SN比(エスエヌひ)は、通信理論ないし情報理論あるいは電子工学などで扱われる値で、信号 (signal) と雑音 (noise) のである。

信号雑音比 (signal-noise ratio) または 信号対雑音比 (signal-to-noise ratio) の略。SNRS/Nとも略す。S/N比と書くのは/が比を意味するため、比が二重になり間違いである[1]

desired signal to undesired signal ratioD/U ratio ともいう。

SN比が高ければ伝送における雑音の影響が小さく、SN比が小さければ影響が大きい。SN比が大きいことをSN比がよい、小さいことを悪いとも言う。

定義

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SN比は、信号の分散を雑音の分散で割った値である[2]

SN比で考える信号と雑音の定義は、何に着目しているかによる。見方によっては、通常「雑音」とされている成分に着目する場合など、逆転することさえありうる。雑音は確率過程とも限らない。

また、考えるのは、真の信号S と真の雑音N の分散である。真の値が得られず測定値しかない場合は、不偏分散で代用する必要がある(データ数が多い場合はほとんど影響しないが)。実測されるのは S +N であり、これと S を混同しない注意も必要である。

数式では

 
PS = 信号電力、
PN = 雑音電力、
AS = 信号電圧(電流)の実効値、
AN = 雑音電圧(電流)の実効値

と表される。分散は電気工学では交流成分の電力(パワー)となるので、P で表している。平均値に相当する直流成分を除いた、交流成分のみを考慮する。A偏差実効値二乗平均平方根)で、電気工学では交流成分の電流または電圧になる。

分野や物理量に関わらず電力やパワーと呼び P で表すことが多いが、実際は電力とは限らず、たとえば映像では輝度であり、測定では長さ質量などさまざまな物理量でありうる。

単位(デシベル)

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よく使われる値の対比
dB 電力比 電流比
0 1 1
3.010 2 1.414
6.021 4 2
10 10 3.162
20 100 10
40 10000 100
60 1000000 1000
90 10億 31623

多くの信号はダイナミックレンジが非常に広いので、通常SN比は常用対数(10を底にした対数)で表現される。ただし、単位にはデシベル (dB) を使うので、常用対数の10倍の数値になる。電流比率で考えれば20倍である。

 

SN比と通信効率

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伝送路の通信路容量は、ノイズが正規分布の場合、シャノン=ハートレーの定理より

 

で表される。B帯域幅である。等号は通信方式が理想的な場合に成り立つ。

SN比が高いほど通信効率がよくなる。また   ならば

 

と表せ、通信効率はSN比をデシベルで表した値に比例する。

その他の信号対雑音比

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SN比以外にも、信号と雑音の比率を表す方法がある。

搬送波対雑音比(CN比)

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「信号」を搬送波とした場合は、搬送波対雑音比Carrier to noise ratio)あるいは C/N (シーエヌ、CN比、CNR とも)といい、デジタル信号伝送では主にこちらを使う。

搬送波対干渉波比(CI比)

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搬送波と干渉波の比率を搬送波対干渉波比英語版と呼ぶ。ラジオなどの無線通信において、他のチャネルをノイズ源(干渉波)とするときなどに使われる。

ピーク信号対雑音比(PSNR)

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最大電力と雑音の比率をピーク信号対雑音比(PSNR: Peak signal-to-noise ratio)と呼ぶ。

1ビット当たりの信号電力と雑音密度の比をEb/N0英語版 (energy per bit to noise power spectral density ratio) と呼ぶ。

SN比の計算式において、雑音電力の項に機器が生じる歪み電力を加えたものをSINADと呼ぶ。受信機(特にFM)の出力雑音を表すために用いる。

脚注

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  1. ^ Denki denshi keisoku kogaku.. Masasumi Yoshizawa, Norio Furuya, Keiko, Denki denshi kogaku Fukuda, Takumi Yoshimura, 昌純 吉沢, 典雄 降矢. Koronasha. (2020.3). ISBN 978-4-339-01215-6. OCLC 1146562519. https://www.worldcat.org/oclc/1146562519 
  2. ^ 田口玄一 編『統計解析』丸善、1966年。 

参考文献

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関連項目

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