空ミサイルであり、対艦ミサイルでもある[2]。
ミサイル本体はスタンダードミサイルの射程延長型の弾体主要部にSM-2の弾頭とAIM-120空対空ミサイルのアクティブ・シーカーを組み合わせており[3]、ブースターによって初期加速を行う。誘導にアクティブ、セミアクティブ双方のモードを利用することができる。優れたシグナル・プロセッシングと誘導制御の能力を得て、高速の目標や艦のイルミネーターの範囲外にいる目標の捕捉も可能となった。これによりイージスシステムのイルミネーターへの負担が軽減され、同時交戦目標数の飛躍的な増加が期待できる。
イージス艦からの発射においては、自艦の誘導波以遠であっても、共同交戦能力(CEC)による中間誘導を受けることで射程が延伸されている。目標近くでは終末アクティブ誘導に切り替わる。対弾道ミサイル、対航空機、対地・対艦巡航ミサイルの迎撃と、対艦ミサイルとしての攻撃用途にも使用できる。もともとはイージス・ベースライン9での運用予定で開発されたが、現在ではイージス・ベースライン5以降の艦から発射が可能である[2]。
開発・配備編集
基本的には、先行するRIM-156 SM-2ERブロックIVを元に、セミ・アクティブ・シーカーをAIM-120のアクティブ・レーダー・ホーミングに置換した[4]ものである。
海軍は2004年に開発を開始し、レイセオンと契約した。実射試験はホワイトサンズ・ミサイル実験場で行われ、一回目の試験は2008年6月に二回目は9月に行われ、目標へ接触したが、完全には破壊できなかった。翌年2009年8月の試験では成功を収め、同年には低率初期生産が開始された[5]。2010年5月に海上での試験に入り[6]、2011年には初期作戦能力を獲得した。
すべてのSM-6はレッドストーン兵器廠にあるレイセオン工場で最終組立がなされる[7]。
アメリカ海軍およびオーストラリア海軍が採用を決定しており、オーストラリア海軍はイージスシステムを採用したホバート級駆逐艦へ搭載する予定で、共同交戦能力を介してボーイング737 AEW&Cと連携することで能力をさらに発揮できると期待している[1]。
アメリカ国防総省のミサイル防衛局と海軍は、SM-6を基にして終末段階での弾道ミサイル防衛システム用の弾道弾迎撃ミサイルを開発する予定を立てている。これはSea-based terminal (SBT) と呼ばれており、インクルメント1が2015年頃に、インクルメント2が2018年頃に導入される。開発後にはミッドコース段階での迎撃を担当するRIM-161スタンダード3弾道弾迎撃ミサイル(SM-3)とともにイージス弾道ミサイル防衛システムを構成することになる[8]。
2014年10月には、レイセオンが2発のSM-6を用いて対艦ミサイルと巡航ミサイルをエンゲージ・オン・リモートで迎撃したと発表した。このシナリオでは、イージス駆逐艦からの情報を元にイージス巡洋艦が発射したミサイルが両方の目標を迎撃したと伝えられている[9]。エンゲージ・オン・リモートはミサイルを発射する艦以外のセンサー(他のイージス艦のSPY-1レーダーなど)で発射から迎撃までの全ての誘導を行えるシステムで、ミサイルの射程を最大限に活かすことができる[10]。
2014年に初期作戦能力(IOC)を取得した[2]。 2015年5月、SM-6は低率初期生産(LRIP)から量産体制へと移行した。これにより、コストの削減と生産数増加が見込まれる[11]。
2017年4月27日、ハワイの太平洋ミサイル射場で実施されたアメリカ海軍の試験で、4発発射し4発とも標的に命中し、FOC(Full Operational Capability)に達したことが証明された[12]。
参照編集
- ^ a b c “Defence White Paper 2009”. Australian Government, Department of Defence. 2012年3月30日閲覧。
- ^ a b c 「対中国/北朝鮮、イージス艦8隻の国土防衛能力」『軍事研究』2017年7月号、36-37頁
- ^ “Semaphore Issue 7, June 2009”. Royal Australian Navy (7, June 2009). 2012年3月30日閲覧。
- ^ Raytheon Missile Systems Standard Missile 6, Accessed February 10, 2011.
- ^ “Navy Program Guide 2010”. United States Navy. 2012年3月30日閲覧。
- ^ Raytheon's Standard Missile-6 Program Begins Sea-Based Flight Testing
- ^ Kenneth Kesner (2012年3月21日). “Raytheon missile plant at Redstone Arsenal on schedule despite storms, federal budget worries (with video)”. The Huntsville Times 2012年3月30日閲覧。
- ^ Ronald O'Rourke (2011年4月19日). “Navy Aegis Ballistic Missile Defense (BMD) Program: Background and Issues for Congress (PDF)”. Congressional Research Service. 2012年3月30日閲覧。
- ^ “Raytheon SM-6s Missiles intercept targets in 'engage on remote' tests”. Raytheon. 2015年7月30日閲覧。
- ^ “Future Integrated Fire Control ICCRTS 2005”. Northrop Grumman. 2015年7月30日閲覧。
- ^ “Raytheon's SM-6 Surface-to-Air Missile moves from low-rate to full-rate production”. Raytheon. 2015年7月30日閲覧。
- ^ Raytheon: Standard Missile-6 passes rigorous graduation tests - Apr 27, 2017
関連項目編集
- スタンダードミサイル
- RIM-161スタンダード・ミサイル3
- アスター (ミサイル) - ヨーロッパ製の艦対空ミサイル。アクティヴ・レーダー・ホーミング誘導方式を採用。